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異能モノノケ録  作者: 長尾景虎
101/148

第101話 時の牢獄は流転する


タイトル格好つけちった……


やっべ、恥ずかし

 

 檸梨市消滅の三週間前。阿刀田町、鬼王神社にて。

 現在、社殿の裏手で人目を避けつつ高山虎太郎とゲオルギーネが行っているのは修行である。


 どちらも生地の薄い襦袢(じゅばん)を身に纏い、さらには幼い外見ながらも息を呑む美少女であるギーネが着ている様は、神秘と背徳を孕む美しさがあった。

 普段のツインテールを解き、長い金髪を流した欧風の造形の少女が和装……それも下着に類する衣服を着ている。端から見れば何やら色のある光景にも思えるが、そんな不粋な感想が霞んでしまう程の神聖さがギーネからは滲み出していた。


 そう……だから、これはあくまでも修行。誰が何と言おうと修行。絶対に修行だ。


 犯罪でもあるまいし、高山虎太郎(ぼく)がやましく思う必要がどこにあろうか。いや無い。

 だからギーネ………そんな不機嫌と言うか屈辱に耐えると言うか、まるで僕が弱味を握って無理矢理に言うこと聞かせてるみたいな表情は止めてほしいんだけど。


 言っとくけど、今ギーネが着てるサイズ大きめの襦袢(じゅばん)は僕の趣味じゃないからね? たまたま家にあった物だからね?

 もっと言えば、ギーネがスク水はもう嫌だって言ったからだよ!?

 極めつけに、そもそもこの修行、ギーネが言い出しっぺだから!?


 ちょっと止めて執事(ベネディクト)さん! そんな仇を見るような目を向けないでっ! あわわ……境内でツバを吐かないで~


『……コタロー、心を鎮めよ。これは修行じゃ、我なら問題無い。たとえ、この身が汚されようと………せめてお主が強くなるのなら………うぅ』


「ひいっ!!? ベネディクトさんっ、首に剣が食い込んで―――! シャレにならない!!」


 いつもなら弄られる役はギーネに優先して回ってくるのに、この時ばかりは虎太郎が生け贄になるのが当たり前となっている。

 まぁ、状況を見ればそうなるのも仕方の無い事かもしれないが。


 虎太郎の腰に腕を回し、限界まで身体を密着させている青い瞳の少女―――実年齢100x+α歳―――を涙目にしている時点で、虎太郎に弁解の余地など無いのだ。


 この薄い布を纏って、とにかく互いの存在を感じ合う行為が修行だと言っても、誰も納得してはくれないだろう。


『ええいっ、コタローよ! お主の固有秘術を万全に使いこなすために、これしきの事で狼狽えているなど話にならん。ベネディクト、もっと追い詰めるのじゃ!』


『御意』


 神社と言う場所にあって、またしても違和感を禁じ得ない風体をしたヨーロッパ系の男。

 髪はオールバック、スマートな着こなしの燕尾服に黒色の手袋。ナックルガード付きのサーベルを抜き放ち、虎太郎の喉元にキラリと光る刃を走らせている。そしてそのサーベルで虎太郎の全身をチクチクと突き刺し始めた。


「いだだだっ!!? こっ、これで集中するとか無理!!」


『コタローよ。お主は我と存在を共有することで、本来なら持ち得ぬ力を身に宿しておるのじゃ。当然、使おうとすれば相応の反動があろう。我の魔力を十全に引き出せるようになれば、少なくとも自分の身ぐらいは守れるじゃろうが………その訓練をしておかねば肉体が耐えられぬぞ』


『今の貴方はミサイルの弾頭を持ちながら、その弾頭で相手を殴る事しか出来ていない様なもの。下手をすれば、頭がアフロになるだけでは済まないのですよ?』


 高山虎太郎の“固有秘術”の本質は封じる事ではなく共有。その力の天秤が虎太郎に傾き過ぎている状態であると判った。

 それが固有秘術の性質によるものなのか、虎太郎の資質によるものなのかは不明だが、どちらにせよ今後、ランクSSS(トライエス)の魔力を扱えるようになれば役に立たない筈がない。この身体を密着させる行為は虎太郎がギーネの力を操るにあたり、補助的な役割を果たしているのだ。


