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ねずみ講式経験値収集魔法陣で下剋上 ~君の経験値は僕のモノ。史上最悪のピラミッド型搾取システムで復讐を誓う~  作者: 団田図


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第10話 搾取構造の全貌

【トマ視点】


「最高だろ、トマ! これが俺たちの新しい『家族』だ!」


 カイルが肩を組みながら、顔を真っ赤にして笑っている。

 俺もつられて、へらへらとだらしない笑みを浮かべていた。


「さあ、トマ君。素晴らしいスタートを切った君には、早速次のステップに進んでもらいたい」


 喧騒の中、ルカが耳元で甘く囁いた。


「君の周りに、今の現状に不満を持っている知り合いはいないかい? レベルが上がらなくて困っている仲間や、ポーション代に苦しんでいる冒険者仲間。彼らにも、この『救済』を教えてあげるべきだと思わないか?」


「……仲間を、救う……」


「そう。君が彼らを勧誘し、子会員にしてあげることで、彼らもまたこの素晴らしい環境を手に入れることができる。そして君は、親会員として彼らを導く立場になれるんだ。まずは三人。三人に声をかけてみよう」


 熱気に当てられた頭で、俺は力強く頷いていた。


 そうだ、これは素晴らしい互助組織なのだ。俺だけが独占するのは間違っている。知り合いを誘って、みんなで一緒に豊かになればいい。


 俺は高級酒を一気に飲み干し、決意に満ちた声を上げた。


「やります……! 俺、すぐに心当たりの奴に声をかけてみます!」


 酒場は再び、割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。俺は自分が世界の中心にいるような、無敵の万能感に酔いしれていた。


 +++


【アレン視点】


 廃倉庫の拠点で、僕の斜め前の椅子に座ったテオが、魔石演算機のパネルを叩きながら冷ややかな笑みを浮かべていた。


「ルカのやつ、相変わらず息を吐くように嘘をつく。末端が稼いだ経験値の九割が直属の親に入るなんて、完全な建前じゃないか」


「嘘ではありませんよ、テオ。一時的に親の口座を通過するのは事実ですからね」

 僕はソファに深く腰を掛け、グラスのワインを揺らした。


 僕が構築した『マージン固定制』の真の恐ろしさは、この九割の搾取が「すべての階層で連鎖する」ことにある。


 例えば、末端の孫会員が経験値を【100】稼いだとしよう。彼の取り分は一割の【10】で、残りの【90】は親会員へと吸い上げられる。


 ここまではルカの説明通りだ。だが、親会員もまたシステムの下部組織に過ぎない。親会員に入った【90】の経験値からも、さらに九割――つまり【81】が、その上の階層である僕の直属幹部のもとへ強制的に送値される。


 そして幹部に入った【81】からも、同じく九割の【72.9】が上納され……最終的に行き着く先は、頂点にいる僕というわけだ。


「末端が【10】、親が【9】、幹部が【8.1】……。


 下位の者が死に物狂いで働いても、吸い上げた側すら手元に残るのはカスのような数値。そして何の労働もしていない最上親のアレンが【72.9】を丸取りする。何度見てもヘドが出るほど美しい数式だよ」


「ええ。階層が深くなればなるほど、僕に集約される魔力は莫大に膨れ上がります。彼らはそれに気づかず、わずかなおこぼれを求めて、嬉々として次の生贄を探し続けるんです」


 僕はグラスに注いだ水を天に傾け、復讐の糧となってくれる子や孫への感謝を込めた。


 +++


【トマ視点】


 酒場での熱狂的な歓迎会を終え、俺は千鳥足で薄暗い路地を歩いていた。


 安宿の自室に戻る道中、胸元で微かに光るアイギスブローチに何度も触れては、一人でニヤニヤと笑みをこぼしてしまう。


「ふふっ……俺もついに、不労所得の勝ち組か……」


 寝ているだけでレベルが上がる。何もしなくても経験値が流れ込んでくる。

 ルカの言葉が、呪文のように頭の中をぐるぐると回っていた。

 自室の軋むベッドに倒れ込むと、俺は早速、頭の中で「救済者」の選定を始めた。


「三人の子会員を見つければいいんだよな。……まずは、昔一緒にパーティを組んでた盾役のボブか。あいつ、怪我で治療費がかさんで借金してたはずだ。この話をすれば絶対に食いつく」


 天井の木目を見つめながら、俺はぶつぶつと呟く。


「それから、最近ギルドに入ってきた新人の魔法使いの娘。あの子、魔法書を買うお金がないって嘆いてたな。俺が先輩として、この互助組織の存在を教えてやれば、きっと感謝して俺の子会員になるはずだ」


 俺は起き上がり、羊皮紙の切れ端と羽ペンを引っ張り出して、思いつく限りの知人の名前を書き出していった。


 ボブ、新人魔法使いの娘、それに、酒場でいつも愚痴をこぼしている同業者の連中。

 名前を書き連ねていくうちに、俺の心の中にあった「彼らを救いたい」という建前は、いつの間にか「こいつらを勧誘すれば、俺の経験値になる」という黒い欲望へとすり替わっていった。


「カイルがあの時、俺に声をかけてくれたみたいに……今度は俺が、こいつらに伝書鳩を送ってやろう。『久しぶり、ちょっとエールでも飲まないか?』ってな」


 俺は薄暗い部屋の中で、羊皮紙のリストを握りしめ、自分でも気味が悪いほど歪んだ笑みを浮かべてしまっていた。

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