第9話 カラフル艦橋のねーちゃん達
誠は一度制服についた隊長室に漂っていた埃を払い落とすと階段を駆け下りた。奇麗好きの誠にとってはあのような部屋に出入りする日常がこれから訪れるとなるとそれだけで憂鬱になる。そんな誠の感情とは無関係にコンクリートの冷気が靴底に伝わり、廊下の蛍光灯はいくつかがチカチカと瞬いている。扉の上にかかった小さな札は、折れかけたプラスチック製だが、『運航部』と黒字で凛と書かれていた。その文字が、ここがどこか……単なる事務室ではないことを誇示しているように見えた。
「ここか……『運航部』……例の運用艦とやらを運行する……ブリッジクルーとかが居るのかな?」
扉を押開いた。誠の目は、一瞬で色に飲み込まれた。中には女性士官ばかり、その髪の色彩が誠の目を一瞬ここはアニメフェスティバルのコスプレ会場なんじゃないかという錯覚にとらわれた。
「失礼しっます!うご!……痛い……」
陽気な音と同時に金属の何かが当たる大きな音と同時に頭に激しい痛みが走った。痛みに反射的に頭を抱えた誠の視界に、アルミのたらいが跳ねるのが見え、次の瞬間にはクラッカーが破裂して室内に紙吹雪が舞った。歓迎の仕草らしいが、やり過ぎだと顔をしかめる余裕もないほど唐突だった。
『司法局実働部隊運航部にようこそ!』
……女性たちの合唱が頭を抱えてうずくまる誠の耳に響いた。どこまでも能天気で誠の事など何も考えていない彼女達の屈託のない明るい声が誠の声に響く。
こんな歓迎の方法を予想だにしていなかった誠にはただ立ち上がって笑顔満面のコミックマーケットのアニメキャラのコスプレイヤーがするようなカラフルな髪の色の女性ばかりに囲まれている自分の状況に当惑していた。
その中で一番好奇心旺盛そうな表情を浮かべて最初に出てきたのはピンクの髪の女性が笑顔で誠に笑いかけて来る。髪の色は自然界のそれでは到底あり得ない鮮やかさで、オタクで電車に乗っても酔うレベルの乗り物アレルギーの誠ですら毎年通うコミックマーケットのコスプレイヤーのアニメキャラに似せて染めるというレベルでは説明がつかないような鮮やかなピンク色に目を引かれた。
「何緊張した顔をしているのよ!そんな事よりこっちこっち!」
彼女は手を差し伸べ、誠を部屋の奥へと引き入れる。そのやり取りは滑らかで、しかし誠の頬にはまだ汗が残っていた。
「なにを……タライが落ちてきたような気がするんですけど」
誠はピンクの髪の女性に手を引かれながら広めの部屋に引き込まれた。中は単なるオフィスで、端末が並ぶその雰囲気はこの東和ではいかにも先進的な雰囲気を感じさせるものだった。だがモニターの配置、機材の配列、小さなパネルに貼られた手書きのチェックリスト……普通の事務室とは異なる、『艦のブリッジ』を模した作業環境が、微妙な緊張感を作っている。小さなフィードバック音が絶えず鳴り、壁の一部には見たこともない大型戦闘艦の船橋図が貼られていた。そこに描かれた線は正確そのものだ。
「ごめんね……私もさすがに今回はやめようって言ったんだけどね。ごめんね」
誠がピンクの髪の女性に引っ張られながら声がした方を振り向くとそこには苦笑いを浮かべた水色のショートカットの女性士官が手を合わせながら誠を見守っていた。彼女にはこの部屋にいる他の女性達とは違って初対面の人間の頭にタライを落とすということがいかに失礼な事かを理解できる理性が有るんだと知って少し安心する誠だった。
「パーラったらいつもこういう時は常識人ぶっちゃって。私の情操教育がちゃんと効いて無いのね?そんな事じゃあいつまでたっても普通の人間には慣れないわよ。それにやっちゃったものは仕方がないじゃない。あと見た感じあまりリアクションも面白くなかったしね。隊長とランちゃんが『いいツッコミ担当が来る』って言ってたけど面白くなかったわよ、今のツッコミ」
そう言いながら誠に向けて手を振るのは、どうやらこの部屋の責任者らしい大きな机を前に立っている長身の誠に匹敵するこれまで誠が出会ったどの女性よりも長身の紺色の長い髪の少佐だった。糸のように細い目をさらに細めて誠を見つめた。
