第75話:王女の部屋
ラインハルトの妹であり、王女の部屋に向かうことになる。
「こちらだ、二人とも」
ラインハルトの先導で、王宮の奥の別の建物へと進んでいく。
「フィ、フィンさん、なんか急に警備が、厳しくなってきたような気がしませんか、なんか?」
マリーがきょろきょろして落ち着かないように、足を踏み入れた区画は警備兵が倍増している。
部外者であるオレたちのことを、明らかに鋭い視線で観察してくる。先導役のラインハルトがいなければ、今にも拘束されてしまいそうな雰囲気だ。
「そうですね、オーナー。ここは、おそらく王族の住まう区画なのでしょう」
王宮は執務室や社交場など、国の表向きの公務の場所がある。それ以外にも王家の者が日々暮らしている場所があるのだ。
「ひっ、王族の住まい⁉ やっぱりそうなんですね⁉ ふう……ど、どうして、そんな場違いな場所に私はきちゃったんだろう……ま、まぁ、これも全てフィンさんの存在が原因なんですけど……はぁ……」
王家の住まう区画の廊下を歩きながら、マリーは深いため息をついている。何やら半分諦めた様子で、半笑いすら浮べていた。
「フィン、この部屋だ」
別館の奥の扉の前、先導のラインハルトが止まる。ここが目的の人物がいる部屋なのだろう。
入り口前には屈強な騎士たちが立ち警護している。雰囲気的に彼らは守衛の中でも、特別な騎士なのだろう。
「さて、中に入るぞ。二人とも」
「えーと、ラインハルト殿下……私も中にですか?」
マリーが緊張しながら訊ねているが、彼女とオレ以外に部外者はいない。
「ああ、もちろんだ。マリー殿はボロン冒険者ギルドの、オーナーだろう、フィン?」
「そうですね。いきましょう、オーナー」
「うぅ……分かりました。もう高台から飛び込むつもりで、私も付いていきます!」
「はっはっは……そこまで固くなる必要はないぞ、マリー殿」
王族であるラインハルトの命令には、基本的に市民は逆らえない。彼を先頭に部屋の中に入っていく。
「うわ……すごく、素敵な部屋……」
入室して開口一番、マリーが声を上げる。仕事中とは違う少女の声を出す。
「すごく豪華で……とても可愛い……女の子の憧れを集めや部屋みたい……」
年頃の少女マリーが目を輝かせるのも無理はない。入室した部屋が、予想に反して女の子っぽい雰囲気だったのだ。
家具の色合いや、壁紙、調度品の可愛らしさ。年齢的にも感性的にもマリーにドンピシャで好みなだったのだ。
(なるほど、お姫様の私室……という訳か、ここは)
そんな興奮するマリーを横目に、オレは部屋の中を観察していく。
室内には女性の騎士や、メイドさんたちも控えており、こちらに視線を送ってくる。彼女たちは王族専用の世話係だろう。どこか気品もあり優美さもあった。
だが王族らしい女性は室内にはいない。更に別の部屋にいるのであろうか。
「フィン、こっちの部屋だ」
ラインハルトの案内で、奥の部屋に向かう。
「うわっ……ここも素敵……」
またマリーが感動の声をあげる。
奥にあったのは寝室だった。
大きなベッドが中央に置かれており、周りをカーテンのような幕で囲ってある。
(寝室に案内された、だと?)
マリーは疑問に思いっていないが、案内されたのが寝室だったことに、オレも思わず疑問に思う。
何故なら王族女性の寝室は、王宮の中でも超プライベートな空間。
たとえ実兄である王子の案内だとしても、一般市民が足を踏みいられらない場所なのだ。
(つまりラインハルトの妹は寝室から動けない、訳ありかもしれないな……)
オレの推測は当たっていたようだ。ラインハルトの案内でベッドの近くまで案内されていく。
「こんな場所ですまないな、フィン。これが私の実の妹サラエラだ」
ラインハルトはベッドの幕を上げて、自分の妹を紹介してくる。
ベッドで横になっている少女の顔が見える。
「えっ……」
少女の顔を見て、マリーが思わず声を漏らしそうになる。
何故なら少女の見た目は“普通の状態”ではなかったのだ。




