エピローグ そして再び平和な雨の森
ついに完結いたします。
木々優しく雨を受ける音がする。
私は綺麗な羽毛に包まれて幸せだ。
「ナリディア?」
身動ぎするとセリックが薄目を開けた。
腕が体に絡まってる。
「私、幸せだね。」
私はセリックの背中に腕をまわしてまたベッドにうずめた。
もう少しこの暖かさを堪能したい…。
セリックの羽毛を頬に感じながら目をつぶった。
「ナリディア、寝たのか?」
セリックの声がする。
本当は…元の世界に未練がないといったらウソになる。
ファモウラ軍国での小競り合いでの高揚…。
やりがいのある傭兵稼業…。
それが私のいきる道だと思っていた。
薄目をあけると緑の目があった。
ずっとこの人のそばで生きていこう…いつまでもいつまでも…。
「セリック、私幸せだよ。」
私はにっこり微笑んでセリックに深くキスをした。
私の大事な伴侶に…。
伴侶なんて持てないと思ってた。
あの日…確かに血煙舞う戦場にいた。
入り乱れる人馬や機械そして敵味方も混乱していた。
見えにくい状況で私は負傷した。
「ナリディア大丈夫か?」
ウルティアガ小隊長が怪我した腕をのぞきこむ。
「大丈夫です、戦えます。」
私は止血したうで押さえて微笑んだ。
「無理をするな。」
不思議な赤と金の瞳が心配そうに見ている。
「戦えます。」
胸がドキドキした。
長身のウルティアガ小隊長は奥様を溺愛してると聞いてるのに…。
「………無理ならすぐに離脱しろ。」
ウルティアガ小隊長が腕をもっていった。
「はい。」
私は微笑んだ。
戦場では乱闘続いていた。
これ以上続くと本当に戦争になりそうな感じだった。
戦場での油断は命とりだ。
「グーレラーシャの犬め、金で買われた傭兵などに負けるわけがないわ!」
明らかによたよたした男が槍をふりあげていった。
身体は反射的に攻撃に転ずる。
男を蹴りあげてブーメランでなぐる。
男がよろけながら槍をつきだしてくる。
やりをよけて身体をひねった。
みずのにおいがした。
視線を男に戻したつもりなのに森があって髪に雨がしたたった。
どうすればいいのか悩んだ。
「大丈夫か?」
声がして振り向くときれいな緑の瞳にあった。
せなかには緑の翼…。
「風読みの民?」
昔みた翼のある種族を思い出した。
「かぜよみのたみ?」
その人が不思議そうにいって…。
その人…セリックがあのとき拾ってくれなければどうになってたんだろう…。
どうしてこんなに好きで仕方ないのかわからない…でもグーレラーシャの本能が目覚めたなら…もうセリックをはなしてあげられそうにないよ。
もう…グーレラーシャには帰りません。
あの雨の森に迷いこんで良かった。
そうにおもいながら瞳を閉じた。
ナリディアの暖かさをたんのうしながらオレは愛しさを噛み締めた。
もう離さない…。
生涯一緒だ。
たとえ異世界の神々がナリディアを連れ戻そうとしても…オレは追いかける…。
青い綺麗な目がオレを見上げた。
愛しさがまして抱き込んだ。
ナリディア…ナリディア…こんなにも愛しいとは思わなかった…。
「と…言うわけで…ラス兄ちゃんたちと同じくらいに生まれる予定です。」
オレは絶句しているラス兄ちゃんを見上げた。
「お、おい早すぎじゃないのか?俺たちだってやっと授かったのに…。」
ラス兄ちゃんが動揺しているのがわかった。
「ナリディアが生まれたら鍛えてブーメランおしえるっていってるんだよな…娘だったらどうするのかな?」
オレは森のなかでミカ姉ちゃんとたのしそうに笑ってるナリディアを見つめた。
「お前が倒されるんじゃないか?」
笑いながらラス兄ちゃんが言った。
その話が笑い事じゃなく息子に負けるのは遥か未来の話だ。
黒い髪に緑の目に黒い翼の家の息子は気が弱い癖に戦闘能力だけはナリディアゆずりでラス兄ちゃんの家の双子の娘に振り回されながらも決めるときは決めるといういい性格のやつになった。
まああとから生まれた娘にも負けたけどな。
「セリック、ミカさんはもう動くんですって。」
ナリディアが笑っててをふった。
ああ、いいな…ってオレは猛烈にナリディア囲いたいんだが…。
ナリディアに撃退されたんだよな。
「ナリディア~そろそろ帰ろう。」
オレがナリディアに腕を広げた。
ナリディアは一瞬ためらってオレの腕に飛び込んできたので抱き上げた。
これはいやがらないんだよな。
「ミカ…オレも…。」
ラス兄ちゃんがミカさんにいいかけてミカさんと見つめあったのでオレたちはかえることにした。
「ナリディア…オレは幸せだ。」
セリックが私を抱き上げて歩きながら言った。
「うん…私も幸せ…。」
私はセリックにみを寄せた。
森が風に揺れる…。
もう二度と戦場に…グーレラーシャに帰れなくても悔いはない。
私、幸せだよ。
お父さん、お母さん、おや不幸でごめんなさい。
お兄ちゃん…みんな…もう会えない…。
でも…でもずっとセリックと一緒に暮らしたいんだ。
この世界でずっと一緒に…。
森とセリックの顔を見ながら私は微笑んだ。
セリックが私に口づけた。
ずっと一緒にこの人と生きていきます。
駄文を読んでいただきありがとうございます♪