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93 歴史は生き残ったものが作るもの

ちっちゃな頃から悪がきだと15で不良と呼ばれる事もあると歌にあります。大体歌えます。記憶が確かなら全4曲。実は結構寂しい曲。

人は、どんな者でもその「立場」に立たされたら「義務」が生じるものです。

子供ならば健康維持と勉学を、大人は養育と仕事を。

ただ同時にこんな言葉もある。

「生きる事は勉強」

「生きる事は戦い」

「人生は死ぬまで勉強」

命尽きて心臓が止まり、脳が止まると生物的な「死」となる様です。

でも子供の肉体を持っていても子供でいられるのは環境が子供で居させてくれるからであって子供でも大人並の義務が生じる事があります。

生きている間しか考える事は出来ないかも知れない、死んだ記憶がないから判らない、でもきっと脳みそが無かったら考える事は出来ない気がする。

悩む事は場合によるけれど時間をかけても構わない、でも決断は一瞬で終わる。

大人でも出す事が出来ない問題に子供が答えを出さなくてはならない、と言う現象は意外な事に思いのほか存在する。


事もあるのです。


「私は……工房を残したい」

「マイナ!」

 ぽつりと呟かれた言葉は、一滴の雫の様だ。

「マイナ様、それは貴方の『望み』ですか?」

 誰も、何も言わなかった。

 言わんとする事を判っているものは口を開けないし、言葉の意味が判らない者は尚聞けない。

「突然取り残されたマイナ様は、ムナ様やユウナ様の為に仰っていませんか?」

 瞳が見せた動揺に、ないわけではないのだと誰もが理解する。

 子供であっても、大人であっても、決断は難しい。

 特に、大きなものがのしかかっているのだと理解した時点で簡単に口に出来るものではない。

 もし出来るとすれば、それは理解していないからか思い込んでいるだけと言う可能性の方が高いからだ。だからと言って、全く口にしなければ良いかと言えば異なるけれど。

「メイジャ工房を残す……それは意義のある事であり、意味のある事です。

 歴史的にもこちらの工房が作り出した数々の伝説に近い武器や防具、各国に献上された宝物庫に飾られた沢山の宝物の一つとして、これからも異彩を放つ事でしょう」

「違う!」

 大声を上げたのは、ムナでもマイナでもなくユウナだった。

 外見的には美少女然としているのに、声が野太くて色々な意味で残念ではあるが中身が男の子であると言う証明と言えばそうかも知れない。

「武器は武器だし、防具は防具だ。

 宝物として芸術だとか言って飾り物にするのは、そんなの武器でも無ければ防具でもない。単なる置物だ!」

 武器を武器として、防具を防具として使うドーン、キャシーアインスのギルド勢にしてみれば、その言葉は正しい。正しい以外の何物でもない……一部反論があるかも知れないが、用途の視野を広く持っているだけだと言われてしまうだけだろう。

 この場で門外漢なのは秋水とレンではあるが、レンに関しては育ちの良さ的に武器に触れる事も多いらしく、先だっての戦闘から見ても腰に下げた剣は単なる飾りと言うわけではないのだろう。

 しかし、ユウナから告げられた時点で言葉の意味は大きな意味を持つ。

「ユウナ……落ち着いてください」

「ムナ! 俺はもう嫌だ、あんな奴らの下でなんて働きたくない!」

 何度見ても、御伽噺にでも出てきそうな細身で小柄な美少女にしか見えない男の子から野太い声が出てくるというのは違和感を感じる者もいる。もしかしたら、目の前の存在の姿がそのままの年齢ではないかも知れないと言う気もするが、その辺りは専門的な話になるのだろうと思って誰も何も言わない。

「一体何が……何があったと言うのですか!」

 顔面を蒼白になりながら怯えたままで迫ってくるムナの顔は、流石に見慣れているだろうユウナも怒鳴り声を上げた手前で引っ込みがつかないのか、いまいち迫力に欠けてゆくのが見て取れる。

