五十一話:ギルドと偏屈ジジイと今昔・前編
この時間での隔日更新をしたかったのでまた前後編になります。
あの後、騒ぎが収まるまでに暫く掛かった。
男達もジーニャ…さん(聞いた所年上だった。)も嘘だ嘘だとしか言わないし、ジジイは股間を触ろうとしてきたから地面にキスさせたし…
シュルツ村でも思ったがなんでこうなるんだか…
やっぱり髪が長いのは問題があるのかもしれない。
ここ最近伸びっぱなしだからそろそろ切るべきかもしれないな。
で、今はなんやかんやあって騒ぎも静まって男達は帰っていった。
しっかり上と周りに事情は説明してくれるらしい。
ただ…一応後で親分に顔を見せには来て欲しいと言われた。
やっぱり新入りが顔を見せに行かないのは問題があるみたいだ。
ここに本人が来てくれてたなら手っ取り早かったんだけどな。
「で、爺さん…色々と説明して貰おうか?」
「それだったら何か飲み物持ってきますね~」
「あ、どうも」
「いえいえ~」
「あぁぁ…。」
自分は手頃なテーブル席に腰掛け、ジーニャさんは飲み物を取りにカウンタの奥に、ジジイは床から起き上がり、同じテーブルの席に座る。
「おぉイタタ…もう少し加減せんかい!」
「これでも加減したぞ?
そもそもしょうもない事するからだろ?」
「この歳になるとこれくらいしか生きがいがなくての…」
「ただ偏屈なだけじゃん…」
「まぁそれもあるがの。」
「あ、認めるんだ?」
「お主ほど陰険じゃないとは思うがの?」
「ハハハ…」
「笑って誤魔化しおって。
回復魔法を使えんようにするとか…悪い冗談じゃわい。」
確かにさっきからずっと回復魔法を妨害し続けてるしな。
しょうがない、解くか。
陰険だと言われてもしょうがないけど、先に仕掛けてきたのは…悪いがそっちだからな…
「自業自得だろ?」
「ぐぬぬ…」
「お待たせしました~」
そんな軽口を言い合っていたらカウンターの奥からティーポットと人数分のカップを持ってくる。
飲み物が全員に行き渡りジーニャさんも座った所で、本題だ。
「それで、本題だけど…なんでギルドがこうなってるんだ?」
「あの、それは…」
「見れば分かるじゃろ、人がおらんからじゃ。」
茶を啜りながら爺さんがあっさりと言う。
成る程、副業が本業になってる訳ね。
というかジーニャさんがすごく言いにくそうだったのに、バッサリと言ったな。
で、爺さんはさらに続ける。
「冒険者として考えればここにいる殆どの者はEランクかそれ以下じゃ。」
「まぁ、なんとなくそれは分かるけど…」
「対してここら辺の魔物はDランク相当、勝てる可能性は低い。」
「…成る程、一から冒険者を育成するには向かないか。」
「昔は熟練者が新入りを連れて行ってノウハウを教えるなんて事も出来たが…」
オンゲで言うところのパワーレベリングか?
とりあえずDランク相当の実力になるまではサポートして…って感じで育てると。
一応昔は上が下を育成する環境があった訳だ。
「となると結構な人数がいたのか。」
「そうじゃが色々あっての…。」
「詳しく聞かせてくれ。」
「…こうなった経緯は話すと長くなるぞ?」
「別に急いでる訳じゃないし、長くても…」
「話したいのは山々じゃが…さっきの傷が痛くてのぉ…」
「…それで?」
「口が痛くて痛くて…長く語るのは無理そうじゃ…」
さっきからベラベラと喋ってるし…嘘だろうな。
ジーニャさんもなんだか冷たい目でジジイの事見てるし。
というかさっき魔封じは解いたし…って言ってなかったっけか。
「というか回復魔法ならもう使えるだろ。」
「えっ?本当か?」
そう言うとすぐさま爺さんは手で顔を覆い「ヒール」と呟く。
「おぉ…癒されるのぉ…」
何を言ってるんだか…
それから暫くして傷が癒えたのか、ホクホク顔でこっちを見る。
「さて、じゃあどこから話すか…」
「というかどこから語れるんだ?」
ぶっちゃけ人が居なくなった経緯だけでもいいんだけどな。
一応他にも知っておいて損はないだろうとは思うけど。
「ん?この国の成り立ちから語れるぞい。」
「そりゃ凄いな。」
「建国物語ですね!私も聞きたいです!」
「おぉええのうジーニャ!テッシンも聞きたいかの?」
「あぁ…頼む。」
なんだか俺がおまけみたいに言うんじゃない。
というか…思ったより長くなりそうだな。
確かに長くなってもいいとは言ったが、こりゃ昼くらいまでかかるんじゃないか?
確かこの国って建国されてから数十年くらいじゃなかったっけ?
というかジーニャさんは聞いたことないのか?
