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遼州戦記 司法局実働部隊の戦い 別名『特殊な部隊』の初陣  作者: 橋本 直
第六章 『特殊な部隊』のお姉さん達と飲み会

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第51話 エロゲを馬鹿にした男

 店内は夜の煙と古びた木の匂いで満ちていた。アメリアとかなめの策謀で店を占拠した『特殊な部隊』の若い隊員達の笑い声が波のように押し寄せては引き、カウンターの木目は使い込まれて滑らかに光っている。


 春子の店『月島屋』は、この町のささやかな灯であり、『特殊な部隊』の溜まり場でもある。


 明かりはわずかに暗く、そこにいる者たちの顔を優しく包む。


 誠はグラスの縁に指を添えながら、整備班員や先輩たちの喋りをぼんやりと聞いていた。


 外では工場の騒音が遠くに退き、ここだけ時間の流れがゆっくりだ。


「最初に水をかぶったから『バケツ』。ひどい命名よね」


 誠は要するに『バケツ』には自分にとってのタライがバケツだったと言うだけの話と、明らかにアメリアのテンションが『オミズ』に対する無関心とは違い憎しみを帯びているのを感じた。

 

「そのひどい命名したのはオメエだろ?それ以前に、いちいち野郎のパイロットが配属されるたびに自分の部の部屋にトラップを仕込むのは止めろ」


 さすがのかなめもアメリアのあの意地でも何か笑いが起きる状況を作らないと気が済まないと言うアメリアの考え方には呆れているようだった。

挿絵(By みてみん) 

「そんなこと覚えてないわ……あんな奴。いっそのこと剣山(けんざん)を落とせばよかったんだわ!ああ、腹が立つ!」


 珍しく感情的になったアメリアの叫び声が店内に大きく響いた。怒りを尾ひれにして飛ばすような口調だが、その端にはどこかコミカルな残骸も見えて、周囲の人間は慣れたように笑った。誠はその勢いに一瞬たじろぐが、すぐに肩の力を抜く。ここでは感情の爆発も宴の一部なのだ。


「アメリアよ。そんなこと言うけどよう、アイツはオメエと同じ『ゲルパルト連邦共和国』出身だろ?前の大戦に負けてネオナチが一掃されてすっかり穏やかになったあの国らしくアイツも穏やかだったじゃないか。同郷の人間として多少は肩を持ってやっても良いんじゃないのか?」


 苦笑いを浮かべながら感情的になって拳を振り上げて演説でも始めかねないアメリアに向けてかなめはそうなだめた。感情優先の人間に見えたかなめがどちらかというと冷静に相手を笑いものにするタイプに見えるアメリアを弄る光景は配属されたばかりの誠から見ても奇妙な光景だった。


「それにだ、アイツは他の4人の連中とは違って上の変な指示も受けずに、ただ国でもすでにモテてるのに『東和共和国の遼州人は自分がモテないと信じ込んで自信を失っているオリエンタル美女風の素敵な女性が沢山年齢=彼氏無しの人生を送っている』と言う、都市伝説……というか神前を見ればわかるけど事実なんだよな。そんなゲルパルトのモテ男の間の伝説を信じて東和共和国に本部があるという理由でうちを志願した奇特な人間だって聞いてるぜ」

挿絵(By みてみん)

 かなめの誠や東和共和国の事を褒めているのか貶しているのか分からない発言に誠はどう反応すればいいのか分からずにいた。


「神前や……あの『駄目人間』の叔父貴の娘を見て居ればわかるけど確かにイケメンや美女が自分をモテないと信じ込んで彼女彼氏もできずに一生を終える東和共和国のこの状況は甲武国出身のアタシとしては異常としか言えねえ。地球の特権階級はそれ目当てに観光ツアーまで組んで『超富裕層』向けナンパ・逆ナンパツアーとか組んでるみてえだぞ。その点、甲武じゃ神前レベルの男が23歳で女と寝たことどころか手もつないだことが無いなんて有り得ねえ話だ。アタシも半分は遼州人の血を引いてはいるがそもそも甲武じゃアタシは美女だから男は嫌でも寄って来るし、なんで遼州人が自分を『モテない』と思い込むのか理解できねえ」


