第165話 継承されるスキル(フィーガス視点)
お待たせ致しましたー
*・*・*(フィーガス視点)
カイルたちとだべりながら飲んでいたら、息子がカイルの嬢ちゃんを抱えて転移してきた.緊急事態かと思えば、体調を崩したわけでなく……どうやら、スキルの影響で身体に魔力が浸透しちまったらしい。力がうまく入らず、表情はぽやぽや。原因は思い当たるが、俺がリーシャに施したわけじゃない。
つまり、だ。
「セシル……お前さん、『魅惑の美声』が目覚めたのか?」
あり得ない事態だと思ったが、その可能性しかない。おそるおそる聞けば、答えたのは息子じゃなく、リーシャの契約精霊であるミアだった。
『でしゅ。まだ不安定でしゅが、ほぼ確実でしゅ!』
「ミアがそう言うんだ!」
「本当か!?」
「……マジかよ」
ミアが何度も頷くので、これはもう信じるしかない。
ユニークスキルでしかなかった、俺のはた迷惑なスキルを実の息子が継承しかけている? 俺の方が、最近発動しにくくなっていたのはそのためか!!?
「えっ!? ちょっと、どーゆーわけ!!? そのスキルって、今んとこフィーしか確認されてないんでしょう?!」
マックスが焦るのも当然だ。俺の生まれつき備わっていたユニークスキルは、どういうわけか旅をしていた時代以降も、俺しか確認が取れていなかった。
セルディアスだけでなく、どの国でも。
制御出来るようにも。めちゃくちゃ修行しなくちゃいかんかったのを……まさか、息子に継承されかけているだと? 生まれた直後じゃなく、このタイミングとくれば……最高神のフィルド神の気まぐれに違いねぇ!?
最近になって、久々に降臨されたとチャロナの嬢ちゃんから聞いてはいた。つまり、その気まぐれさが動いてもおかしくないぞ!? だからって、なんでこのタイミングなんだよ!!
「考察している時間はない! とにかく、解呪するには……セシル。方法は教えるが、ここではやるな」
「え? なんで?」
「……俺ら大人の前で、リーシャと熱いキスを見せることになるんだぞ?」
「は? な、そ、んな方法!?」
「言っとくが、俺は母さんにしかしとらん!」
「そういうことを聞きたいんじゃなくて!?」
「それしか解呪方法ないんだよ!」
チャロナの嬢ちゃんの場合は違った。まだ聴き取る量が少なかったから、浸食していた魔力を俺が抜く程度で済んだ。
しかし、リーシャの様子だとそれは無理だし、セシルにはまだそのコントロールが出来る技術がない。なので、応急処置の方法は『キス』。
口腔接触で、魔力を吸い出してスキル保持者に戻すしかない。荒業だが、俺はこれでカレリアを元に戻せた。その経緯で、付き合うことになったがそれは結果オーライでもな? リーシャとセシルは正式な婚約者になっても、その方法を親の前で見せれるような子どもじゃない。
特に、思春期手前のセシルには無理難題だ。
「……キス、するだけ?」
俺の表情でだいたい察したのか、方法を素直に聞く姿勢になったようだ。
俺は頷くが、ちゃんと魔力吸引のつもりで注意もして……子どもだから先に進むことはないにしても『やりすぎんな』と念は押した。セシルがまた転移していなくなったが、誰も酒盛りを再開する気にはなれんかった。
代わりに、マックスには詰め寄られた。
「あーんたのあれ、インキュバスのなんかかと思ったけど」
「そんな気はねぇよ!!」
人命救助のためだったが、結果を考えると良かったと思ってしまった当時の自分を、今更恥じた。フィルド神は俺の息子をどーしたいんだよ!? まさか、孫にも継承させるつもりじゃねぇよな!!?
次回は木曜日




