将来
今日もいつも通り、退屈な授業が続く。ネオはあくびをしながら授業を聴いている。そんなある日のことだった。
「授業は終わり。さて、今日は大切な話をするぞ。みんなの将来に関わる話だ」
教室がざわつき始める。
「将来?なんだそれ。来年もまた学校に通わされるんだろ」
「学校出たらやっと家族と一緒に働けるよ。その方がマシだよ」
面倒くさそうに教室を落ち着かせた教師は、説明を始めた。
「君たちがこの学校を出た後、つまり卒業後の話だ。2つの道を選ばないといけない。1つは働く。この道の者が大半だろう。家族と一緒に農業をしたり、鉱山で仲間たちと汗水垂らしたり。出稼ぎに遠くへ行く者もいるかもしれない」
ネオも同級生も、不思議そうな顔をした。わざわざ言うことなのか、当たり前ではないか。
「しかし、これ以外の道がある。それが、高等学校への進学だ。大人になってから医者や教師、法律家、聖職者などになりたい者、つまり専門的な知識を使う職に就きたい者はこの道へと進まなければならない」
高等学校の制度自体は昔からあるものだが、その存在を知らない子どもたちも多かった。
「また学校に行く奴がいるのか、変なの。あ、ガリ勉クッロにはおあつらえ向きじゃないか?」
いじめっ子がそう言うと、その仲間が一緒に笑い出した。クッロは顔を真っ赤にして下を向いた。何か恨めしそうに呟いていたが、それは誰の耳にも届かなかった。
「うるさいぞお前ら。もし高等学校へと進みたい者がいるなら、卒業前に試験を受けなければならない。その試験に向けて、日々しっかり勉強するように」
そう言うと、教師は去っていった。皆がいつも通り帰り支度をした。ネオも誰とも話さず、教室を後にした。
夕飯の時間になった。母が食卓の準備をする。父がテーブルの上の蝋燭に火を灯す。
「サローネ」
3人で口を揃えて祈りの言葉を唱えると、ネオは早速肉にかぶりついた。
「ネオ、今日の学校はどうだった」
いつも通り父が聞く。
「なんか高等学校ってやつの話をしていた」
「何なんだ、それは」
「今の学校を卒業した後、また学校に通うんだって。医者とか学者とかになりたい奴が行くんだったかな」
「ほう、それは大事な話だな。それで、ネオは?」
父から思わぬ返事が返ってきた。ネオは素っ頓狂な声を出した。
「え?僕も父さんと一緒に働くんでしょ?」
これまた目を丸くした父が、こう返した。
「いやいや、ネオは頭が良いだろ。合っているんじゃないか?」
「でも、働いた方がお金になるよ。もっといい肉が食べられるかも」
「母さんも、ネオは頭が良いからさらに勉強してもいいと思うよ」
母にまで説得され、ネオは困惑した。働く以外の将来像は無かったからだ。
「父さんは勉強できなかったからな、ネオにたくさん勉強してほしいんだ。黒い穴の伝説みたいな、面白い話をもっと聴かせておくれ」
ネオはそれを聞いて、ふと思ったことを口にした。
「新しい学校に行ったら、伝説のこともっと勉強できるかな。本当にただのお伽噺なのか、気になるんだ」
両親はネオを見て微笑んだ。
「いいじゃない。ネオの信じることをやりなさい」
「そうだ、もしかしたら大発見ができるかもしれないぞ」
ネオもまた笑った。これがネオの「夢」が誕生した瞬間だった。