「いでっ、あっ、たあっ!? わ、分かってますって! でもまずはあっ! 普通に集中させて!?」


 その時だ。虎太郎とギーネを繋ぐ固有秘術にどのような刺激があったのか、奇跡的に噛み合った瞬間が生まれる。

 虎太郎が固有秘術を通じてギーネの魔力を偶然にも掴み取り、引っ張り出す事に成功した。


「あ、あれ……? この感覚……」


『今じゃコタロー! 引き抜け!』


 すかさず虎太郎が通力を使用する要領で、有り余る力の奔流に形を与えていく。

 イメージは翼。内から食い破らんとする魔力を背中から逃がす様に、翼の形に凝縮する。


『その調子じゃコタロー! そう、それはもうお主の力。見事、従えてみせるのじゃ! 必要なのはイメージ……完全に従えたのだと思い込む事……そらっ、得意の妄想を膨らませよ!』


『くれぐれも、肝心な時にクラスメイトの水着姿を妄想して集中を乱さないように』


「……………あ」


 ゴトッ


 確かに、虎太郎の背後に現れたのは修行の成果ではあった。それが、明日へ羽ばたく翼ではないだけで。


 ズッシリした重みを感じさせる音を立てて出現した物の正体は彫像だ。それも、とびきりに精緻な細工で作られた等身大の代物。

 スクール水着を着用したクラスメイトの女子……早田紗耶香であった。


『『…………』』


 サァーーー…………


 それはギーネとベネディクトの心が虎太郎から距離を取ろうとする音。

 決して背中を見せないよう後退りする二人との間に生まれた、物理的な距離では表せない隔たりである。


「待って!? 違うんだ! これはそうじゃなくて――――」


『ひぅっ!? ち、近寄るでないっ!』


『姫様っ、私の後ろへ!』


「これは事故なんだ! ベネディクトさんが変なこと言うからっ、手元が狂っただけなんだって!」


『『……………』』


「ヤメテよ!? そんな変態を見るような目! 変態にだって人権はあるんだよぉ」


『では権利に則り、裁判所に接近禁止命令を出してもらいます』


「訴訟コワイ! それにそうなると僕が家を追い出されるんじゃなかろうか!?」


『べべべ、ベネディクトぉ……こ、怖いのじゃぁ』


『ああ姫様、お労しい………コタローっ! 幼気(いたいけ)な姫様の前で何とハレンチな………後悔の海で溺れた後、煉獄の炎で焼かれてしまえ!!』


「だーかーらーっ!! お願いだから落ち着いて話を

 ――――」


 バキィッッ――――ガタッ、ガダンッッッ


 突如、社殿の屋根を突き破ったらしき破壊音と衝撃が虎太郎たちの元へ届いた。


 「い、今のは………?」


 『……行くぞ』


 その場で三人は顔を見合わせたが、満足のいく答えを持つ者はおらず、ベネディクトを先頭にして社殿の中へと急いだ。慎重に中へと入り、そこで三人が見たものは………


『こ、こここっ、これは――――!?』


『なんという………見下げ果てましたよコタロー死ネ』


「違うってーーー!!」


 広く閑散とした社殿……その奥の御神体を祀った棚の手前には、壊れた天井の残骸がパラパラと散らばっている。

 棚に仕舞われ、今まで見たことが無いとは言え、神社の息子としては御神体が無事なのは幸いだった。素直に安堵する結果だ。



 しかしそれも、天井の板と埃にまみれた一糸纏わぬ黒髪の少女が気絶して倒れていなければ、の話ではあるが。



