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浄霊討魔譚  作者: 雷鳥
滋賀編【前編】
68/68

20歳

七不思議を解決した翌日、大津支部のみんなは警察署に招集された。


「君たちが学校に調査しに行った翌日、また死体が発見されたんやけどなんか知らんか?」

「知らんすね…なんですかそれ?」


悠悟がそういうと相川警部は資料を机の上に置いた。


「1人目は谷本正紀(たにもとまさき)17歳。延暦寺高校の2年生です。彼はサッカー部に所属していました。」

「もう1人は?」

「2人目は渡瀬晴翔(わたせはると)17歳。こちらも延暦寺高校の2年生です。彼は吹奏楽部に所属していました。」

「サッカー部に吹奏楽部…繋がりがあるようには思えませんね…」


柊哉は訝しんで資料に目を通した。


「2人は同じクラスですか?」


柊哉が質問した。


「いや?全然違う。」

「そうですか…ますますわからないですね…」

「そういえば、第一発見者って誰なんすか?」


悠悟が質問した。


「第一発見者は水沢美優(みずさわみゆ)。延暦寺高校の2年生で、谷本くんの彼女らしいです。」

「彼女?」

「はい。担任の佐々江先生によればですが。」


その時悠悟とあやめが小声で話した。


「そういうのって案外知られてるんやな。」

「な。こわいね?」

「ほんまに。」

「で、その彼女の証言は?」


2人の会話を掻き消すように勅使河原が質問した。


「それが…彼女は心を閉ざしてしまい、質問に応答できない状況なんです…」

「そうですか…」

「まあ…彼氏が死んだ姿をみたら誰でもそうなるんじゃないですかね…」

「すみませんちょっとお手洗い行ってきます。」

「おう。」


空気をぶち壊すように刑事が部屋の外に出た。


「てかさ。八尺瓊くんいつこっち来たん?」

「最近です。」

「なんやねん〜。来たんやったら言ってや!」

「え?知り合いなん?」


勅使河原が目を見開かせながら聞いた。


「せや?俺が東京の方に引っ越してった時あったやろ?そん時知り合ってん。」

「ああ。なんか連続殺人が起こったマンションか。」

「ちょっとやめてや!あれ普通に怖かってんからさ!」


相川警部はさっきまでとは全く違うテンションで話し始めた。


「あの時ってなんだったんですか?」

「あれなぁ…俺言ったっけ?謹慎中やってん。やけど殺人事件が起こってるから俺も情報欲しくて知り合いに情報横流ししてもらっててん。」

「ああなんか言ってましたねそんなのも。」

「言ってたか…君らこれ内緒やで?」

「え〜どないしよかな〜?」


悠悟がニヤニヤして言った。


「まあまあ。雀やろや?」

「えーめんどいっす。」

「なんでやねん。」

「こいつにはあんま期待せん方がええで。」

「ああそう…残念やな…」

「僕打てますよ?」


竜飛がここぞとばかりに話に入り込んできた。


「おお!竜飛やるやんけ!」

「竜飛君。君を歓迎する!」


竜飛は相川警部に思いきり頭を撫でられた。


「いやーありがとうございます。」

「で、黙ってもらう代わりに何してもらおかな〜?」


悠悟が思い出したかのようにニヤニヤしだした。


「やから雀は?」

「いやっすよ。俺やってもカモられるだけやないすか!」

「あんたがいてくれた方があたいとしてはやりやすいのになぁ…」

「てめぇ俺をカモにしてるだけやろが!」

「カモられる方が悪いんやろ!バーカ!」

「なんやこの野郎!」

「は?お前やんの!?」

「まあ落ち着けや。」


