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体がだるいし、動きにくいので、ベッドの上でぐでぐでと過ごす。ヘルさんが心配そうにしている。病気な訳じゃないんだけどなあ。腰が痛いというと指でなでなでしてくれた。気持ちいい。思わずうとうとしてしまった。その間ずっとしてくれてたみたいだ。
「ありがと……きもちよかった」
「マリカの体はもう大人なんだね」
「もう17だもん。結婚もできる……」
そこまで言ってはっとした。結婚。ヘルさんといつのまにか結婚していた?件をどうするべきか。というか、こちらでの結婚がそもそもよくわからないんだよね。クイさんの家族状況から考えてみるに、子どもを作る関係? 種族が違うとそういう気にならないみたいなので、私と子作り……は、しないのかも?
結婚はおいておいても、子どもは無理だ。ヘルさんの子どもとなれば相当大きいはずだ。産める訳がない。その前段階にも大いに問題はあるけど。だからまあ……好きとかそういうのはどこかに追いやっても、子作りに類する行為はできない。出産ともなればまさに命がけ。死んでしまう。ここはきちんと言わなければいけない。恥ずかしいとか言いにくいとか、そんなのは命の危険から比べればたいしたことではないはずだ。
「あのー……ヘルさん?」
「ん?」
「あのね、あのう」
「なんだい」
「うんと、ね」
「うん」
言いにくい!
「こっ、子どものことはどう考えてるのかな!」
いったー! いったよ、やったー!
「子ども? 欲しいの?」
逆です。できたら困るんです。
なんでそんなにきょとんとしてるんでしょうか。
「ヘルさんは?」
「私の子どもか? 誰に聞いたんだ……。連絡も取ってないからなあ。まあ、元気にしているんじゃないか」
「……へ? い、いたの!? こどもが!?」
なんじゃとー!!!! なんでそれで私と結婚するか! いや、連絡も取ってないってことはもう離婚はしてるのか? でもそういう隠し事よくない!
「産まれたとは聞いたから多分」
なに平然としているんだ。私はがばっと起き上がり、すました顔をしているヘルさんを睨みつけた。
「そ、そそそ、そういうのはっ、いわなきゃだめでしょー!」
「……何を言うんだ?」
「こどもがいたとかっ……! わっ、私たち結婚してるんだよ! そういう大事なことは言ってくれないとっ……」
「大事か?」
「家族は大事でしょ! だって、だって……ヘルさんの家族なのに」
色々新事実が発覚したせいだ。どうしたいのか、なにがしたいのか、わからない。急に気持ちがしおれてうつむく。……なんだろ。胸が苦しい。
頭の上に重いものがのる。そのまま撫でてきたから、きっとこれは手だ。その重みに押されて、ベッドに顔を押し付ける。
「確かに私の血族ではあるが、種を与えただけだ。一族のものでもないし、会ったこともない。だから、マリカが気にかけることはないんだ」
やっぱりこっちの人の考えはよくわからない。
「家族が欲しい?」
そういうこと、優しい声で言わないで欲しい。思い出して泣きたくなる。
ベッドから無理やり引き剥がされて、濡れた顔を冷たい舌が這い回る。そっとしておいてくれればいいのに。でも放っておかれたら、ずっと苦しいままなんだろう。
「マリカは、私以外の誰が欲しいんだ? 子ども? ……できないよ。マリカの種族はここにはいない。どこにもいない」
声が。やさしくて。おなかが、ぞわぞわする。
そうか。子どもは、できないのか。じゃあいま私に与えられた痛みは無駄なわけだ。もったいない。
「マリカは私のものだ。他の誰にも、渡さない」
このあとの出来事ですか? 黙秘します。




