61 本題、本題を早くぅ…!
ええと。。。
今回のサブタイトルは別名を「作者の心の声」です。
お前が暴走するのはいつもの事なんですが。
て言うか、このままだと予定の半分も消化できないって知ってる!?
アイツの決めてる……(もがもがもが)<なにやら武力介入があった模様です。
「何か問題でもございましたか、皆様?」
目を離したのは、せいぜい数十秒と言う所だろう。
しかし、すでにキャシーは居た。
おまけに、目の前には新たに並べられた軽食とティーセット。整えられた書類の山は恐らく分類済みで、部屋の隅には何やら大きな塊が幾つかある。
「ええと……キャシー、アレは?」
なんだか見たくない、聞きたくない、知りたくないと秋水の本能は激しく警鐘を鳴らしているものの。
「ああ……アレでございますね、お目汚しを致しまして大変申し訳ございません。
何分にも、この市庁舎にて不穏な動き及び関係者の中心人物だけでもふん縛って親方様の判断を仰ぐべきかと思いましたので転がしておきましたが……目障りと申されるのでしたら窓から一思いにぽおいと……」
「いや、ちょっと待って。お願いだから」
キャシーは、きっと本気だ。
だが、秋水に言わせて見れば「ここ何階だと思ってるの、間違いなく死ぬよ、普通はね!」といいたくてたまらない。キャシーの事だから、相手の手足どころか猿轡に至るまで懇切丁寧に縛り上げた状態で海にでも放り投げるだろう、許可を出せば。
秋水はこの世界の常識を知らないが、水はあくまでも水で呼吸は出来ないし。ある程度の高さから落ちれば痛みを感じるし、何より40mくらいの高さから落ちればコンクリートに叩きつけられたのと同等でばらばらになる可能性だってある。もしかしたら生き残るかも知れないが、全身が超打撲状態で手足も猿轡も外せるかなんてわかったものではない。
「左様でございますか……」
「いや、そんな心底残念そうにしなくても」
「レイニアス・シティの司法でもそこまで荒っぽくないぞ……」
「それなんですけどね、親方様。
所詮、奴らはメイドや執事の面汚し。ギルドの登録者に至っては権限と位の剥奪、しかも身内及び友人から知人に至るまで全てから排除される運命が待っているわけでございます。しかも職人都市での制裁の後で何年かかろうとも制裁部隊はてぐすね引いてお待ちになる事を考えれば……この程度の小物を相手に皆様のお手を煩わせるのもいかがなものかと。何より、今か数年の後に殺されるだけの違いでございます」
「おう、それなら面倒がなくていいな!」
「黙るか死ぬかしてくれ……と、たまに本気で思うな……」
遠い目をした親方の様子を見ると、こういうやり取りは普通にある様だ。
もしかしたら、外交官などと言って諸国を漫遊させている最大の理由がここにあるとか言うのはないと良い。
あったら、あまりにも悲しすぎるではないか。
「海の上ならまだしも、ここは陸の上だ……確かに手続きやら手順は面倒だが、それなりに色々やらなければならぬ事も聞きださなくてはならない事もあるんだがな」
海の上ならばやっても良いのかと言えば、実際に船舶に乗り込んで航行中に法的違反を行った場合。基本は所属船籍の法律に従うが、上陸中の国の法律にのっとる場合もある。ただ、船舶は色々な意味で閉鎖された世界なのである程度の権限は自動的に船長に与えられている。それでも、船長には船をある程度一人で動かす事が出来る権限及び能力と引き換えに問題がある場合は自らに罰則がかかる場合もあると言うのだから、よく出来ている。
例えば、乗員の一人が盗みを行った場合は証拠、状況証拠、犯人の自供により船長は犯人を船から「その場」で降ろす権限を与えられている。手足を縛ったりはしないが、それで生き延びられれば犯人は罪を償った事になる。ただし、そこで死ぬような事になれば刑が執行されたと見做される。しかし、それが何の罪もない一般乗員だったりすると契約により船長と実行者の立ち居地と、無実の罪を着せられた人物の立場が逆転して海に落ちるのは船長達となる。ちなみに、手足を縛って海に落とした場合は落とされた人物の感覚を船長及び落とした人物が共有すると言う呪いとなる。
回避する方法がないとは言わないが、高いリスクを背負ってまで実行する船長は少ない。
「左様でございますか……心の底から残念でございます。
それにしても……」
ちらりとキャシーが見回すと、視線を向けられたほうは理解出来るのか一々びくびくとはねている。
「全く持って、メイドも執事も質が落ちたものでございます。
この様な面倒をしでかして、真実平穏無事に済むと思っていたとすれば……どれだけ幸せな人達かと思うとため息も出てこないと言うのは珍しい体験でございます」
ちなみに、全員魔力封じの猿轡やら手枷に足枷、首輪なんかをしている。ついでに言えば、それぞれ動きが鈍くなる呪いが込められていると言う一品だ。一つとってみても学園都市の郊外の屋敷が一軒まるまる買えるほどの金額になるだろう。
「いや、ギルドの上位ランクに襲われて生きてるだけでも十分だと思うんだけど……」
「おやおや、アインス様。
もしや、私があっさりさっくり絶命を許すほど親切だとでもおっしゃるつもりでいらっしゃいますか?」
ここで「はい」と答えても「いいえ」と答えても、今度は自分自身の命が風前の灯っぽい気がするのは何故だろうかと本気でアインスは思う。
「宜しいですか、アインス様?