勅使河原は両者の肩を抑えた。2人は必死に腕を伸ばした相手を傷つけようとしている。


「にゃーーーーー!!」

「にゃーちゃうわ!」

「あはは。仲ええやん。」

「よぉないわ!!」


…


大津支部に帰ったみんなは、各々自由に活動していた。


「なにしてんの?」

「いや、麻雀覚えよかなって。」

「柊哉もついに雀か?」

「その雀って略し方なんなんですか?」

「しらん。」

「はあ…?」


その時扉が開いた。扉の先からおじさんがでてきた。


「すんませーん。」

「はい。本日はどのようなご用件でしょうか。」


柊哉が対応した。


「なんか最近ウチの愛娘の様子が変なんですわ。」

「変?それはどういう?」

「もうすぐ20の誕生日なんやけど、20になったら死ぬーいうて怯えてるんですわ。やから調査して欲しいんです。」

「20歳になったら死ぬ…?」

「そうです。」

「わかりました…」


柊哉はおもろに立ち上がった。そして勅使河原の元に向かった。


「先輩…今の話聞いてました?」

「ああ、20歳になったら死ぬんやろ?」

「そうらしいです。」

「おそらく呪いの類やろな…」

「呪いかぁ…俺は解呪できないですよ…」

「千里ならできるんちゃう?聞いてきてみ?」

「聞いてきます。」


柊哉は喫煙所のドアを叩いた。


「なに?」

「先輩。仕事です。」

「わかった。」


千里はタバコを灰皿に擦り付け、喫煙所からでた。

そしてそのままソファに座った。


「ここからは私が変わります。」


普段の千里からは考えられないほど真剣な口調で話し始めた。


「20歳になったら死ぬとおっしゃっているんですね?」

「そうですね…ずっと怯えていて、2、3日家から出てないんです。」

「そうですか。…結論から申し上げます。彼女はおそらく呪われています。」

「の、呪われて…!?」


男性の顔が青白くなった。


「はい。お父さん。聞いたことありませんか?"20歳になるまで覚えていると死ぬ言葉"って。」

「あ…ああ、昔から有名なやつやろ?紫鏡みたいなやつ。」

「そうです。そのほかにも様々な言葉が存在します。」

「で、でもそんなん迷信やろ…?」

「そうですね。でも、迷信を信じすぎるとそれは呪いへと変わります。」

「じ…じゃあ…本当に…」

「はい。なので、解呪するしかないです。」

「ど…どうやってするんですか…?」

「私が行います。もちろんそれ相応の代金はいただきますが…」

「もちろんです!娘が助かるなら!」

「わかりました。では、お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「はい!もちろんです!」


男性はその場で泣き崩れた。


…


数分後、千里は男性の家に向かった。


「そういえば解呪ってなんですか?」


柊哉が勅使河原に問いかけた。


「"呪い"を"解く"で解呪や。これは神道に精通してなできひんことやで?」

「やっぱり先輩のあの格好ってコスプレじゃないんだ…」

「逆にコスプレやと思ってたんか?それやったらあいつめっちゃ変人やん。」


勅使河原は半笑いで言った。


「変人ちゃうんすか?」

「ちゃうよ。あいつはええやつやで?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


場所は変わりここはとある地下に存在する研究施設。といっても、フラスコやビーカーみたいな理科室じみたものはなく、資料がぽつぽつと置いてあるだけである。そして、そこの主は赤マントである。


