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涙と麗華と観覧車

 地獄の林間学校の三日後の日曜日、俺は武達と白城セントラルパークに行って有意義な一日を過ごす予定だった。


「あら……お久しぶりです。え? 飛鳥君ならお友達の皆さんと白城セントラルパークという所に遊びに出かけましたよ?」


 後から聞いた話だがこの時に奴も休みだったらしい。


「部屋で待つ? 別に構いませんけど……不純な行為は避けて下さいね? 飛鳥君は私のものですから」


 その相手に微笑みかける姉さん。このやり取りをこの時の俺は知るよしもなかった。




「やっぱり休みの日はいいな! 心が軽いっていうか……とにかくいいよな!」


 武が道を歩きながら話す。


「うん、そうだね。休みの日は僕も自然とニコニコしちゃうよ」


 ニコニコしながら俺の隣を歩く優希。


「よし! とっととセントラルパーク行こうぜ!」


 セントラルパークを指差す雄二。


「……しかし、まだ昼食も食べていませんよ。まずは昼食を摂りましょう」


 真面目に考える翔一。確かに俺も腹が減った。


「そうだな。やはりそれが良いだろう。腹が減っては戦はできん」


 頷く西園寺。


「ならミスバーガー行こうぜ!」


 行こうぜ! なんて、こっちに聞いてるにも関わらず真っ先にファーストフード店に向かう武と雄二。


「んじゃ、行くか」


 俺はあくびをしながら武達に着いて行く事にした。ファーストフード店、マスバーガーに入ると、周りの目が一気に俺達に集中する。


 周りから見ると、俺達6人は相当目立っている。男の格好の髪の長い女みたいな奴と可愛いちっこいの。金髪騒音野郎に、190cmオーバーの巨漢。それに、生真面目イケメン眼鏡に木刀を持ち歩く男。これだけ色物が揃っていれば目立つのも無理はない。


「僕こういう所始めてきたんだ〜!」


 目を輝かせて辺りを見回す優希。


「んじゃ、俺は照り焼きバーガーセットで!」


 店員に元気良く注文する武。


「俺はチーズバーガーで!」


 かっこつけて注文する雄二。

こんな調子で俺達は注文を済ませ、席についた。席の並びは、俺と優希と翔一が右側の席。反対側が他の3人だ。


「美味いけど……多いな」


 俺は女になってから優希ほどではないが、胃が小さくなって男の時よりは満腹になるのが早くなった。


「うん……僕達には食べきれないよ」


 腹に手を置き喋る優希。


「おい、お前らこれ食わないか?」


 俺は武達の方にハンバーガーセットを押し付けた。


「あ、俺食う!」


 ハンバーガーにがっつく武。はしたない男だ。


「食べ方。汚いぞ武」


 呆れる雄二。武より少しだけ雄二の方が大人だな。


「よし、食べ終わった事だし……セントラルパークまで走るぞ!」


 食べ終わったと同時にセントラルパークに走る武。食べたばかりであんな事をすれば、脇腹あたりが息をする度に痛くなるアレになる。


「飛鳥ー! 早く来いよー!」


 大声で俺を呼ぶ武。仕方ない。行くとするか。


「へぇ……すげえなここ……初めて来た」


 俺はこういう遊園地みたいな場所に初めてきた。そう、高い所が嫌いだからだ。なのに何故来たかと言うと、友達付き合いを疎かにすると友達がどんどんいなくなる可能性があるからだ。ぼっちはやだ。


「んじゃ、まず観覧車乗ろうぜ!」


 優希を引っ張って行く武。確かここの観覧車は日本一高いらしい。


「おいおい、早速観覧車かよ。まあいいか……飛鳥、一緒に乗ろうぜ!」


 溜息をつくが、すぐに俺を誘う雄二。


「え?全員で乗らないのか?」


 いや、二人の方が失態を一人にしか見せなくていいから…そっちの方がいいのか?


「いいじゃねえか、どうせフリーパスなんだし。それに、武も無理矢理優希連れて行ったみたいだぞ?」


 ふりーぱす? 何じゃそりゃ?