「私の名はアメリア・クラウゼよ。階級は少佐。ここ『運航部』の部長ってことになってるわね。まあ、うちは運用艦『ふさ』のブリッジクルーで構成された組織なわけ……つまり誠ちゃんの操縦する元々航続距離が絶望的なシュツルム・パンツァーを戦場に運んでそこで戦闘指揮とかを担当するのがここにいる変な色の髪の女の子のお仕事ってわけよ。そして私がその責任者で運用艦『ふさ』の艦長ってこと。これからもよろしくね♪」
少佐と言う階級と似合わない軽い態度と妙に親し気な口調に誠は戸惑いしか感じなかった。そんな不安そうな誠の表情がさもアメリアのつぼにはまったらしく細い糸目をさらに細めてアメリアは誠を自分の運航部の大きな机のそばまで導いた。
「実は補充のパイロットは神前君で六人目なのよね……他のパイロットが逃げたのは全部私の企画したいたずらのせいだってかなめちゃんは言うけど……確かに何人かはそうだけど、半分はかなめちゃんが銃で脅して追い出したんじゃないの。まったくあの子の何でもかんでも人のせいにする癖はどうにかしてもらいたいものだわ」
アメリアはまるで誠がもうすでに古株としてこの隊になじみ切っているような親し気な態度で先ほどパイロットの詰め所で出会ったサイボーグの女性パイロットであるかなめの事を誠が理解していることを前提にして話を進めた。
目の前のいたずら好きな糸目女と銃に異常な執着を持つ女サイボーグに恐れをなして5人は去った。言葉はさらりとしているが、その背後には『この隊がいかに特殊な環境で常識人には合わない環境だった』という言い訳じみた風が漂う。誠は具合が悪くなりかけた胸の内を押さえ、椅子に腰かける。歓迎の賑やかさが一転して静かな観察に変わる様は、まるで獲物を見定めるかのようだった。
ふとアメリアのやけに馴れ馴れしい態度から離れようと周囲を見回すと、そこにいる全員の髪の色が違っていた。水色、エメラルド、ピンク、紺、そして淡い銀色……どれも人為的な彩度を帯び、自然の色合いを越えている。顔立ちはどれも整っていて、体の動きは洗練されている。
だが、最も印象的だったのは眼差しだ。全員が面白おかしい闖入者である誠を歓迎してタンバリンを叩いたり鈴を手にして振り回したりしている人物もいたものの、誠がアメリアとの会話を始めるとすぐにそれぞれ与えられた仕事に集中する切り替えの早さとその瞳の鋭さは、一般的な人間よりも遥かに早く、かつ広域に周囲を読むようだった。その精度に誠は圧倒されると同時に、薄い違和感を覚えた。
ただ、一人ピンクの髪の誠をこの部屋に引っ張って来た女子隊員は何の仕事も与えられていないようで自分の机に着くとのんびりとポテトチップスを食べ始めたのが妙に浮いているように誠には見えた。
相変わらずこの中で一番馴れ馴れしい態度の運航部部長のアメリアはそのまま席に移動してモニターを操作しながら作業中だったシステムの終了動作を常人では考えられない速度で行うのに誠は目を見張った。
「うちは運用艦『ふさ』のブリッジクルーを想定して編成された部な訳よ。うちが『軍隊の介入が政治問題になりかねない危険地帯での活動を目的とした警察組織』ってことで司法局に所属してるってことは……ああ、その顔を見るとランちゃんはそんなこと言ってないみたいね。まあ、ランちゃんは戦闘馬鹿のかわいらしい『人外認定設定の魔法少女』だからそんな小難しい理屈なんか説明しないでしょうからね。でも、ランちゃん……かわいいでしょ?直属の上司があんなにかわいい『魔法少女』だなんてオタク冥利に尽きるんじゃないの?誠ちゃんがバトル系魔法少女マニアだってことは隊長から聞いてたから……まあ、ランちゃんはあの性格からして主役は張れないわね……いわゆるライバルキャラの噛ませ犬役。そして続編でヒロインの相棒として同じくかませ犬としてどてっぱらを貫かれても突撃をやめない力任せの究極の噛ませ犬……ああ、このことはランちゃんには言わないでね♪ランちゃんも自分の噛ませ犬属性は自覚しているみたいだから」
