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浄霊  作者: 雷鳥
東京編
19/19

初任務

還具庫から帰ってきた柊哉、そしてメリーさんと契約した山形は蛭間から初任務を言い渡される。それは深い闇の入り口だった。

柊哉と雲井は還具を探していた。


「どうしよう。迷っちゃうなぁ〜。」


雲井は優柔不断なようで、還具を決めきれずにいた。


「幽依ちゃんは降霊術使いなんだよね。」

「そうですね。」

「じゃあこの護符がおすすめかな。」


喜多方は雲井に還具をお勧めした。


「護符?どう使うんですか?」

「これはね、生のエネルギーを込めて固定化して投げつけて攻撃するんだ。貸してみて。」

「はい。」


喜多方は護符を使ってみた。


「こうやって固定化して、こう!」


喜多方は壁に向かって護符を投げつけた。


「なるほど…」

「まあ投げつけるといっても軽い力でいいからね。」

「しかも降霊術使いだから、得物の還具だと降ろした霊が消えちゃうんだよ。だからこの護符がいいかなって思ってね。」

「おお。じゃあこれにしようかな。」


雲井は還具を決めた。


「しかも、この護符。貼り付けても霊のエネルギーを消せるんだ。まああんまそんなことはないけどね。」

「ありがとうございます。」


柊哉としゃくちゃんは呪具の影響で還具決めなんてできなかった。


「柊哉くん達大丈夫?顔色悪くない?」

「ちょっと体調悪いかもしれないです。」

「うーん…一旦戻る?」

「ちょっと戻りたいですね…」


柊哉は吐き気を催していた。


「幽依ちゃんも決め終わったし帰ろうか。」

「はい…よろしくお願いします。」


還具庫から離れていくにつれて吐き気も治りつつある。しかし、まだ吐き気はある。


喜多方たちは支部に帰ってきた。黒霧島と山形はすでに帰っていた。


「なあなあ八尺瓊見て。この子かわいくない?」


山形は自慢するようにフランス人形を見せつけた。


「なにこれ?」

「メリーさんだって。」

「へぇ〜。よろしくね。」

「こいつ誰?」

「こいつは俺の同期の八尺瓊です。」

「ふーん….」


フランス人形は山形から離れようとしない。


「あんた何その人形。」

「俺と契約したメリーさんだ。」

「だれ?」

「こいつも俺の同期の雲井です。」

「ふーん…私のだからね。」


フランス人形は不機嫌に山形に抱きついた。


「別にいらないわよ。」

「そ。じゃあいいわ。」


フランス人形は山形の服の中に入っていった。そして首元から顔を出した。


「ちょっと….!なにしてんすか!?」

「いいでしょ別に。」

「まあいいっすけど…」

「おお君たち帰ってきたのか。」


蛭間の登場で空気が一変した。


「君たちに早速任務を与えるよ。」

「なんですかその任務って。」

「君たちには女子高生連続殺人事件を調べてもらうと思ってね。」

「なんですかそれ?」


柊哉が質問した。


「最近女子高生が変死体で発見され続けているの。しかもその女子高生達には共通点があってね。全員が()()()()に通っているんだよ。」

「なるほど、その高校になんかありそうですね。」

「そう。それについて調べるのが今回の任務よ。」

「でも、どうやって聞くんですか?」


柊哉が問いかけた。浄霊師という職業は基本的に秘密主義である。これは専門学校で習うことだ。


「大丈夫。警察って言っとけばいいの。」

「え?それってダメなんじゃ…?」


雲井が心配する。それもそのはず、普通は警察を騙ることは犯罪なのだ。


「私たちは例外なの。警察もそのことは承認しているわ。質問は以上かしら?では八尺瓊君と山形君に任せたわ。」

「私は?」

「雲井ちゃんは私と護符の練習よ。」

「はーい…。」


そんなこんなで山形と柊哉は初任務に行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そう言えば桜雪高校って知ってる?」