「雄二、ふりーぱすって何?」


 聞きなれない単語に俺は首を傾げた。


「フリーパスも知らないのか? ま、初めてなら知らないか。これもまとめて俺が買ったしな。フリーパスってのは何でも乗り放題になるパスだ」


 ははぁ? ……てことは高いんだな。


「それって得なのか?」


「乗れば乗るほど得だ」


 乗れば乗るほど得……なら、ある程度は嫌でも乗るしか無いか。観覧車なんて乗る事は無いと思っていたが。


「じゃあ雄二、二人で乗るか」


 雄二を引っ張って観覧車に行こうとする俺に一人の男が食いついた。


「待て! 及川 雄二。何をしている」


「何って……観覧車に乗ろうとしてる」


 軽い溜息をつき答える雄二。


「許さん。その席を俺に譲るがいい」


 木刀を構える西園寺。これは……修羅場って奴だ。男同士の。


「でも俺を引っ張ってるのは飛鳥だぜ? なあ飛鳥?」


 そこ俺に振る所か?


「お、おう。まあそうなるかな?」


 今回は雄二と乗ろう。西園寺だと襲われかねない。最近雄二はセクハラまがいの事をあまりしなくなった。良い事だ。


「な、何故だ」


 木刀を落とす西園寺。そんなにショックたったのか?


「それじゃ、行くぞ飛鳥」


「う、うん」


 今度は逆に雄二が俺を引っ張る。後ろの方で西園寺が嘆く声が聞こえる。


 ここからは本人達から後で聞いた話だ。


「武君、どうしたの?」


 武と向かい合わせで座っていた優希。観覧車が好きなのか少しテンションが上がっていたらしい。


「い……いや、前に優希がいると少し緊張してな。だってお前って女みたいな可愛い顔してるだろ?俺、女と接点が無いからさ」


 少し早口で喋っていたらしい武。


「武君……僕は男だよ」


 武曰く少し不機嫌で可愛かったらしい。


「わ、悪い! えっと、その……あーもう、二人きりだとうまく喋れねえ」


 こっちは優希曰く動揺してて少し変だったらしい。


「くっ、どうしてこの俺が久保 翔一と観覧車に乗らなければならんのだ」


 嘆く西園寺。


「仕方が無いでしょう。五十嵐君に選ばれなかったのはあなたの方ですから。それに、僕だってあなたと乗りたくて乗っているわけではありませんから」


 冷静に答える翔一。


「ほう? それは挑発か?」


「どうとってもらっても結構ですよ」


 この二人は二つ前の二人と違い少し険悪な雰囲気だったらしい。


 で、俺はというと……情けない姿を晒していた。


「ゆ、雄二。た、高すぎないか? それに本当に動いてるのか?」


頂上に近くなるにつれ、観覧車が止まっているように見える。


「大丈夫だって。ちゃんと動いてるから。ほーら怖くない怖くない」


 俺の頭を撫でる雄二。


「こ、子供扱いすんな!」


 そう言いながらも少し安心してしまう。……日に日に女の部分が少しずつ大きくなってきている気がする。だが、俺は男だ。女じゃない。その辺は俺がしっかりしないとダメなんだ。


「こ、こんなの怖くねえし!」


 少しでも男らしく振る舞うんだ。そう、俺は男。男なんだ!


「ほーう? 怖くないんだな?」


 ロクでもない事を考えてるに違いない。


「これでもか! どうだ飛鳥!」


 観覧車を揺らす雄二。あり得ない。こんな事をするなんて。


「ゆ、ゆうじぃ……や、やめて……」


 怖い。とにかく怖すぎる。あ…涙が出てきた。大体観覧車は人を乗せるのに支える物が少なすぎる。鉄の棒が何本かついてるだけじゃないか。いつの間にか俺は雄二の服の袖を掴んでいた。


