プロローグ
ふと気付くと、馬に乗っていた。辺りは鬱蒼とした森の中のようだ。
森の中を進む。逃げる敵兵たちを馬に乗って全速力で駆け抜ける。
ゆっくりと後ろに流れる木々。もがくように進む中で、確実に敵兵の後ろは捉えている。もう少し、もう少し。急げと馬に鞭を入れたその瞬間。あり得ないことが起きた。
敵が消えた。
驚く間もなく、自分の足下の地面が消え失せた。体が落下していく。脚を四方八方にばたつかせても、地に着かない。手を伸ばしても、空気を掴むだけ。
どこまでも落ちていく。もがいてもどうにもならない。黒い穴にただ身を預けるしかない。頭はパニックへと陥っていく。辺りは真っ暗になり、浮遊感だけが続いていく。どこまで落ちるのだろう……。このまま死ぬのだろうか……。
「起きなさい、もう学校に行く時間でしょ」
少年が目を覚ますと、明るい室内に母の姿があった。
「手足をバタバタさせて、どうしたの。早く朝ご飯を食べなさい、ネオ」
そう言うと、母はキッチンへと歩いて行った。汗まみれの少年ネオはまだ呆然としていた。事態が飲み込めるとすぐさま布団から飛び起き、小走りで朝食へと向かった。
まだ少しぼんやりとした頭でパンを慌てて食べる。少しずつ目が覚めるとともに、ネオの脳裏に昨日の授業で聴いた伝説が浮かび上がってきた。「黒い穴」伝説。ネオの頭から離れない。今日の授業はその続きだ。
「ネオ、何をニヤニヤしているの。早く食べなさい!」
「わかったよ」
笑みが漏れたことをごまかすように、ネオはぶっきらぼうに言った。
「ごちそうさま」
相変わらずお腹いっぱいとは言えない朝食を水で流し込む。
慌てると普段できることもできなくなる。制服のボタンがどうも上手くかみ合わない。焦りと高揚が手元を狂わせる。ようやく制服のボタンをかけ、くたびれた学帽をかぶる。
「行ってきます」
母の返事を聞く前に、ネオの脚は学校へと向かっていた。
相変わらず廃棄ガスの匂いがする、灰色の町。周りの大人は汚れた作業着をまとい、そのガスが発生している方向へと向かっていく。いつもなら大人たちと同じ表情をして歩くネオだが、今日は違う。
道すがら、昨日の授業を思い出す。
はじめまして、とるてぃと申します。
気まぐれに投稿します。