 かなめは肩をすくめながらラムのグラスを傾ける。彼女の説明はいつも饒舌で、事実と皮肉が混じる。その調子は店の空気を軽くし、アメリアの激昂をやわらげるための潤滑油のようだ。誠は二人のやりとりをながめて、ここが単なる飲み屋ではなく『人間関係の訓練場』だと感じる。笑いの下に、互いを守るルールがあるのだ。


「私は同じゲルパルトでも『モテ男』が女をとっかえひっかえしてるのフランス系住民の住む地域の出身じゃありませんー。アイツ等フランス系は遼州人とは逆に見た目が最悪で金が無くても妙に自信があって『自分はモテる!』と信じ込んでいる私から見ても奇妙な存在だもの。私はあの国の主流派のドイツ系だから。実際、フランス系の連中は前の戦争以前は冷や飯を食わされてドイツ系の人間に相手にされなかったから、戦争で負けて自分たちの立場が強くなるとドイツ系の地方にナンパ・逆ナンパ旅行に行くのがサマーバケーションの定番らしいわよ。まあ、私はそんなことを知る前にあの国を捨てたからよく知らないけど」


 誠には、アメリアの言っていることの半分も理解できなかった。

 

 ただ一つ分かったのは、これはゲルパルトの民族問題というより、アメリア個人の怒りが民族問題の形を借りて噴き出しているだけだということだった。


「そんなフランス系の連中みたいに服飾デザイナーにしかなりたくないし、戦争をするのはヒーローになってモテたいからと言う不純な理由で戦争するあの連中とはまるで考え方が違うの!重工業でしっかりとしたモノづくりで国を支えて、戦場にあってはジャガイモと黒パンさえあればいくらでも戦える無敵の軍隊を誇るのが本来のドイツ系のゲルパルトなの!」


 その言葉で誠はアメリアは明らかに地球人なんだと理解した。そもそも遼州人は戦場に行こうなどと考えない。


 『ゲルパルト第四帝国』、『甲武国』と並び第二次遼州大戦で同盟を組んでいた『遼帝国』は誠の住む東和共和国と同じ遼州人の国だが、遼州人が戦場に送り込まれるとどういう反応を取るかを示す伝説を数多く残していた。


 目の前に敵が来たら逃げるのが普通。艦船での待機中に遼帝国の主食であるうどんを茹ですぎて水が無くなり戦闘不能になって一個艦隊が近くを通った地球の非武装の輸送艦に水が欲しいという理由で降伏する。戦況が不利になると突然同盟国の方に向けて銃口を向けてこの戦争はゲルパルトと甲武の先制核攻撃が悪いと言い出して寝返る。そう言う『遼帝国最弱伝説』は同じ遼州人の国である東和共和国でも当たり前のように笑い話として語られていた。


 ただ、誠は400年間戦争をしたことが無い自分たちには同じ遼州人の珍行動を嗤う資格は無いのではと常々思っていた。


 そのギャグとも真実ともわからない遼帝国軍とそれを構成する遼州人がいかに戦争には向いていないかのエピソードは数知れず出回っていた。


 そんな戦争には向かない遼州人である自覚のある誠にはジャガイモと黒パンで戦えると宣言するアメリアの言葉はとても信じられない。だが、アメリアの話題は別方向に脱線した。


「しかも、私のギャグのセンスは『純和風』だから共通点なんて無いの!全然違うの!しかもアタシ達運航部の女子たちが丹精込めて作った同人エロゲを『モテない男の妄想で俺には関係ない』の一言で切り捨てるのよ!誠ちゃん!同じ同人エロゲのファンとして(いきどお)りを感じるでしょ?」


 つまり、ここまで延々とゲルパルトの民族感情を語っていたが、アメリアの怒りの核心は一つだった。

 