「そ……それ……は……」

「何てことを言うんだ、ユウナ! 私達はお仕事を頂いている立場で嫌だとか言う理由だけで雇い主を悪く言うなんて!」

 そこに待ったを掛けたのはマイナだったが、それが誰かの助けになったかと言えばそうでもない。

「成人もしていない私達が工房で営業活動をする事が出来ないのは判ってるじゃないか、そんな私達に仕事を与えてくださっていると言うのに……」

「違う! マイナは騙されてるんだ!」

 ムナの変化に戸惑ってはいたが、マイナの言葉に元の勢いを取り戻したようだ。

「騙されているとは……穏やかではありませんね?」

 一瞬だけ復活したムナではあるが、再び真っ白に燃え尽きてしまった。

 どうやら、可愛らしい天使か妖精の様な綺麗な顔立ちをしたユウナから紡ぎ出された台詞に激しく衝撃を受けてしまったのだろう……何と言うか純粋な人である。

「カーラ……」

 だから、戸惑った顔になったマイナに対してカーラが口を挟んだのは悪い事ではないのだろう。

 残念ながら、それが誰にとっての救いとなるかは判らないけれど。今は。

「教えていただけませんか、ユウナ様?

 一体、マイナ様は何に対して騙されていると仰られるのでしょう?」

 ユウナが躊躇ったのは、僅かな時間だったのか。それとも違うのか、それは時計を見ていなければ判るものではないけれど……だとしても、同じ時間が同じ感覚で流れるかと言えば違うもので。

「マイナは良い様に利用されてるんだ」

 きっぱりと言いきったユウナの言葉に、塵となっていたムナの目に僅かに光が入る。

 カーラは特に反応している様には見えないけれど、きっと頭の中ではとてつもなく高速で様々な事を考えているのだろう。

 考えたままでじっと見つめているけれど、その先を促すような事はしない。

 ユウナがどう考えたのかはともかく、言うべき言葉を考えているのかしばしの間が再び起きた。

「あいつらは俺達に仕事をさせていたんだ」

「……仕事をする為に、いかれていたのでは?」

「違う、あいつらは俺達に自分達の仕事をさせていたんだ。俺達がちょっとあいつらの見ていない間に手を出した程度じゃない、手伝いをする程度じゃ済まない。俺たちが作ったものをあいつらが自分達の仕事だって言って出すんだ」

 本来、成人していないものが所属している工房で営利目的ではない「練習的な意味」で作品を作る事は法的に何の問題もない。けれど、あくまでも成人していない者の作品は営利的なものであってはならない。

 そこには、ある事情がある。

「……マイナ、それは本当なのか?」

 言われて、マイナは躊躇う。

 本当は、判っているのだ。

 自分達の工房でもなく、自分達の師匠に許可を取るではなく、勝手にあったものを使って、営利的な依頼があったものに手を加える事は犯罪だ。それでも軽度な犯罪だから工房の中で注意する程度の事で終わる、そう言うものなのだ。

 しかし、それ以上の事が起きていた。

「マイナ」

「……ああ」

 聞けば、最初は工房に転がっていた屑を使って手慰み程度にものを作っていた程度で。

 次に、放置されていた品に手を加える程度だった。

 最初から計算されていたのか、それとも偶然だったのかは判らない。

 子供でも知っている事だと言うのに、出入りしている工房の者達は時に「作業をして置いてくれ」と言っていたり中途半端で置いていたりしてマイナとユウナの目の届くところに品を置いて行く。

