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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第二章 前略、辺境の地ガルテナへ……

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Lv.65 厄介な依頼

   [Ⅰ]



 この言い方は、かなりキナ臭い感じがした。

 ゲームだとこういう場合、殆どが魔物がらみのイベントだからだ。

 その為、どうせ碌な事じゃないだろうと、俺は思ったのである。

 だがとはいうものの、無視するわけにもいかないので、とりあえず、話だけは聞く事にした。


「……厄介な事と仰いましたが、一体何があったのですか?」


 リジャールさんはそこで目を閉じ、静かに話し始めた。


「この村の奥にラウムを採掘していた時代の古い坑道があるのだが、実はそこで今、少し異変が起きているのじゃ」


 ラウム……この名前は以前、ヴァロムさんの口から聞いた事がある。

 確か、青い魔鉱石の事をラウムと言っていた気がする。

 ちなみに魔鉱石とは、魔力を蓄えた石の事で、高位の武具や魔導器の製造に用いられている貴重な素材だ。

 魔法が付加された武具は殆ど、この鉱石を使って作られているそうである。

 種類も幾つかあるそうで、それらは色々と性質も違うそうだ。

 また、同じ魔鉱石でも、その質はピンからキリだそうで、当然、市場で値付けられる相場も違うようである。


「坑道で起きた異変とは、一体何なのですか?」

「実はな……坑道に性質の悪い魔物が棲みついたみたいなのじゃよ」

「魔物ですか」


 やはり魔物案件のようだ。

 アグナを使えるかどうか訊いてきたので、恐らく、毒を持った魔物が棲みついているのだろう。

 内心ゲンナリとしつつも、俺は質問を続けた。


「という事は、この村に沢山いる冒険者みたいな方々は、それと関係が?」


 リジャールさんはコクリと頷く。


「うむ、お主の推察通りじゃ。外の冒険者達は、その為に村が雇うておるのじゃよ。争いごとに慣れておらぬこの村の者達では、不測の事態に対応できぬからの」

「そうでしたか……」


 理由はわかったが、村内にいる冒険者達の数を考えると、かなり厄介な魔物なのかもしれない。

 だが少し引っ掛かる部分があったので、俺はそれを訊ねた。


「今、冒険者を雇ったと仰いましたが、マルディラントの太守であるソレス殿下や守護隊に陳情はされないのですか? こういった事は冒険者よりも、その地方を治める権力者に頼んだ方が良いと思うのですが? 年貢も納めているのだと思いますし」

「陳情はもう既にやった。しかし、マルディラントの方でも魔物の数が増え始めている為、守護隊の人員を裂けないようなのだ。で、その代わりという事で、マルディラントの方から彼等を斡旋してもらったのじゃよ」


 既に断られてるみたいだ。

 残念。


「そうだったのですか。……申し訳ありません。そうとは知らず、生意気な事を言ってしまい」

「いや、構わぬ」


 そういえばヘネスの月に入った頃、ティレスさんと一度会ったが、その時、魔物の対応に追われて困っているような事を言っていた気がする。

 なので、今の話は事実なのだろう。

 それはともかく、肝心なところを聞かねば……。


「それでは話を戻しますが、私達に頼みたい事というのは、一体何なのでしょうか?」

「それなんじゃが……実は、儂の護衛をお主達にお願いしたいのじゃよ」

「え? 護衛……ですか?」


 なんか意外な言葉が出てきた。

 俺はてっきり、魔物退治でも頼まれるかと思ったからだ。


「うむ、護衛じゃ。儂は坑道の中で何が起きているのか、それを知りたいのじゃよ。しかも、坑道の中におる魔物は、厄介な事に毒を持っておる。じゃから、アグナを使えるというお主達に護衛を頼みたいのじゃ」

「そういう事だったのですか」


 思った通り、毒を持った魔物のようだが……さて、どうしたもんか。

 俺はそこでアーシャさんに視線を向けた。

 するとアーシャさんは、少し眉根を寄せ、微妙な表情をしていた。

 まぁこうなるのも無理はないだろう。

 誰だって厄介事は御免だからだ。

 おまけに、俺達は先を急ぐ身でもある。

 少々心苦しいが、断るとしよう。


「あのぉ、大変申し上げにくいのですが、私達は荷物を受け取り次第、王都へと向かってほしいとヴァロムさんに言われております。ですから、その依頼をお受けするのは難しいですね。それと旅の仲間が宿屋にいますので、私の一存で決めるわけにもいかないのです」


 リジャールさんは、残念そうに大きな溜息を吐いた。


「フゥゥ……そうか……難しいか。しかし、今、この村にはアグナの使い手がおらぬ上、備蓄してある毒消しの魔法薬も残り少なくなってきておるのじゃ。しかも不味い事に、毒消しの魔法薬はフィンドでは手に入らん。マルディラントにまで行かねばならぬのじゃ。じゃから、儂も困っておるのじゃよ」

