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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第四章 前略、王都オヴェリウスより

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142/142

Lv.142 そして魔物へ

   [Ⅰ]



 岩の裏に来たところで、俺は周囲を見回し、魔物と人の姿がないかを確認した。

 辺りは苔の生えた大きな岩がゴロゴロしているところだが、基本的に見通しの良い草原なので、そういった確認はしやすかった。


(……今のところ、人影や魔物の姿はないな。多分、大丈夫だろう。さて、それじゃあ始めるか……)


 俺は用意しておいた細長いブツを手に取り、それに巻かれた布を解いた。

 布の下から、紫色の水晶球と水色の水晶球が付いた杖が姿を現す。

 ちなみにこれは、ザルマン達の遺品であるルキの杖だ。


「それは……杖?」


 シーマさんが訊いてくる。


「ええ、杖です。ですが、これは戦いに用いるモノではないですよ。変装用の杖なんです」

「へ、変装用?」

「コタローさん、どういう事ですか? わけが分からないのですが……」


 ラッセルさん達は全員がポカンとしていた。


「言葉通りの意味ですよ。さて、では始めますか」


 俺はそう言うと、まずは変化解除用である水色の水晶に魔力を籠めた。

 その瞬間、水晶から水色の霧が発生し、俺達を包み込んでゆく。

 皆の驚く声が聞こえてきた。


「これは煙!?」

「わっ、何よこれ!?」

「なんやねん、この変な煙は!」


 程なくして霧は晴れてゆく。

 その結果、全員、変化無しであった。

 念の為の処置だが、ラッセルさん達のパーティ内に、魔物はいないとみてよさそうだ。


「あの、コタローさん……妙な霧が発生したけど、何も変化が無いわよ」


 と、マチルダさん。

 俺はとりえず誤魔化しておいた。


「あらら、すいません、間違えました。変装は逆の水晶でした。さて、では論より証拠です。もう一度、いきますよ」


 俺は仕切り直しとばかりに、紫色の水晶球に魔力を籠め、紫の霧を発生させる。

 すると、霧が晴れると共に、皆の悲鳴じみた声が聞こえてきたのだった。


「なッ!? ま、魔物になってる!? な、なんでよッ!」

「どういう事よ、何で魔物にッ!?」

「嘘ッ!?」

「コタローさん、その杖は一体……」


 ラッセルさん達は初体験だから驚くのも無理はない。

 一応、皆の姿を言うと、ラッセルさんとリタさんが鎧の魔物であるリビングメイルで、シーマさんとマチルダさんが出来の悪いマリオネットを思わせる木偶人形、ラティが緑色のゲスバートン、そして俺は魔法使い系モンスターであるマッドソーサラーといった具合だ。

 中々ゲームでもお目にかかれないレアな魔物パーティである。

 とはいえ、ラティは色以外変化なしなのが、よくわからんところであった。

 それはさておき、俺は皆にタネをバラす事にした。


「これはですね、王都に来る途中、冒険者のフリをして俺達に襲い掛かってきた魔物が持っていた杖なんですよ。その魔物達を返り討ちにした後、戦利品として手に入れたんです」

「冒険者のフリをしてですって……そんな……魔物が人に化けるなんて」


 マチルダさんは口を手で覆い、息を呑んだ。

 無理もない。俺も奴等に襲われた時は、その事に驚いたのだから。


「マチルダさんの言うとおりです。魔物の中には、人に化ける手段を持っている者もいるんですよ。ですから、こういった魔道具を所持する魔物もいると言う事を、ラッセルさん達も覚えておいた方が良いです。まぁそれはともかく、ここからはこの姿で移動する事にしましょうか。安全に魔物の棲み処に近づくには、魔物になるしかないですからね」

「た、確かに……この方法ならば危険は減りそうですね」


 と、ラッセルさん。


「なぁコタロー、ワイはどんな姿なんや。自分で見られへんから、ごっつい気になるんや」

「ラティは緑色のバートンになってるよ」


 その直後、ラティは声を荒げたのであった。


「な、なんやてッ!? 緑色のバートンって、ホンマかいなッ。嘘やろッ、嘘って言ってや!」

「嘘は言ってないぞ。どうしたんだよ、急に?」

「ホンマかいな……よりにもよってゲスバートンに変身なんて、最悪やないかッ」


 よくわからんので、訊いてみる事にした。


「ゲスバートンだと、何か不味い事でもあるのか?」

「大アリや。その口振りやと、コタローは知らんみたいやな。まぁええわ、この際やから教えたる。……実はな、ワイ等バートンは色違いの種族が幾つかあんのや。それでやな、その中でもワイ等メイジバートン族とゲスバートン族はめっちゃ仲悪い因縁の関係なんや。それはもう先祖代々からの因縁や。理由はわからんけどな。ワイも小さい頃から、ゲスバートンみたら問答無用でどついたれって教えられとるくらいやで。せやから、ワイは今、めっちゃ気分が悪いねん」


 ラティは因縁を熱く語った。


「そ、そうだったのか。でも少しの間、我慢してくれ。ここからは変身解くと危険度が増すからな」

「しゃあないから我慢したる。でもゲスバートンに変身するのはこれが最後やで」

「ああ、勿論だ」


 この様子だとゲスバートンは嫌悪の対象なのだろう。


(理由はわからんと言ってたが、何で仲が悪いんだろう……。そういえば、ゲームではゲスバートンの所為でメイジバートンの出番はなくなったなぁ……まぁ幾らなんでもこれが理由ではないだろうけど)


 それはともかく、これで用は済んだ。

 先に進むとしよう。


「さて、ではそろそろ移動を再開する事にしましょうか。でも、幾ら魔物に変身したといっても見た目だけですから、周囲の警戒は今まで通りですよ。道中危険な事に変わりないですから、気を緩めないでくださいね」

「ええ、勿論です」――

 


   [Ⅱ]



 ルキの杖で魔物の姿になった俺達は、ゼーレ洞窟に向かい移動を再開した。

 道中、魔物と遭遇する事もあったが、この姿の所為か、俺達に襲い掛かってくる魔物は皆無であった。

 ゲームではエンカウント回避できたが、リアルではどうか確証持てなかったので、とりあえず、ホッとしてるところだ。


(こりゃいい。良いアイテムを拾ったよ……)


 と、そこで、ラティの声が聞こえてきた。


「コタロー、ワイの知ってる近道行くんやったら、次の交差点を右に行った方がええで」

「ン? そうか。なら運転手に言っとかないとな」


 つーわけで、俺はラッセルさんに言った。


「ラッセルさん、次の交差点を右にお願いします」

「右ですね。わかりました」


 それから程なくして交差点にやってきた俺達は、そこを右折し、暫く道なりに進み続けた。

 遠くに林が小さく見えたが、右折した先も今までと同様、緑の草原が広がっていた。

 王都を出発してからというもの、似たような景色がずっと続くので、眠くなってくるところだ。

 おまけに魔物を警戒するあまり、皆、言葉少ななので、余計にそうなる。

 だが、幾ら魔物に変化しているとはいえ、襲われないという保証はないので、勿論、油断は出来ない。

 その為、俺も欠伸を噛み殺して、皆と同じように警戒を続けねばならないのである。

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