『この人でなしめ!! 年頃の娘を監禁して、いいように弄んでおったのか! どおりで思春期真っ盛りの淫獣(コタロー)が我に手を出して来ぬと思ったわ!!』


「ヤメテーーッッ!! 淫獣呼ばわりヤメテーーー!?」


『姫様、毛布をお持ちしました』


「はやっ!? ベネディクトさんも、お願いです信じてください! それでも僕はやってないんだ!!」


『ベネディクト、娘を家の中へ運びこめ。こんな穢らわしい場所に一秒でも置いては不憫じゃ』


「ここ社殿だからね!? とんでもないこと言わないで!?」


『退け犯罪者(コタロー)。貴様を官憲に突きだすのは後だ』


 裸の女の子に毛布を巻き、両手でしっかり抱えたベネディクトが虎太郎を押し退け、小走りに社殿を出ていった。


 ああ……前科という名の死神が、遠ざかるベネディクトに反比例して近付いて来るようだ………


『……それで? 実際のところ、あの娘は何なのじゃ?』


「し、知らないよ本当に! 少なくとも、僕とは関係無いトラブルだからね!?」


『うぅむ………よもや、我の魔力で作り出したお主の下心の具現ではなかろうな? だとしたら相当キモいぞ』


 ヒモ野郎が女の金で別の女を買ったようなものじゃ。そんなギーネの言葉は、まったく身に覚えの無い虎太郎からしてもグサリと突き刺さる。


「違うよ! …………たぶん」


『………まあ、そうじゃろうな。今のお主では、スク水のクラスメイトを妄想して石像を生み出すのが精々じゃろ。誘拐したにせよ、そんな大それた事をしでかすだけの度胸があるのなら、とっくに生身のスク水メイトに告白しとるだろうしの』


「スク水メイトって何………なんども言うけどっ、僕は別にスクール水着に拘ってるわじゃなくて――――」


『修行の際に、我にもスク水を着せようとしておったではないか』


「ち、違っ―――あれは出来るだけお互いを感じられるような薄着でって、ギーネが言ったからだろ!?」


『児童用のスクール水着を所持していた時点でアウトじゃろ……って誰が児童じゃ!!』


 ゲシッゲシッ


 自分から言っておいて勝手にキレる。実際の子供の癇癪でも、これよりは理に適うだろうに。

 普段は弄られ役が多いだけに、立場が逆転していてもその性質は抜けきっていないようだ。


『好きでぴったりサイズになったのではないわ! 我が本来の姿であればどんな男でもイチコロなのじゃ! そ、そうに決まっておる!』


 何となく自信が揺らいでいるが、その自己評価は概ね間違っていない。

 ギーネが力を取り戻した状態の姿は、正に絶世にして神聖、妖しくも神々しい美しさがあるのだ。だから大抵の異性、あるいは同性でさえも、その芸術に目を奪われる。


 以前なら、ギーネは誰もが羨む自らの容姿を誇り、ひけらかしこそすれ、その自負に陰りが差すことなど有り得なかった。

 だが本当に見てほしい相手が現れた時、たとえ絶対の自信があろうとも、根拠の無いネガティブ思考に陥ることは往々にしてある。そのたった一人の相手が自分を気に入ってくれるのかが心配になるのだ。

 どんな男もイチコロ。その言葉は特定の一人もイチコロに出来るか心配……という気持ちの裏返しなのだろう。


(う~ん……ギーネには良い相手だと思うんだけど。黒沼くんなら、ギーネの手綱も握れるんだろうなぁ)


 近頃、今一つ覇気が無いと感じるギーネの様子に、黒沼公浩が居れば一発(イチコロ)なんだろうなと、脛を蹴られて悶絶する虎太郎は祈るように、あの不敵な微笑を思いだしていた。



