エピローグ やり直し
『ああ、いいな、これ。
騒がしいけど落ち着くこの時。
大変だけど充実した日々。
続くといいなぁ……』
か。
ははッ……とんだ駄作だな。
誰だよ、これ言った奴。
ああ、僕だよ。
なんだよ、それ。
早すぎんだよ、終わるのが。
まだ1日も経ってねェよ。
ホント、何やってんだ。
蓮斗は救えなかったくせに、他の奴の命助けて。
何のための命だ。
何のための力だ。
親友一人救えねェスキルなんていらねェよ。
「ク、ソ……が」
誰もいない暗闇の中で一人呟く。
誰に言うでもなく、心の奥底でぐちゃぐちゃになっていた言葉をまとめて吐き出す。
アイツは恩人で、命を捨ててでも救いたかった人。
なのに、何もできなかった。
「全部、ぶっ壊ーーーー」
決意を口にして、言葉が詰まる。
なんでだろうと考えて、すぐに気付く。
違う。
蓮斗はそんなこと望まない。
蓮斗なら自分のことを気にせず生きろと言う。
お前の人生だから、と。
でも、
そんなことできない。
いくらお前に反対されても。
だってこれは僕の望みだから。
でも、僕がそう言ってもお前は反対するんだろ?
だったら。
『誰も守らないし救わない』?
知らねェよ。
覚悟がどうとかなんて、どうだっていい。
『親友が殺された』
理由も、覚悟もそれで十分。
僕が全部をやり直す。
そして、その上で蓮斗の言葉は破らない。
殺った奴にはやり返す。
これは決定事項。
それから、その上で、『守らないし救わない』これは破棄だ。
蓮斗なら世界を見捨てたりはしない。
だったら。
アイツが僕に後を託したのならば。
僕はアイツの意思を受け継ごう。
できることを探そう。
僕にできることを。
『後は頼んだよ』
そう言われたから。
大切なアイツから言われたから。
精一杯やろう。
最後に、アイツに笑いかけれるように。
最後に、命尽きたその時に『やり通したよ』ってアイツに胸を張れるように。
蓮斗が僕の誇りであるように、
僕もアイツの誇りでいられるように。
蓮斗にそう言われたから。
大切なアイツに頼まれたから。
だからやる。
やり通す。
行動理由はただそれだけ。
それ以上でも以下でもない。
苦痛?努力?時間?命?
知ったことか。
アイツのためなら時間も命も捨ててやれる。
例えアイツが生き返らなくても、最後に自分を誇れるのなら。
***
次回から第二章突入です!
ここからは第二章の導入です。
彼は全てを失った。
「大切」を救えず、「不必要」を救い、
自分の弱さに打ちひしがれた。
「なんで僕は生きたんだろうね」
そう嘆く男の前に天使が舞い降りる。
「大丈夫です」
考えなしにそう言う少女。
純粋で、どこか抜けていて、それでも人を支えようとする少女。
彼ーー否、彼らの物語は新たなステージに立とうとしていた。
ーーーしかし。
「僕はこの世界が大嫌いなんだ」
1人の男が日の目を見る。
世界を憎み、全ての終わりを望む者。
多くの思惑が交錯し、3つの物語は舞台へ上がる。
彼らの物語りの行き着く先はまだ誰も知らない。
それではどうぞ。
第二章【幻帝戴天】