罰と土下座と誠哉様
いつもより文が長くなってしまいました……反省します。
7月。夏、真っ盛りである。
そんな中、馬鹿の集う不良校、不知火高校にて。
「え〜……で、あるからして〜……」
そして運動場。炎天下の中、俺達は運動場にて地獄を味わっていた。
「あ、暑いね。飛鳥君」
不知火高校の校長の話は長い。
このくそ暑い運動場で30分弱喋り続ける。
「僕、倒れちゃいそうだよ……」
「倒れる……そういえば優希、お前女になってから変わった事……無いか?」
優希は元から身体が丈夫ではない。風邪を引いただけで3日寝込むほどだ。急な体の変化に着いていけるか心配だ。
「変わった事……? それなら一つだけ心当たりがあるよ」
「……僕、飛鳥君より一日前に女の子になったでしょ? その時からたまに変な夢を見るんだ」
変な夢……やっぱり俺と同じだ。何か女になった事と関係があるのかもしれない。
「……俺達、男に」
戻れるのか、と俺は優希にそう聞こうとした。
「この話はもう終わろう? 今更女の子になったことを嘆いても何も変わらないよ?」
すると、優希が俺の言葉を遮った。……確かに、こんな話をしていても何も変わらないんだが。
「そうだよな……折角こんなにパーフェクトな体を手に入れたんだ。男に戻れる時が来るまで有効活用するとするか!」
そう意気込む俺の後ろで、優希が何というか、自分の体をぺたぺた触りながら複雑な顔をしている。
「パーフェクト……か。うぅ、何で僕の方はこんな事に……」
「優希。この世の中にはお前みたいなちんちくりんが好きな人もいるんだぜ?」
俺は優希を慰めるつもりだった。
だが、かえって火に油を注いでしまったようだ。
「ち……ちんちくりんじゃないもん! それに、飛鳥君が完璧すぎるだけで、他にも僕みたいな人はたくさんいるんだからね!」
「褒めてくれてありがとう。で、他に誰がいるってんだ?」
「……麗華ちゃんとか」
「……それ、本人の前で言うなよ。結構気にしてるみたいだから」
「うん。何だか僕、嫌われてるみたいだしね」
「……嫌ってるわけじゃないと思うぞ」
なぜか麗華は昔から優希を敵視している。唸り声をあげる麗華は
まるで威嚇する犬のようだった。
「そこの二人! 私語は慎め!」
朝礼台の方から怒号が飛んできた。不知火の鬼こと、山中先生からだ。
「……怒られちゃったね」
「だな」
そして34分後。担任が不在なのを良い事に掃除をサボり、それぞれが夏休みの予定の事でざわつく二年一組の教室。
「後は、掃除して帰るだけだな!」
二組の雄二を除く、いつものメンバーで集まっていると、武は興奮気味に俺にそう喋りかける。
「おや、佐藤君と五十嵐君。忘れた訳じゃないですよね? ――野球の件。」
翔一が嫌な事を思い出させた。
そう、それは一週間前の話。雄二達の二組+αチームに俺達一組は野球で負け、罰としてなんでも一つ命令を聞く、という事になってしまったのだ。
「わ、忘れてた……」
先程までのテンションが嘘だったかのように声が小さくなる武。
「お前達は俺達に敗北したのだ、それなりの事はしてもらうぞ」
翔一はともかく雄二、西園寺は何を言ってくるかわかったもんじゃない。
「飛鳥君、喋ってないで掃除しなくちゃ駄目だよ! 教室は綺麗にしとかないと!」
優希は生真面目に箒をもって一人で掃除をしている。こういう所は賢いみたいだ。成績でみれば学年一の馬鹿なのに。
そんな事を考えていると校内放送が流れた。
「あ〜……二年一組! 貴様達が掃除してない事はお見通しだ。速やかに掃除を始めろ。さもなくば、わかるよな?」
野太い声が教室内に響く。その瞬間、生徒達の間の空気が凍りつき、5秒とたたない内に全員がてきぱきと掃除を始めるのだった。しかし、山中先生は俺達を見張ってでもいるのだろうか。
「山中先生は本当に人なのか? たまに疑いたくなるぜ……なあ、飛鳥?」
箒を使い、掃き掃除をする武。武の意見には同意する。なぜならあの人は神出鬼没、皆で銭湯に行っても、旅館に泊まっても、どこに行っても姿を現すからだ。
「そんな事言ってるとまた山中先生が出てくるぞ?」
「ははっ、縁起でもない事言うなって」
「だよなー。悪い悪い、冗談だよ」
俺と武は掃除をほんの三分で放り投げ、窓の外を見てほのぼのと談笑していた。
「……なあ、飛鳥。何か音しねえ?」
武の言うとおり、何か物音がする。
「言われてみれば……確かに」
少し周りを見渡すと、武の横にある掃除用具の入ったロッカーがガタリと動くのが目に入った。
そんなまさか。そう思っていた俺の嫌な予感は的中する事になる。
「佐藤……五十嵐。やはりお前達は俺の忠告を理解できなかったようだな」