             ★



 謎の少女を保護してから30分後。


 自宅兼社務所……現在はギーネの部屋として使っている和室にて、謎の少女は布団に寝かせられていた。

 周りを見れば男ばかりな事もあり、仕方なくギーネが裸の少女に虎太郎のシャツとズボン等を着せて傍に付き添っている。

 そろそろ夕食の時間となったため、付き添いをベネディクトに引き継いでギーネがその場を離れようとした時だ。


 パチッ


 謎の少女が目を覚ました。

 意識はハッキリしているようで、覚醒の直後だと言うのにサクッと体を起こし、辺りを見回し始める。

 やはりと言うか、自分の置かれている状況を訝しんでいる様子だ。目をいっぱいに開いてキョロキョロと落ち着きが無い。

 そして、後ろを振り返った所でギーネとベネディクトを視界に収め、二人と目が合った。次の瞬間――――


「ひっ――――びゃあああああーーーッッッ!!!??」


 突如として家中に響き渡った絶叫に、食事の支度をしていた虎太郎がエプロンを装着したままドタドタと和室に転がり込んで来た。

 襖ごと和室に向けてバタンッと倒れ込み、テンパった様子で「ななな、なに!? どうしたの!?」と、ギーネとベネディクトに説明を求める。

 尤も、部屋の隅でブルブルと震えながら布団で体を隠している少女を見て、頭が冷えて冷静になるのと同時に状況もある程度は把握できた。


「あ、起きたんだ。良かった………ねえ君、大丈夫? 具合とか悪くない?」


 倒れた体勢の虎太郎が無害そうな笑顔で少女の具合を尋ねる。

 しかし、そんな間抜けな姿を目にしても、少女は警戒を解こうとしない。それでも必死に声を絞り出し、恐る恐ると言葉を紡いだ。


「こ、ここは………ここはいってぇ何処だかぁ!? オ、オラ死んじまっただか!? やっぱ、あの“ねいり(・・・)”とかって街ごと地獄に落ちちまったんだぁぁ~~!」


 田舎ならではの強い訛り口調で、「うあぁ~~、死んじまっただぁ~……あんな地獄みでな所で助がる訳ねがったんだ~」とか、ギーネとベネディクトを見れば「ひえぇ~~、やっぱここはあの世なんだぁ~……こんなキラキラした女子(おなご)、死なねと拝めねえもんな~」など、悲観的なのかそれ程でもないのか、何ともコメントしにくい言葉を並べている。


 現れた状況が状況だけに不思議には思わないが、やはり様子がおかしい。

 虎太郎が少女の言葉を要約してギーネたちに伝えると、とにかく落ち着かせて話を聞こうという流れに至った。


 宥めようとしても中々落ち着いてくれない少女に対し、あれやこれや試行錯誤の末に差し出したのは、直前まで準備をしていた夕食の味噌汁だ。

 それを目の前に持って行った所、だばーっとヨダレを垂らし始めたので箸と共に与えてみる。


 すると、思いの外あっさりと落ち着きを取り戻し、三杯目を食べ終わる頃には話が出来るようになっていた。


「ぷはぁーっ………これ美味(うめ)な! こったら美味え味噌汁は初めてだ」


「あ、うん、口に合って良かったよ。それで、君の話を聞きたいんたけど………」


『コタロー、まずは名前を尋ねよ』


「わかった。君、名前は何て言うの?」


「名前か? オラの名前は輝(てる)って言うだ。苗字なんて大層なもんは無えから、輝って呼んでくれろ。あ、これ美味かっただよ。ごちそうさんな」


 輝は、正しく輝くような笑顔を満面に浮かべて、食べ終わったお椀を虎太郎へと返した。



            ★



 輝から聞いた話をざっくり纏めてみたが、率直に言って信じ難い。

 それはギーネやベネディクト、そしてぬいぐるみ宜しく輝の膝の上で弄ばれているヴォルフラムも同様に感じていた。


 赤と黒の稲妻模様、ファンシーな翼がちょこんと背に付いたトラのぬいぐるみ。そこからどう間違ったのかダンディーで渋い声が発され、喋るぬいぐるみを珍しがった輝の玩具になりつつ、場の緊張感を削ぎ落とす有り様でヴォルフラムが話を進める。


