表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された地味令嬢ですが、実は王宮一の補佐でした ~捨てたのは第一王子? いいえ、私は第二王子と国を立て直します~  作者: 紅茶うさぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/96

第88話 静かな分裂

 オルディア連盟本部は、海に面して建っている。


 白亜の外壁。

 巨大な円環紋章。

 窓は外から中を窺えない。


 だが内部では、均衡が崩れ始めていた。


「均衡条約の成立により、王国の信用は回復傾向」


 報告官の声は硬い。


「西方残存国は条約署名後、資金流出を停止」


「東方帝国も軍事演習を縮小」


 静寂。


 円卓の中央に座るカイウスは、指先で机を叩いた。


「つまり、王は生き延びた」


 誰も否定しない。


 信用凍結。

 軍事圧力。

 内部揺さぶり。


 それでも王は折れなかった。


「損失は」


「限定的です」


 別の声。


「ただし、連盟の“不可侵性”は傷つきました」


 それが本質だった。


 連盟は恐怖で支配するのではない。


 “逆らっても無意味”という認識で支配する。


 だが王国は逆らい、立っている。


 円卓の一角。


 若い男が静かに口を開いた。


「恐怖に依存した時点で、理念は崩れる」


 全員の視線が集まる。


 アルヴェイン・オルディア。


 創設家系の若き総代。


 銀灰の髪。

 穏やかな目。

 だがその奥に冷たい理性がある。


「信用凍結は政治的判断でした」


 淡々と告げる。


「連盟は“安定”を売る組織です」


「国家の破綻を誘発する行為は理念違反」


 カイウスの目が細まる。


「王は連盟を公然と攻撃した」


「応答は必要だった」


「応答と報復は違う」


 静かな反論。


 円卓の空気が揺れる。


「王国が破綻すれば、我々も損をする」


「市場は感情で動かすものではない」


 重い沈黙。


 監査層の数名が、わずかに頷く。


 強硬派が反論する。


「均衡条約は危険思想だ」


「国家主権の強化は、連盟の影響力低下に直結する」


 アルヴェインは否定しない。


「だからこそ、対話すべきです」


「排除ではなく、設計を」


 カイウスが立ち上がる。


「設計?」


「王は市場を国家に従わせようとしている」


「それは後退だ」


 アルヴェインは静かに答える。


「王は市場を否定していない」


「透明化を求めただけです」


 言葉がぶつかる。


 だが怒号はない。


 ここは軍ではない。


 理念の戦場だ。


 やがてアルヴェインは言う。


「王と公開対話を行います」


 ざわめき。


「連盟の理念を示す」


「恐怖ではなく、理論で」


 カイウスは冷ややかに言う。


「王は政治家だ」


「理論では揺れない」


「それならば」


 アルヴェインの目がわずかに鋭くなる。


「揺れるかどうか、確かめましょう」


 会議は散会した。


 だが分裂は明確になった。


 強硬派。

 安定派。

 そして理念派。


 同じ連盟の中に、三つの方向。


 同時刻。


 王都。


 レオンハルトは均衡条約の進捗報告を受けていた。


「西方は落ち着きを取り戻しています」


「東方は警戒を維持」


 第一王子が言う。


「嵐は過ぎたか」


「いや」


 ルークが静かに言う。


「連盟は沈黙している」


「それが不気味です」


 その時、侍従が入室する。


「連盟より書簡」


 深紺の封蝋。


 だが刻印が違う。


 円環の中に、細い銀線。


 ルークの目が揺れる。


「……創設家系」


 レオンハルトが封を切る。


『王へ』


『連盟総代アルヴェイン・オルディアより』


『公開対話を提案する』


『市場と国家、どちらが世界を守るか』


 静かな挑戦状。


 エリシアが息を呑む。


「思想戦です」


 第一王子が低く笑う。


「面白い」


 だがレオンハルトの目は真剣だ。


「これは金融戦争より厄介だ」


 理念は、剣より深く刺さる。


 窓の外、王都の空は澄んでいる。


 だが大陸の均衡は、再び揺れ始めていた。


 敵は恐怖ではなく。


 理性を携えて、王の前に立とうとしている。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