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でた
「―― 『何か』って、なんでえ?」
「・・・・だから、『何か』だよ」
「はあ?聞いてねえのか?」
「聞くもなにも・・・。女たちは、 ・・・・ ・声が出てないんだよ」
競うように大口をあけて何事かを訴える女たちの声は、いくら耳をすましてもチョウスケには聞こえなかった。
ためしに、自分の指先を耳元でこすってみれば、その小さな音さえしっかりと耳は拾う。
おそるおそる見た女たちは身振りも加えてなにかをしゃべり続け、驚いたことに、旦那は二人に、うなずきかけ、ときどき相槌をうったり、落ち着くようにと、声をかけている。
こりゃあ、あれか。声の出ない女たちか・・・?
チョウスケが、じっくりと三人をみつめていたら、洋間の時計の、低いかねの音がした。
ひとーつ、ふたーつ・・・
なんとなく頭の中で数えたそれが、九つ終わったとき、庭の暗闇に、こんどは洋装の女が浮かぶ。
――― でた・・・・
今度はそう思った。