ギルド上位者を目指しておいででしたら記憶された方が便利な事は幾つもございますが、メインの仕事に差し支えない程度で副業を行う事をギルドは止めたりしておりません」
「採取の仕事を請けている途中で、別の仕事を請けても良いって事ですよね?」
「はい、左様でございます。
当然の事としまして、いきなり複数の仕事をお請けになられても達成できずに解約いたしますと評価に繋がったりもします」
かなりギルドでも初期の情報であり、しかもアインスは情報ギルドだ。
その重要性は、恐らく大変よく知っている。
「要するに、何が申し上げたいかと言う事ですが……現在、ギルドとして私どもが受けている仕事は調査段階に入っております。これは想定外の部分もございますが、他の仕事を請けている余裕があるかと言う話ですと、恐らくはアインス様でしたらその余裕があるのではないかと……」
「え、もしかして情報収集って名前で暇なら外で小さい仕事請けて来いとか言ってるっ?」
「そうなのっ?」
「まさか……秋水様」
最近、声の調子で感情がもれ出ている気がすると秋水は思ったが、秋水は基本的な事を忘れていた。
もしかしたら、そういう環境にいたせいで思考になかったからかも知れない。
「もっとはっきり『役立たずは役に立つ努力をしろ』と仰っていただいて宜しいのですよ?」
「うわあぁ……」
はっきり言ったよ、この人。
そんなの、ある意味で当然かも知れない。
何しろ、相手はキャシーなのだ。周囲も「この人だしねえ」と言う感じで諦めムードが満載だ。
当のアインスですら遠いうつろな目をしながらとぶつぶつ呟いていたりして、正直言ってその周辺の空気をあわせて何だか少し怖い。
「あ、それとも『いっそ合成獣に食われて栄養素となり俺に喰われてしまえ』と仰るのも、なかなかキャラに合ってアグレッシブなものではないかと……」
「えぇぇぇぇぇっ! シュースイっ?」
「いやいや、考えてないから。そんな事かけらも思ってないし初めて聞いたから」
何を言っても頭を抱えて、最後にはごろごろと絨毯敷きの床を転げ回っている姿は秋水にしてみれば「まさしくギャグキャラの真骨頂!」と言う気がしてならない。感動すら覚えている現在、出来たら動画保存出来て持ち帰ってパソコンに取り込んだ挙句仕事の素材にしたいなあとぼんやり思わないでもないが。
「これこれ、アインス様……情報ギルドの末端を担うとは言え、その様な動作をして許されるのは6歳の誕生日を迎える直前のお子様程度なものですよ」
どがっ☆
「ぐぉぉぉぉぉぉ……」
「きゃ、キャシー……?」
「何かございましたか、秋水様?」
「いや、足……」
「これが何か?」
踏んでますけど。
何だろうか、ものすごくツッコミを入れたら負けな様な気がしてならないけれど。何も言わなかったら足の下に居る友と呼んでも差し支えない同行者が踵でぐりぐりねじ込まれたまま、新世界に旅立ちそうで色々な意味で恐怖心を覚える。
何しろ、一連の動作を仮面の様に表情の変わらぬ顔で行っているのだから恐怖心は増すばかりだ。
「ええと……とりあえず、あっちの話はどうなったのかなあ……と言う気がするんだけど……」
それでも、勇気を振り絞って指を挿すのは簀巻きの塊となった庁舎の制服に身を包んで気を失っている様に見えるメイド服や執事服に身を包んだ皆さんだ。
皆さん……そう、一人や二人ではないのだ。
「あと、流石にそろそろ食べないと冷めると思うんだけど……」
「それは大変失礼を致しました、至らぬ事で申し訳ございません」