柊哉が山形に問いかけた。


「知ってるさ。なんたって俺の母校だからな。」

「お!じゃあなにか知ってる情報とかある?」

「まあそれは後でかな。」


山形は勿体ぶった。


「そう言えば、こいつはなんで服の中に入ってるんだ?」

「さあ?俺にもわからん。」

「なによ…文句あんの?」


フランス人形は柊哉を睨みつけた。


「それより、なんでこいつは霊なんか連れてんのよ。」

「ああ、それは八尺瓊の憑依霊だ。」

「そう、しゃくちゃんって言うんだ。」

「へえ。あんた憑霊使いな訳。」

「まあ?」

「あっそ…。」


相変わらずフランス人形は無愛想な話し方だ。


「なんかこいつ俺に当たり強くない?」


柊哉は愚痴を漏らす。


「メリーさんちょっと当たりを柔らかくしてもらってもいいですか?」

「いや。」

「なんでですか。」

「憑霊使いなんかに柔らかく接するわけないでしょ。」


フランス人形は憑霊使いになにか嫌な思い出があるようだ。


「なんで…?なにかあったんですか?」

「昔私は憑霊使いに捕まったのよ。だからあんな薄暗い場所にいたの。」

「へぇ〜どんな人だったんですか?」


柊哉は憑霊使いについて知りたいので聞いた。


「…なんであんたなんかに話さないといけないの。」

「俺も聞きたいです。」


フランス人形は重い口を開いた。


「あいつは蛇を使ってきたの。それから神具の扱いが巧かったわ。」

「神具?」

「神の力が宿った道具のことよ。」

「へぇ〜そんなんがあるんだ…」

「そんなんも知らないの?」


フランス人形は柊哉に対して当たりが強い。


「で、なんですかそいつは…」

「一見普通のおっさんなんだけど"姦姦陀螺"を憑霊させていたわ。、」


その名前を聞いた3人は身がすくんだ。不穏な風が吹いてきた。しゃくちゃんに至っては柊哉に引っ付いて離れなくなった。


「姦姦陀螺って…あの?」

「しゃくちゃんはやっぱ知ってるんだ?」

「当たり前でしょ。彼女は伝説の怪異の一角なんだよ。私じゃあとうてい太刀打ちできない…」

「よく言うわ。あんたも結構やばいじゃない。」


フランス人形が口を挟む。


「姦姦陀螺に比べたらまだまだですよ…」

「あんなのと比べる方がアホらしいわ。その憑霊使いに蹂躙されてから憑霊使いが嫌いなの。」

「その憑霊使いはどこ行ったんですか?」

「さあ?噂によれば病院に通いっきりらしいけど?」


そうこうしている間に桜雪高校に着いた。


「……ここが桜雪高校だ。」

「ここが…でも一見普通の高校だけどなぁ。」

「じゃあ山形。ここで何があったか聞いてもいいか?」

「ああ…あんまりこういう話はしたくないんだがな。」


そういうと山形はゆっくりと話しだした。


「この学校では昔にも同じような事件が起こっているんだ。」

「え?まじで…」


柊哉は驚き口を閉じた。


「ああ…その時の事件の原因は"いじめ"だった。それは陸上部内で起こったんだ。」

「どんなんだったんだ?」

「それはあとで話す。ちょっと行ってくるわ。」


そういうと山形は学校に入っていった。


「お久しぶりです。竹内先生。」

「おお!山形じゃねえか!元気してたか?」

「はい!おかげさまで。ところで、最近ここの女子生徒が亡くなっいる事件についてお話ししたいことが…」

「ああ…構わんよ。というかお前警察になったのか?」

「まあそんなとこです…」


ちょっとして山形は戻ってきた。


「よしお前ら。入っていいってよ。」

「わかった。いこうしゃくちゃん。」

「うん。」


柊哉としゃくちゃん、そして山形は会議室に案内された。


「わざわざ部屋を貸してもらわなくてもいいのに。」

「いいんだ。今は生徒達もいないからな。」

「では、事件について話してくれますか?」


柊哉が切り出した。


「その前に、この学校であったいじめについてだ。」

「ああ…そう言えば昔にも同じような事件が起こってな。」

「それはどんな事件なんですか?」


柊哉はメモをとりながら話を聞く。


「ある陸上部の生徒、仮にAさんとして、その子がいじめを受けていた。そのいじめのせいでAさんは脚に大怪我を負って陸上を諦めるしかなくなった。」


その事件について語る竹内先生は苦しそうだった。


