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第八三羽 首輪をつけた三毛猫編

 武田は爆発的なスタートダッシュを完全に決めたが美鶴は反対に斬るように鋭いスタートダッシュを完ぺきに決めた。


 美鶴の方が先に出た。一人分の差が出来ている。


 彼女の得意分野と言えるかもしれない。追われるプレッシャーには慣れている。ある仕事で培ったのだろう。


 武田は美鶴を追っている。


 美鶴は逃げ馬のように軽やかなステップで走っていた。


 歓声が最高潮へと達している。


 逃げる美鶴に、追う武田。

 歓声が2人の後を追っている。


 半ばを過ぎた頃になっても美鶴のリードは変わらなかった。


 だが、美鶴の表情は険しいままで余裕が無いようにも見える。対して武田はこの勝負に全てを賭けているかのように渾身の力を発揮させている。


 美鶴は最後の加速を行った。タイミングはほとんどバッチリだった。美鶴の現状の体力と武田との距離を考えての判断だった。追われていながら彼女の冷静さは流石だった。


 武田も負けじと加速した。彼女にとっては勝つのならここで仕掛けるしかない。先手は打たれたと言っていいだろう。だが、彼女は将棋でもチェスでも後攻の方が得意だった。


 武田が美鶴へ迫っていく。


 美鶴は振り返らなかった。自分の背後に迫って来ている感覚さえあればいいと思っている。


 武田はそれが嬉しかった。振り返ろうとしない美鶴を見ると闘志が湧いてくる。


 美鶴と武田は並んだ。ゴールテープまで10メートルもない。


 5メートルまで迫った。


 2人の表情は変わらない。懸命に走っている。


 3メートルまで近づいた。


 いつもそんな時に彼女には風が吹く。


 2人の勝負は武田が勝った。


 息を切らしている武田は勝者の微笑を湛えながら美鶴を見た。彼女はがっくりと肩を落としているような真似はしなかった。


 負けても毅然と顔を上げて息を整えようとしている。両手を腰に当てて他の蒼団の走者を労っていた。


 そんな様子を見て武田は心底から美鶴を好きになった。好い友になれると確信して彼女は近づいて行った。


 美鶴は声をかけ続けている時に近づいて来る武田に気が付いた。


「良い勝負だった」


「ええ、負けちゃったけれど」


「いや、楽しかった。そうだろう?」


「うん。こういうのは張り合いがなくちゃね」


「まったくだ。騎馬戦は考えさせられたよ」


「ふふ、こっちも策を練ったから。楽しかったわ」


「また機会があれば、いずれ」


「ええ、またね」



 武田はスッと手を差し出した。握手を求めているのだろう。


 にこりと笑った美鶴は躊躇う素振りも見せずに握手に応じた。


 そして選手リレーが終わった。


 紅団が一着となり、蒼団、黄団の順となった。


 選手リレーを最後に全ての種目が終わった。戦いを終えるとどこかから清々しい風が吹いてきた。


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