 自分たちの作ったエロゲを、鼻で笑われた。

 

 ただそれだけで、彼女は国家間の歴史まで持ち出して怒っているのだ。


 そのエロゲへの熱意と『モテる人間』への侮蔑が混じり合った台詞は、彼女の行動原理をそのまま表しているように見えた。


 誠は苦笑いしつつ、仲間の好みやプライドが喧嘩の発端になるのを見慣れてきた自分を感じる。


 誠は、アメリアが『祖国』よりもエロゲと後輩と同僚たちに怒っていることに、妙な安心感を覚えた。


「しかし、そのどう考えても間違っているとしか思えない志願理由はともかく『バケツ』は元々パイロット志望で軍に入ってパイロット教育を適切に受けた叩き上げの優秀なパイロットだったぞ。これまでの神前を加えた六人の中では素質は格段に高かった。それに『高卒』の『下士官』だからな。人件費の観点から言っても一番適任ではあったと思うが」


 カウラは烏龍茶を啜りながら冷静に分析する。冷静に事態を分析しておきながらその二人目のパイロット『バケツ』と呼ばれる先輩男性パイロットの名前も覚えていないカウラに誠はただ苦笑した。彼女の視線は常に戦場を想定しているように冷たいが、今夜の穏やかな灯りに溶け込んで柔らかい。誠はカウラの論理性に頼る。彼女が淡々と語ることで、場の感情が整理されていく。


「私はね、『俺はいい男だろ?モテてるだろ?』って感じの上から目線のおフランス下ネタが大嫌いなの!それに初対面のイメージも最悪!リーゼントをバリバリに決めて香水の匂いまでプンプンさせちゃって……そんなのでゲルパルトじゃモテるなんてゲルパルト出身の私としては東和共和国出身の整備班のモテない野郎共に対して顔が立たないわ!」


 怒り狂うアメリアは誠には恐怖の対象にしか見えなかったが、かなめにとっては慣れた光景の様だった。


「整備班の連中もオメエみたいなおばさんにモテてもうれしくねえと思うぞ」


 そのどこまでも冷静かつ冷たいかなめの言葉がさらにアメリアの怒りに火をつけた。


「かなめちゃんまでそんなことを言うの!ああ、思い出しただけで腹が立つ!初日から運航部の私のエロゲと乙女ゲーム命に洗脳した女の子にちょっかい出しまくって、帰りにこういう風に呑みに誘っても気障なセリフややけに女が見ているんだというのを意識したあのしぐさ!そのいい男ぶりが鼻についちゃってかなめちゃんやカウラちゃんを私の目の前で堂々と口説こうとするの!しかも……アタシはまるで『こんなオバサンなんか眼中に無い!』って感じで、私が何を話しかけても一切無視!キー!頭にくる!私は確かにデカいわよ!『東都タワーネタ』の宝庫よ!そうよ!三十路よ!行き遅れよ!年上よ!」


 アメリアの感情は火山の噴火のように噴き出す。彼女の自己認識はユーモアの対象になり、誠はつい笑ってしまう。


「長えよ。要するにエロゲを馬鹿にされたのが気に入らねえだけだろ」


 完全に怒りの頂点にあるアメリアが起こるほど冷めたかなめは冷静にそう言った。

 

「違うわ!民族の尊厳と創作物への敬意の問題よ!」


 怒り続けてさすがに喉が渇いて来たのかアメリアは小夏が運んで来た中ジョッキのビールを一息で飲み干した。


「その軟派な態度が、『硬派』が売りの技術部の野郎共を刺激しちゃってな……遼州人は絶対に他人の愛には嫉妬しか感じねえ。意地でもいい雰囲気になると破壊するのが遼州人の習性だ。おかげでアタシもこれは甲武系の地球人の血が入っているなあと分かるナンパ男に声をかけられても周りのおばちゃん達がそいつに難癖付けてくれるんで楽が出来る。遼州人の美点だな」


