四十九話:ギルドに行ったら・前編
結局あの後、一旦町から出て夜を明かし、朝にもう一度訪れる事にした。
あのまま町のどこかで寝ても良かったんだけど、下手に絡まれるのは避けたかったからな。
ただ、この気候で頭まで覆ってたら暑くて寝にくい上に、そもそも眠る時間が短かったからかなり眠たい。
まぁそれは置いておくとして…町に戻ってとりあえずギルドを探す。
時折、すれ違う通行人から奇怪な視線を貰うが気にはしない。
一応…余所者だし、顔が見えない様にフードを被ってるし、自分でも怪しいとは思うし…。
うん、言ってて悲しくなってきたのでここら辺でやめよう。
ただ…ちらりと見ればここの住人は誰もが皆、暗色系の髪色をしている。
獣人達は見分けが付かないから分からないが…やはり魔力に難があるのだろうか?
しかしやはり、真っ黒な髪色の人はどこにもいなかった。
で、そんな風に散策しながら約十分、数々の視線を潜りながらようやく看板が掲げてある店を発見した。
ちょっと年季が入っていて、一瞬見逃しそうになったけどな。
ちなみに先にギルドを探したのは町に来た時、先にギルドを探しておくと困った事にならなくてすむと思ったからだ。
前みたいに格安のいい宿を紹介してくれるかもしれないしな。
正しいギルドの利用法じゃないけど、そもそも宿の場所さえわからないしな。
まぁとりあえず色々と聞くにはちょうどいいだろ。
「ごめんくださ~い。」
扉を開けて中の様子を伺いつつ、そう言ってみる。
ギルドの中は…トーワの町と比べて遥かに広いが、実質ギルド側は半分くらいしかない。
というか半分もない。
ついでに人もいない。
四分の三が占領された受付カウンター、綺麗に紙片が並ぶ依頼板、そして残った空間を埋め尽くすのは椅子とテーブルだ。
で、占領されたカウンターの奥やカウンターの上にはおしゃれに色々と並んでいる。
色とりどりの瓶とか綺麗な石とか彫刻とか置物とか。
なんでか分からないけど、妙に綺麗に飾っているな。
それは置いておいて、とりあえず手頃な依頼は無いかと依頼板を確認するが…。
「…あれ?」
そこに貼っているのは料理名と金額が書かれた…お品書きか、これ?
どれを見てもそういったものしかここに貼ってない。
…というかなんでこんなもの貼っているんだ?
「いらっしゃいませ~!」
そんな疑問を浮かべていると、背後から女の人の声が聞こえた。
振り返るともう残りの占領されてる方のカウンターの奥から女性が一人出てきた。
全体的に暗い色で統一されたエプロン姿で、髪の色は藍色だ。
それなりに暗い色だが、暗闇で間違えても黒には見えない。
それよりも…彼女はここで働いている人だろうか?
とりあえず依頼が無いか聞いてみるか。
「あの、ギルドの依頼を受けに来たんですけど…」
「え~と?何か頼んだ記憶は無いですけど…?」
「え?」
「…へ?」
なんでだろう、会話が噛み合わない。
こうやってボケられても反応に困るが、相手の表情を見る限り真面目に言ってると思えるから尚更困る。
というか、なんか怪しくなってきたぞ…
「ここって冒険者の…ギルドですよね?」
「あの~…その…」
一応聞いてみただけなのになんでしどろもどろなんだよ。
きっぱり違うと言われても困るけど、答えてくれないのも面倒だ。
流石に俺も馬鹿じゃない。
ここまで来ればギルドとして運営してない事くらい分かる。
ついでに何か理由がある事くらいも。
「とりあえず…」
とりあえずどう事情を聞こうかと悩んでいると、バーンッ!と勢い良く音が入口の方から聞こえる。
音の方に振り向くと、入口を固めるように何人もの男が入ってくる。
申し訳程度に各々武器になりそうな物を持っている。
…一応感知を使っておくか。
「お前だな!報告にあった旅人というのは!」
「…報告?」
入口を固めた男の一人が聞いてくるが、当然何の事か分からない。
というか何の報告だよ。
そもそも何か報告されるようなやましい事をしてたらこんな所に居ないだろうに。
「今朝方、顔を隠した怪しげな旅人が町に入ったと通報があったのだ!」
「…あぁ、成る程。」
この町は中々に排他的みたいだな。
怪しいってだけで通報かよ…
それ以前に…通報して動く自警団的な組織があったんだな、ここ。
そんな組織があるなら町の周囲の警戒くらいしろよ。
余所者が簡単に入れる時点で駄目だろうに。
「それで…見に来ただけだ!」
いや…見に来ただけかよ!