ロッカーが徐々に開いていく。ロッカーの方を見る武の顔は真っ青だ。恐らく俺も武と同じ顔色をしているだろう。
「し、知ってるか? 飛鳥……頭の脳細胞ってのはな、拳骨で数千個死滅していくらしいぜ」
「そんな根も葉もない噂信じてるのかよ……」
俺はそう言いながら武の顔を見た。すると、武は死を覚悟した男の顔をしていた。
「鉄拳制裁!」
そう大声で叫んだ不知火の鬼は、俺達の頭目掛けて鋼のような拳を振り下ろした。
男女差別は反対だけど……少しくらいは加減してくれても良いんじゃないかな……帽子で衝撃が和らぐわけでもないし。
「武……俺、お前の言ってた事少し信じたくなってきたよ……」
「そうか……それは良かった……これで俺の脳細胞も死滅していくのか……」
途切れ途切れの声で喋る武。それと同時に、自分の意識が遠のいていくのがわかる。
「目覚めたら……また、いつもと変わらない風景があって……飛鳥も雄二も……皆、笑ってる過ごしてるんだろうな……」
「やめろよ……死ぬ訳じゃないんだからさ、ちょっと気を失うだけだろ? 気楽にいこうぜ、武。綺麗な川が見えても……渡るな……よ……」
そして、俺と武は教室の床に静かに横たわるのだった。
そして、白い霧のかかったいかにも天国っぽいところで俺は目覚めた。目の前には水の透き通った綺麗な川が流れている。そして向こう岸には白装束を着た父さんがいる。
「と、父さん⁉」
「飛鳥。お前はこんな所でくたばるのか? まだやり残した事があるだろう早く自分の世界へ帰れ」
そういうと父さんは川を渡りこちら側の岸ギリギリまでやって来た。
「俺はもう死んでるからな。そっちへは行けない……だが、お前が女になった事は承知している」
この時、一瞬、ほんの一瞬でも喜んだ俺が馬鹿だった。いや、馬鹿だから不知火高校なんかに通ってるんだけどね。
「お前が女になった事を父さんは嬉んでいる。ぶっちゃけ父さんは息子ではなく、娘が欲しかったんだ」
「……父さん、俺が女になった事喜んでるのかよ」
「いや、もちろんお前が産まれてきただけでも嬉しかったぞ? ……でもな、結衣が産まれた時の方がちょっと……嬉しかったかな?」
本当にぶっちゃけてすっきりしたのか、満面の笑顔で俺の肩をバシバシ叩く父さん。 死んでからカミングアウトなんてなに考えてるんだよ。
「……だがな、お前がもし男に戻れなかったとしても、そこらへんの男と結婚するなんて……」
……男と結婚なんて冗談じゃない。
「そんな事、父さんは許さんぞぉ! そんな事があれば、この川を越えてでもその男をぶん殴りに行ってやる!」
「だから、俺は男なんかと……ひやああ⁉」
暴走し、我を失った父さんは人とは思えない力で俺を背負い投げし、無理矢理川から遠ざけた。
一瞬で視界の上下が逆転し、始めての感覚に襲われた。 ……何だよこれ。俺の父さんに対するイメージ像が音を立てて崩れていく。
「あ……君。起きて、飛鳥君」
聴き覚えのある高くて可愛い声。優希か。……恐らく先程まで居た所は三途の川だったのか……危ないところだった。
それにしても、さっきの父さんは何だったのだろう。できるならば、夢であってほしい。
「おーい、起きろ飛鳥〜」
耳に残っていた低くて可愛くない声。雄二だ。 二組が来ているという事はもう放課後なのか。
「……おはよう優希」
「あ、目が覚めた? 心配したよ……中々起きないんだもん」
安定したのか、顔がほころぶ優希。
「あれれ〜? 俺は無視ですか〜? おっかし〜な〜……」
そう言いながら俺の頬を何度も突つく。ウザい。果てし無くウザい。
「……お、おはよう雄二」
「そう、それでよろしい」
雄二は満足したのか頬を突つく手を止め、悪そうな笑顔を浮かべた。
「武は大丈夫なのか?」
「ああ、武なら西園寺に木刀で叩き起こされてたぞ」
「ぼ、木刀?」
「……さて、そろそろ罰ゲームの時間が来たな」
「こうなった以上、ちゃんと罰は受けてやる。俺も男だからな」
遂にこの時がやってきた。負け組の俺達はおとなしく雄二に着いていくしかなかった。
「……何で多目的室?」
「俺が文化祭の出し物について考える、という名目でこの部屋を借りたのだ」
さすが生徒会長。やる事が違う。
だが、文化祭は11月、今は7月。
少々早すぎる。よく疑われなかったものだ。
「と、いう事で今回罰を受けるのは……負けた直接の原因である佐藤武!」
ハンドマイクを使い司会を始める雄二。早速武の名前を上げた。
他の一組生徒達からもうんうん、と賛同する声が……というか賛同する声しか無い。当然だよな。
「と、反則まがいの行為を行った五十嵐飛鳥! 城戸優希!」
「うぇっ⁉」
何故か俺と優希の名前が呼ばれる。
「待てい! 何で俺と優希もなんだよ!」
