表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

81/82

第81話:落としどころ

 王国でも十本の指にはいる猛者、女騎士アイナスとの模擬戦をしていた。


「く、くそっ! こうなった私の全身全霊で、貴様の化けの皮をはいでやるぞぉ!」


 初撃をオレに回避されたと、勘違いしているアイナスは興奮状態。もはや周囲の言葉を聞く耳を持たない状況だった。


「はぁああ……!」


 腰だめに剣を構えながら、全身の魔力と闘気を高めていく。おそらくは今まで以上に強力な攻撃を放とうとしているのだろう。


 さて、これは困った。

 ここまで本気な相手に、どうやって落としどころを見つければいいのだろうか?


(落としどころ……か。さて、どうしたものか? ん……そういえば)


 主催である王子ラインハルトに視線を向け、ふと思い出す。彼が開始前に口にした言葉だ。


 たしか『頼む、やってくれ、フィン。これも我が騎士団を……私を助けるためだと思って、遊びの一合だけでもいいから』と言っていた。


(『遊びの一合だけでも』……なるほど、そういうことか)


 剣術において“一合”とは、互いに剣を一度打ち合わせること。

 今回の立ち合いにおいて、オレはまだ一度もアイナスと剣を打ち合わせていない。


 今回の提案者であるラインハルトは、おそらくオレに一度でもいいから剣を振るって欲しいのだろう。


(どうして素人であるオレの剣など見たいのだ? いや、深く考えるのはよそう。早く終わらせて、オーナーを迎えにいかないとな)


 時間的に王女とマリーの会話も終わりの時間に近い。従業員であるオレは急いで雑務を終わらせて、合流するのに越したことはないのだ。


「ふう……いくぞ、無礼者め。この奥義で貴様を打ち倒すぅう!」


 ちょうど相手も準備が終わっていた。アイナスは高揚した顔で、オレのことを睨んでくる。


「お、奥義……まさか、あの技を放つつもりなのですか、アイナス殿⁉ お止めください⁉ 下手したらこの鍛錬場の結界がふき飛んで……いえ、貴殿の身体が壊れてしまいますぞ⁉」


 審判役を任されていた騎士が何かを察して叫ぶ。おそらく奥義は身体に負担をかける技なのだろう。


「止めるな、ドドカス! この無礼者を打ち倒し、殿下に目を覚ましてもらうためには、この私の身体など知ったことか!」


 審判役の騎士はドドカスという名前なのだろう。審判役を任されるくらいなので優れた男なのだろう。

 だがそんな仲間の制止の声も、興奮した女騎士には届かない。アイナスは剣を動かし攻撃態勢に入る。


「いくぞぉお、無礼者めぇええ!」


 直後、アイナスは動き出す。

 高めた魔力と闘気を爆発。加速した身体能力で、一瞬で間合いを詰めてくる。


「マルレーン王国剣術……奥義が一つ《烈火閃光斬》ぁあああ!」


 放たれた斬撃はその名の通り。

 爆発させた魔力と闘気が剣先で燃え上がり、激しい閃光を放っていた。


 正直な個人的な感想だが……パッと見たところあまり脅威には感じない斬撃だ。


(だが、これは身体に負担が大きいな)


 おそらくアイナス自信は完璧に習得していない技なのだろう。このまま最後まで発動されたら、彼女自身の身体に大きなフィードバックがかかるように見える。

 両腕は二度と使い物にならないほどに、ずたずたになってしまうだろう。


(我々事務員にとって身体が資本であるように、彼女たち騎士にとっても両腕は資本。仕方がない。止めてやるとするか)


 先ほどと同じように迫りくる攻撃は、見た目だけでそれほど速くはない。この分なら素人であるオレでも簡単に見切れそうだ。


(とりあえず最後まで発動させないように、相手の剣を打ち落としてみるか。方法は……そうだな、昔の子どものころの遊びの要領でいくか)


 オレは子どものころに師匠とよく遊んだ《枝当てゲーム》がある。

 遊び方は簡単で『師匠が投げた木の枝に、オレが投げた木の枝が当たったら勝ち』というシンプルな遊びだ。


 ちなみに大人げない師匠は、子どもだったオレが相手でも容赦はしてこなった。

 負けないように“まるで音の速度でも超えたかのような速度”で木の枝を投擲していた。


 当時、最初の頃は手こずったオレだが、五歳くらいの時には対応可能に。

 師匠の全力で投げた木の枝を、百発百中で撃ち落とせるようになっていた。


「今回は遊びの要領で……相手の剣だけを打ち落とすように狙って……はっ!」


 アイナスの剣に向かって、自分の剣を投擲する。ポイントは投げる剣を回転させることによって、巻き込むように相手の剣を刈りとることだ。


 ――――ビュン、ビュン、ビュン


 ――――ザッ、シャーン!


 投げた剣は空気を斬り裂きながら、見事に命中。

 久しぶりにやった投げ方だったが、まだ腕の方は錆びてはいなかったようだ。


「ん? 相手の剣が?」


 だが予期せぬことも起きた。

 投擲剣が命中した瞬間、アイナスの手にしていた剣は激しい音を発生。

 砂よりも細かい粒子となり消失してしまったのだ。


「ふむ、これは失格だな」


 《枝当てゲーム》では相手の枝を折ってしまったら失敗となる。粉砕してしまうなど投擲側の失敗もはなはだしいのだ。

 ここ数年はやっていなかったゲームなので、やはり久しぶりで腕が鈍っていたのだろう。反省だ。


「ん?」


 そんなことを考えていた時だった。訓練場の異様な雰囲気に気がつく。


 これはどういうことだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ほとんどのページに作者本人の広告が多く、本文6割と広告4割と、ほぼ半分くらい広告で、非常に読みづらいです。
[一言] ほとんどのページに作者本人の広告が多く、本文6割と広告4割と、ほぼ半分くらい広告で、非常に読みづらいです。
[良い点] 1話当たりの文字数が丁度よく、テンポ良く読み進むことができ、ストーリーも無駄に停滞することが無いのでサラサラと読み進められた。 [気になる点] 誤字脱字が多いかな… [一言] プロフィール…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