ついと上げられた足の下で、アインスは踏まれた所を抱えてうずくまりながら痛みと戦っている様だ。
暫く、放っておいてあげるのが親切と言うものだろう。
「ところで……彼らに対する扱いが少々力強い気がするのは、気のせいかな?」
良い所のお坊ちゃまで将来性が約束されている人物の割には、レンのドーンに対する砂を吐きたくなるほどの過保護ぶりは「どうなんだろうなあ、これ……」と言いたくなるほどだ。ドーンもドーンで、世話をされる事に慣れきっている所があるから諦めの極致に至って何かを悟っているのかも知れないし、場合によっては金持ち特有の病気みたいなものだと思えばそんなにおかしい事ではないのかも知れないと言う気はする。
「その様に見受けられるとは……私もまだまだ修行が足りない様で、お恥ずかしい限りでございます。
私ども一行、レン・ブランドン様とドーン様、ラーカイル様、秋水様、アインス様の各部屋に仕掛けられたものがあまりにも稚拙であったり、私どもを見張っていた者達が目を覆いたくなるほどの低レベルだったりと、執事やメイドとしての技能の低さについ力が入ってしまいました」
「それ、どんなメイドでどんな使用人?」
「秋水様はご存知ないかと思われますが、協会に属している者にとってその程度の技能は初級レベルでございます。場合によってはお仕えする主人の身を守り、盾となり、敵を排除する役目も同時に担うが故の必須技能と言う事になっております」
「そうなの……?」
ばばっ!
とても不審そうに見えたのか、秋水が周囲の反応をうかがうと。
レンはドーンの世話で急がしそうだし、ドーンはレンを無視して食事をしている……何故か、ドーンが普通に飲食をする事が出来ると言う事実に割と感動的な不思議さを覚えるのは、おかしな話だが疑問だ。ドーンは、別に大きな眼鏡と長衣を着ているだけなのだから鼻も口もきちんと見えているのに。
アインスは痛みにうごめいているままで、先ほどキャシー曰く「ざっくりとでございますが」と言って書類関係を片付けたばかりだからマシな筈だ。
キャシーは、秋水を中心として周囲に給仕をしているけれど軽食だから仕事は多くない。控えめに立っている。
呑んだくれ外交官のイル=スは、あからさまに視線をそらしては「あー」だの「うー」だの言って何かを言葉にしようと努力は見えるのだが、その努力が実る事は全く無いか、当分先の事だろう。
親方は久しぶりに食べるまともな食事らしく、ガツガツ食べ終わってからは足りなさそうな顔をしていたが。今のキャシーの言動でこちらを見てから明後日の方向を見て「うんうん」と悩んでいる。
「ところで一つ、疑問があるんだが……」
誰に言うと言う訳でもなく、レン・ブランドンが暖かい湯気を上げているカップを手にしながら言った。
「本題には何時入るんだい?」
あ。
わ、忘れてたわけじゃないんだからね!
とか言い方をしたらツンデレっぽいでしょうか?
どいつもコイツも立ち居地を自覚してくれる良い子ではありますが、ちょいと個性的すぎます。ちなみに、キャシーにはモデルっぽい要素を取り入れた方が居ますが99%の確率で身内知識ですね、本人には了解を得ていませんが。
では次回予告。
「ちらりと垣間見える職人都市のトップの過去と少しの秘密。て言うか、推定身長がジェットコースターは…のトップと2m超えてる外交官って世界各国的にどうなのよ、と言う話はさて置いて。親方の言動の為に後から使おうと思ってた設定が先に封じられているとは何たる悲劇な喜劇っ?」