『俄(にわか)には信じがたい。時を越える業など、卓越した性能を誇る“リベレイション・アーツ”を持ってしても不可能でありましょう』


『うむ、我もヴォルフラムに同感じゃ。仮にこの娘の申していることが事実としても、理屈はおろか具体的に何が起こっているのかすら理解できん………過去(・・)からこの時代にやって来たなどと』


 輝によると、自分は数十年以上の前から突然この場所に飛ばされたのだと言う。

 加えてややこしい事に、輝は三週間後の檸梨市の消滅に巻き込まれて、再びこの日、この時間に現れたのだと。現れた場所が前回と違っている理由は不明だが。

 原因や経緯を含め、本人すらも殆ど事情を把握できておらず、虎太郎がここまで話を引き出して纏めるのに相当苦労していた。


「う、嘘じゃねえもん! オラぁお屋敷で奉公さしてただが、逃げだした兎を取っ捕まえようと森に入ったら、変な穴に落ちてこったら所に………」


(うわぁ……どこのアリスだって話だよ)


 虎太郎は退魔師の見習いとは言え、大した知識も経験も無く、こうなるともはや専門外だ。端的に言うと、“固有秘術”の恩恵でギーネたちと話せる以外に取り柄が無い。

 故に、考察や推測はギーネたちに任せ、自分は通訳に徹している。

 輝の言葉を漏らさず伝える事が、今の自分に出来る……自分にしか出来ない仕事だった。


『正に不思議の国(ワンダーランド)じゃな。訳が分からぬ点では、我も同じ場所に居るようじゃ』


『………姫様。あるいは“三つの異能(トライアド)”であれば、どうでしょう。可能性としてはゼロではなくなります』


『無くはないのぉ。じゃが、それでも現実的ではなかろう』


 “三つの異能(トライアド)”……三つの“固有秘術”をその身に宿した状態や、その能力そのものを指す言葉。

 それぞれ破格の性能を持つ“固有秘術”を三つも使えるとなれば、確かに想像を絶する現象を引き起こす事もあるだろう。

 だが、だとしてもそれは……要するに“固有秘術”が寄せ集まった状態だ。どれほど破格であろうと、結局の所それぞれは性能の良い顕術でしかない。

 幾つ集まったところで、時間を越える事など夢物語である。転移(テレポート)の“固有秘術”=“リベレイション・アーツ”でさえ非常識な能力の位置づけなのだ。

 ギーネを含め、多くの識者は同じ価値観を持っているだろう。世界への限定的な干渉や法則の改変ですらも、時間旅行(タイムトラベル)と比べれば見劣りする、と。


 詰まるところ……過去やら未来やらから来たと言いはる者は、嘘つきや詐欺師、狂人の類。それは退魔師や“鬼”、“悪魔”の世界で共通した認識だった。


『その娘の勘違いか、記憶の改竄か。さもなければ………』


『僭越ながら陛下。天文学的確率という言葉に依るならば、三つの“固有秘術”が三つとも時空間に関連したもの……とするなら、可能かと』


『……………』


 いつになく険しい表情で考えこむギーネ。そんな大人びた雰囲気に虎太郎は一瞬ドキッとさせられ、息を呑む。

 いやいや、ないない……と、頭を過った考えを振り払い、虎太郎は意見を述べた。


「えっと……取り敢えずさ、タイムトラベルの件は後回しにして、彼女の今後をどうするか考えてみたら?」


『違いますよコタロー。彼女の証言……その真偽こそが今は重要なのです。その如何によって、今後の身の振り方が決まります』


 何を打ち合わせたわけでもないのに、ベネディクトはベテラン組の総意をしっかりと理解しているようだ。反対の意見も出ず、ギーネがその意図を虎太郎に説明する。


『もしも、この娘の言うことが真であれば………檸梨の街とやらが消滅するのだぞ』


「あっ、そっか……」


 決して、他人事や対岸の火事では済まない大事件だ。

