結婚式のプラン
目を覚ましてから、俺はスマホで調べ物をはじめた。みゆきとの結婚式は最高の物にしてあげたい。だから、最高の結婚式についてリサーチするのだ。
女の子なら誰でも憧れる、千葉にある夢の国での結婚式。費用は300万円くらい。これなら、頑張れば何とかなるかもしれない。
海外挙式はどうだろう?
ハワイなら、もう少し安くて200万円くらい。ただ、うちの両親やみゆきの家族の旅費などを考えると、もう少し高くなるかもしれない。
ヨーロッパなら、もっともっと高くなる。でも、みゆきは海外挙式とか言いそうにない。そんな気がする。
1人で考えていると、意外に手間がかかる。結局、2日悩んで、3日目にみゆきにプレゼンをすることにした。
ただ、この日はチアキ先輩から呼び出しがかかったので、先に病院へ向かった。
「おう、来たか」
「あ、お疲れ様です」
この日は、病室には誰もいない。
「まぁ、座れや」
「ありがとうございます」
「退院が決まったぞ」
「ホントですか?おめでとうございます」
「今週末だってさ」
退院が決まって、チアキ先輩も嬉しそうだ。
「そうそう。忘れないうちに渡しとくわ。ほれ」
そう言って、チアキ先輩は茶封筒を差し出してきた。中を見ると、1万円札が束で入っている。
「エェッ!これは?」
「500万ある。俺の仲間のカンパと残りは俺と才加からだ。必ず返せよ」
「あ、はい、わかりました」
「そんな大金、持ってたら、おちおち昼寝もできやしねえ」
チアキ先輩は、ガハハと豪快に笑った。もうすっかり、いつものチアキ先輩だ。
「用はそれだけだ。もう行け」
「エェッ、冷たいじゃないですか」
「ばぁか。早くみゆきちゃんのところに行ってやれって言ってんだよ」
「わかりました。ありがとうございます」
俺は茶封筒を大事に抱えて、病院を後にした。
「却下です」
「エェッ?!マジで?」
「はい」
俺は『Blue Note』のいつもの席で、向かいに座っているみゆきに、自信満々でプレゼンをした。その結果、見事に却下されたのだ。
「何でダメなのさ?」
「結婚式にそんなにお金をかけなくていいです。お母さんにウエディングドレス姿さえ見せられればいいんです」
「でも、せっかくだからさ」
俺は懸命に食い下がった。でも、ダメだった。
もしかしたら、俺の懐具合を気にしてくれたのかもしれない。だけど、俺にはチアキ先輩が用意してくれたお金がある。ただ、このことは、みゆきには言えない。言ったら、返すように言われそうだからだ。
みゆきから出された条件は、他にもう1つ。結婚式は挙げるけど、籍は入れないということ。これも、余命半年の自分が俺の籍を汚すことを気にしてのことだろう。
みゆきの気遣いが、逆に俺を切なくさせた。