「やあ、また研究か?」


暗闇に包まれた研究施設の先から蛭間が出てきた。


「ああ。今回はあついで?」


赤マントは蛭間の方に椅子を回転させた。


「へぇ〜。よかったやん。」

「興味ないん?」

「あんまかな。」

「そう…残念やな…」


赤マントは椅子を回転させ、もとの向きに戻した。


「これが成功したら霊の正体判明に一歩近づくんやけどなぁ…」

「そうなん。」

「なあ、あんたは知りたくないん?」

「なにが?」

「霊がどうやってできるかや。」

「それは…この世に滞留しているマイナスのエネルギーに噂という霊体ができて…」

「理論としてはな。でも、それは偶然の産物やろ?」

「まあせやな?」

「それを意図的に起こせたら大発見やと思わへんか?」


赤マントの口調がだんだんと興奮気味になってきた。


「意図的?」

「せや。外的要因を加えることで意図的にマイナスエネルギーを生み出す。」

「でもさ、霊体の方はどうすんの?」

「それを解決すんのが"妖怪"やがな。」

「ああ、あのリンフォンの。」

「そう。あいつらは霊体を持たず、マイナスエネルギーだけで姿形を形成しとる。」

「じゃあ、意図的に妖怪レベルのマイナスエネルギーを生み出せれば…」

「そ。"人工的に妖怪が生み出せる"っちゅーわけや。わかるか?」

「ええ。わかるわ。」

「やろ?それってロマンあるやろ。」

「いや、怖いな。恐怖が勝る。」

「ああ…そうですか。俺は悲しいわ。」


赤マントはさっきまでの勢いを無くしてしまった。


「そんな萎えんとってな。…で、それはできたん?」

「全然。一回も成功しとらん。」

「前やってたあれは?」

「あれ?あれはしくったなぁ…」

「"テケテケ事件"のやつな。」

「そやった。あん時は多分あいつが復讐を終わらせてたから失敗したんやと思うんよな。」

「でもさ。あの後ウチの元部下が出会ったあいつは?」

「あいつは全然関係ないよ。」

「そうなん?じゃあほんまにあかんやん。」

「そう。あかんねん。白虎も全然霊にならへんし。」

「白虎…あん時は弟に憑依させてたよな?」

「せやなぁ。あれはいけると思ったのに、悔しくて弟に降霊術教えてしもたし。」

「せやったな。で、今回はどうなん?」

「今回は自信あるで?なんせメンタルをズタズタにしたったからなぁ…!これで成功せんかったらもうほんまに無理やしな。」

「もうメンヘラ化すんなや?あん時は大変やってんから…」

「ああ。わかってるて。あん時は悪かったな。」

「今でも許してへんけどな。」

「ええ。なんで。許してや。」

「いや無理。」

「はぁ…チッ…めんどくさい女やで。」

「お前がいうな。」

「メンヘラ化しよかな〜?」

「自分でネタにしてるやん。反省してへんやん。」

「してるし。」

「うそつけや。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


千里は男性の家に着いた。そしてネームプレートに目を通した。


「…大橋さん?」

「申し遅れました。わたくし大橋智樹(おおはしともき)と申します。」

「よろしくお願いします。」


千里は挨拶を済ましつつ、家に入って行った。


「みかちゃん。連れてきたで。」


奥からドタドタと急足で女性がやってきた。


「はっ…こちらの方が?」

「ああ。」

「秋雨千里です。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。ささ。こちらに。」


女性に案内されるがまま千里は部屋に連れて行かれた。


「ここですか?」

「はい。莉子ちゃーん?入るわよー?」


女性がドアを開けた。そこには丸く縮こまった状態で座っている女の子がいた。

千里は莉子に優しく近寄った。


「どうしたの?」

「浄霊師の人?」

「そうや?何があったか教えてごらん?」

「実は…わたし知ってしまったの…!呪いの言葉!」

「やっぱりか…なんて言葉なの?」

「……教えていいの?」

「大丈夫。私はもう20超えてるから。」

「………"鮮血の死神"。」

「……なるほどね…それを20歳になるまで覚えてると死んじゃうんだ?」

「そう…でも、私明日誕生日なの…」

「明日…そうか…すみません。今日はここで泊まってもいいですか?」

「え?」

「どうかお気になさらず。私はずっとこの部屋にいますから。」

「だ…大丈夫なの…?ご飯とか…」

「カップ麺でも食べますよ。私が勝手にほざいたことなんて気にしないでください。」

「そ…そうなの…?」

「ええ。ご心配なく。」


千里はリュックからいろんな道具を出しながら答えた。


「これは?」

「今から解呪してみるから。そこに寝てて。」

「はい。」


莉子はベッドに横になった。

千里はリュックからなにやら呪文のようなものが書かれた紙を取り出し、護符を5枚ほど取り出した。


「大国主よ…おいでなされ…!」


千里の髪が逆立った。そして、オーラが変わった。


「あー…あー…我は大国主。人の子よ。何の用だ。」

「目の前の子の呪いを解いて欲しいんです。」


千里の口調が突然変わったかと思うと、またいつもの口調に戻った。側から見たら一人二役で話しているようにしか見えなかった。


「呪い…かかっとるな。」

「やっぱりそうですか。…お願いできますか?」

「あー…いいけど、難しいよ?」

「え?それはどういうことでしょうか?」

「この呪いはね。言葉を目印にして霊を呼び寄せるっていうやつなの。身近なもので例えると、位置情報システムみたいなやつな。で、その霊がもう近くまで来てるから 、今解いても霊はくるの。」

「じ、じゃあどうしたらいいですか?」

「君がその霊を迎え撃つしかないね。」

「まじですか?」

「まじまじ。」

「まじかぁ…」

「まあ、呪いは解いてあげるから。あとは頑張ってね。」

「ええ〜ちょっと待って…」


千里からオーラが消えた。


「今のどういうことですか?」

「つまり、呪いを解除しても霊は来る。明日の夜にね。やから私はここで待機する。そして霊を倒す。」

「わ…私は…?」

「安心して?絶対守るから。」


千里は重い腰をあげ、紙と護符を回収した。


「じゃあ今日の夜11時以降は部屋から出ないこと。いいね?」

「はい。わかりました…」

「よし。では、私は一旦これで。また夜に伺います。」

「ありがとうございました。」

「いえいえ。また何かあったらご連絡ください。」


千里はリュックを背負い、家を後にした。


雀って略し方なんやねん。カンクロウか。

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