端末を終了させたアメリアはおしゃべり大好きと言うような感じで誠に向けてそう言ってきた。その発言の妙にリアリティーのある内容からして誠と同じく相当なアニメオタクであることだけは同じ魔法少女アニメ好きとして共感を覚える誠だった。
『あの『駄目人間』……まったく余計なことしか言わないんだな……でもこの人のクバルカ中佐の観察眼……僕の思った通りだ……この人は出来る……『魔法少女アニメマニア』として』
誠はそんなことを考えながら誠は目の前のどう見ても誠より年上の長身の紺色の髪の女性を眺めていた。
「まあ、ランちゃんは変身できないから『魔法少女』失格だってこの前酔った時に泣いて悔しがっていた……ああ、このこともランちゃんには言わないでね。それとあの人が昼休みに一人になって必死に変身する魔法が使えるようになるかを考えているというのも言わない方がいいわよ。あの人、副隊長で私の査定とかする立場の人だから私の査定に響くのは嫌なの。それより、誠ちゃんも東和宇宙軍でパイロットとして訓練を受けてきたわけでしょ?当然、戦場と言う場所においては動かすのは機体だけじゃない。情報、連携、そして人の感情まで含めて『艦』を動かすのよ。それが出来て初めて艦長と呼べる……まあ、その辺は任せておいてね♪なんと言っても私はこう見えてもIQ250もあるんだから」
軽い調子で次々と話題を変えるアメリアの言葉についていくのが精いっぱいの誠の前でアメリアは糸目を細めてニコニコとほほえんでいた。
『IQ250って……この人が言うと、妙に信憑性があるのが腹立たしい』
その糸目で瞳が見えないので何を考えているのかさっぱりわからないアメリアの態度を見て誠はそんなことを考えていた。
「まあ、誠ちゃんはこれまで来た男の子と違って、上官だってことで褒めたりおべんちゃらを使ったりしないのね……まあ、これまで来た子は全員元地球人で、それに対して誠ちゃんは遼州人。反応が違うのは当然か……ちょうど私達みたいに……まあ、誠ちゃんにはあの5人と私達の区別は紙の色が違うくらいかもしれないけど」
アメリアの言葉に少し違和感を感じた誠は口を開こうとするがアメリアはそれを制するように手を誠の口の前に差し出す。
「僕は口下手だからとか言う言い訳は止めてね。そんなものは理由にならないから。でも、おべんちゃらで人が動くほど世の中甘くないってのが私のこれまで生きてきた感想。誠ちゃん。組織ってのは『生態系』だってのがうちの隊長の持論でね。私もなるほどなあとは思ってるんだけどね」
「生態系?」
誠を気にしつつも部下の女子隊員のモニター操作が正確かどうかちらちらと観察しているアメリアを眺めつつ、嵯峨に持論なんてあるのかと首をひねっていた。
「そう。一人ひとりが関係しあってこそ存在することが許される微妙なバランスの上にある存在。そんな感じかしら?上位者も下位者も一人として欠けたら崩れてしまうような脆い存在……誠ちゃんの口下手。時々見せるツッコミ……それもうちには必要かもしれないわね。これまで来た男の子にはそんな雰囲気はまるで感じなかった……彼等には彼等の生きる『生態系』がある。そう言うことなのかもしれないわね……あれくらいのギャグを『おいしい』と思えないようじゃうちには向いてないのよ」
アメリアはそう言うと腕を組んで誠を見つめた。
「でも、一度その本来他の環境では生きられないはずの変わった生き物が一度その『生態系』に適応してしまえば無限の可能性を発揮することになる。一人ひとりがばらばらに戦うよりははるかに強い存在になる。それが組織だと思うの。これは隊長の受け売りではなく私の導き出した独自の答え……私みたいな存在でも自分で答えを導き出すことができるのよ」
強い口調でそう言うアメリアに誠は静かにうなずくことで応じた。
『タライを落とす生態系なんて、できれば関わりたくなかった……けれど、不思議と、その比喩は腹に落ちたな』
誠はどうやらとんでもない生態系に組み込まれたことだけは理解した。
「組織……でも僕は頭にタライを落とされても『おいしい』とは思いませんでしたけど」