 遠くないうちにギーネたちも……いや、下手をしたら世界中を巻き込む事態になりかねない。


 一応、秘密裏に封印を守護する契約でギーネはここにいる。そんな中、混乱に乗じて封印に不逞を働こうとする輩が現れないとも限らない。

 どのような騒ぎであれ、歓迎する事態になるはずがないのだ。


 災いを未然に防げるのなら、是非ともそうしたい所なのだが………


『そして最初に戻るわけじゃな………その娘を信じるか否か。嘘をついている様子はなさそうじゃが………』


『記憶の改竄などで虚偽を信じ込んでいる場合もあります。それに、事態を面倒にしているのは情報の精度です。核心の部分を知りながら、そこに至るまでの裏付けになる情報が無い』


『さらに言えば、陛下も某も封印の守護でこの街を離れられぬ。仮に三週間後の災禍が起きると聞いて、よしんば我らがそれを信じたとしても………それでも、某らがここを離れる事は有り得ぬのだ』


「うーん……そうだよね。僕らも半信半疑なくらいだし、協会に通報しても相手にされるかどうか」


 仁科黎明からの依頼を投げ出して動くには根拠に欠ける。それどころか怪しさが抜群だ。

 ここまで念を入れて真実だと想定した仮説や方針を考えてきたが、信じるに足る何かが少なすぎた。

 ギーネの個人的な意見では、輝の言葉は嘘ではないと考えている。しかし、それにも根拠が無い。

 あまり勘というものを信じていないギーネにとって、それに基づいて行動するのは憚られるのだ。


『ベネディクト、ヴォルフラム。ちと席を外せ』


『『御意』』


 ベネディクトは執事として実に様になった礼をしてから。ヴォルフラムは自分の体をフニフニと弄り回していた手を逃れ、挨拶をするように輝の額を軽くペチペチとしてから部屋を後にした。


「オラ………ウソなんかついてねぇ」


 言葉は通じていなくとも、場の空気を何となくは感じているのだろう。輝はムスッとした顔で、何より不安の感情が濃く滲み出ていた。


『分かっておる。ただ真実かどうかに関わらず、我らはここを離れられん。輝よ、お主の今後の力にはなれよう。しかし檸梨の件では、何も出来ん』


「でも………オラの知ってる人も居るだ。何とか助けてやれねぇだか? それにきっと、あっこはオラが元の時代に帰るために必要な土地だ。なんでか知らねけど分かるんだ」


『………で、あれば』


 ギーネはどこかばつが悪そうにスマートフォンを取り出し、何かを躊躇っているのかクルクルと掌の上でしばらく転がす。

 そして漸く決心したのか、小さく息を吐いてから輝に選択肢を提示した。


『笑顔でイジメてくる男と、抜けているが優しくしてくれる男………どちらが良い?』


「へ? そりゃ………優しいほう? が良いだよ」


『では、仁科黎明という男にお主を引き合わせる。きっとよく相談に乗ってくれるじゃろうから、頼ると良い。最近はあちこち飛び回っておるが、むしろ昔より時間の融通は利くようになっとるしの』


「その人を頼れば良いだか!? ありがてぇだ! ギーネちゃん優しくて良い子だな! あんがとな、ほんとにあんがと!」


 輝はギーネの手を握って振り、感謝の気持ちを精一杯に伝える。

 ギーネ自身、満更でもなさそうなのだが……何か懸念があるのか、やや浮かない表情だ。

 その理由はすぐに判った。ギーネが虎太郎に向けて『誰にも言うでないぞ』と前置きした直後に。


『もう一人は黒沼公浩じゃ。確かに黒沼とは連絡を取り合っておる。だが単なる情報交換じゃからな!? ベネディクトとヴォルフラム……奴らが知れば、いらぬ邪推をするかもしれんし、その………我が………黒沼の奴を憎からず思っているとか? べっつにー? そんな事は無いのじゃがー? でもまぁ、黙って連絡を取っていた事で誤解されても詰まらん。だからコタロー! 誰にも話すでないぞ!?』