「いや、だってお前……脚見せて誘惑は反則だろ。優希も涙はずるいわー」
至って冷静な声で対処する雄二。
「と、いう事で……優希、ちょっと来てみ?」
有無を言わせず優希を呼び寄せる雄二。優希はなんの警戒もせずにとてとて雄二の方へ向かって行く。
「何? 雄二君」
すると、雄二は優希へ何かを耳打ちする。また余計な事を言っているに違いない。
「えぇっ⁉ ぼ、僕……そんな事出来ないよ」
「いいから! ほれ! ……ただし、本気でな!」
「え……うぅ」
後ろから優希の肩を押す。優希は心なしか少し戸惑っているようにも見える。
「た……」
優希は次の言葉を声に出す事に抵抗があるみたいだ。
「……武君のせいで試合に負けちゃったんだからね!」
ごめんね。そう小さく呟いた優希は一度深呼吸すると、武を思い切り罵倒し始めた。
「な……どうしたんだ優希⁉」
「武君の馬鹿! えっと……三振王!」
恐らく雄二に渡されたのであろう悪口の書かれた紙を見ながら、次々と悪口が飛び出す。そして武に対する悪口が優希の口から出る度に、武がダメージを受けていく。
「これは……辛いですね……城戸君が悪口を言っているのは初めて見ました」
「城戸優希は普段、人の悪口なんて言わないからな……佐藤武も相当、精神にダメージを受けているはずだ」
横から冷静に実況するエリート二人。本当に何でこんな高校に入学してきたのかわからない。その後も紙を見ながら罵声を浴びせる優希は罪悪感で軽く泣きそうになっていた。
「っ……さ、佐藤君の役立たず! もう顔も見たくないよ!」
紙に書いてあった文の最後の行には"武"君ではなく、"佐藤"君と書かれていた。もしこの罵声の対象が俺だったなら、間違いなく心がポッキリと折れているだろう。
「ァ……ァァ……」
案の定、武も心を折られた様だ。声にならない乾いた叫びを上げている。男子校である上に、名前すら暑苦しい不知火高校。そんな中で唯一の清涼剤である優希に嫌われた、となっては楽しい学校生活を送る事が極めて難しくなってしまう。
「よし、これで優希と武に対する罰は終わりだ……どうだ武! 思い知ったか!」
雄二はパンッ、と手を叩き優希を解放した後、がくりと膝から崩れ落ちた武を見下ろし大きく高笑いを披露した。
拍手が起こる。余程、武のくしゃみを許せなかったのだろう。味方からも惜しみの無い拍手が送られている。
「……さて、本題はここからだ。飛鳥、お前にはある服を着てもらう。……何、如何わしい物は無いから心配すんなって」
そう説明する雄二の顔は、武を見下していた時の数倍輝いていた。
「なっ……俺は男だぞ……お前らなに考えてるんだ?」
「俺達は急に変貌を遂げた飛鳥の扱いに困った事もあった……だがな、遂に俺達はある結論に辿り着いた」
ある結論……まさか、俺が女だって感づいたのか?
「……"飛鳥は合法。優希は違法。そして僕達はゲイじゃない"。これが俺達の最終結論だった……」
やはり俺と優希が男だという認識はあったみたいだ。こんなものが雄二達の最終結論だというのなら、この結論に至るまでにはどんな過程があったのだろうか。
「……何で優希は駄目なんだ。同い年だぞ?」
俺だって優希と同じ17歳、どう考えても違法である。というか、無理矢理なら何歳だろうが犯罪だ。
「わかるだろう? 飛鳥は身長もあって合法オーラを醸し出している。それに比べて優希はちっこい。犯罪臭プンプンだ」
「え……僕ってそんなに臭うかな……」
少しショックを受ける優希。可愛い。髪の毛がボサボサになるまで撫で回したくなる。
「い、いや、違うぞ優希⁉ 優希にセクハラは良くないな〜って話だ! どっちかっていうと優希は男子の中では格別に良い匂いだ!」
その言い方は変態ととられても仕方ないぞ。……いや、元から変態だったな。
「本当? ……ありがとう。雄二君」
「ほら、見てみろ! 優希はどう見たって手を出しちゃいけない生き物だろ!」
優希NOタッチ理論を熱弁する雄二。その表情には若干、狂気的な物を感じさせる。
「それに比べて飛鳥は口は悪いわ……無邪気というか、邪気だらけだし。何か、襲っても褒めまくれば照れながら許してくれそうだし」
……確かに口は悪いし、無邪気でもない。でも、無理矢理襲われてそんな簡単に許すほど俺はチョロくはない。……それに、そんな事言われると心が痛い。
「あ の な! 俺だって……」
「五十嵐飛鳥。罰はちゃんと受ける……お前は確かにそう言った筈だ。真の漢ならここで期待を裏切らないと思うがな」
西園寺が俺の発言を遮る様に言葉を挟む。
「お前が真の漢だというのなら、これくらいの事は……出来るよな?」
真の漢……そうか、これは俺自身に下された試練なのかもしれない。……よーし!