「そうだったのですか。しかし、ですね……」


 どうしたもんか……。

 俺1人で考えるのもアレなので、とりあえず、アーシャさんの意見を訊く事にした。


「アーシャさん、どうしましょう?」

「今朝も言いましたが、私はコタローさんの判断に従いますわ」

「そ、そうっスか」


 こう返されると俺も困ってしまうが、まぁ仕方ない。

 すると、リジャールさんは何かを思い出したのか、ポンと手を打ったのである。


「ああ、そうじゃ。言い忘れておったが、勿論、タダでとは言わん。ちゃんと報酬も考えてあるぞ。もし、手を貸してくれるならば、グローラムの魔法書と、儂が作成した魔導器を幾つか進呈しよう。どうじゃ、引受けてくれぬか?」

「グローラムの魔法書に、魔導器……」


 今の話を聞き、ヴァロムさんが以前教えてくれた事を思い出した。

 確かヴァロムさんは、こんな事を言っていたのだ。

 グローラムは現在でも使える古代魔法の1つだが、通常の洗礼で修得する事が出来ないと。

 それからこうも言っていたのである。

 修得するには、グローラムの魔法が封じられた魔法書が必要だと。

 まぁ要するに、このグローラムという照明魔法は、フォカールのような方法でしか覚えることが出来ない魔法なのだ。

 できれば欲しい……魔法である。


   *


 話は変わるが、グローラムの魔法書は仕組みが解明されているそうで、古代の魔法書の原本を複製した物が出回っているそうである。

 というわけで、魔法書があれば修得できる古代魔法なのだが、複製はそれなりに技量がいるらしく、出回っているとは言っても、その数は少ないそうだ。なので、貴重な魔法という事には変わりないのである。

 話を戻そう。


   *


 グローラムの魔法書とリジャールさんの作った魔導器。

 非常に気になる報酬であった。

 だが、今この瞬間も、ヴァロムさんは牢獄にいるかもしれないのだ。

 その為、余計な事に首を突っ込んで時間をロスするのは、極力避けなければならない。

 ここは断るべきだと考え、俺はその旨を告げることにした。


「あの、リジャールさん。やはり、お引き受けするわけには……」


 と言いかけた時だった。


「グ、グローラムの魔法書を持ってらっしゃるのですか!?」


 なんとアーシャさんが、興奮気味に言葉を発したのだ。


「持っておるから、報酬にしようと言っておる。もし引き受けてくれるのなら、お主等2人にやっても良いぞ。丁度、2冊あるしの」

「ほ、本当ですか!?」

「うむ。儂にはもう必要の無い物じゃし、この依頼を引き受けてくれるのならば、お主等に2冊とも進呈しようぞ」


 アーシャさんはそれを聞き、目をキラキラと輝かせた。

 そして俺に振り向く。


「コタローさん、ここはリジャールさんのお力になって差し上げましょう。やはり、困っている人を見過ごすわけにはいきません」


 どうやら、物欲に負けたようだ。

 アーシャさんは魔法関連の事と古代文明の事には目が無いので、これは予想通りの反応であった。

 だが肝心な事を忘れてるようなので、俺はそれを指摘した。


「でも、アーシャさん。毒を持った魔物ですよ。危険だとは思わないんですか?」

「そ、それは……」


 アーシャさんも依頼内容を思い出したのか、少し口ごもる。

 しかし、そこですかさず、リジャールさんは合いの手を入れてきたのである。


「じゃが、毒を持っているとはいえ、お主がアグナを使えるのなら、それほど大事にはならぬかもしれぬぞ。今、この村で冒険者達を統率しておるカディスという者の話じゃと、毒を持ってはいるが、それほど力を持った魔物ではないらしいからの」


 でも、だからといって安請け合いする依頼ではない。


「しかしですね……」


 するとリジャールさんは、深々と頭を下げてきたのであった。


「どうか、この村を助けると思うて、手を貸してくれぬだろうか。坑道の中を調べるには、解毒できる者の力がどうしても必要なのじゃ。頼む、この通りじゃ」

「ちょっ、リジャールさん。何もそこまでしなくても」


 ここまでされると、俺も断りにくい。


(引受けた方がいいのだろうか? いや、しかし……あまり道草をするわけにはいかない。それに、アーシャさんやイアちゃん達を危険に巻き込むわけにもいかないし……参ったな……ン?)


 そこで、アーシャさんが耳打ちしてきた。


「コタローさん、リジャールさんはオルドラン様の友人なのですから、引受けたらどうですか。それにグローラムの魔法書も手に入るのですよ」


 まぁ確かに報酬は魅力的だが、危険や時間的なロスを考えると、簡単に返事するわけにはいかない。


「でもですね。俺達は先を急がないといけないですし……」

「坑道はそこまで深くはない。じゃから、それ程、時間はかからぬかもしれぬ。とりあえず、一緒に来るだけでも来てもらえぬじゃろうか。解毒の魔法を使える者が、ここにはいないのじゃ。頼む!」


 リジャールさんはそう言って、頭を下げ続けた。


(手を貸したほうが良いのだろうか……はぁ、悩む……)


 だが手を貸すにしろ、貸さないにしろ、判断を下す為の材料が少ない。

 俺はまず、それを訊いてから判断することにした。


「リジャールさん顔を上げてください。とりあえず、今の現状をもっと詳しく教えてもらえますか? でないと、私も返事が出来ませんので」


 そこでリジャールさんは顔を上げる。


「それもそうじゃな。わかった。もう少し、詳しく説明しよう」

「お願いします」――

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