「あ、うん………」


 ……今まで隠れて連絡取ってるつもりだったのか。

 ベネディクトもヴォルフラムも、すでにギーネの自覚の無い気持ちにまで言及した事があるというのに。


 だから二人を先に部屋の外に出したのだ。輝の選択如何によっては黒沼公浩の名前を出す必要もあったのだから。

 隠してるつもりなら、ギーネが提示した選択肢はベネディクトとヴォルフラムに聞かせたくはないだろう。


 無駄な努力ではあるが………


「じゃあギーネ、取り敢えず輝さんの服を買ってきてくれる? 言うまでもないけど、僕は女の子の服の事は分からないから」


『ええい! 臣下が主を顎で使うとは何事じゃ! こんな時、黒沼であればしれっと良い仕事をしたであろうに……使えん』


「……ギーネが黒沼くんと密通してた事、ベネディクトさんに話しちゃおうかな」


『待てっ、わかった! 我もその手の事には疎いゆえ、“龍首”めを呼びつけるのが良かろう』


「あ……最初からそうしておけば良かったね」


 思えば、“龍首”ことメイド喫茶のオーナー……咒水虎子という鬼の頭領は、虎太郎の知る限りでは最も常識人で頼りになりそうな人物だ。

 事情を話せば協力してくれただろうし、建設的な意見を出してくれたかもしれない。


 近々、メイド喫茶の支店を家宰(てんちょう)に任せて秋葉原に帰ると言っていた。その前に捕まえておかねば。


 虎子の個人的な連絡先はヴォルフラムが知っていたので掛けてもらう。

 メイドの原石が居ると伝えたところ、嬉々として駆けつけてくれた。



          世界を穿つ災禍まで


           あと20日(二周目)





第四回キャラクター仕分け “ばーすと編”


・焔

 ……サイズ D

  フォルム 優

  威力 RPG級


 Q、今一番欲しい物は何ですか?

 ‎A、若と、その………二人だけの時間が欲しいです。

 ‎Q、グッズなどのコレクションが趣味だと伺いましたが、どういった物を?

 A、若の使用済みの下着や食器、可能なら塵紙なども。最近は若も勘づき始めたみたいで苦労しています

 ‎Q、誰か通報して!!



・佐助花 真朱

 ……サイズ B

  フォルム 優

  ‎威力 マスケット級

 ‎

 Q、主人Kをどう思いますか?

 ‎A、はい! 優しくて、笑顔が素敵だと思います。あとたまにですけど、怒った時の鋭い目が………格好良いと………はぅ

 ‎Q、はてさて、それはハム浩氏とタチバナシ……どちらの主人Kの話でしょうかねぇ(ニヨニヨ)

 ‎A、そ、その言い方はズルいと思います!?



・真田 幸子

 ……サイズ C++

  フォルム 良

  ‎威力 アサルトライフル級


 Q、天まで届くくらい叫んでください。

 ‎A、もっと出番が欲しいのおおおーーーー!!!



・佐東 市花

 ……サイズ B+

 ‎ フォルム 優

 ‎ 威力 火縄級(十人隊列三段撃ち)


 Q、好きな戦国武将を教えてください。

 ‎A、松永久秀とか好きです。

 ‎Q、おや、少し意外な名前が出ましたね。戦国でも特にズル賢いイメージがつきまとうキャラですが?

 ‎A、何と言うか……K沼君が、そんなイメージかなぁって。最近好きになってまして……あっ、いえ、K沼君はもっと優しいですけどね!

 ‎Q、あんのバクダンジョーめ………爆死させたろか







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