「Aさんは陸上に人生を注いできた人だった。そんなAさんにとって陸上のない人生なんて空虚なものだったんだろう。Aさんは自殺をしてしまったんだ。」

「そんな…ひどい…」


しゃくちゃんは瞳に涙を浮かばせた。


「それから1ヶ月後くらいのことだった。そのいじめをしていたグループの1人が亡くなった。その遺体は上半身しかなかったそうだ。」

「今回の事件と酷似してますね。」


柊哉には事件のつながりが若干見えてきた。


「それからいじめグループは一週間おきに1人ずつ亡くなった。しかも全員が同じような遺体で発見された。」

「上半身だけの遺体…」

「その事件はどうなったんですか?」

「結局その事件の犯人はAさんの弟だった。」

「弟が!?」


柊哉は驚愕した。しかし、よくよく理由を考えると納得した。


「そうだ。彼は陸上にひたむきな姉のことが大好きだったんだ。」

「その弟は?今どこにいるんですか?」

「その弟はもうこの世にはいないよ。彼も亡くなった。犯行を独白した遺言をボイスメッセージとして残した後、電車に飛び込んだ。」

「そんなことが…」


柊哉は心が苦しくなってきた。その瞳にはしゃくちゃんと同じように涙が現れた。


「そしてその弟の遺体は上半身しかなかった。」


ここで柊哉に疑問が生まれた。

水泳の飛込競技が指先から入水するように、人というのは普通は頭の方から飛び込むものだ。

なのに、この弟の遺体は上半身しかなかった。

それは下半身が電車に轢かれて挽肉になったことを意味する。

ーつまり弟は下半身から飛び込んだ…?


「その弟は実は殺されたんではないですか?」

「え?どうしてそう思うんだ?」


山形が柊哉に聞いた。


「だって変だろ。電車に飛び込んで自殺するなら普通は頭から飛び込むだろ。そうなると上半身が残って下半身が無くなるのはおかしいだろ。」

「確かに、どうして彼は頭からではなく脚から飛び降りたんだ…?」


山形が疑問に思う。


「だからだよ。彼は自殺ではなく他殺なんだ。」

「え?でも遺言があったんだよ?」


しゃくちゃんが柊哉に質問した。


「こういうことは考えられないか?」


柊哉は自分の考えを披露する。


「彼は実際に自殺しようとした。そして駅のホームの前に出た。その時何かで脚を引っ掛けられて脚から滑り落ちた。」

「確かに、雨とかで滑る時は大体脚から滑って尻餅をつくよな。」


山形は納得した。そこで柊哉は確認したいことができた。


「竹内先生。その弟が亡くなった日って雨でしたか?」

「ああ、その日は6月5日だからちょうど梅雨真っ只中で雨だった。」


柊哉の答えはもうすぐできそうだ。


「お前、本題を忘れてないか?」

「ああそうだった。最近多発しているここの女子生徒の連続殺人事件について教えてください。」


柊哉は本題を思い出して早速聞いた。


「いいだろう。あまり外部に漏らしてはいけないんだがな…警察になら話してもいいか。」


竹内先生は悲しい表情を浮かべながら話した。


「最初は久保田という生徒だった。彼女は成績優秀でどうもいじめをするような人じゃなかった。」


柊哉に若干の焦りが見えた。


「次は前山という生徒だった。彼女は成績があまり良くなかったが、正義感が強くてどちらかと言えばいじめを許さないような人だった。」


柊哉は明らかに動揺した。字が少し汚くなった。


「3人目は佐々木という生徒だった。彼女はあまり生活態度が良くなくて、学校内にパシリもいたようだ。絵に描いたような不良少女と言ったところだ。」


「4人目は菊池という生徒だった。彼女のよくない話は聞かないが逆にいい話も聞かない。おとなしい生徒だった。」


4人の被害者の情報をメモにまとめた。わかったことはAさんの弟の事件と違って被害者に統一性がないということだ。


「……わかりました。お時間をいただいてありがとうございました。」

「こちらこそ、どうかこの事件を解決してください。」

「全力を尽くします。」


柊哉と竹内先生は硬い握手を交わした。


「じゃあな山形。また遊びにこいよ。」

「まあ機会があれば行きますわ。」

「おう。」


2人は一旦支部に帰ることにした。

雲井は実践練習で見せ場を作ったから今回はお休みです。

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