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45 ちょっと遠くまで

旅にあこがれる人と言うのは存外に多いものだ。

けれど、真実の「旅」となると人は想像もつかない。

人生とは旅そのものであり、旅とは人生であると言う言葉もある。

だが、多くの人は「旅行」と「旅」とを同系列に扱っている事実に気が付かない。

何故なら、多くの人々にとっては「帰る」と言う前提があるのだから。

 ギルドに依頼が入る事は、別におかしな事でもなんでもない。

 とは言っても、依頼には種類がある。窓口ギルドなんてものが各地にあり、受けた依頼を情報ギルドを経由して各所のギルドに依頼をかけるのだ。そう聴くと情報ギルドがずるいと言われそうだが、問題点などがあれば情報の共有は必要だし何より、情報不足で依頼が失敗などといったりする場合はペナルティの半分から8割を情報ギルドに押し付ける事が出来ると言う事もある。

 この場合、レイニアス・シティと言う必要不可欠な情報を得る事を考えれば情報ギルドを経由した依頼は必要だ。もちろん、場合によっては情報ギルドを介さないで依頼をする事は出来る。つまり、情報ギルドを介した場合は広域で安全性が割りと高くなる依頼で、情報ギルドを介さない依頼極狭い範囲での多少は危険性が増すかも知れないと言う解釈が出来る。

 その為、窓口では依頼が起きると地域密着系依頼はそうでもないが。討伐などの依頼に関しては必ず情報ギルドを介して依頼の取次ぎを行う事になる。

 今回の依頼とは、レインをレイニアス・シティまで送り届ける事と水辺の自治都市で起きている怪異的な「何か」の原因究明。可能ならば、解決にまで手を貸して欲しいと言うものだった。ただし、秘密裏に。

 理由としては、二つ。

 レイニアス・シティは東宝寄りの南方に位置する水辺の都市で独立自治区である。つまり、貴族制度ではないと言う事と平民が多いと言うこと。もう一つは、観光都市でもあると言う事。別に観光だけがメインと言うわけではなく、ある意味では学園都市に近く別名を「職人都市」と言われている。

 実際の所を言えば、レイニアスは二面都市とも言われている。表と裏ではないし、右と左でもなく、対象と言うわけでもないが、どこかそんなイメージがある都市なのだ。

「怪異と言ったところで、実際には何が起きているのかよく判らないと言うのが事実です」

 レインと名乗った人物に言わせると、人が襲われたり建物が襲われたりと言うのは普通にあるそうだ。普通と言われても想像がつかないかも知れないが、「都市」である以上は事件が起きない日は皆無と言っても良い。

 最初は、浮浪者が姿を消し始めたところから話が始まったと言う。

 町が綺麗になるのだからと、誰もが気にしなかったらしい。ただ、そこに着目した人物は少ないが必ず存在した。

 浮浪者を介して情報を集めている人達、と言うか「探偵」と呼ばれている職業の者達だ。なり手が少ない上に、なったとしても大体が都市で起きた情報を集めて情報ギルドに売払うか、一般人の依頼を細々とこなすのが関の山な人物が多いと言うのが特徴で、この「職人都市」には変わった職業を持つ者も多数存在しており探偵はその中の一つと言われている。騎士や戦士の様な戦闘力も、盗賊ほどの器用な素早さも、魔法使いほどの魔力も持たない。誰もがなろうと思えばなれるけれど、決して生き残る事は容易くなく一時的ならばともかく孤高を貫き真の意味でパーティを編成する事も認められていないと言う、そう言う意味での特殊な職業だ。替わりに、探偵にはある程度の権限が許可されており武器や魔法道具の携帯及び使用、特定のギルド関係者以外に立ち入りの許可されてない地域への許可。はたまた、王侯貴族を相手にしても許される発言権などが上げられる。もっとも、これは職人都市のみに限られている所がある。

 ちなみに、学園都市にも探偵に関してはゼロではないらしいがメジャーと言うほどでもないそうだ。探偵はどちらかと言えば情報ギルドに属している部分があるので、場合によってはこれからメジャーになる可能性もゼロではないらしく発展系と言う。

 次に異変があったのは娼婦や男娼と呼ばれる夜の商売の人々で、こちらは浮浪者の関係もあったので直ぐに話題になった。おかげで、ここ暫くの都市の夜事情は綺麗なものになったのが良かったのか悪かったのか。

