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48 この人達って結構怖い

世の中には二種類の人間がいるという

怒ると怖い人

怒ると怖くない人


でもね、何をしても怒らないなんて思っていると……

ものすっごい事になるから、お気をつけ遊ばせ?

 世の中には、こんな言葉がある。

「人が人として生き続けているだけで奇跡なんだよ」

 でも、実際にはどう言う事かをほとんどの人は知らない。


「もしかして、見えないだけで内臓とかが機械で出来てるとか?」

 工業的な生産が盛んで職人が集うと言う論点から、秋水の導き出された答えはそれだった。

「いや、流石に内臓をカバーはね……シュースイ君の世界では内臓も機械に出来るんですか?」

「どんな内臓でもってわけではないけど、心臓なんかは機械で代替出来るのは知ってる。胃袋なんかが駄目になった場合は食道から腸に直結した俳優がいたとか居ないとか聴いたことあるけど……」

 医学は専門ではないから、詳しいことは判らないとは言うものの。

 秋水の齎した言葉はラーカイル医師の好奇心を刺激するには十分だったらしく、目がきらりんと輝いているのを知己な人々は見逃すことは無かった。

「ほう、でも機械を体に入れたら錆びたりしませんか?」

「詳しくは判らないけど、セラミックとかシリコンとか使ってるんじゃないかな?」

「それはどう言う素材なんだい?」

「ええと……」


 ああ、始まったよ。


 一部の人達……中には全く関係ない人達も通りすがり的に含まれていたが、世の中にはたまに存在する。と言うより、潜在的には普通に存在するのだが日常では紛れていて判別がつかない人種がいる。

 マニアだ。

 拘りのある人達と言えば聞こえは良いが、それも程度によりけりだろう。

 とは言っても、マニアな人達に言わせれば「人の好奇心を刺激しておいて途中放棄なんで酷いにもほどがあるぜセニョリータ!」と言いたいらしい。何故セニョリータなのかはさて置いて。

 知的好奇心を刺激される人と言うのは、その欲求的興味が尽きない限り原因となった発端を重箱の隅を穴が出来るほどつついても満足できなければ更につつきまくると言う悪循環が、たまに起こる。

「仕方がありませんねえ……」

「いや、ほんと……すみません……」

 そこまでやるか! と周囲に同情されながら、出来る範囲でどんどん心もとない説明になって行ったらしい秋水は最後に頭を下げて勘弁してもらっていたらしい。とは言っても、とっかかりは出来たのだから発展させるのは好奇心を刺激された人々の役割だ。そもそも、世界が異なる秋水の言葉が、こちらの世界でどれだけ応用が利くかと言う問題点をさらりと無視しているのだから、ラーカイル医師の底意地の悪さと言うものがよく判るだろう。

 ただ、ラーカイル医師に言わせれば「そこはそれですよ」と言う事になるのだろうが。

「失礼を致します、秋水様。ラーカイル様。

 ご歓談中のところを申し訳ございませんが、そろそろ移動させていただきたくお願い申し上げます」


 勇者だ!


 見ていた何人かはそう思ったらしいが、遠巻きに見ているだけなので実の所を言えば三人がどんな会話をしているのかは聞こえていない筈だ。

 それでも雰囲気で判るのか、決して近づいてきたりはしないけれど同情的な視線は思い切り感じる。と言うより、どこかで感じた種類の視線も混じっている様な気もしないでもないが、そのあたりを追求するとなにやら不幸になりそうな気がすると思ったのは誰だったのだろうか。

「無論、お二人がお二人独特の世界を構築する事に対して周囲に撒き散らし続けている腐の空気をこれまでもこれからも連続して途絶える事なく醸し出したいと仰るのであれば、お付き合いさせて頂くことも吝かではございませんが……こうして町の皆様に絶える事なく話題を提供されるお二人の献身的な……おや、その様なお顔をされていかがなされましたか?」