誠の言葉の繰り返しにアメリアは静かにほほ笑みを返した。
男性としても大柄な誠と引けをとらない長身のアメリアは、糸目をさらに細めながら誠を見つめていた。
「まあ、真面目な話はこれくらいにして……誠ちゃんが昨日の今頃何してたか、当ててあげましょうか」
「誠ちゃんって……」
確かにアメリアの方が年上のように見えるが、さすがに『ちゃん』付けされるのは少々気に入らなかった。
「昨日、誠ちゃんは実家の剣道場をふらりと出かけて近くのおもちゃ屋で戦車のプラモを買いました」
「へ?」
アメリアの唐突な言葉に誠は驚愕した。
「確かに……今ぐらいの時間に出かけたのは事実ですけど……」
誠が昨日の昼前に出かけてプラモ屋に寄って戦車のプラモを買ったのは事実だった。
青ざめる誠をしり目にアメリアは話を続けた。
「その後近くのショッピングモールに行って、そこのイートインで『信州みそラーメン』を食べたのよね」
「確かに……見てたんですか?隠れて」
突然、新入隊員に金ダライを落とすような連中である。
そのくらいのネタの仕込みはやるだろうと思いながらアメリアを見つめた。
「いいえ、そんな非効率的なことはしないわよ。それに、この15年でその店に入ったのが355回、そのショッピングモールに行くのが134回なんて情報は足で情報を稼ぐタイプのスパイなんかにはわからないわよね……しかも誠ちゃんは童貞。私みたいな女としてはその童貞を奪いたくなるのよね……」
アメリアの言葉に誠は少し混乱した。
特に『童貞を奪う』と言われてしまっては目の前の女性に抗することは誠には出来なかった。
「なんです?それ?僕だってあの店に何回行ったかなんて覚えてないですよ!」
思わず誠は立ち上がっていた。
「ちょっとこれ見て」
アメリアはそう言うと大きなモニターを誠から見える位置に持ってきた。
そこにはファストフード店の店内の様子が映っていた。
その正面ではブレザーを着た男女が談笑していた。
その制服が明らかに誠の出身の高校のもので、そこに映る長身の高校生が誠自身であることは誠にも分かった。
「なんで……高校時代の僕ですよ!これ!」
叫び声をあげる誠にアメリアは満足げにうなずいてみせる。
「この彼女とは結局1回下校途中で食事をしたいと言った彼女と一緒に食事をしてそれっきり……これまで誠ちゃんが女の子と二人っきりで食事をしたのはこれだけで誠ちゃんが23歳にして立派な童貞だったことも知ってる訳よ、私は……少しは自分が『ちょっと変わった環境』に居たということがわかったかしら?私はこれまでの5人と違って誠ちゃんにはここに根付いてもらいたいと思ってるわけ。だだから隊長にはこれは言うなと言われてたけど教えてあげた……その期待にはちゃんと応えてね♪」
ニヤニヤ笑うアメリアを誠は困惑した顔で見つめていた。
「なんでそんなこと……もしかしたらあのことも……」
誠はトラウマになるいくつかの出来事を回想した。怒りと恐怖のどちらが強いのか、自分でも判別できないでいる自分がそこに居た。
「そうね、誠ちゃんが剣道を辞めて野球を始めた本当の理由も私は知ってる。確かにあんなことが出来るだなんて人には言えないわよね……言っても信じてもらえないでしょうし。竹刀で大木が真っ2つに出来るだなんて」
アメリアの何気ない言葉が誠の心に刺さった。竹刀を握った両手の感触。吸い込まれるように振り下ろした瞬間、木が裂けたあの音。今でも、思い出すだけで掌がじんと痺れる。あの時の驚愕とそれがあり得ないことだという思い。忘れようとしていた記憶が目の前の糸目のおばさんに指摘されて掘り起こされた事実に誠は当惑していた。
『それだけは父さんからも母さんからも絶対に人に言ってはいけないことだって言われてきたことなのに……人に言ったらこの国が大変なことになるからって言われてたことなのに……なんでそんなことを知ってるんだ?このおばさんは』
誠が思っていたトラウマとは別の話が出てきたが、確かにそんなことも有ったのは事実なので嘘はつきたくない誠はなんとか笑いでごまかそうとした。
