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異世界ひみつ道具工房~ドラ◯もん好きの女子高生がもらった権能と愛と知識で世界を救う~  作者: ミジンコ
1-2章 冒険者の街

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第十話 少女の名はクレア

 慌てて向かったのは門番さんのところ。こんな場所に救急車なんてある訳ないんだから、病院に連れて行く必要がある。

 私が大慌ての様子だったから向こうも目を丸くしていたけど、なんとか場所を教えてもらえた。こっちの世界では病院じゃなくて救護院って呼ぶらしい。


 それを聞いてすぐに女の子のところに戻り、おぶって救護院に向かった。


「……特に悪い所はありません。おそらくは疲労と空腹が原因でしょうな」


 救護院の優しそうなおじいちゃん先生がそう診断する。

 魔法かスキルか分かんないけど、女の子の身体をざっと見ただけで分かったらしい。地球ならヤブを疑うところだけど。


「それじゃあ食事をとれば大丈夫ってことですか?」

「そうですな。十分な休養と栄養を取ればすぐに良くなりましょう。一先ず、目が覚めるまではここで休んでいきなさい」

「ありがとうございますっ」

「なになにちょうど暇をしていたところですからな」


 そういうとおじいちゃん先生はベッドを貸してくれて部屋を後にした。


 それにしても、疲労と空腹って。

 とても子どもがなるような症状じゃないでしょ。


 でもさっきこの子が言ってたことが頭を過る。


 ――母さんは病気だ!! 父さんは帰ってこない!!


 どんな事情があるのか分からないけど、少なくともこの子には今。頼りになる大人がいないってことなんだろう。

 だから冒険者になって自分で稼ごうとした、というのが顛末かな。かといって冒険者には決まりでなることは出来ないからどうしようもない。


 冒険者以外の普通の仕事を探せば?と思わなくもないけど、私にはこっちの常識が少ない。あまり滅多なことは言わない方がいい。じゃないとさっきみたいなことになる。


 女の子の目が覚めたらどうするか考えながら暫く待っていると、ベッドから呻くような声が聞こえた。


「ま、ま……ん?――え、ここっ。あ、え?」

「あーっと、まずは落ち着いて。ちゃんと説明するから。ちなみに私のことは覚えてる?」


 そう聞くと女の子は少ししてコクリと頷いた。

 大丈夫そうなので、ここに連れてくるまでの経緯を話す。まあ話の途中でいきなり倒れたから私がここに運んだってだけなんだけど。

 それを聞くと女の子もようやく落ち着きを取り戻し始めた。

 だけど次の瞬間、一転して慌て始める。


「だ、だけどあたしお金なんて持ってないっ」

「ここのってこと? それなら私が出したから気にしないで。私が勝手に連れて来たんだから問題ないでしょ」

「っ!?…………あんた、なんなんだ?」

「最初に声をかけてきたのはそっちでしょ。ただの冒険者だよ」


 女の子は何を疑っているのか、私の目をじっと覗き込んでくる。

 野生児ってほどじゃないけど、そんな感じがする子だ。それともこっちの世界の子どもはこれぐらいが普通なんだろうか。

 何というかやさぐれてるというか世知辛いというか……


「……ありがとう」

「いいよ。それより君、これからどうするの? 残念だけど私が取り合ったところで冒険者にはなれないよ」

「っ……そんなの分かってるっ」


 分かってるのかよ。てことはさっきのは駄目元だったってこと?


「でも冒険者以外に稼ぐ方法なんてっ」

「ちなみにだけどさ。どっかのお店で雇ってもらうとかはダメなの? ほら、例えば皿洗いとか」

「無理だな。あたしみたいなガキを雇ってくれる店なんて無い。もっと動ける大人の方が同じ金でも使えるからな」

「あぁー……」


 刺激しないように聞いてみたけど、やっぱり理由があったみたい。

 しかもそれを聞いて私も納得。十歳以下っていったら小学生だ。こっちでもそんな子どもを雇わないのは同じらしい。むしろ冒険者の決まりが緩すぎるまである。


「――そうだ! あんた、あたしを雇ってくれ!」

「は? 雇う?」


 すると、女の子がいきなり突拍子もないことを言い出した。


「あんた冒険者なんだろ? だったらあたしを雇ってくれ! 荷物持ちでも何でもする! 報酬だって少なくてもいい!……多い方が嬉しいけど。とにかく何だってやる!」

「心意気は買うけどねぇ……」


 正直、この女の子については目を覚ますまでに色々考えてみた。

 

 この街に来た理由は別に人助けをする為じゃない。邪神の残滓とやらがある場所を知るためだ。それを優先すべきだし、何より下手に関わったとしてどこまで面倒を見る?

