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第八話:ねんがんのハサミをてにいれたぞ!

 防具屋に来たのはまだ午前だったが今はすっかり日が沈み、夜の静寂が訪れていた。


「静かになったな。作業が終わったのか?」


 俺は店の隅で胡坐をかいて瞑想していたが、目を開き作業場の様子を覗いてみた。


 血走った目のグスタフと目が合った。


「おう、テッペイ。ナイスタイミングだな。俺の防具屋人生で最高の労力を使った品が出来たぞ」


 グスタフが指した方を見ると防具掛けに見事な緑銀色に輝くハサミ付き全身鎧が掛けてあった。


「おお!見事な仕上がりの外骨格だ!早速着てもいいか!」


「もちろんだ!」


 俺は自身の鼓動の高鳴りを抑えながら、外骨格を装着した。


「むう、肌に吸い付くようなこの金属の冷たさ。まるで川に浸っているようで素晴らしい。

 それに注文通りの丸みを帯びたフォルム実に美しい」


「テッペイ~。わたしの組んだ魔力回路もちゃんとしてるか確かめてみて~」


 メルティもなにやら疲れるまで頑張ってくれたようだ。


「ああ、ここが一番重要な所だからな」


 俺はまずフェイスガードに魔力を流して左右に開閉させる


 カシャン!カシャン!


「素晴らしく滑らかな開閉だ!これでスムーズに食事もとれるだろう。さて次はハサミだ」


 俺は左腕に装着された巨大なハサミ型ガントレットを確かめる。注文通り肉厚で鋭い返しが付いたいいハサミだ。


 俺はハサミに魔力を流しまずは素早く開閉する。


 カチン!カチン!


 素晴らしい手応えだ、何かを挟みたくて仕方がない。


「グスタフ。何か挟める物はないか」


「そこの鉄屑で試してみたらどうだ?」


「ふむ、いいだろう」


 俺は素早く鉄屑を挟み込み、さらにハサミに魔力を流して力強く挟んだ。


 グシャ。


 いとも容易く鉄屑はペラペラの鉄板になった。


「素晴らしい圧壊力だ。これで俺もようやくまともに戦えるわけだ」


《いままではまともに戦ってない自覚があったんですね!》


「挟むだけじゃないわよ~テッペイ毒噴射システムもつけてあるわ~」


「注文にない機能だが?」


「強力な毒があるのに使わないのはもったいないじゃな~い」


「確かにそれもそうか、物理的に挟み辛いものに出会うこともあるかもしれないしな」


「そうよ~この世にはぷにぷにした生き物とか結構いるんだから~」


「それと気になったんだが両肩にシリンダーみたいなものが付いてるのだがこれもメルティか?」


「そこは、私が新しい毒を注入するためのシリンダーよ~いちいち鎧を脱いでもらうのも大変でしょ~」


「なるほど、気が利くな」


《なるほどじゃないですよ!なんで毒注入が当たり前の流れになってるんですか!》


「よし後は耐久度チェックだな。ドラミナ起きろ」


「ズピー、串焼き100個食べるのじゃ~ムニャムニャ」


 ドゴッ!


 俺は寝言を言ってるドラミナの頭をハサミで小突く。


「痛っ!なんなのじゃ!?うわ!銀色の化け物じゃ!」


「ドラミナ俺だ。テッペイだ。外骨格が出来た」


「おお!できたのじゃ!じゃあ夕飯を食べに行くのじゃ!」


「まて。その前に外骨格の耐久度チェックがしたい。ドラミナ俺を殴り飛ばせ」


「ん?わかったのじゃ!」


「待て!店の外でやれ!!」


「む、そうだな。また修理代とか請求されては困るからな。わかった」


 俺たちは店から出て耐久度チェックをすることにした。


「さあ、来い!ドラミナ」


 俺はしっかりと歩脚を開き衝撃を受け止められる姿勢を取った。


《どうみてもただのガニ股なんですよね……》


「行くのじゃー!」


 ズゴォォ!!


「むん!」


 ズサササササー!