 勿論、怪異にあった者のうち逃れた者もいたし怪異とは無関係な者も居た。危険だから家に帰れと言われても、そもそも家がない者もあれば仕事をしていなければ食べていけない者とているのはどうしようもない。

 都市の上層部とて全ての住民の身の安全を確保など出来ないのだから、当然取りこぼしは出てくる。

 すると、今度は行方不明になった者達の数人が遺体となって現れたらしい。らしいというのは、部分的なものもあれば変質していた者もあった。どうやって流れてきたのか、衣服だけと言うのもあれば骨だけと言うのもあった。全裸と言えば全裸の、体の中身が透けて見える存在や中途半端に透けている者も居た。

 それは、都市のあちこちにばら撒かれるようにして存在していた。

 「職人都市」の上層部は事を重く見たのは、別に様々な背景があったわけではない。逆に、後ろ暗い背景が無かったからこそ後手に回ったと言える。つまり、なんでこんな事が起きたか判らないから自分達には無関係だと判断したのだ。

 だが、世の中と言うものはそうは問屋がおろさない。

 何故なら「職人都市」の中で最も安全地帯に居る筈の存在は、その姿を煙の様にかき消していたのだから。


 その人物は自己紹介の時に、こう名乗った。

「レイニアス・シティの……そうですね、レインとでも呼んで下さい」

 「とでも呼んで下さい」以外に名乗られた覚えがないなあ、と秋水はぼんやりと思った。ちなみに紹介された場合は除く。

 レイニアス・シティの怪異について依頼をしに来た人物だというが、直接冒険者ギルドの。しかも本部にある日ひょっこり現れたと言う曰く付きの人物だったりする。

 髪は柔らかいくせっ毛の様で、少し空気にゆれてふあんふあんしている。色は柔らかな青に近い灰色と言うのだろうか? 瞳の色は蒼色で髪より深みがあるけれど色合い的には少し鋭い。雰囲気が相殺しているとは言っても、どこか違和感を感じさせる空気をかもし出していると言えばよいのだろうか?

「皆さんが依頼を受けていただいた方々ですか?」

 不思議そうな顔をしたレインは、この顔ぶれにどこか疑問符が浮かんでいるのだろう。かと言って怒っているという感じではなく、それでいて考え込もうとしている。

「情報ギルドのアインス・ツヴァインです。

 こちらはドーン、レン・ブランドン、キャシー、シュースイさんです」

「失礼ですが、学生で賄える依頼と考えられたのでしょうか?」

「それはギルドの上層部の決定に寄る依頼です。ご不満でしたら取り下げていただいて結構ですよ、何より僕らは先発隊のようなものだとお考え下さい。とりあえず、僕らはレインさんを「職人都市」まで送り届ける事が最重要課題となっています」

「その後は? この依頼は極秘裏に行って欲しいといってある筈ですが?」

「我々は、先ほども言いましたが先発隊です。調査の上、この依頼を真の意味で受けるかどうかを決めます」

 アインスの言葉を聴いた瞬間、レインは顔を歪ませた。

「話が違いませんか?」

「いいえ、これは規定にのっとっています。一つの都市レベルでの問題で、しかも極秘裏なんて依頼を完全にこなせるとでも思っていらっしゃるんですか?」


 それが事実であるのならば。


「そもそも、極秘裏にと言っている時点で怪しいと情報ギルドは睨んでいます」

「つまり、嘘の依頼を行っているといいたいわけですか?」

「いえ、あなた自身がどうかと言う問題でしたらこちらにはどうでも良い話です。怪異そのものの話は嘘とは言いがたいので概ねが事実でしょう。ですが……真実はどこにあるのでしょう?」

「真実……ですか?」

「そうです。情報ギルドも職人都市で起きている怪異の情報は入ってきています、だからこそ情報ギルド所属の僕がこのパーティに参加していると言っても良い。残念ながら、情報ギルドが関与せざるを得ない事態であるとギルドが判断している以上、この件を極秘裏に収める事は出来ない事くらい職人都市の上層部が気が付かないわけはないんです。でも、あなたは極秘裏である事を依頼してきている。

 つまり、これには裏があって当然。逆を言えば裏が無い方がおかしいと言うのが現時点で判明している事実と言う事になります」

 ところで、この場所は一体どこになるのだろうか?