「……わかったぜ! 見てろよ雄二。俺がここで真の漢ってもんを見せてやるよ! 行くぞ優希! 」
「え、う……うん!」
こうして俺は着替え用の部屋に優希を連れて行った。なぜかというと、女物の服だろうと優希と二人なら何とかなると思ったからだ。
「……やっぱチョロいな」
「……ですね。及川君」
「な、なんだこれは……」
隣の部屋に着いた俺達は机の上に置いてある紙袋を開けた。すると、中には女子制服一式が入っていた。
「……俺は雄二の性癖を疑うね。どっから手にいれたんだよこんな物」
「と、取り敢えず早く着替えて終わらせよう?」
雄二にしては比較的まともだったからいいとして、優希の言うとおり早く着替えて終わらせる事にする。
「飛鳥君、可愛い……」
「いざ着てみると、恥ずかしいな……」
スカートはどうも慣れない。スースーするというか、あんなヒラヒラ一枚しか下に着てないと思うと歩き辛くなる。
「き、着替え終わったぞ?」
多目的室に戻った瞬間二組の男子の殆どの目が輝いた。ま、今の俺は誰もが振り返る美少女。無理もないな。はっはっは。
ついでに、一組の奴らはというと、俺が着替えてる間に目隠しをされ、身動きが取れない様に縛られていた。えらく酷い扱いだな。
「飛鳥、お前、やればできるんだな!」
雄二はそういうと当たり前かのように慣れた手つきでスカートを捲る。
「おーっと、残念だったな雄二……中には体操服を履いてるんだよ!」
「お……男のロマンが……」
「なにが男のロマンだ。お前の事はお見通しなんだよ……おとといきやがれ!」
一年間の付き合いで雄二の事は見切った。念押しで体操服を着込んでいて正解だったようだ。 雄二は、武と同じように多目的室の床に崩れ去った。
「そこをどけ、及川雄二」
うなだれる雄二を木刀で払いのけ、近づいて来る西園寺。
「……五十嵐飛鳥。お前に最後の罰を与える」
西園寺が翔一達に聞こえない声で耳元で小さく囁く。吐息ががくすぐったい。
「……なんだよ」
「そんなに身構えるな。ただ、一日、俺の恋人になれ。これだけの事だ」
思ってたより軽い罰だった。俺はてっきり服をひん剥かれて乱暴されるかと。
「……お前が奢ってくれるならな」
今は女なんだから女子制服を着てても、姉さんや麗華に見られない限りは大丈夫なはずだ。それに、ちょうど昼飯時。飯食って、満腹になる。その上金も減らない。断る理由が無い。
「別にいいが……恋人だからな。恋人らしくない行動をした場合は奢らんぞ……それでも、本当にそれでも良いのか?」
俺が了承した事が意外だったのか、目を見開き驚いている。西園寺がこんな間抜けな顔を見せる事は珍しい。
「わかってるって。任せとけ」
だが、俺には彼女なんていた事が無い。遂に漫画の知識に頼る時が来たようだ。
そして繁華街。俺は予想通り男共から熱い目で見られている。人からこんな眼差しで見られるのは悪くない。王様になった気分だ。いや、今は女王様か? なんてな! あっはっは! ……はぁ。
「西園寺……左手で頭撫でるのやめてくれないか? 恥ずかしいから」
「少し肌寒いのでな。お前の頭を摩って手を温めているのだ」
「このクソ暑い日に俺が右腕にくっついていても寒い、と?」
今、俺は西園寺の腕に抱きついている。……周りからは冷ややかな目より嫉妬や羨望の目の方が多い気がする。何せ、俺と西園寺は周りから見れば美男美女のバカップルにしか見えないからだ。
「ほら! 飯食いに行くぞ西園寺!」
「わかっている。もう昼時だしな」
俺は今、生まれて初めて男の腕に抱きついている。この時のために、胸は十分に押さえつけた。女とバレる心配は無い……はずだ。
安い・早い・不味いが売りのファミリーレストラン、"LOVE・フード"。
「西園寺。食べさせてやるから口開けろ」
恋人らしくを再現するには羞恥心を捨てる事。
……この言葉も漫画の受け売りだが、本当にこれでいいのか疑ってしまう。
「しかし……一日限定だとしても、こうしてお前と過ごせるとは。夢の様だな」
俺が食べさせたハンバーグを食べ、感傷に浸る西園寺。
まさか昼飯代、その他諸々が浮くなんて俺も夢の様だ。一日恋人は嫌だけど。
「今日一日はお前の恋人だからな。できる事はできるだけしてやるよ」
金がかかっている事だ。そう簡単に約束を破る訳にはいかない。その辺は賢いんだ。……こんな事、自分で言ってて悲しくなるな。
「……で、その誠哉様とやらを取り返しにいくのか?」
「と、当然ですわ! あのお方は私の旦那様、その辺の女狐に誠哉様を譲るわけにはいきません!」
「そうか……なら、早く行くぞ。彼がどこかに行ってしまわない内に、な」
「ん、そういえば……西園寺、お前の家ってさ、確か名家だったよな?」
「確かに西園寺家は伝統のある家系だ。だが、それがどうかしたのか?」
「いや、それなら許嫁とかいるのかな〜って」
「……俺の前で二度とその言葉を口にするな。頭が痛くなる」
「な……何かごめん」
この反応を見るとやっぱり許嫁がいるのか……?
