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ASH  作者: たぶんしえ
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聖剣使い

初めまして、至らない点等あると思いますが、妄想全開で完結まで頑張って書いていきたいと思います。

よろしくお願いします。

11/5 微修正しました

「お客さん、もうすぐ王都ですよ、ほら」


御者の声に、うとうとしていたカインは一気に目を覚ました。

期待に胸を膨らませ、御者の後ろから顔を出して外の景色を覗き込む。


――― 王都 ―――


王族が治めるこの国の中心地であり、世界最大の都市。

まだ距離があるというのに、視界に収まりきらないほどの街並みが広がっていた。

「す…凄い……これが王都……!」

目の前に広がる、見たこともない大都市の街並みに、青年カインは目を輝かせた。

何週間も馬車を乗り継ぎ、ようやく王都に到着したカインは、興奮を隠せず叫んでしまった。

悪路続きで苦痛だった馬車の旅も、舗装された道に入った途端、まるで別の旅になったかのように感じられた。

王都へ近づくにつれ、カインの期待はどんどん膨らんでいった。


―――


馬車が王都の門を越え、街中を走る間も、カインはきょろきょろと辺りを見回していた。

目に映るものすべてが新鮮で、華やかに感じられた。


馬車は街中を少し走ると、一番近くの馬車駅で停まった。

カインは馬車を降りると、カバンの中から一通の手紙を取り出した。

【聖剣授与式式典招待状】

少し前、聖剣を巡る王国主催の武闘大会が、世界七か所で執り行われた。

カインは、自分の出身地方で行われた大会で優勝を果たし、晴れて聖剣を授かる資格を得たのだ。


【聖剣使い】


それは、約100年前から続く魔族との争いにおいて、先陣を切って戦う者たちに与えられる称号。

聖剣を振るい、魔族を退け、魔剣を砕く。数多の戦士たちの中でも、特別な力を持つ者たちである。


カインは、小さい頃から聖剣使いとなることを夢見て、日々剣の修行に明け暮れていた。

しかし、カインの故郷は冒険者ギルドやダンジョンのある大きな街とは縁遠い田舎だった。

名声を上げる機会もほとんどない。そんな環境でも、カインは修行を続けてきた。


手紙をカバンにしまい、覚悟を決めると、カインは授与式の行われる王城へと足を運んだ。


―――


馬車駅からはさほど遠くなく、歩いて10分ほどの場所に、王城へ入る城門があった。

城門の左右には兵士が待機しており、周辺にも複数の兵士が巡回していた。

門から少し離れた場所では、観光客や都民たちが、王城や城門を背景に王都の景色を眺めていた。


城門の手前まで来ると、カインは息を飲んだ。

馬車駅からここへ来る道中でも、大きな城門だと思っていた。しかし、正面まで来ると、その迫力はさらに増した。高さは10mほどあるだろう。


門の上部を見上げて、ポカンとしていると、門兵に声をかけられた。

「観光客か、冒険者かな?」

厳しそうで強そうな門兵だったが、穏やかな笑みを浮かべて話しかけてきた。

「残念ながら、今日は王城は解放されていないんだ。大事な式典が開催されるのでね。良ければまた明日来るといい」

カインははっと思い出し、カバンから式典の招待状を出した。

「すみません、式典への招待をされた者なのですが……」

手紙を出すと、門兵はそれを受け取り、確認した。

「おお、聖剣授与式に招待された方ですか。これは失礼した」

門兵は右手を握り、胸の中央に当てた。王都式の敬礼だった。

「他の聖剣授与者たちは、もう揃っている。君も遅れないように」

そう言って門兵は手紙を返し、もう一人の門兵に合図を送った。

もう一人の門兵は、背後にある手のひら大の宝玉に手をかざした。宝玉は淡い光を放った。

恐らく魔道具の一種だろう。ここまで大きなものは初めて見るが、魔道具自体はありふれたものだ。

光が消えると、大きな音を立てながら、城門がゆっくりと開いていった。

カインは再び上を見上げ、驚きと感動を表していた。


―――


王城の内部は、まるで国宝を惜しみなく並べたかのように、豪華な装飾で彩られていた。

これほどの光景を見るのは初めてだった。城内の至る所に施された装飾に、カインは再び驚きを隠せずにいた。

完全にお上りさんだった。


手紙を手にしたまま呆然としていると、執事姿の老人がこちらへ歩いてきた。

「いらっしゃいませ、カイン・アッシュベルト様ですな」

「は、はい!」

カインは緊張のあまり、カチコチに固まり、声まで裏返ってしまった。

「そう畏まらなくても良いですぞ。式典まではもう少し時間があります。それまでこちらでお休みくださいませ」

そう言って執事は、カインを控えの間へと案内した。


―――


豪華な控えの間で、しばらく呆然としながら休んでいると、式典会場への案内があった。

メイドに連れられて向かったのは前室だった。この先が謁見の間である。


周囲には、カイン以外にも招待者たちがいた。他地方で聖剣を授かった者たちだ。

それぞれの地方で優勝を果たした者たちなのだろう。全員が屈強な冒険者や騎士のような装いをしていた。

中には、聖剣にも劣らないであろう、見るからに強力そうな剣を腰に下げている者もいた。

カインは自分の装いと彼らの姿を見比べた。思わずため息が出るほどの差だった。


しばらくして、執事から式典会場へ向かうよう声がかかった。

「入場!」

兵士の合図により、謁見の間の扉が開かれた。

兵士に誘導され、カインたちは謁見の間へと入っていった。

カインたちは謁見の間の中央付近で足を止めた。少し先には、王が鎮座していた。


やがて、国王が玉座から立ち上がった。

「これより、聖剣の授与を執り行う」

国王の言葉が広間に響き渡る。


国王の前に七人が並んだ。

式典官が一人ずつ名前を呼んだ。呼ばれた者は王の前へ進み出て、片膝をついた。

国王はその者に聖剣を手渡し、静かに見届けた。


最後に名前を呼ばれたのは、カインだった。

国王から差し出された一振りの聖剣。

その名は――【セラフ】。

カインはその柄を強く握りしめた。


七人すべてに聖剣が渡された後、国王は彼らを見渡し、口を開いた。

「その聖剣に選ばれし者たちよ。汝らの行く道に、神々の加護があらんことを」


式典は順調に行われた……いや、実のところ、カインは聖剣を受け取った瞬間以外、緊張でほとんど何も覚えていなかった。

聖剣を受け取った時の感動だけは覚えている。涙が出るほどの感動だった。

しかし、それ以外は緊張と不安と驚きで、それどころではなかった。


式典が終わり、城門まで戻ってきたカインは、右手に握った聖剣に改めて目を向けた。

カインはついに、夢にまで見た聖剣使いとなったのだ。

自分が聖剣使いになったのだと実感した瞬間、カインは聖剣を天に掲げた。

俺の憧れは、夢は、ここから始まるんだ!


クスクス……


周囲には、先ほどの門兵や観光客、都民たちが集まっていた。

恐らく、式典が終わるのを待っていた人たちだろう。

感極まって聖剣を掲げた姿を、皆に見られていたのだ。


カインは一瞬で顔が赤くなってしまった。恥ずかしい……

カインは掲げた聖剣をゆっくりと下ろし、恥ずかしさから身を縮めていった。

そして、恥ずかしさのあまり、スカイフィッシュ(魔物)よりも速く、城下町へと逃げていった。

お読みいただき、ありがとうございます。

遅筆ですが、次の物語も読んでいただけたら幸いです。

また、アドバイス等ありましたら参考にさせていただきます。

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