「ふーん。そこは笑って誤魔化すんだ。まあいいわ、どうせお母さんから口止めされてるんでしょ?じゃあ私も忘れてあげる。それよりこれまでの5人と誠ちゃんの一番の違いはね。こうしてちゃんと記録が残っているように誠ちゃんについてはこんな情報を集めている組織があるわけよ。そこが他の五人とは決定的に違う……いくら何でも対立しているからって遼州系に住んでいる人間を監視するほど地球の人達も暇じゃないしそんな予算も人員もいないから」
アメリアは落ち着いた様子でうろたえる誠を眺めていた。
「そんな……いつからこんな情報が?」
誠に聞かれるとアメリアはキーボードをたたいて画面を操作した。
すぐに画面がファイルデータの名前が並んでいる画面に変わる。
「一番古いファイルは2660年の8月」
アメリアは淡々とファイル名を読み上げた。
「それ、僕が生まれた時ですよ」
誠は驚愕した。
まさか、こんなプライベートな情報まで調べ上げられているなんて……。
自分の人生はどこまで監視されていたのか、考えただけで寒気がした。誠は生誕とともに誰かから監視される生活を送ってきたとそのデータは語っていた。
聞くだけ無駄かもしれないと思いながら誠はアメリアの目を見つめた。
「何のためです?僕は普通の遼州人ですよ……そして誰がこんなデータを集めてるんですか?」
誠の言葉は予想がついていたようで、アメリアは驚くこともなく誠の顔を眺めていた。
「知りたい?」
「そりゃあ……そうですよ!ふつうそう思いません!生まれた時から自分が誰かに監視されてたなんて……理由が知りたくない方がどうかしてますよ!」
いかにもふざけた調子のアメリアを見上げながら、誠は静かにうなずいた。
「じゃあ、うちに残りなさい。そうすればうちの職権で誰がこんなことをしているのか調べることもできるわ……それが私に今言える限界……これ以上は隊長に口止めされてるの。あの人……ああ見えて怒らせるとどんな手段を取ってくるか分からないから」
アメリアのはっきりとした言葉に誠は静かにうなずいた。
「自分で調べるんですか?アメリアさんの端末の情報がどこから来たくらい教えてくれても……それと隊長の取ってくる手段って……何なんです?」
誠は自分の運命を自分で探せという言葉と嵯峨の嫌がらせの内容が気になってそう言っていた。
「この情報は正規の部長のみに配布されるファイルに記されていたわ。その情報の出どころは隊長。隊長は元々諜報系の士官だからニュースソースは絶対に秘匿するわよ。それに情報管理の重要性はこの宇宙で一番認識しているからそれを漏らした人間に対してどんな行動をとれば二度と情報漏洩が起きないかということに関しても知り尽くしている。そんな人を頼りにしないで!自分の運命は自分で切り開かないと。あの情報中の事だから私の想像では司法局の情報に詳しい人で隊長がお熱の女の人にデートを断る口実としてこのデータを渡されたんでしょうね」
始終、明るい調子でアメリアはそう言った。
「少し……考えさせてください」
アメリアに聞くだけ無駄だとわかった誠はうなだれたまま雑談に明け暮れる室内の女子達に目をやった。
「まあね、こんな時でも自分で自分の運命を決める時間くらいあげろって隊長なら言うでしょうね。そうだ!次のあいさつ先を教えないとね。隣の建物が『技術部』の倉庫兼シュツルム・パンツァー格納庫だから。そこに技術部長代理で整備班長の島田君ってのがいるの。彼に挨拶してきなさい。あそこはここでは一番の大所帯なんだから優先して挨拶しておかないと後が怖いわよ……何せ彼は……おっと!人の個人情報に介入するのはうちではご法度だったわね♪ちゃんと自分で本人から聞いてきなさいな」
相変わらず能天気な笑みを浮かべながらアメリアはそう言い放った。
「島田さんですか?後が怖いって……そんなに怖い人なんですか?」
「島田君はそんなに怖い人じゃないわよ。ちょっと頭が悪くて暗算じゃ割り算が出来ない気のいいアンちゃんよ」
誠はアメリアの言葉を聞くと、肩を落としつつ静かに椅子から立ち上がった。