「……別に構わん。だが、俺はあのような奴を許嫁として認めたわけでは無い。それに……俺の結婚相手は五十嵐飛鳥、お前しかいない」
そういうと西園寺は俺の隣に移動し、俺に抱きついた。こいつには遠慮という知識が抜けているのか。
「むぐ……ぅ……!」
俺が西園寺に抱きつかれ窒息しかけていると、聞いた事の無い女の声が聞こえた。嫌な予感がする。
「誠哉様! その小汚い女から離れてください!」
……噂をすれば影が差す。誠哉様、と言っているあたり、西園寺の許嫁か? そしてその見るからに裕福そうで、気の強そうな女が俺に指を指している。
「はぁ……星羅、何の用だ? 俺は今、忙しいんだ。早々に自分の家に帰れ」
西園寺はソファにもたれかかり深いため息をついた。そして、眉間にしわを寄せ、心底面倒臭そうな顔で星羅と呼ばれた女の方を見る。
西園寺が珍しく名前だけで呼ぶあたり、それなりに関わりがあるみたいだ。
「俺は一分でも多く、五十嵐飛鳥と過ごさなければならないのだ。お前にかまっている暇は無い」
俺の頭を再び強く抱きしめる西園寺。苦しい、このままじゃ窒息死する。
「そ、そんな事許せるわけがありませんわ!」
「許せ。それに、俺はお前などに興味は無い」
バッサリと切り捨てる西園寺。俺からすればそんなに思ってくれている人がいるだけで羨ましい。しかも美人だし。 ……麗華? 麗華は年上に憧れる年頃だし後一、二年すれば俺なんか見向きもしなくなるはずだ。悲しいけど。
「せ、誠哉様が私に興味が無くとも私は諦めませんわ……必ず貴方様を振り向かせてみせます!」
「無理だと思うがな」
西園寺め。また余計な事を……星羅と呼ばれた女がキッとこちらを睨む。女の嫉妬は恐ろしい。
「貴女……許せませんわ!」
「星羅。取り敢えず座って落ち着いたらどうだ? 周りの人に迷惑だぞ」
「……そ、そうですわね。少し取り乱してしまいましたわ」
「私は一条星羅。誠哉様の正当な許婚、ですわ」
正当を強調し、一条と名乗る女。……そんなに強調しなくとも十分耳に入る。一条さんが俺に嫉妬の念をぶつけようとすると、もう一人の少女が割って入った。
「星羅が迷惑をかけてすまないな。私は皇アリサ。そいつの同級生だ」
落ち着いた声で話す少女は皇アリサと名乗った。
「えっと、皇……さん? 俺、五十嵐飛鳥っていいます」
「五十嵐……? えっと……五十嵐君。急ですまないが、少しいいか? 君の家は私の家と関わりがあってな、せっかく君に会う事ができたんだ。君に少し話があるんだが……その、金銭の事なのだが」
よし、逃げよう、今すぐ逃げよう。くそ、あの親父……金でも借りてたのか?