「……なんだよあれ。可愛いじゃねえか」


 この時、雄二が小さく呟いた言葉を俺は聞き取ることができなかった。そして、もっと観覧車を揺らす雄二。もう嫌だ。やっぱり西園寺と乗るんだった。


「う、うわぁぁん! 雄二のばかやろー!」


 俺は雄二を思い切り殴った。そして雄二を気絶させる事に成功し、無事に観覧車を降りた。


 この時の出来事を第三者である武と優希に聞くと、男と女のカップルがイチャイチャしてる様にしか見えなかったらしい。不愉快な。この事を不愉快だと思えるのならまだ気持ちは男だな。


「次はお化け屋敷だー!」


 えらくハイテンションな武。緊張はしていたものの、優希と観覧車に乗れたのが余程嬉しかったのだろう。


「い…嫌だ! 何で自分から怖い思いなんてしなくちゃいけないんだ!」


 ……遊園地はとことん俺と相性が悪い。


「まあまあ、この中から誰か一緒に行くから大丈夫だって。あ、皆で行くってのは無理だぞ?ここは二人で一組だから」


「あ、じゃあ俺は雄二以外で」


 これだけは譲らん。もし、お化け屋敷で脅かされた時には腰が抜けて立てなる。


「な、何で⁉」


「ふんだ。さっきの観覧車の事を思い出してみろ。……もう二度とお前と遊園地なんか来るもんか」


 今心の中で思ったことを全て雄二にぶつけた。


「ァ……ァァ」


 怖い声を出す雄二。言いすぎたか? いや、そんな事はないよな。悪いのはあいつだし。


「あ、なら僕が飛鳥君と行く!」


 手を上げながらぴょんぴょん跳ねる優希……こいつはどうして男なのにここまで可愛いのだろう。


「行こ! 飛鳥君!」


 俺の手を引っ張ってお化け屋敷に直進する優希。


「えっ⁉ ちょっと待ってくれ優希! まだ心の準備が……」


 言葉を言い終わる前に俺はお化け屋敷に吸い込まれていった。


「………俺らどうする?」


 一方取り残された男共はというと……


「もう誰とでもいいんじゃないか?」


 男4人お化け屋敷を眺めながら話し合いをしていた。


「そうですね……ここはジャンケンで分かれましょう。」


 グーとパーで二つに別れるというとても単純なゲームを始める男共。そして……


「行くぞー!」


武と


「はいはい……んじゃ、行くか!」


雄二のコンビ。


「……またお前か」


溜息をつく西園寺と


「……また貴方ですか」


溜息をつく翔一のコンビになったらしい。



「優希、お前怖くないのか……?」


 情けない事に何と俺は自分より10cmも小さい優希にしがみつくほど怯えていた。


「全然怖くないよ?」


 にっこり微笑む優希。この状況でよく笑えるぜ。


「ほーら、怖くなーい、怖くなーい」


 まさか優希に頭を撫でられる日がくるとは。


 そんな事を考えていると、突然大きな音がして奥の扉が開き、お化けが追いかけてきた。それが何かを判断できるほど、この時の俺は冷静ではなかった。が、優希はあははっと笑っていた。凄い奴だ。


「あっ!」


 そして俺は何もないのにつまづいてこけた。が、その時の反動で少し冷静さを取り戻した俺はすぐに対処法を考える事にした。

後ろからは何か怖いのが近づいて来る。どうしよう。えっと、えっと。


 "涙目で訴える俺を見て罪悪感に呑まれた相手が勝手に帰って行く作戦"を決行しよう。


 そして涙目でその怖い奴に訴えかけてみた。作戦を成功させるために上目遣いを追加しておこう。


「……⁉ ……!」


 素早く周りを見渡すと一礼して去って行く怖い奴。やっぱり女特有の武器は涙だな!