 かなめはやや冷めた視線でグラスを置く。店の空気は一瞬だけ静まり、過去の一戦の光景が誰の脳裏にもよみがえる。誠は肩をすくめるしかない。ここは強者の場だ。強さはしばしば暴力と結びつき、その結果が人を去らせることもある。


「アメリアさんの偏見に満ちた話から推測するとその『バケツ』さんのトラブルの中心人物は島田先輩ですね?ヤンキーは『硬派』が売りだって聞いてますから。そんな島田先輩を刺激するような暴挙に出たら……あの人、決闘とかしそうですね……特にあの人、後輩が自分よりモテるなんて言う状況を絶対に許すなんて想像がつきませんよ」


 誠の言葉に、一瞬だけ笑いが洩れる。島田の名はこの部隊では一種の伝説であり、暴力的な一面が人を引き付けもする。誠はあまり争いを好まないが、仲間のために立ち上がる者を尊敬する気持ちも持っている。


「ああ、しっかりやったぞ……アイツが整備班でデカい面が出来るのはアイツの自慢の腕力もあるが、他の野郎共が全員彼女いない歴=年齢なのに対してこれまで何人も彼女がいたことがある『モテ男』だということだからだ。その数少ない部下を従えている理由が無くなったらアイツに存在価値がなくなる」


 かなめはにやりと笑って、店の天井の古びた扇風機に視線を向ける。彼女の笑い方には不敵さが混じっている。


「本当に決闘したんですか!まあ……するでしょうね、あの人なら……それにしても島田先輩のあの余裕は彼女がいたことがあるからなんだ……羨ましいなあ……」


 誠はあまりにもヤンキーらしい島田の行動パターンに納得すると同時に、高校時代からの都市伝説として『ヤンキーはモテる』と言うのが事実だったことを思い知らされて驚愕した。まあ、大学をサボって『ナンパ』をしていたと言っていたことから考えても島田に彼女が何人かいたことがあっても不思議なことではない。酒場の話題は深夜の演目のように変わる。誠は目の前に出された串をつまみ、話に耳を傾ける。まるで一場の芝居を見ているようだ。


「まあな。配属三日目で医務室のひよこの手を握ったの握らないのがきっかけで……整備班みんなの天使であるひよこの良い兄貴分を自称する島田がそんな『バケツ』の暴挙を見逃すと思うか?裏の駐車場に島田の馬鹿がそいつを呼び出してな」

挿絵(By みてみん)

 かなめは指で串をつまみ、こなれた仕草で焼き鳥を口に運ぶ。場内の空気はその一言でさらに熱くなった。誠は顔を少ししかめるが、すぐに笑いを返す。人間関係には奇妙な線が引かれていて、越えると火花が散る。


「もしかして銃は使ってないですよね?西園寺さんを見ているとここでの決闘には銃を使っていいというようなルールがありそうなんで……それは無いですよね?ないって言ってくださいね?」


 誠は口ごもりつつも、場の空気に肝を冷やす。かなめが普段から携行している銃の存在は、冗談と現実の境を揺さぶる。ここではジョークも時に本気を孕む。


「銃を使う?そりゃあアタシの専売特許だ。島田は普段は銃は持たないし、そもそも銃より殴り合った方が早いって主義だからな。ただの殴り合い……まあ、やる前から結果なんざ見えてたんだけどな。『バケツ野郎』は島田の『無限のタフさ』を知らねえから」


 かなめは肩をすくめ、煙草の火を強める。言葉の端々には軽い嫌悪と満足が混じる。誠はその不穏な満足感に、先輩の守り方を垣間見た。


「なんです?その『無限のタフさ』って。確かにあの人の上半身は見ましたけど……僕も筋肉だけならあれぐらいは付いてますよ。でも別にそんな『タフ』ってわけじゃないですけど」