 キャシーの言葉に、件の男二人は「何かとんでもない顔」をしている。

「いや、どうしたって言われても……」

 ねえ? とばかりにラーカイル医師に視線で「これどうしましょう」と意見を求めてみる秋水であるが、とうのラーカイル医師は笑顔が固まった状態だったりする。

「キャシーさん、あなたはその手の趣味をお持ちで?」

「キャシーとでもお呼び下さい、敬称は不要でございます。ラーカイル様。

 はて、その様な趣味とは一体どの様な趣味と申されるのでしょうか?」

 わざとらしく首をかしげて、ついでに手を添えてみる。

 無表情なだけに、いかにも人形の様に見えてたまらないらしく周囲からの熱い視線を物ともしないキャシーはプロ根性が座っていると言いたい。

「キャシーさん、そう言う趣味をお持ちなら止めませんが……」

「キャシーとでもお呼び下さい、敬称は不要でございます。ラーカイル様。

 趣味は人それぞれと申しますので、私もラーカイル様や秋水様のご趣味をお止めする様な無粋な真似はいかがなものかとは思いますが……」

「キャシーさん、何か誤解があるのではないかと思うんだけど?」

「キャシーとでもお呼び下さい、敬称は不要でございます。ラーカイル様。

 はてさて、誤解とおっしゃられても私には何の事やらとしかお答え出来かねます」


 なんだろう、このカオス……。


 とか、誰かが思ったのかも知れない。

「所で……あの二人を置いて先に行ったらどうなると思う?」

 何故か火花を散らし始めたラーカイル医師の白衣装備と、キャシーのメイドにモップ仕様を横目に、ちゃっかり安全地帯っぽい位置づけになっていたレンとドーンとレインの側に秋水は近づいていた。いつの間にか。

 秋水に言わせれば「別に、あの二人にとって俺よりお互いの方がより注目する重要度が高いってだけじゃね?」と言う事らしいが、反目し合っていると言うか何と言うか……とりあえず、近づかない方が確実に人生の安全度は跳ね上がるだろう。逆を言えば、近づけば近づいた分だけ安全度が駄々下がると言う可能性があると言う事になるのだが。

「どうにかなるんですか?」

 レインは、言葉が少ないのは恐らく依頼人だからだろう。馴れ合うつもりがないと言うより、まだこの状況に慣れていないと言うのが正しいのだろう。最初のうちは気を張っていたのは、もしかしたらギルドの人と言うのに関わるのは珍しい事なのかも知れないけれど、そのあたりは環境による「常識」の差異なのだから個々で判断するべきか否かは微妙なラインだ。

「なると言えばなるし……するって言うか……ちなみに、あの二人ってどっちが強いの? ドーン?」

 ギルドには直接関係がない事もあって、レンには状況がいまいち想像がつかないようだ。

 どちらにしても、こんな所で本気でやりあうとは誰も思っては居なかった。ちなみに、先ほどの職人を投げ飛ばして築いた山についてはノーカウントと言うかなかったことになっているらしい。

「……え、それってどうなのかな?」

 レンが首を傾げたのは、ドーンが回答拒否よろしく首をぷいと横に向けたからだ。

 内心はどうあれ、場合によっては洒落にならない状況になると遠まわしに言っていると言う事になる。

 レイン、秋水、レンの三人には想像がつかないようだが、ギルドの上位者と言っても腕っ節が強ければ良いと言うわけではない。二つ名を持ち上位者として登録されている以上、二人はそれぞれ専門分野での突出した何かを持っているのから。

「え、ちょっとドーンっ?」

 レンが慌てたのは、ドーンがいきなり手を組み合わせて拝み始めたからだ。

 一体何に拝んでいると言うのか……身近な所ならば精霊かも知れないが、もしかしたら神と呼ばれる存在かも知れない。

 この状況には、流石にレンも秋水も「もしかして逃げたほうがいいんじゃ?」と言う疑問符にぶち当たる。一人、意味が全く判らないレインだけがきょとんとしている様に見えるが、この雰囲気から是非察してほしいとレンや秋水が思ったとしても非道でも何でもないだろう。

