第19話 決断ー王都へ
「王都から使者です」
その一言で、屋敷の空気が変わった。
張り詰める。
「内容は」
俺は間を置かずに問う。
「辺境伯領に対し、王都防衛戦への戦力提供命令です」
「……来たか」
予想通りだ。
王都が内部から崩れ始めている以上、外部戦力に頼るのは当然。
だが――
「罠だな」
ーーー
「王都に行けば、戻れない可能性が高いです」
セレスティアが静かに言う。
「ああ、正解だ」
俺は頷く。
内部はすでに侵食されている。
そこに踏み込めば、戦力を削られるどころか――
最悪、そのまま取り込まれる。
「では……行かない場合は?」
「反逆扱いの可能性が高い」
短い沈黙が落ちる。
「面倒だな」
国家からの圧力。
正面から受ければ、いずれ潰される。
だが――
「選択肢はある」
俺は机に広げられた地図に視線を落とす。
「王都を救うか、ここを守るか――じゃない」
顔を上げる。
「両方やる」
「そんなこと……」
セレスティアの声に、わずかな動揺。
「できる」
俺は即答する。
「お前の力があるからな」
静かに説明する。
「王都は内部崩壊中だ」
「なら、外から“浄化”すればいい」
「浄化……?」
「正確には違う」
言葉を選ぶ。
「あれは精神干渉型だ。なら対抗するのは“生命側の領域”」
視線を向ける。
「セレスティア、お前の力だ」
セレスティアが息を呑む。
「……届くんでしょうか」
「届く」
迷いなく言い切る。
「生命力は距離で遮断される類のものじゃない」
「面で広がる」
ーーー
作戦が形になる。
・辺境は防衛維持
・セレスティアは遠隔で領域展開
・俺は前線で阻止
「いけるか」
問いかける。
逃げ道は残していない。
「……やります」
セレスティアは、はっきりと頷いた。
「今度は逃げません」
その目に、迷いはない。
「いい覚悟だ」
俺は短く言う。
それで十分だ。
視線を遠くへ向ける。
王都。
すでに嵐の中心にある場所。
小さく呟く。
「間に合わせる」