 邪神の残滓を掃除したら私は迷いなく元の世界に帰る。

 どれぐらい時間がかかるか分からないけど、なるべく早く終わらせるつもりだ。つまりこっちにずっといる訳じゃない。加えてこの場所に留まるつもりもない。


 だったら最初から少し手助けするよりも、最初から手を出さない方がいいんじゃないか?とすら思ってしまう。


 それはそれで薄情かもしれないけど……下手にこっちの世界に愛着とか湧きたくないじゃん。帰りずらくなるかもだし。


 特にこの子の事情は、私がちょっと手助けして終わる問題じゃなさそうだしなあ。


 すごく、すごく迷う。

 

 そうして女の子の不安そうな目を極力無視して考えること暫く。


「…………少しだけ、なら」

「本当か!? やった!!」


 結局、断ることが出来なかった。


 言ってしまったからにはしょうがない。さすがにここから「やっぱり嘘でした~!」とか言って、いたいけな女の子を絶望に叩き落す趣味も無いし。


 そういえばの◯太達って、映画の度に色々な人と出会っては分かれてを繰り返してるんだよなあ。出会っても割と躊躇なく友達になるし、それでも別れを悲しんで泣いたりもするし。

 そういう部分に関しては、絶対に私よりも経験値が高い。小学生なのに大人顔負けかもしれないね。


「取り合えず、私がこの街にいる間は雇ってあげる。そんなに長い間はいないけど、それでもいいんだね?」

「いい!」


 だったら私もそうしようじゃないか――


「分かった。じゃあ少しの間になるけどよろしく。えっと――」

「あたしは『クレナ』だ!」

「よろしく、クレナ。私は清水有紗。名前が有紗で、苗字が清水ね」

「分かった! よろしくな、アリサ姉ちゃん!」


 ということで一時的に少女――クレナを雇うことになった。


「それでアリサ姉ちゃん! あたしは何をすればいいんだ?」

「そうだなー……取り合えず、何か食べに行こうか。また倒れられても面倒だし」

「飯かっ!? で、でもあたしお金が……」

「いいよいいよ。これも必要経費だと思うから。私の奢りってことでお給料から引いたりはしないから安心して」

「本当か!? ありがとう!」


 買い取り場のお姉さんの言葉が間違って無ければ、ご飯二人分ぐらいは事足りるはず。あとはこの子に渡す給料を考えないとか。相場とか分かんないからそこら辺の情報も仕入れないとなー。


 そうして無事にクレナが目覚めたことをおじいちゃん先生に伝えて救護院を出た。


 向かった先はギルドでもおすすめされた『トロル亭』。

 というかご飯を食べられる場所をここ以外知らない。悪いけどイースには外で待っててもらいながら、クレアと二人でお店の中に入った。


 入ると中は、ほとんどの席が埋まっていた。なんやかんやお昼時は過ぎたのにすごい人気具合だ。安くて美味いって評判も期待できる。


 取り合えずトロル焼き定食っていうのを二人分頼んで席に座った。


「ねえクレナ。トロル鳥って美味しいの?」

「ん? 姉ちゃん食べたことないのか? すっごい美味いぞ! あたしもあんまり食べたことないけど、そこらの鶏肉なんかよりずっと美味いんだ!」

「へぇ~。それは楽しみだなぁ」


 料理が来るまでの間、私は色々とクレナに質問してみた。

 内容は主にこの世界のことについて。だって私、貨幣のことだってさっき知ったんだから。今が何月何日で季節がどうのこうのなんて知る由もない。


 まず分かったのはこの世界の暦について。

 一日、一週、一か月、一年という単位は普通にあるらしい。ただし一か月がなんと九十日なんだという。それでいて一年は三百六十日。つまり一年を四分割したのが一か月で、一年=四か月になる。