 俺はドラミナの渾身のパンチを受け止めたがそれでも50メートルはノックバックした。


「おお、吹っ飛ばなかったのじゃ!凄いのじゃ~」


「ふ、ミスリルは頑丈さが違うな……へこみ1つ無い」


「良かったのじゃ!」


「よし防具屋に戻って料金を払ってくるか。その後夕飯だ」


「久しぶりにたくさん食べれそうなのじゃ~」


 防具屋へ戻りグスタフに料金を聞くと、両腕をがっしり組んだグスタフはこう答えた。


「30万ゴルドだ、1ゴルドもまけんぞ」


「全財産だな」


「夕飯代が消えるのじゃ~」


「わたしの分の作業代はタダにしてるから実は赤字よ~」


「素晴らしい外骨格には、きちんとした報酬を払わないといけないからな。30万ゴルド確かに払おう」


「ありがとよ!また面白いもん作ることがあったらうちを頼ってくれよな!」


 こうして俺たちは無一文で防具屋をあとにしたのだった。


「今日は苔でも食べるか」


「それが美味しいのはテッペイだけなのじゃ~」


「そう?選べば結構いけるわよ~」


「嫌なのじゃ~」


「仕方ない、確かに今日は再生にエネルギーを多量に使ったからな。苔では補給が足りんか」


「そうじゃ!そうじゃ!」


「この時間に受けられる依頼があればいいが……」


「夜間は夜間しか受けられない依頼があるわよ~。スケルトン退治とかね~」


「夜の魔物討伐ということか」


 俺たちは取り合えず夕飯代になりそうな依頼を探しにギルドに向かった。


 ギィ。


 ギルドのドアを開けるとなぜか剣や槍を向けられた。


「ち、魔族かなんかか?ギルドに押し入るとはいい度胸だぜ!」


「む、俺は魔族じゃないカニだ。このギルドには何度も世話になっている」


「その物言い、その声テッペイさんですか?」


 いつものギルド職員が声を掛けてくる。


「そうだ、テッペイだ。外骨格を手に入れた」


「おめでとうございます?ええと、とりあえず何の用ですか?」


「ああ、夕飯代ぐらいになる依頼がないかと思ってな」


「あれ?ミスリルドラゴンの討伐賞金はどこへ行ったんですか?」


「俺の外骨格を作るのにすべて使ってしまってな」


「……そうなんですか。今の時間帯だとスケルトン退治や死霊退治が主ですけれど……」


「スケルトンでも堅い奴を挟みたいのだが」


「手ごわいスケルトンだと実は街の霊廟に非常に強いスケルトンが出現してまして、

 ただ危険なのでカッパーランクのテッペイさんにはちょっとオススメできないというか」


「ミスリルドラゴン討伐でランクアップしてないのか?」


「あ!そうでした!もちろんあれだけの魔物を退治したのであればシルバーにランクアップしてますね。

 ではスケルトンナイトの討伐依頼を受けますか?」


「ああ、報酬はどれくらいだ?」


「30000ゴルドですね!」


「それだけ稼げればエネルギー補給を十分できるか」


「スケルトンは腐食毒くらいしか試せるのが無いのが退屈よね~」


「一瞬でバラバラにしてやるのじゃ!」


 俺たちは早速霊廟に向かった。


 街はずれの霊廟は、鬼火が浮かび、ノーマルのスケルトンが闊歩していた。


「全然供養できてないようだが、この世界の死生観はどうなってるんだ?」


《わ、わたしのせいじゃないですよ!》


「魔族が変な魔法をあちこちでかけてるせいらしいのじゃ!」


「そうか、迷惑な話だがこれで夕飯代を俺たちは稼ぐわけだから文句はない」


「強いスケルトンはどこかしら~」


 メルティは手ごろなスケルトンに腐食毒の入ったフラスコを投げつけていた。


 シュワ~。


 スケルトンはなす術もなく崩れ落ちていった。


「わわっ!こっちにも飛沫が飛ぶのじゃ止めるのじゃ!」


 素手でバキバキスケルトンを砕いていたドラミナだったがメルティの毒攻撃には当たりたくないようだ。


《テッペイ以外の誰もが当たりたくないと思いますよ……》


『愚かな人間どもまた現れたか……人間ども?』


 霊廟の奥から立派な装備をしたスケルトンが現れた。言葉を喋れるようだ。


『あの、魔族がどうしてスケルトンを砕くんです?』


「いや俺はカニだ」


「わたしは妖精よ~」


「妾は竜人じゃ!」


『ごほん、なぜ人間以外が我の邪魔をする』


「夕飯代とハサミの動作試験だ」


「夕飯代じゃ」


「小銭稼ぎね~」


『ぐ、人間社会の構造にとらわれた愚か者どもめ!後悔するがいい!』


 スケルトンナイトは剣を振りかざし斬りかかってくる。


 俺は頭部で剣を受け止め、スケルトンナイトの体を鎧ごと挟み込んだ。


『ぐぬ!放せ!』


「何を言っている。ここからが本番だ。どんどん力を入れてくからな。耐えてくれよ」


 ベキベキベキ、ガチン!


 スケルトンナイトは背骨を鎧ごと砕かれ上半身と下半身が分離した。


『ゴハッ、なんだこの異常な握力は!』


「まだ全然本気で挟んでなかったんだがな。まあ骨だしこんなものか」


『馬鹿め砕いたくらいで勝った気でいるなよ!』


 スケルトンナイトの砕けた体がふわりと浮くと元通りにくっついた。


「あら、魔力で構成されてるから再生するタイプね~。テッペイ。毒噴射装置で再生できないくらい溶かしちゃって~」


「ああ、勝手に組み込まれたあれか。毒にはあまり頼りたくないが、砕いてもキリがないなら仕方ないな」


 俺はハサミをしっかり開くと毒を噴射するように念じる。外骨格の中の腕に針が刺さり一気に体液が吸い上げられる感じがした。


 ブシャーーーー。


『ゴワアアアア!身体が溶けるぅ!!』


 スケルトンナイトは無残にも剣や盾を残しドロドロに溶けてしまった。


《ぐ、グロイ》


「剣と盾があれば討伐証になるか?」


「魔力鑑定とかあるから大丈夫だと思うわよ~」


「たらふく食べるのじゃ~」


 ドラミナは既に涎を垂らしていた。


 ――――――――――――――――

 テッペイ達が去った後の霊廟にフードを目深にかぶった一人の少女が立っていた。

 

 「折角育てたスケルトンがやられちゃった……。でも面白いものを見つけられた。

 フフフ。あの銀ピカどんな骨なのかな……」


 そう呟くと少女は闇の中に消えた。

最後まで読んでくれて、本当にありがとうございます!

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