徒党を組んで一体何をやってるんだ、こいつらは?
自警団とかそういう組織じゃないのか?
「お前がそうなのかと聞いている!」
「…そう見えるのか?」
「あぁ、見える!」
自信有りげにそう言われても困るんだけどな。
そのまま間髪入れずに俺と話していた女性の方を向いて…
「ジーニャ!こいつと何を話していた?」
「…えっと、ここは冒険者ギルドじゃないのかって…」
急にとなりに居た女性…ジーニャさんは話を振られて、ちらりとこちらを見た後…そう答える。
「なに?冒険者ギルド?」
そう聞いた男は、怪訝そうな顔を浮かべてこちらを見る。
「看板が掲げてあっただろ?冒険者ギルドの看板が。」
「確かにあれは…まさか冒険者か?」
「あぁ、そうだ。」
そう言って懐からギルドカードを取り出す。
最初からこれを出せば良かった。
こう…このままだったら町のお偉いさん辺りが来てくれるかとも思ったけど、これじゃ期待できそうにないしな。
こうなったら出し惜しみする必要もないか。
「Dランク冒険者、テッシンだ。」
そう言うと後ろで入口を固めている集団がざわめき立つ。
一応Dランクって普通の冒険者なんだが…
良く分からないが…妙に反応がいいな。
なんて思っていると音もなく後方から誰かが近づいてくるのを感知が捉える。
咄嗟にカードを仕舞いつつ木剣を抜き放ち、壁を背にして構える。
「誰だ!」
だがその方向を見ても人の姿は見えない。
…魔法で姿を消してるのか?
後ろから音もなく近づいてきた肉眼では見えない相手に剣は向けつつ、感知に使うSPを徐々に増やしていく。
更にこの状況を打破する為に思考を巡らせる。
そもそも入口を塞いで話をしていた奴は囮で、背後から押さえつけるなんて作戦だったのかも知れない。
作戦が失敗したからか、入口を塞いでいた奴らも手に持っていた武器を構える。
ただ、機会を伺っているからかこちらに突っ込んで来ることはない。
しかし入口を塞いでいる奴らも動かない中で、姿の見えない奴は徐々にジーニャと呼ばれた女性の方に向かってゆっくりと動いている。
その動きに合わせて構えている剣も少しずつ動かしていく。
「え?ちょ…!」
「ジーニャ!…くそ!」
徐々に切っ先が彼女に向いてきた事に一同が焦り始める。
だが完全に向く前にまた離れる様に遠ざかっていく。
「「ホッ…」」
切っ先が完全に元の位置に戻ったのに一同が安心した頃、再びジーニャに向かって切っ先が動き出す。
「え…!また…?」
「ちぃ…」
一同がそんな反応をしたのも一瞬で、そこから一歩進んだくらいの距離で何もない所の輪郭がぼやけ始める。
まぁ感知に使うSPを増やした結果だな。
…感知に使うSPが増えるというのは俺自身が生き物や魔力を感覚的に捉えられるだけじゃない。
霊力が魔力と反発する関係上、霊力が強ければ魔力はかき消せる。
感知も範囲型の魔封じと変わらないって事だ。
そこから隠れている奴は更にそこからまた徐々に彼女に、ついでに言うと俺に近づいて来る…つまり霊力が強くなるから徐々にその姿が浮かんでくるわけで…
完全に魔法は掻き消えたのか、若干背の低い5、60代くらいの人相の爺さんが出てきた。
今までと比べて最近、投稿間隔が早いですね。
モチベもひしひしと上がってきている気がします。
このペースがいつまで続くだろうか…
何はともあれ、ご視聴ありがとうございます。
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