 誠は首をかしげる。若い眼には伝説が現実にどう作用するのかはまだ不透明だ。だが、ここで語られることの多くが後の自分の教訓になることは間違いない。


 そんな誠の反応を見て今度はアメリアが身を乗り出して話をしたそうな顔をしているのでそちらに目を向けた。


「まあ、島田君は元々中学高校と暴走族の『ヘッド』をしてて喧嘩ばかりの生活をしていた人で喧嘩慣れしている上にいくら殴られても平気なのよ。そもそも相手が殴り疲れても平気で向かってくるし……どんなに威力があるパンチでも口から血を流す程度で痛がる様子も見せずにひたすら相手を観察している。まあ、これは島田君が言う喧嘩必勝法らしいんだけど五発も相手の撃ちやすい格好でのパンチを食らえば、そのパンチの軌道を覚えて避けたりカウンターを打ち込んでくるから。相手がどうパンチや蹴りを繰り出すか分かればこっちのもんだというのが島田君の主張なのよ」


 アメリアの解説する島田の喧嘩必勝法に誠は唖然とした。


 喧嘩をしたことがない誠には、『最初に勝つ』のではなく『最初に殴られ続ける』という発想自体が理解できなかった。

 

 殴られながら相手を観察し、慣れたところで潰す。

 

 島田という男は、やはり普通ではない。

挿絵(By みてみん)

「結果、最初の10秒くらいは互角だったけどそれから先はまさに『ワンサイドゲーム』まったくいい気味だわ……しばらくは次々とカウンターを繰り出して来る島田君に運航部の女子の前で恥はかけないとばかりに『バケツ』もムキになって反撃してたけど殴り疲れて手が止まったところからは島田君が倒れた『バケツ』に馬乗りになっての一方的にタコ殴り。まあ、『バケツ』じゃなくても喧嘩で島田君に勝てる人がいるなら見てみたいわね。まあ、『愛を知らない遼州人の女を落としてこそ真のプレイボーイだ』とか捨て台詞を吐く時点でもう終わってると私は思うけど」


 アメリアの言葉に誠は驚愕した。そして、そこまでしてもモテにこだわる元地球人のモテ男のアイデンティティに誠はモテることを最初からあきらめている遼州人として敗北感を感じていた。


「そのあとがまた酷かったな。アメリアの奴、医務室に運ばれたバケツの枕元で、自作エロゲのデモを延々流しやがった。『どう?これでも興奮しないの?』とか言いながら……治療しようとするひよこを嫌がるパーラと面白がるサラに羽交い絞めにしてまで」

挿絵(By みてみん)

 誠はここまでアメリアのエロゲ愛がもはや自分のはるか上を行くことに呆れ果てていた。

 

「教育よ。作品を馬鹿にした人間には、まず作品を理解する機会を与えないと。これは親切でやってあげたこと。いわゆる好きなアニメの食玩を部内で配って歩くのと同じことよ」


 そういうアメリアの顔には反省の色はまるで無かった。


「骨が折れてる相手にか?治療したいと言う看護師のひよこを羽交い絞めにしてまでやることか?」


 かなめの追い打ちにもアメリアの信念は一切揺らぐことはなかった。

 

「逃げられないから集中できるでしょ?ちゃんと男子らしく興奮してたみたいだから私の布教もちゃんと効果があったと言う証拠よね」


 もちろん本当に治療を遅らせるほどではなかったのだろうが、それでも医務室の空気を最悪にしたことだけは間違いない。


 そう言いながらあくまで自分は良いことをしたと信じ込んでいるアメリアの方がついうっかり喧嘩を始めてしまいそうなヤンキーの島田より誠にはよっぽど怖かった。


 誠は、とんでもない人物の舎弟になってしまったのだと、この話題一つで再確認した。


「島田の馬鹿は殴るだけだからまだ分かりやすい。アメリアは笑いながら心を折りに行くからタチが悪い」

 

 かなめのまとめの一言を聞いて本当に怖いのは、その島田よりも、笑顔で布教を続けるアメリアの方かもしれなかった。


 誠はとんでもない人物の舎弟になったという事実をこの話題一つで再確認した。



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