 ついでに一週間という単位は十日ごとにカウントしている。

 だから一か月が九週間で、一年が三十六周ということだ。


 クレナはこれについて「季節が変わるんだから月も変わるだろ?」と何の疑問も無く言っていた。そりゃそうだ、こっちの世界ではそれが常識なんだから。


 なるほどと思いつつ他にも色々話を聞いていると、ようやくトロル焼き定食が運ばれてきた。


 パン、スープ、そしてメインのトロル鳥の焼き物。


 特にトロル鳥の焼き物からはすっごくいい匂いが漂ってくる。

 表面はきつね色に焼かれてそこを油が滴り、ナイフで切ると中から旨みが凝縮されたエキスがじゅわっと溢れ出してきた。

 それを見て私もクレナもごくりっと喉を鳴らす。


 一口食べると……皮のパリッとした感触の後に、肉にはすっと歯が通った。


 そして口の中でさっきの旨みエキスが溢れて、鼻を香ばしい鳥の匂いが抜けていく。


「うっっっんまい……! すごいなトロル鳥……!」

「あーこれこれ! やっぱりトロル鳥は美味いなっ!」

 

 味付けはシンプルに香草だけ、だと思う。あと塩か。でもスパイシーな感じは無かったから胡椒は無さそうかも。

 でも、それだけで十分に美味しい。こりゃ人気なのも頷けるわ。


 だけどその一方で、それ以外が残念だった。


「……」


 パンは固くてもさっとしてて味が無い。スープは野菜の水煮って感じ。味が無い訳じゃないけど、病院食のスープみたいなイメージ。


 何と言えばいいのか……素材の味を生かした料理って感じ?


 さっきのトロル鳥も、肉そのものの美味しさによるものが大きそう。


 でもクレアはそれらを美味しそうに食べている。

 気になって「ちょっとパン固くない?」と聞いてみたら、何言ってんのか分かんないって顔された。この子にとってはこれが普通、どころか美味しい類に属するらしい。


 周りのお客さんをちらっと見たけど、だれもパンとかスープに顔をしかめてる人はいなかった。


 ということは、やっぱりこれぐらいがこの世界での普通なのかもしれない。


 パンをスープに浸して食べていたクレアを真似して私もやってみると、固さとかはさっきよりもマシになった。だけど劇的な変化って訳じゃないから、元の微妙さを変えるほどじゃない。


 トロル鳥はめちゃくちゃ美味しかったんだけどなあ……


 そうして何とも言えない昼食を終えた後、私は早速クレアに仕事を頼むことにした。


「クレア。最初の仕事をお願いしたいんだけど」

「なんだ!?」

「ここら辺の土地について、地理が知りたいの。だから地図とかそういうのが売ってる場所って知らない?」

「ちず……?」

 

 地図という言葉を聞いてクレアが首を傾げる。

 地図を知らない?

 まさか地図が存在しないなんてことはないよね?


 すると私の沈黙をどう思ったのか、クレアが慌てて言い募る。


「で、でも! ここいらのことが知りたいんだったら、あたしが教えてやれるぞ! だからそのちずってのが無くても、知りたいことがあるんならあたしに聞いてくれ! 何が知りたいんだ!?」

「そう? じゃあこの国の名前と、街のおおよその位置って分かる?」

「それなら分かるぞ! えっと――」

 

 クレアから聞いたこの国の名前は『ミルガリア王国』。

 そしてこの街は王国の中でも最西にある一番大きな街らしい。ここより西に行くと小さな村が点々とあって、更にその向こうには私がやって来た森がある。


「ふむふむ。ちなみにここから北、南、東に行くと何があるの?」

「東に行くと王都がある。北と南は……ごめん、よく分かんない」

「いいよ。今のでも十分だから」


 クレアから貰った情報をケルビムの上司から貰った情報に照らし合わせていく。

 その中には国や街の名前もあったから、自分の今いる場所がおおよそ判明する。


 そしてもう一つ分かったことがあった。


 それは――この国にも一か所。邪神の残滓がある、ということ。


 これは、最初のお仕事は決まりだね。

いかがでしたでしょうか?

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