第四十三話:女神の査定ガバってない?
「はああ!」
カイトが聖剣を魔王に振り下ろす。
「ぐう!凄まじい聖気、先ほどまでとは確かに一味違うな、だが!」
魔王は聖剣を振り払いカイトに雷撃を飛ばす。
カイトは高まった聖気で雷撃を弾き無効化する。
「ほう。我の雷撃を無効化するか、聖気との相性もあるのだろうが、見事なものだ」
「これが聖剣の力か!これなら魔王に届く!」
カイトは自信を深めさらに魔王を追撃する。
ガキン!ガキン!
「なんだ聖剣を振り回すだけか?さっきのように星爆嵐撃!とかの技は使わないのか?」
「なに?」
「その程度では遊びにもならんと言っている!」
その瞬間魔王から凄まじい魔力が溢れ出る額の宝玉が輝き、深紅の大剣が魔王の手に現れる。
「だが、女神と貴様の努力に免じて武器を解禁してやろう」
「なッ!?」
魔王の目にもとまらぬ斬撃がカイトに襲い掛かる。カイトは何とか受けたが……。
パキーン!
「聖剣が折れた!?」
《神の加護がある聖剣が折れた!?テッペイじゃないのに!?姉さんどうなってるの!?》
「大丈夫!勇者!また私から引き抜けばいいから!」
コメットがカイトに呼びかける。
「わかった!」
カイトはコメットから素早く替えの聖剣を引き抜くと魔王の前に戻った。
「もうよい勇者よ」
魔王が剣を床に突き刺し構えを解いた。
「どういうことだ?」
「何故、我が長い間魔王として君臨できていると思う?」
「強いからか?」
「いや違う。強すぎるからだ」
「どう違うんだ」
「我が魔王となる前から何百年と女神は勇者を送り込んできた、我以前の魔王はその女神の勇者に討ち取られてきたのだ。だが我は違った。
聖剣や女神からの権能頼みの勇者など敵ではなかった。退屈でさえあった。だがお前は違う。聖剣なしでも我に挑んできた。今までの勇者たちの中で最も誠実だったといえよう。
だからもう剣を引け。お前が勝てないのは女神の目が節穴だからだ。我の力を見通すことが出来ぬ程な」
「そんな……」
「何度聖剣を引き抜こうと我に折られるだけだ、その度そこの少女は疲弊するだろう。無駄に命を削るだけだ」
「勇者。私の存在意義は魔王を倒すこと。なにも気にしなくていい」
コメットの意志は固かった。
「女神にかりそめの意志を与えられた哀れな聖剣よ、お前がその身を犠牲にしようとも我には届かん。魔王打倒の存在意義はそもそも達成できないのだ」
「でも、それでも……!」
カイトは力を振り絞りすべてを一撃に乗せようとした。
「もう休め。」
魔王が超高速でカイトの胴体に剣の柄を叩きつけた。
「ガッフ!」
カイトは吹き飛ばずその場で崩れ落ち意識を失った。
「勇者!」
コメットがカイトに駆けよる。
「大丈夫だ生きてる!」
「聖剣よこれが現実だ、目覚めさせようとするな」
魔王の目は二人を憐れんですらいた。
「おい、エリシア。魔王が言ってることは本当か?どれだけ勇者を送り込んだんだ」
《え?私は送り込んでないわよ?姉さんはなんかちょくちょく世界が混沌に傾くから調整しなさいって言ってるけど見てる限り平和だし、私が転生させるときは魔王を倒せなんて言わないし……》
「どちらにせよ管理が雑だな。しかしこれは困ったな。カイトが魔王を倒せないしこっぴどくやられてしまったせいで俺の計画は破綻してしまったぞ」
「自称カニよ待たせたな。さあ先ほどの続きをしよう、我の斬撃お前は耐えられるのか?」
「いや無理だろう。お前さっきアビスオーレでできた床に剣刺してたろ。俺の外骨格はアダマンタイト製だからな正直耐えられるとは思えん」
「お前の硬さは外骨格頼りなのか?」
「ハサミで切っ先を逸らしたりはできるだろうが直撃は無理だろう。強度的に無理なものは無理だ」
「そうかじゃあ必死に耐えてくれ!」
魔王は深紅の剣を横凪した。
「話が通じん奴だな」
俺はあっけなく体を上と下に切断された。
「本当に耐えられなかったのか……ならなぜあんなに余裕だったのだ……」
「テッペイは超再生持ちじゃからな」
「なに?」
俺は上半身と下半身を素早くくっつけて立ち上がった、切れ目が鋭いからか外骨格もぴったり収まった。
「スライムか何かの仲間なのか?体に核があるのか?」
「すりおろされても大丈夫じゃから多分核とかないと思うのじゃ」
「つまり我の斬撃では殺しきれないということか。一瞬で跡形もなく消す技もないしな……これは面白くなってきたな」
「全く何も面白くないが、俺のキャビテーションが平気かどうか試してもいいか?」
「キャビ?なんだそれは」
こんな感じの奴だ。
俺は魔王城の壁に向かってキャビテーションを放った。
パチン!
乾いた破裂音と共にプラズマが発生しアビスオーレでできた壁に大穴が開いた。
「……」
魔王は絶句した。
「いやそれは無理だろ」
「俺は無理を通されたが?」
「いや我は再生能力とかないから。それにそれ簡単に撃てるってことは連射できるな?」
「まあそこそこの回転数で連射できるな」
「一撃は何とか障壁で耐えられるが二撃目で消滅すると思う」
「そうか消滅されると証拠が確保できないし、ここでお前を倒しても俺の名声が上がってしまうしな」
「んん、よし、我としても退屈は嫌だが消滅したいわけではない、ここはひとつ我がお前の軍門に下るということでどうだ?」
「俺にメリットがないが?」
「我が勇者カイトに打倒されて心を入れ替えてカニの配下になったとすればよいのでは?」
「いやそれはますます崇められるだろうダメだ却下だ」
《そうですよ!魔王なんてちゃっちゃとやっつけちゃいましょう!》
「いや倒すのは論外だ、絶対にダメだ特に勇者が完膚無きにまでやられてるのがダメだ」
「誰も我の姿など知らないから勇者が打倒したことにすればよいのでは?ほらお前も我が筋骨隆々だと思ってたし」
「カイトとコメットが納得するかな……」
「二人には今後も修業してもらっていつか我を打倒すればいいとでもいって丸め込めばいい」
「だいぶ生きるのに必死だな長生きなのに……」
「長生きだから必死なのだ!そもそも世界侵略もガイラスとザルコウがやりたいからやらせてただけだし、アビスランドは自給自足できてるし、我は襲ってくる勇者返り討ちにしてただけだし!」
「うーん、まあカイトが起きたら話し合って決めるか」
なんだか急にヘタレた魔王に毒気を抜かれた俺は戦うのを止めることにした。
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