…まぁ思う事はあるけど今はいいか。
「さて、じゃあ語ろうかの。」
さっきまでの穏やかというかおちゃらけた雰囲気から一変して、真剣な表情になって語り始めた。
「さて、ここから始まるは大いなる時代の一欠片!歴史の一ページ!
流れゆく時間を!思いを!切り取り、言葉に移し、人に語らい人が紡ぐこの世界…」
「前置きはいい、とっとと本題を話せ。」
「そうですよ、お爺ちゃん!」
「これ、結構好きな吟遊詩人のセリフじゃったのに…」
ジジイが思いっきり落ち込んでるけど…別に詩人の真似なんていいだろ。
聞きたいのは吟遊詩人の語りじゃなくてここの歴史だ。
ジーニャさんも同じ意見だったからか、特に拗ねることなくさっきと同じ調子で、また語り始める。
「元々この国、メタリオルの成り立ちは金属が犯罪者の魔法を抑える手段に活用され、様々な国がそれを求める様になった時に深刻化した金属不足から様々な国が投資して出来たのが始まりと言われておる。
体を巡る魔力を吸い上げて周囲に霧散させるなんていう、そんな代物を専門に扱う場所など何処の国も持ちたくなかったんじゃろう。
急激な金属不足の後を考えればただ邪魔なだけじゃし、それ以前に魔術教会が五月蝿いからの。
そんな風潮の中、元々何処も手の付けなかったこの土地で金属が採れる場所が魅力的だったんじゃろう。
四方が山で囲まれ、天候も厳しく、土地に魔力もそう多くなく、金属が採れるこの場所が。
そこでここに人の住める場所を作り、金属を輸出させ続けようとした訳じゃの。
ついでにそこへの労働者として当時、魔法能力に難のある難民人材を大量に送り込んだのじゃ。
表向きは開拓民としてじゃったが、実際は恐らく自国から追い出すためじゃろうな。
そうやって送り込まれた人材と投資の中で発展していった土地はいつしか国となった。
この西鉱山地帯も発展していったその中でも一際大きな地帯の一つだった訳じゃ。
どこよりも豊富に鉱石が取れることが幸いしてな。
金属での利益なぞ他の国の商売と比べれば劣るがそれでもこの国では一番の儲けになる。
採掘出来る場所の権利が得られればそこから金属の塊が手に入るんじゃからな。
そうして権利を得た人間を中心に人が集まり村や集落が出来てなんて事が星の数ほど繰り返された訳じゃな。
いつしか需要が一定に安定する様になる頃には国としての機能するために施設が用意されるようになった。
中央には各ギルド支部が置かれ、各地帯に支部管轄のギルドも置かれるようになったしの。
西鉱山地帯の冒険者ギルドは此処、イロンの町に置かれたのじゃ。
ここは中央とは距離があるが、周りの村との交流が盛んだったみたいでな。
利権でトラブルを起こす村もかなり多かった中でこういう特別な立ち位置に居る村を選んだという訳じゃな。
元々西鉱山地帯は中央とはかなりの距離があるからな。
補給するためにどこかに立ち寄る必要もあるし、必ずしも近くなくて良かったんじゃ。
さて、ギルドの仕事も、ここいら一帯に金属が採れる村が沢山存在する分、相当な量じゃった。
通常の魔物の仕事から採掘所の警備、資材の調達から村間のトラブルが起こると用心棒になんてのに、更に野盗からの護衛など、とにかく沢山じゃ。
人材として送り込まれた人間にそういった事が得意な人材はほぼ居なかったが、冒険者にもの好きな奴らがおるもんでの。
おまけに依頼の報酬には十分な額が用意されておるもんじゃからここら辺は一時期、冒険者でごった返していた時期もあったもんじゃ。
需要が一定に落ちてからも、そういった仕事は減ることは無かった。
むしろある仕事は増えたりもしたのう。
国からこの地帯からの輸出も制限されたが、村ごとにその量は決まってはおらんかったんでな。
村に少しでも輸出する配分を多く得ようと何処も躍起になっておった。
その権利を賭けて村同士が争い、その中で冒険者を雇う事があった訳じゃ。
しかしそんな事がいつまでも続く訳が無いのじゃ。
人が死ねばその分恨みも買うし、殺した方も大なり小なり後悔が残るでの。
そうやって募ったモノが一つ大きな事件を引き起こし、多くの村や集落が焼け落ちなくなった訳じゃ。
事件が解決した後、多くの冒険者がこの土地を離れる事にも繋がったりしてのう。
それ以降はここも少しずつ衰退していく事になった訳じゃ。
まぁ衰退したとは言ってもこの事件に関係無かった村からの依頼はあるからまだまだギルドには活気もあったし、それが決定的なものでは無かった訳じゃ。
一応次回と合わせてのメタリオル説明回です、多分。
あと、感想欄に書かれてたことを少し意識してみました。
あのお爺さん、もう少し活躍できるだろうか…?(体を張る的な意味で)