「……なあ西園寺。俺達、今何かとピンチだろ?」
「……そのようだな」
「逃げねえか? このままここにいても俺達、何の得もしねえぞ」
すると西園寺は、
「うむ、逃げるぞ。迅速にな」
即答した。それも真剣な顔で。次の瞬間、俺達は持ち前の運動神経で瞬時に店を飛び出した。
「誠哉様、逃がしはしませんわ!」
「なっ⁉ ど、どうして逃げられたんだ⁉ 私は普通に話していてはず……何か間違えた事しちゃったかな……」
やはり一条さんと皇さんが追って来た。しかし、俺たちの食べた分の金は払ってくれたらしい。怖いのか優しいのか。
「さ、西園寺。俺を担がなくても大丈夫だから!」
周りの目も気にせず、俺を抱きかかえながら爆走する西園寺。は、恥ずかしい。顔から火が出そうだ。
「誠哉様、お待ちになってくださいませ!」
「五十嵐君! どうして私から逃げるんだ⁉ 私、何か悪い事をしたのなら謝るから……だから逃げないでくれ!」
俺と姉さん、麗華の死活問題が追いかけて来る。こんなとこで人生終わらせてたまるか。
「さ、西園寺……」
「はっはっは!」
仲間が西園寺しかいないとなると、呑気に笑っているこいつが急に頼もしく見えてくる。だが……別々に走った方が早いんじゃないか。
「とうっ!」
そう考えた俺は、西園寺から飛び降り、西園寺と二方向に分かれて逃げ出した。
そして、 一時間後――
「で、どうして私から逃げたんだ? な、何か嫌われる様な事をしたか?」
「え、えーっと……なんというか」
捕まりました。今、皇さんに尋問を受けている最中です。正直辛いです。お姉様助けてください。
「っ……す、すまない……」
じわっと涙が目頭に溜まる皇さん。女を泣かすのは俺のポリシーに反する。
「そ、そうじゃなくて! ……と、とにかく用件はなんですか?」
こうなったら腹を括るしかない。借金があるならあるで、頑張って返済する事にしよう。
「それはだな……昔、私の父は親友、つまり君の父親に会社を立て直す為に多額の借金をしていたんだ」
あ、逆なんだ。父さんが借りてた側じゃなくて貸してた側か。……ああ、ダメだ。どうしてもさっきの事を思い出してしまう。
父さんはもっとこう……THE・父親みたいな俺の目指す理想の人だと思ってたのに。
「そして、君の両親が……その、亡くなっただろう?」
「その時に君達は私の親に金を貸したばかりに金が無く、止むを得ずこの辺りの家へ引っ越した……と、 いう事だ。昔、私と遊んだ事もあるんだぞ?」
言っていいのかわからないが、あまり無いように見える胸を張る皇さん。
「そ、そうだったんですか?」
だからあんなに家が狭いのか。……後少し広ければ麗華を部屋から追い出す事も出来たのに。
「不運な事に、その後私の親の会社は大成功だ。で、借金を返そうにも君の居場所がわからなくてな……」
なんか重い話だな。現役の不知火高校生には耐え難い。
「星羅の許婚探しに付き合っていたところ、偶然君を見つけたもので好機と思って、この事について話をしようとしたら……」
「……俺と西園寺が猛ダッシュで逃げ出した、と?」
「そういう事だ。早速五十嵐君に嫌われたかと思って泣きそうだったぞ」
なんかものすごく申し訳ない気分だ。
「と、いう事で、だな……このトランクケースに3000万入っている。受け取ってくれ」
そんな笑顔で渡されても……それに、そんな大金、白昼堂々受け取れるはずが無い。
「い、いや、無理です! 今の生活に満足してるんでそんな大金もらえません!」
「そんな事言わずにだな……私は、この日の為にこの重いトランクケースを毎日持ち歩いていたのだからな」
毎日3000万円を持ち歩く人なんて始めて見た。このままじゃ埒が明かん。姉さんに相談だ。
「姉さん、今大丈夫? 実は……」
事情を説明したところ、やっぱり姉さんも困っているようだが、借金の事については知っていたようだった。そして、
『長男の飛鳥君に任せます』
……これが姉さんに助けを求めた結果だ。全責任を俺に押し付けやがった。それが年長者のする事かよ。
「……取り敢えず! このお金は両親に返しておいてください。……それで良いですよね?」
「むぅ……わかった。だが、いつか絶対に受け取ってもらうぞ」
何とか皇さんを抑える事に成功し、安堵する俺。だが、そんな俺に思わぬ不意打ちが飛んで来た。
「……で、君は、女だったのか? 私の記憶では君はやんちゃな男だった記憶があるのだが」
最初は冷や汗がでたが、よくよく考えてみると、まあ……そうなるわな。腰まで伸びた髪に女子制服……誰が見ても、男物のキャップ帽を被った女に見えるだろう。もしくは女装癖のある男か。
「な、ななな何言ってるんですか⁉ そ、そんなはずないですよ〜! こ、これも罰ゲームで着ているだけで……!」
自分が動揺している事が嫌なほどわかる。ああ、絶対嘘だってばれてるよ……もう最悪。
「……なら、先に謝っておく……少し失礼する」
そういうと、何と服の上から俺の胸付近をまさぐった。
「きゃっ⁉ な、何やってるんですか」
きゃっ⁉ じゃねえよ俺の馬鹿。 ……穴があったら入りたい。
「……これは何だ」
ぐにぐにと胸を揉む皇さん。
「あっ……ちょ、ちょっと、そんなに揉んでも俺は男なのは変わりませんし、それは……筋肉が無いだけです! そう、脂肪です、」
我ながら完璧な言い訳だ!…… だが、皇さんは疑いの目を向けている。
「五十嵐君……少し乱暴だが、我慢してくれ」
そういうと、俺は女子制服の中に手を突っ込まれサラシを強引に奪い取られた。というか、破り捨てた。これは……素晴らしき解放感。なんていってる場合じゃねえ!