「ちょ……ドーン、頼むからやめてくんない? ドーンがそんなのやると何だか洒落にならない気がするんだけど!」

 どれだけレンが訴えても、ドーンは遠い目をしたまま反応をしてくれなくなってしまう。

 はっきり言って、そんな事をされると状況を知っている者から見れば反応に困るのを理解した上での行動なのだろう。意地が悪いと見るべきか、それとも。

「あの……どちらにしても、いつまでもここにいるのもどうかと思うのですが……」

 控えめに、あくまでも控えめに発したレインの言葉に反応したのは。

「そうなんですか?」

 と言ったのは秋水。どうやら、色々と考え込んでぶつぶつ言っていた様なので思考の迷宮にでもはまってしまっていたらしい。

「ああ、そうですね」

 と言ったのはレン。態度も何も全く先ほどから変化が見られないが、それでもどこか……なんともいえないものを感じるのは何故だろうか判らない。

「やっと準備が整ったようですね、キャシーさん」

 と言ったのはラーカイル。つい今の今までキャシーと空気がぎしぎし音を立てて話をしていた、と言うには些か厳しそうな気がしないでもないのに全くそんな事を感じさせない。

「キャシーとでもお呼び下さい、敬称は不要でございます。ラーカイル様。

 やれやれ、ずいぶんと待たされてしまいましたが皆様退屈などされませんでしたでしょうか? 特に秋水様」

「え、俺?」

「はい、秋水様はこれまで遠方にお出かけになる事は多くございませんので。色々と目新しい事があるかと存じますが、秋水様様々な知識をお持ちでいらっしゃいますので退屈などをされてはいけません」

「もしかして、今までの先生との対立は……演技?」

「はい、いえ……秋水様、何をおっしゃられるかと思えば。

 ですよね、ラーカイル様?」

 何故だろうか、ものすごく胡散臭さを感じるのは気のせいだろうか。

「え、もしかして私も疑われているのですかね? それは大変残念ですねえ……キャシーさんはともかく、私はとても真面目に言動を行っているつもりですよ?」

「キャシーとでもお呼び下さい、敬称は不要でございます。ラーカイル様。

 おやおや、私だけを悪者としてご自身は清廉潔白を主張されるとは……流石は腐っても教職の身についておられる方でいらっしゃいますね、私にはとても及びも着かないほどの素晴らしいご鞭撻でございます」

 何故だろうか、この二人の台詞はとてもにこやかな笑顔で目も笑っているのに交わされる会話だけが酷く不穏当だ。

 なぜか、うっかり空気がどんどん重く冷たくねっとりしてきている様な気がして秋水は何かが果てしなく根本的に思い切り失敗したような気がした。

 困ったことに、何がどうしてこうなったのか秋水には全く思い当たらなくて必死になって脳みそを回転させて記憶を掘り起こしてる真っ只中だったりするのだが。

「ドーン?」

 ふらりと、黒い塊が動いたと思ったらドーンだった。

 レンの言葉に釣られて、6つの瞳が黒い塊の動きを追う。

 ちなみに、先ほどから忘れられかけているアインスは相変わらず気絶状態だ。このまま放っておいたら硬い地面の上で明日まで目が覚めることはないかも知れないが……仮にも情報系とは言ってもギルドの登録者なのだから野宿の一晩くらいでどうにかなると言うのは考えにくいだろう。

「来た」

 そんな状況の中で、ぽつりと呟かれた声は決して大きくはないけれど。

 なのに、それは届いた。

 何故、と誰かが思ったのかもしれないが理由すらも判らなくて。


マニアやオタクは、最近では市民権を得てきましたが今でも偏見を持って見られる事はあります。コレクターも同じです。

そんなに怖いのかなって気もします。

こっちに押し付けてこなければいいじゃないか、と言うのが持論です。

頭の中で楽しむだけならば違法でも犯罪でもありません。

それを実行に移すと、大抵の場合は犯罪です。


では次回予告。

「今更な事を常識に捕らわれない人が口にすると、静かに凪いだ池に超波紋が!と言うか第一変換が腸なのは何故?

 第49話:事前調査は必要ですか」

 てゆーか、事前調査何もして無いじゃん。

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