「凄いよ飛鳥君!」


 羨望の目でこっちを見る優希。……やっぱり優希はどこか抜けている。


 そしてこの後俺はジェットコースターで泣き、フリーフォールで泣いた。涙脆くなっているのは良くない事だな。家に帰ったら特訓だ。遊園地は俺の涙腺崩壊スポットに認定だな。


「……今日は疲れた」


 俺達はそれから4時間遊び続け、ようやく家に帰る帰路に着いていた。


「飛鳥、お前って結構涙脆いよな!」


 笑う武。ああ、腹が立つ。


「うるしゃい!」



「噛んだ? 今噛んだよね?」


 憎たらしい顔でこっちを見る武。


「べ、別にいいだろ! 俺だって噛む時だってあるんだよ!」


 今はとにかく武に腹が立つ。


「悪い悪い! そんなにイライラすんなって!」


 俺の尻をパンパンと二回叩く武。ふつふつと怒りが湧き上がってくる。


「……くたばれ変態野郎!」


 隙を見て武に思い切り金的をくらわせてやった。


 元男だからわかる事だが、本気の金的をくらえばシャレにならないぐらいに痛い。くらった時より、その後の腹が痛くなる現象がなかなかに辛い。


「ギャァァァ!」


 この時の武の叫びは2km先まで届いたそうな。


「これに懲りたらもうこんな事すんじゃねえぞ。わかったか武!」


 うずくまる武を見て哀れむ雄二、翔一、西園寺の三人と、心配そうに見る優希。


「は、はいずびばぜんでじだ…」


 最後の力を振り絞り謝罪する武。まったく、謝るならするなよな。


「それで良し。んじゃ、俺、家こっちだから。また明日〜」


 そして、スッキリした俺は軽くなった足でスキップしながら家に帰ったのだった。


「姉さん、ただいま〜」


「お帰りなさい飛鳥君。んー……」


 俺は姉さんに帰った事を伝えると風呂へ直行した。その時に姉さんが目を閉じて口をこっちに突き出していた気がするが気にしない。


「……またデカくなったか?」


 鏡に映る自分の胸を見てふと思った。女になったばかりの頃はCぐらいだったが、今はDぐらいはありそうだ。


 俺はシャンプーをとり、頭を洗い始める。女になってからというものの、髪を洗うのが面倒だ。


 そんな事を思いながら俺は風呂に入り夕飯を食べ、パンツ一丁でベッドに飛び込んだ。


「ふぎゅぅ」


 すると、自分の下にある布団の中から変な音が聞こえた。


「ん……?」


少し布団を撫でてみると、ビクッと震え、再び動かなくなった。


 不審に思った俺は、とにかくその辺りにあった中学校の卒業証書を手に取り身構えたのだが、一向に布団の中身が出てこない。


 そこで、俺は中学校の卒業証書の入った筒をベッドの膨らんだ部分にぐりぐりとねじりこんだ。


「痛っ⁉」


 やはり誰か居るようだ。だが、卒業証書の筒でぐりぐりされたくらいで声を上げるような奴が俺を襲おうなどと考えるのは25年早い。


 俺は、手に持った卒業証書の筒を布団目掛けて何度も振り下ろした。


「痛い! ちょ……ストップ、ウチや! 麗華!」


 は? ……麗華?


「そうや。兄ちゃんの麗華や。酷いわ……驚かそうとしただけやのに。アホ」


 すると布団がフォームチェンジしたかのように簀巻き状に変化し、その中からすぽんっ、と女の顔が出てきた。


「ふっふっふ〜……二年ぶりやな、兄ちゃん! 元気にしとったか? まさか、久しぶりに再会して早速卒業証書でボコボコにされるとは思えへんかったわ」


 驚愕する俺の目の前で満面の笑顔をみせる八重歯が特徴の女は須藤 麗華。日本中がよく知るアイドル、工藤 麗華でもある。普段はポニーテールなのだが、夜中だからなのか、髪をほどいている。


