プロローグ【帰省】
雷鳥の処女作です。一回目の試し書きが処女作と言われれば処女作ではないかもしれない。
夏…それは青春真っ只中。
青春の春は春だが、青春の旬は夏なのだ…
そして、高校3年生にとっては高校最後の青春のチャンス。だいたい夏付近に大会があるのだ。ある人は甲子園、ある人はコンクール、各部活の最後の青春を噛み締める季節。それが夏。
さらに、高校3年生にとっては進路を決める大切な時期。だが、大半の高校生は夏に進路なんか決まるはずもない。将来の夢なんて現実味のない話、高校生には無理難題である。よって、大半の高校生は進路に悩まされる。
こいつ、八尺瓊柊哉もその1人である。苗字は一般人とはかけ離れているのだが、これといった将来の夢がない一般人のような感性を持った男。それが八尺瓊柊哉である。
そんな彼はいま帰省している。お盆に帰省だ。ところでお盆の時期は先祖の霊がこちらの世界に帰ってくる時期である。だから墓参りを行う。
八尺瓊柊哉も要件は同じである。
伊佐波村、ここが母方の実家である。山奥のこの村は、周りを山で囲われた、まさしく絵に描いたような田舎町だ。清らかな水が流れ、周りには田園風景。ボロボロのアスファルトに本数が異様に少ないバス。そして、バカでかい虫。田舎である。
「ここも変わってないな〜」
と柊哉は呑気なことを抜かしているが、実際は過疎化が進んだ立派な限界集落である。
「もうすぐ着くわよ」
母、八尺瓊玉実がそう言う。
「はあ〜長かったわ…」
父、八尺瓊和宏がそう言う。
父は都会生まれ都会育ちで、長時間景色が変わらないドライブには慣れていないのだ。
そんなこんなで、母の実家に着いた。
「いらっしゃい柊哉、それに、和宏さんも。」
出迎えてくれたのは祖母の八尺瓊房江。
「おう、来たか」
無愛想に玄関先に覗きに来たのは祖父の八尺瓊権蔵
「玉実、お墓参り済ませちゃいなさい。」
「そうね、行ってくるわ」
どうやら墓参りに行くらしい。
この村は少し特殊で自分の家の敷地内に墓を建てる文化があるので、墓参り自体はすぐに終わる。
墓参りを済ました後、夕食までの時間暇なので、柊哉は村を歩いてみることにした。
「懐かしい。八咫家だ。」
この村には三つの家から成り立っている。
一つ目が八尺瓊家。柊哉の家だ。
二つ目が八咫家。今いるところだ。
三つ目が草薙家。この村の神社の一族だ。
「あれ?柊哉?あんた帰ってきてたの?」
「うわっ。藍里かよ。」
「うわってなにようわって。」
八咫藍里。柊哉の幼馴染。
「相変わらずすげぇ派手な格好だな。」
「そうかな?今日は墓参りだから抑えたよ?」
「それで?」
「ええ?これで抑えたの?」
突然後ろから出てきたのは八咫公子。藍里の母親である。
「こんなに穴の空いたズボン履いちゃって…」
公子はダメージジーンズを引っ張って言った。
「ちょっとやめてよ…!」
「やめなさい公子。」
公子の手を取ったのは八咫正雄。八咫家の族長である。
「おばあさんは結構こんな服好きだったぞ。」
「ええ…?変なの…」
「ばあちゃんセンスあるじゃん!」
「ほら藍里、お墓参りに行くぞ。」
「はーい。じゃあね柊哉。」
「おう。じゃあな。」
藍里が墓参りに行って暇になった柊哉は草薙神社に向かった。
「おう。お前帰ってきてたのか?」
「勾一!久しぶり!」
八尺瓊勾一。柊哉の叔父で、親友。
「お前これから神社か?」
「そう。勾一も?」
「おう。一緒に行こうぜ。」
柊哉は勾一と草薙神社に向かった。
「京平!来客だ。」
「なんだ勾一…って!柊哉!久しぶりだな!」
草薙京平。草薙神社の神主で勾一、柊哉の友達。
「お前元気にしてたかー!」
「元気元気よもう!」
「そうか!ここは街と違って空気が澄んでるだろ?久しぶりに自然でも味わえよ!」
清らかな川のせせらぎ。緑に生い茂った木々。その葉の隙間から漏れ出している日光。都会ではめったに見られない光景である。
「ところでさ。柊哉お前恋人とかいんの?」
「は?…いねぇよ。」
「ははは!だろうな!」
「お前が言うか?勾一。」
「んだとー?もっぺんいってみろ!」
勾一から日本酒の匂いがもれだしている。
久しぶりの友達との会話に柊哉は時間を忘れていた。
「もうこんな時間じゃん。柊哉。暗くなる前に帰れよ?」
「ああ。じゃあ帰るわ。またな!」
「おう!」
「勾一は?」
「おれは飯までには帰るわ。」
柊哉は今まで来た道を戻っている。
その時、変なものを見た…
(なんか、変なのあるな。)
それは八咫家の塀の近くで見た。
白い帽子が横にすーっと動いていた。
(帽子が動いている?藍里か?)
ぽぽぽぽ…ぽぽ…
突然そんな声がした。低い声だった。
(何この音…)
家の方に向かっている時、ちらっと帽子の正体が見えた。それは、白いワンピースを着て長い黒髪を垂らした女性だった。ただし、身長は塀ほどあった。
柊哉は特に気にせずに帰宅した。
夕食時、柊哉は何気なく勾一にその話をした。
「なあ勾一。さっき帰ってくる時八咫家の近くで人を見たんだけど、あの人だれ?」
「どんな人?」
「なんか、白いワンピースを着てて、背が高い女性だったな。」
「ふーん…白いワンピースねぇ…」
「でもそいつ、すげぇ声低かったぜ?」
「なにそれ?ギャップじゃん。」
「でも、言葉はしゃべってなくて、代わりになんか鳴き声みたいなのを言ってたな。」
「なんだよそれ。鳴き声って…おかしいやつ。」
「ぽぽぽぽって鳴き声なんだけど。」
その時権蔵の手が止まった。
「なんだよそれ。ねずみ先輩じゃん。」
「なにそれ?」
「知らないの?ジェネレーションギャップだなぁ。」
「おい柊哉、その話詳しく聞かせろ。」
権蔵が真剣な声で言った。
「背が高いってどのくらいだ?」
「八咫家の塀くらいかなぁ?その上から帽子見えてたし。」
「なに…?そいつ、低い声を出してたんだよな…?」
「そうだけど。どうしたのじいちゃん。」
権蔵は米を喉に詰まられたような顔色で電話をかけだした。
「なにしてるの?」
「京平に電話をした。柊哉、明日には帰れ。そして、もうこの村には来るな。」
「え?どうして。なにいきなり。」
困惑しながら柊哉は聞いた。
すると権蔵は悲しそうに、絞り出したような声で言う
「お前は"八尺様"に魅入られてしまったんだ。」
書き直しました。書き直したと言うか、話数を減らしたと言った方が近いですかね。




