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追放された伯爵令嬢、生命をつなぐ禁忌魔法で覚醒したら冷酷な辺境伯令息に溺愛されています  作者: 積と和〝
第2章 覚醒と侵食する悪意

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第5話 生命を育てる力

辺境伯領、その現実は想像以上だった。

「……これは、確かにひどいです」

セレスティアが呟く。


目の前に広がるのは、ほぼすべてが土砂漠。

風が吹けば砂が舞い、地面は白く乾いている。


「これは全て塩だ」


俺は地面を軽く掬って見せた。

「この白いの、全部塩分だ。水があっても作物は育たない」


「……だから、緑が」


「ああ、ほぼ死んでる」

ここは“土地として死んでいる”。

普通なら、な。


「セレスティア」


「はい」


「君の力は単に“成長”じゃない」

真っ直ぐに言う。

「おそらく生命力の強化だ」


セレスティアが息を呑む。

「生命……力」


ーーー


領地の一角。

特に塩害の強い区域へ移動する。


「ここでいいだろう」

俺は立ち止まる。


地面は白くひび割れ、完全に死んでいる。


「……いきます」

セレスティアが両手を広げた。


深く息を吸い――

「――“満ちて”」


淡い光が、広がる。

今までよりも、明らかに強い。

地面に染み込むように、ゆっくりと。


すると――


「……っ!?」

護衛の一人が声を上げた。


変化が起きている。


白く浮いていた塩が、徐々に沈んでいく。

乾いた土に、わずかに湿り気が戻る。

「まだ……足りない……」

セレスティアの額に汗が浮かぶ。


「セレスティア、無理はするな」


「いえ……ここで……!」

さらに力が込められる。

光が脈打つ。


そして――

ぽつり、と。

小さな芽が顔を出した。


「……出た」

誰かが呟く。


それは一つではない。

二つ、三つ、十。

次々と芽吹いていく。

完全に死んでいた土地から。


「……すごい」

護衛たちが息を呑む。


これは俺の想定以上だ。確かにものすごい力だ。

セレスティアはその場に崩れかけた。


「っ……!」

俺はすぐに支える。


「やりすぎだ」


「で、でも……」


「十分だ」

「…しかしこれで証明された」

俺は芽吹いた地面を見る。

「この土地は、蘇る」


ーーー


「ああ。つまり植物だけじゃないと言うことだ」

俺は乾いた地面に手を当てる。

「土も、水も、場合によっては地中の生き物も――全部対象の可能性すらある」


「そんなこと……」


「先ほどの土地、そこまでのことができていた」

オレは説明する。

「昨日の草、あれは“生き返って”た」


ただ育ったんじゃない。

“回復した”。

「今日の土地、範囲はまだ狭いが、かかった時間も状態も。オレの想定など遥かに超えている」


「……」


ーーー


数日後。

小規模ながら、実験区画は確実に変化していた。


「水の保持率が上がってるな……」

俺は土を握る。


以前とは明らかに違う。


「ヴァルカス様」

セレスティアが歩いてくる。


少し疲れているが、表情は明るい。

「この調子なら、もっと広げられます」


「ああ、だが段階的にやる」

無理をさせる気はない。


「まずは食料の確保だ」

領地の安定が最優先。


「……はい」

セレスティアが頷く。


そのとき。

「ヴァルカス様!」

伝令が駆け込んできた。


「どうした」

「南部で魔獣の大規模発生です!」


……来たか。

しかもこのタイミング。


「数は?」


「報告では……数十以上」


「……雑魚じゃないな」

俺は立ち上がる。


「セレスティアはここにいろ」


「でも――」


「これは戦闘だ」

きっぱりと言う。


「お前の役目は、ここを守ることだ」

セレスティアは悔しそうに唇を噛み――

「……わかりました」

頷いた。


「必ず戻る」

そう言って、俺は歩き出す。


その背後で。

芽吹いたばかりの緑が、風に揺れていた。


――守るべきものが、できた。

それだけで、戦う理由は十分だ。


…だが、待ち受ける困難は想像以上のものだった。

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