 その答えは、実を言えばギルドの窓口だったりする。

 学園都市には無数にギルドの窓口があり、依頼を受けたり報告をしたり鑑定をしたりと色々と役に立つ情報が集まる。ただし、それぞれ窓口にもレベルと言うものがあってAの窓口では出来る事がBでは出来ない事などが普通に存在する……つまり、バックについているギルドがメインとなっているのが窓口ギルドの正体だ。

 この窓口は都市でも普通の学生街にある、ある意味で良い場所にある。外部からの人が来にくい反面、住民には気軽に使える上に設備も割りと充実しているのだ。

 その設備の中には、ちょっとした会議用のスペースがある。

 使用者が封印をしてしまえば、中に存在する一定以上のランク保持者以外には開封する事も破壊する事も出来ない空間。一種の研修室と言っても良い。

 実際、そこは会議に使われる事もあれば指導室として使われる事も自習室や実習室、実験室として使われる事もある。無論、低レベルのギルドのランク者は使うたびに料金がかかるので大っぴらに使う人は限られているが。

「今回は珍しくアインス君が主導権を握ってるんだなあ……なんで?」

「僕はそもそも関係ないし」

「私はご主人様の補助と言うのがメイン業務でございますので」

 そして、ドーンは沈黙する。

 さほど広くない部屋に持ち込まれたテーブルと人数分の椅子、けれどキャシーは最初から秋水の背後で立っているのは身近な人達の間ではすでに通常仕様として認可されている。もっとも、レインにはどう見えているのかは判らないけれど近隣の住民には「メイドを連れた変わった服装の人」と言う認可を受けているのだから慣れてもらうより他ない

「ドーンさんは……」

「ドーンは駄目、と言うより必要ないし」

「レン・ブランドン様のご機嫌が悪くなるので、ドーン様も大変気苦労が絶えない状態となっているのです」

「ああ、なるほど」

「二人とも煩いよ」


「ちょっと、静かにしてもらえませんかね。皆さん!」


 どん、とテーブルを手にしていた書類でたたきつけたのはアインスだ。

 彼にしてみれば珍しくと言うより、いきなり呼びつけられて交渉の席に着かされたのだ。しかも事前準備? ナニソレ美味しいの? と言う傍若無人ぶり。

 ちなみに、呼び出したのはドーンである。ドーンの研究室に名を連ねている以上、半死半生になっても研究生は呼び出しには応じなければならない。しかも、ドーンは金払いも良いし付き合うと勉強になる事がとても多いので滅多に無かった呼び出しには積極的に応じていたのだが、最近ではその考えを改めたいとアインスが考えていたとしても不思議はなかった。

「……なんか彼ってもっと大人しい人かと思ってたんだけど」

「何か嫌な事でもあったのかな?」

「宜しいですか、ご主人様? 欲求などを蓄積した所で問題ですので、ご希望がございましたら……」


「白々しく人を放置してないで下さい、ついでに暇なら出てってください!」


 アインスが言うのも尤もで、秋水とレンはテーブルから離れた所に無理やり男性二人が座り込んで聞こえる様に無駄に囁きあい、キャシーが少し頭上から聞こえる様に一言二言追加しているのだから、アインスにしてみれば邪魔以外の何者でもないだろう。

 唯一大人しいのはドーンだが、どこからどう見ても隙無く360度怪しさ満点の物体がそこに居るだけで「もう十分です」と言いたくなる。しかも、静かなだけではなく無駄に静か。身動きの一つもないのだから置物だと言われても疑わないかも知れない……インテリアの趣味については疑うだろうが。

「あれ、アインスって人に命令できるほど偉いの? 俺は別だけど」

「確かに……彼の実家ってそんな権力持ってたかな? キャシー?」

「はい、レン・ブランドン様。残念ながらアインス様のご実家は公爵家とは比べるべくもなく……いえ、だからと言って蔑む必要など学園都市には全く必要が。ただ……上位ランク保持者相手に命令できるほどの実力も備えてはおられなかったとも判断いたしますが……」

 アインスが泣きたくなったとしても、それは当然と言うものだろう。


レイニアス・シティのモデルは、どちらかと言えばヴェニスですが行った事がないので想像の範囲です。職人都市というのも、そのあたりの影響を受けていますが商業と工業でちと悩みました。

農業系が一切考慮に入らないのは、土地がないからです。


というわけで、次回予告。

「幾つもの呼び名のある町は、意外な構成のされかたをしている? しかしまともと呼ばれる存在はどこかにいるのか? どこにもいないのか? そもそも主人公が超空気なのは何故なのか?

 果たして答えは……?」

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