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第八六羽 時計の電池編


 体育祭を終えて数日が経った。


 タンチョウと同じクラスの武田は前よりも少しだけ親しみを覚えた様子でタンチョウと接している。


 体育祭当日の熱気は熾火のようになっていつまでも残っていた。


 だが、残っていたのは熱気だけではない。


 オオルリは体育祭の日にコマドリからの手作り弁当を食べて15年間の人生の絶頂が現在だと確信した。


 どんな物を渡されようとも「美味い」という覚悟をダイヤモンドよりも固く持っていたのにお世辞でも嘘でもない本心から「美味い」と呟いてしまう弁当を出された事でそんな覚悟は彼女をもっと大切に、もっと優しくする決意へと変わっていくのだった。


 キセキレイとカッコウは覗きを企てた連中への怒りを未だに持っていた。


 彼女たちはプレハブ小屋に閉じ込められたままの三毛猫を回収してカメラを外すと2匹の猫を外へと逃がした。


 そして外したカメラをオシドリに分析させて動画をコピーした。残ったカメラは当事者の下駄箱にメモと一緒に入れておいた。


 [動画はコピーしてある]とメモには書かれていてそれを見た生徒が蒼い顔で教室へ入って来るのを見たキセキレイは高笑いを堪えるのに苦労した。


 そしてタンチョウは未だにライチョウと仲直り出来ていなかった。数日が経ったのに一度も会話らしい会話をしていない。


 タンチョウは落ち込んで元気を失っているがライチョウはそんな様子は微塵も見えない。


 それがまたタンチョウは哀しかった。



「タンチョウ、ライチョウと喧嘩でもしたのか?」


「オオルリ、手痛い仕返しを受けた。困ったもんだ」


「馬鹿だな、何をしたんだよ?」


「ちょっと余計な事を言ってしまったんだ」


「早く仲直りしろよ」


「ああ」



 オオルリが見るに気の毒なほどタンチョウは落ち込んでいた。


 そんな時に依頼が投稿された。


 ある朝のホームルーム前の少しの時間にタンチョウの机の上に1枚の封筒が置かれていた。


 タンチョウは気の乗らない様子で、嫌な物でも手にするような手つきでそれを取った。



[お願いします。2年D組の時計の電池を取ってください。4時限目前にお願いします!]



 名前は書かれていない。


 みんなを集めるか迷っている。集まらなかった時の事が怖いのだ。


 それでも呼びかけを行わない訳にもいかない。



≪依頼があった。集まってくれ≫



 タンチョウは言葉を選んだ。ほとんどお願いするように言っている。



≪依頼か。どんなものだ?≫


≪文面を載せる≫



 タンチョウは依頼が書かれている紙を写真に撮影してアップロードした。



≪電池?≫


≪これはやる必要があるのか?≫


≪依頼だからな。やれるならやろう≫


≪2年D組って何かあるのか?≫


≪まだ時間はあるそれも調べよう≫


≪けっ、くだらねえ理由だろう≫



 タンチョウの初めの呼びかけに答えたのはオオルリとヤマセミだけだった。


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