「いやー、久々に兄ちゃん見たけどなんか変わったな〜女っぽくなったっていうか」


「あ、やべ。上なにも着てないや」


「女っぽくなりすぎて胸まで出てきたみたいに見えるな! ……え?」


 俺の胸を二度見して、麗華は簀巻きのままベッドから崩れ落ちた。……首の骨折れるぞ。


 ここはまた説明が必要なようだ。面倒だが仕方ない。


「姉さーん! ちょっと来て!」


 そして15分後、理解しようとしない麗華に何度も説明してようやく理解してもらう事に成功した。


「……じゃあこの女は兄ちゃんって事で良いんですか? 結衣さん」


 この女って……口悪っ。


「はい。そこにいるのは正真正銘、本物の飛鳥君ですよ」


「そんなぁ……」


「……なんだよ」


 顔を俺の方に向け、10秒ほどうーうー唸った後、涙が目に溜まり始めた麗華。


「おいおい、何で泣きそうなんだよ⁉」


「だ、だって……久々、に会えるの楽、しみに、してっ、たのに……女の、子になっ、てるし……」


 麗華の声がどんどん震えてきた。泣き始める10秒前だ。


「ああ、泣かないでくれよ……」


「ご、ごめん。そう、やんな……兄ちゃ、んの方、が辛いもんな。すぅ……はぁ……よし、落ち着いた」


 麗華は深呼吸をして、落ち着いたようだ。


「あー……こんな夜遅くにここにいて事務所の人に怒られないのか?」


「……? 今日は帰れへんで? ほら、お泊まりセットも事務所から持ってきたし。それに、ウチは身も心も全部兄ちゃんの物や!」


 寝間着と歯ブラシ。それに枕や化粧品を入れた鞄を見せる麗華。てか、アイドルがそんな事言ったらファンが暴徒と化すぞ。


「姉さん! こんなの良いの⁉ 男女が一つ屋根の下なんて……」


「はい。姉さんは不純な行為が無ければ別に大丈夫ですよ? それじゃあ、私は下でお茶でもしておきますからごゆっくりどうぞ」


「マジかよ……」


「後、麗華ちゃんはこの部屋に泊まっていただいて結構ですよ。ただし、麗華ちゃんは布団を敷いて床で寝てくださいね?」


 そういうと姉さんは部屋から出て行った。……姉さんは少し怖い。いつも笑ってはいるが、どこか裏がある気がする。


「……んで、お前、仕事は?」


 こいつほどのトップアイドルがこんな所に居ていいものなのか?


「えっとな……実はな、わがままを言って3日も休みもらってん……だからこうして兄ちゃんに会いに来たんや! 女になってんのは想像して無かったけど。ま、それはええわ……中身は前と変わらんはずやし、3日間甘え倒すからな! 覚悟しときや!」


 俺に抱きつく麗華。これはもう中学の時に慣れた。小4からの付き合いだからな。こいつは、小4の時に一つ下の学年に転入してきた。その時から常に俺にくっ付いていた。


「よく三日も休みもらえたな……ま、いいか」


 麗華は中卒。芸能活動に専念する為、高校に通わ無かったのだ。

もし高校に通っていれば一つ年下の高校一年生になっていた。


「なぁ兄ちゃん、明日参観なんやろ?行ってええか?」


 床に敷いた布団から話しかけてくる麗華。すっかり忘れていた。明日は参観。高校で参観なんて誰が来るんだよ。


「駄目だ。お前なんかが来たら大騒ぎになる。留守番してろ」


 それはそうだ。こいつが学校に来たら授業どころではなくなる。


「嫌や。ていうか結衣さんも行くって言ってんで? 結衣さんから行ってもいいって許可もらったもん」


 ……姉さん経由なら仕方が無い。残念な事に俺は姉さんを説得出来るほどの説得力も権力も無い。


「はぁ……ちゃんと変装して来いよ?」


 ……明日は大変な一日になりそうだ。


「うん! さすが兄ちゃんや!」


 顔が明るくなる麗華。


「それじゃ、明日も早いし電気消すぞ?」


 明日は平日。遅刻なんてしたら姉さんに何をされるか。


「うん、お休み兄ちゃん……」


 すると、布団から出て俺のベッドに近づき髪を掻き上げ俺の頬にキスをした。


「えへへ……兄ちゃん、おやすみ!」

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