「す、皇さん、酷いですよ!」
サラシを巻く事を前提にサイズを合わせた為か、はちきれんばかりに制服の胸部が膨らんでいる。改めて見るとやはり胸が大きい。 が、今はこの危機的状況を打破する方法を考えなければ。
「やはり……」
「違いますって! 俺は男だったんです!」
「男……だった?」
「あ……」
しまった、墓穴を掘った。どうしようどうしよう。
あ……俺は今、ある事を閃いてしまった。 女にならバレても良いんじゃないか? 武達は女との関わりが全くと言っていいほど無い。ここで皇さんにバレたとしても、武達にバレる確率は……0だ。 俺って天才?
「実は……少し前までは俺も男だったんですよ。それはもう……とびっ……きりのイケメンだったわけです」
「それは自分で言う事では無いと思うが……」
「で、ある時急に女になっちゃったわけです。それもとびっ……きりの美人に。わかりましたか?」
「そ、そんな事が現実にあり得るのか?」
「なんでも調べてくれて結構ですよ。なんたって事実ですから!」
俺は俺。誰がなんと言おうと揺るがない事実だ。
「いや、いい。嘘をついているようには見えんしな」
「後、俺の事は男だと思って接してくださいね?」
麗華は自覚が足りていないのか知らないが、俺の前で普通に服を脱ぎだす。もしそんな事になれば俺の理性が保てなくなる可能性がある。
「了解だ。急に押しかけて来てなんだが、私はこの性格上、親しい者が少ないんだ。だ、だからこれからは……そ、その……し、知り合いでいてほしいというか……」
「友達になってくれ……と?」
「ち、違う! あ、違わないんだが……! え、えっと……!」
動揺するなんて皇さんらしくない。……違わない、ということは友達になってほしいみたいだ。素直にいえばいいのに。
「それじゃ、これからよろしくお願いします。皇さん」
ここは俺から爽やかに話しかけよう。
「え……? う、うん……あ、ありがと」
俺も姉さんみたいに怖い人じゃなくて皇さんみたいな可愛らしい人に好かれたかった。
「そういえば……五十嵐君は何歳なんだ?」
「俺は17歳ですけど……何か?」
「やはりな。私は16歳、君より年下だ」
ええっ、麗華と同い年か……えらい違いだな。
「そ、そうだったんですか?」
「なら、他校とはいえ、私の先輩だ。……だからその丁寧語はやめてくれないか? なんというか……距離があるように感じてしまう」
「わかりました皇さん」
「……う……」
「どうかしましたか? 皇さん」
「そうだよな……突然追いかけてきた女にそんなこと言われても困るよな……」
丁寧語を続けていると、涙を堪えながらいじける皇さん。少々やりすぎたようだ。
「じ、冗談だよ! ちょっとからかってみたくなっただけで、丁寧語はもうやめた! ほら、な⁉」
「……本当か?」
「本当だ!」
「……本当に?」
「本当の本当!」
「……そうか!」
なんというか、わかりやすい人だな。それに、普段は落ち着いているのに動揺したり感情が高ぶると可愛くなる。
「私もいつまでも五十嵐君、じゃいけないよな……」
何かを深く考え込んでいらっしゃる。
「五十嵐君、友達になったところで君に対する呼び方を変えようかと思うのだが……」
「どんな感じにするんだ? 俺は何だっていいけど」
「んー……先輩?」
先輩……良い響きだ。実に良い。男に先輩呼ばわりはあまり好きでは無いが女なら大歓迎だ。麗華は兄ちゃん兄ちゃんやかましいからな。それはそれで良いんだけども。
「決定で。俺、それが良い」
「先輩か? ……先輩……よし! それじゃあこれからは五十嵐君は先輩だ!」
何だか日本語として少しおかしい気もするが、喜んでいるみたいだし良いとしよう。 ……そういえば、途中で別れた西園寺はどうなったのだろう。
「皇さん、俺と一緒にいた西園寺誠哉の事なんだけど……」
「ああ、それなら先輩を捕まえる前に星羅から電話があったぞ。『誠哉様を捕獲しましたわ! ……誠哉様には、後でゆっくりと話を聞かせてもらいますわ。ね? 誠哉様?』とな」
「い、一条さんって怖い人なんだな……」
「あいつは少々愛が重いんだ。悪い奴ではないんだ、仲良くしてやってくれ」
「……ん、わかった。ただ、帰ったら俺は昼飯の代わりに一日恋人してたって伝えといてくれ。俺、一畳さんに刺されるの嫌だから……頼む、皇さん!」