 目の前に、作業できる品物がある。

 色々な意味で抑圧されていた二人が、手を出すのは同情を誘うべきことだろう。

「営利的なものさえ絡まなければ、と言う所ですか……」

「カーラさん!」

「ムナ様の仰りたい事も、お二人の気持ちも多少の想像はつくつもりです」

 実際、カーラも口にはしないが心当たりがあるのだろう。

 幼い頃に勝手に買い付けをしたり、誰に頼まれたわけでもないのにこっそり仕事を手伝ったりしてこっぴどく叱られた事だってある。

「となれば、これから先……もしかしたら彼らはそれを元に何らかの仕掛けて来るかもしれません」

 カーラの言葉に、あからさま過ぎて大丈夫かと聞きたくなるほどムナが。文字通りびくりと飛び上がった。

 流石に、子供達は自分たちが現れる前にどんな会話がなされていたのかを知らないので不思議顔だ。

 恐らくは、彼らにとってムナは保護者達のいなくなった中で唯一問題なく付き合える唯一の大人と言う事なのだろう。

 と言うより、事情を知っている者からすれば「ムナさん、あなた一体どんな想像をしたんですか……!」と言いたくなる事うけあいだ。

「改めて、リッツ商会は提案させていただきます。

 現在、持主であらされるマイナ・メイジャ様は成人前と言う状況にあります。しかして、成人を待つ間に起こり得る可能性を回避する為の手段に講じる必要性を。

 契約者マイナ・メイジャ様、問いかけます。

 貴方の望みを聞かせていただきたいと」

 大げさな表現は、交渉の時が舞台上で使うべきものだろう。交渉の場と言うのは、カーラにとっての舞台以外のなにものでもないのかも知れない。

 けれど、男装の麗人として相応しい顔と体つきと格好をしているカーラには不自然な所は全くない。

「何故……そこまでして……」

 ムナの言葉ももっともで、この町の人達は気の良い人たちが多い。

 職人が大部分を占めている事もあって、義理人情に厚く調味料が足りなかったら勝手に台所に入って「借りてくから」と言って持ち出しあったりする事も普通にある。これが工房の道具とか材料だったら吹っ飛ばされても文句を言えないのだから、彼らの判断基準はよく判らない部分もある。

 けれど、毎日道具を揮って物を作り、力尽きたら酒と食事でバカみたいに騒いで倒れるように眠るものもあれば。僅かながらに利用する事で上へ這い登ろうとする者もある。

「私の仕事だからです。契約上、私はこのメイジャ工房を最低限見守り、時には融資し、発展させるお手伝いをさせて頂く権利を所有しております」

 ムナは、個人的にどんな契約をマイナがカーラとしているのか知らない。

 マイナが勝手にリッツ商会と契約を結んだと聞いた時には背筋が凍る思いをしたものではあるが、知っている範囲では評判がトップクラスによく黒い噂も然程聞かないので不承不承ではあるが黙認に近い形を取った。放置しておいたのは手が回らなかったからではあるが、かと言って今日ほど放置して置いた事を悔やみかけた事はない。

 悔やまなかったのは、単にそれ以上の衝撃にぶちのめされたからに過ぎないのだが。

「何より、これほどの技術を持ち。将来性に溢れたお二人をみすみす潰すのは惜しいと言う、個人的な見解もあります」

 取って付けたかのような物言いだが、その本位がどちらにあるのかは判らない。恐らく、真実それがわかるのは当の本人であるカーラだけだろう。もしかしたらどちらも本意かも知れないが、そんな事は追求する必要がないものだ。

「……まるで、将来メイジャ工房で生み出される『商品』を取り扱う為の布石だとおっしゃられてるみたいですね?」

 ムナの言葉にマイナとユウナの顔は僅かに反応したが、カーラは素知らぬ顔をする。

「ええ、その通りですが。何か?」

 リッツ商会の末端を担うという、カーラ・リヒテンシュタイン……魂を聖性され人ならざる存在を知覚する能力に目覚め、それを隠すこともない男装の麗人。隠していないのは、最終的に情報ギルドを通じてバレる事が判っているからに過ぎないが、その魂が聖性されたままであると言うのならば、その言葉に嘘は無いのかもしれない。

 そもそも「聖性される」と言う事の意味を誰も知らない。

 ただ「営利目的で作業したものを販売する事が出来ない」メイジャ工房を「営利目的で将来販売をしたい」と思っているリッツ商会が対策を立てたいと思っているのは本当の事なのだろう。

「……師匠が言ってた『本当に怖いのは完全な善意を謳ってくる奴だ』って」

「マイナ……」

「マイナ、彼……彼女? 信じるのか?」

 幾らカーラの男装が色々な意味で似合っているとは言っても、そこで性別の見分けもつかないいのはどうだろうと言う目で一行がムナを見つめたのは、単にムナを保護者と認定しているからである。

「私、カーラはお金が絡んでるから私達を助けてくれるといってる。ならば、私達に将来性があるから助けてくれるんだって言う事になる。

 だったら、私とユウナがクダラナイものを作らなければそれで良いだけの話だ。

 ならば、私はカーラに力を借りる。こんな所で潰されたくない」


眠い時につらつら書いていると、夏場は垂れてくる汗で危険(主に家電)に気が付き、冬場は手の動きが鈍くなる(凍死しかかってる?)事で認識しています。

今は右手が動かなくなってきたので冬が近いですね。と言うか、もう冬でよくね?暦的には冬なんだし。もう11月だし。しかも後半だし。


と言う訳で、次回予告。

「ええと…申し上げて起きたいのですが。


「どうしてこうなった…」


ほんと、なんでこんな短く出来る話を延々と…ちなみに、次でも終わりません。」

誰のせいなんですかねえ…いや、僕なんですけど。

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