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長屋のチョウスケのはなし  作者: ぽすしち


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13/22

いいきれない



「―― おれは通いだから、暮れ六つにはあがるんだけど、旦那様が、六つ過ぎたら部屋に来いっていいなさる。 ―― おそるおそる声をかけてふすまを開けたら、煙管を吸いながら、開け放した障子のむこうの、庭を見ていなさってよ。 はいれ、ってだけ言われたから、その背中をみながら、黙ったまま隅にかしこまってたのさ」

 


 呼んでおきながら、旦那はチョウスケを振り返ることも話しかけることもしなかった。



 ただ、時間だけがすぎてゆき、向こうの洋間にかけられた柱時計が、きれまなく音を響かせるのを、しびれをがまんして聞いていた。

 



 と。




 

「―― ほら、よくいう、幽霊がでる時刻ってのは、丑三つ時とか、もっと夜中だろ?」

「・・・そうか?」


 ヒコイチには、そういいきれない。


 チョウスケは、そういうもんなんだよ、といいおいて続けた。

「ところがよ、時計の音が八つして、それからしばらくしたら、旦那様が ―――」






 旦那が急にふりむいて、 ―― チョウスケ、あれがオタマだよ、 と庭をゆびさす。




 庭の真ん中に、地味な着物を着た線のほそい女が立ち、眼のあったチョウスケに、にこりと微笑んだ。





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