「そ、そんな事私も聞いていなかったぞ。後、私はアリサだ」
「え? だから皇さんだろ?」
「……アリサだ」
「うん、それはわかってるけど……皇さんは皇さんじゃないのか?」
「皇……からのアリサだ」
なにを言ってるのかよくわからない。
「……皇?」
「そうじゃなくて……」
「……アリサさん?」
「あ、後一押し!」
「……アリサ」
「ふふん、よろしい。星羅にはちゃんと先輩は悪く無いと伝えておく」
一条さんに愛が重い、とは言っていたが皇さ……アリサも相当だと思う。
「それでは、また……何かあったら連絡してくれ」
心なしか、アリサの顔が微笑んでいる様に見える。ま、多分気のせいだろ。
「これが私の電話番号だ。いつになってもいいから……絶対にかけてきてくれ」
飛鳥 は アリサ の 電話番号 を 手に入れた! なんちゃって。今度遊びにでも誘おう。
そして、昼間の一騒動を終え、夜。
「結局、金は受け取らなかったけど……姉さんはそれで良かったのか?」
「飛鳥君が良いと思ったのなら、恐らくそれが一番の選択肢だったんじゃないですか? それに、新しい友達も出来たんでしょう?」
「え。な、何で知ってんの?」
「それはですね……ずっと麗華ちゃんが飛鳥君を見張っていたからです」
そんな微笑みながらさらっとなに言ってんだ。
「仕事と仕事の間に空き時間ができたのでマネージャーさんに色々奢ってもらいながら繁華街で休憩してたそうです」
「そ、そんな⁉」
て事は西園寺との事も暴露されてる可能性が……!
「飛鳥君。……西園寺君と交際しているのですか? 正直に答えてください、怒りませんから」
やっぱりか……それに、このタイプは俺の一番嫌いなやつだ。怒らないから、と言って怒らなかった人を俺は見た事がない。大抵の人はその後でガミガミクドクドとありがたくもないお説教を浴びせてくる。
だがしかし、ここで正直に答えなければ、同性愛者のレッテルを貼られる上に怪我もただじゃ済まなくなる。
「え、えっと……昼飯代の代わりに一日恋人してました」
「はぁ……」
怒られるわけでもなく、ため息をつかれる。
「麗華ちゃん、失恋したーって落ち込んでますよ? ……全力で土下座して来なさい」
ジャンピング土下座、結構膝に負担掛かるんだよな……
「姉さんも聞いた時はショックでしたよ。今は安心してますけど」
表情があまり変わらない姉さんがショックをうける姿は想像し難い。……どうにかして一度見てみたいな。
そして俺は自室に到着した。扉を開けると、そこにはやはり麗華がいた。
「うー……ううぅ……!」
麗華は涙目になりながら俺を睨みつけた。
「本当、すいませんでした……昼飯代が惜しくてつい一日だけ……」
姉さんに言われたとおり麗華にジャンピング土下座を決めてやった。……膝が痛い。そしてその麗華はというと、布団を体に巻いて、顔の上半分だけ外に出している。……息苦しくないのかな。
「に、にーちゃんはおとこのひとがすきなんか? うちじゃ、にいちゃんとはけっこんできへんの?」
なんじゃそりゃ。俺はあいつらとは違うって事をちゃんと覚えさせなければ……あんなのと同類なんて死んでも嫌だ。
「勘違いすんな! 俺は普通に女が好きだ」
異性に対する興味は尽きる事を知らない。だって高校生だもの。
「ほんまか? おんなのにーちゃんびじんやし」
「当たり前だ。男なんてむさ苦しいだけで華が無い! 女の子万歳だ!」
俺はその場で立ち上がり麗華に女の素晴らしさを熱弁した。
「……へんたい。……でも、ほんまにしんじてええんやんな?」
「はい。もうこんな事は二度としませんので、機嫌を直して出てきてください……お願いします!」
「……ちょっときて」
麗華の言われたとおり、麗華に近づくと麗華に布団の中に引きずりこまれた。
「……にーちゃんのせいでなきつかれたから、このままねる」
「は、はい? 麗華、せめてちゃんとした体制でだな……」
「うるさい! うちがこれでいいっていってるんやからこれでええねん!」
「……すいません」
コアラの様に首に手、腰に足を回して抱きつかれた俺は身動きをとる事も出来ず、このまま寝る事を強要されるのだった。
「おやすみ、にーちゃん」
「あは、あははは……今日は徹夜かぁ……」




