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前略、目が覚めたら、なぜかRPG世界にいたんだが……。  作者: 書仙凡人
第三章 前略、王都へ

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Lv.107 撤収

   [Ⅰ]



 ザーリアルが息絶えたのを見届けたところで、俺は魔光の剣を仕舞い、女性に視線を向けた。

 すると女性は、胸と股間を手で隠しながら、ザーリアルの亡骸と俺を交互に見詰め、何が何やらわからないといった感じであった。

 まぁこういう反応になるのも当然だろう。

 この施設の特性上、ここに魔物や俺みたいな男がいること自体、有り得ないのだから。

 とはいえ、このまま黙っているのも気まずい。

 おまけに、全裸の女性をジロジロと見るのも失礼であった。

 その為、俺はクルリと女性に背を向け、それから話を切り出したのである。


「あのぉ、お怪我はありませんでしたか?」

「え? は、はい……ありがとうございました」


 怪我は無いようだ。

 目的は達成である。

 これ以上ここにいると面倒な事になりそうなので、俺は撤収する事にした。


「それはよかった。では、私はこれにて失礼します」

「ま、待ってください。あ、貴方は一体、誰なのですか?」


 俺は後ろを振り返らず、簡単に答えておいた。


「名乗るほどの者じゃありませんよ、お嬢さん。ただの通りすがりの親切な魔法使いだとでも思っておいて下さい。では、アディオス」


 意味もなく、スペイン語で別れを告げた俺は、逃げるように入口へと向かい歩き出す。

 だがその時であった。


「お~い、コタロー! 誰かこっちに来るで!」


 なんとラティが、俺の名前を呼びながら、ここに現れたのである。

 この予想外の展開に、俺は思わず額に手をやり、アチャーという仕草をした。

 背後から女性の声が聞こえてくる。


「バートン便の配達員がなぜここに? いえ、それよりも……今、その配達員がコタローと言いましたが……それが貴方の名前ですか?」


 とりあえず、俺は適当に誤魔化すことにした。


「いえ、違いますよ。彼は今、お~い、向こうからー、と言っていたのです」


 ちと苦しいが、発音によっては、そう聞こえん事もない。これで押し切ろう。

 などと考えていると、ラティが全てを台無しにしてくれた。


「何言うてんねん。コタローは自分の名前やがな」


 はい、終了です。

 どうやらこのバートンは、空気を読むという芸当は出来んみたいだ。♯ガッデム!

 と、そこで、ラティが驚きの声を上げた。


「おお! さっきの黒い奴はコイツやったんか。しかし、またエライ強そうな奴っちゃなぁ。ワイもこんなん初めて見るわ」

「実際、強かったぞ。俺も倒すのに、結構苦労したからな」

「しかし、ようこんな厳つい奴を倒せたな。感心するわぁ。って感心してる場合やないわ。それより、向こうから誰か来てるで、どないする?」


 そうだ。

 これを利用してトンズラしよう。

 俺は女性に言った。


「向こうから誰か来ているみたいなので、とりあえず、外の様子を見てきますね」

「ちょっと待ってくださいッ。まだ話が」


 まぁ確かにこのまま去るのもアレだ。

 最後に、助言くらいはしておくか。

 ついでに、もう一度、この子の身体を拝ませてもらうとしよう。

 こんな綺麗な子の裸なんて、中々見れないだろうし……。

 というわけで、俺は女性に振り返って人差し指を立てると、そこで忠告をした。


「あ、そうだ。1つ言っておく事があります」

「え? 言っておく事……。なんですか一体?」

「この建物の外にいる3名の騎士と、この隣にいる女性神官以外は、気を許さない方が良いですよ。誰が敵かわからないですからね」

「ど、どういう意味ですか?」


 俺はそこで、泉に浮かぶザーリアルの亡骸を指さした。


「今は説明してる時間がありませんが、簡単に言うと、その魔物が1体でここに来たという事が理由です」

「魔物が1体でここに来たという事……それはどういう……」


 女性は恐る恐るザーリアルに目を向けた。

 俺は構わず続ける。


「ああ、そうだ。これも言っておきましょう。俺達の事は、あまり詮索しないでください。それがお互いの為です。じゃあ、そういうわけで」

「え? ちょっと待ってくださいッ、コタロー様! 今のはどういう……」

(……ごめん、待てません。コタローはクールに去るぜ)


 そして俺は、呼び止める女性を振り切り、この部屋を後にしたのであった。



   [Ⅱ]



 建物の外へ勢いよく出た俺は、急いで周囲を見回す。

 すると、ピュレナ神殿がある方角に、松明の物と思われる揺らめく光が、小さく見えた。


「アレや。どないする? ここで待つか?」

「いや、ここは流石に不味い。とりあえず、この建物の脇に回って、少し様子を見よう。そこなら月明かりが当たらないから、向こうもそう簡単に気付かない筈だ」

「ほな、はよ、隠れよ。もうすぐ来るで」

「ああ」


 そうと決まったところで、俺とラティはすぐさま建物の脇へと移動する。

 それから俺達は、建物の外壁を背に息を潜め、暫し様子を窺う事にした。

 ラティが小声で訊いてくる。


「なぁ、コタロー……あの光、ゆっくりとコッチに来るけど、なんやと思う? 魔物かな?」

「さぁな。でもゆっくりしてるのは、多分、歩いているからだろ。まぁとにかくだ。今はアレが来るまで待とう。倒れている3人の騎士に対する反応を見れば、敵かどうかすぐに分かる」

「ああ、なるほど。ここに隠れたんは、そういう事やったんか。こんな時やのに、コタローは冷静やなぁ」

「まぁ理由はそれだけじゃないけどな。さて、お喋りはここまでにしておこう」

「了解」


 それから2分くらい息を潜めたところで、ようやく光の正体が明らかになった。

 現れたのは、松明を片手に、煌びやかな箱を脇に抱えた女性騎士であった。

 倒れている女性騎士と同じ格好をしているところを見ると、どうやらこの女性も近衛騎士のようだ。

 と、その時である。


「ル、ルッシラ隊長ッ! これは一体ッ!」


 入口の異変に気付いたのか、その女性騎士は慌ててこちらへと駆けてきたのである。

 女性騎士は倒れている騎士の1人に跪き、名前を呼びかけながら身体を揺すった。


「ルッシラ隊長! ルッシラ隊長!」


 暫くすると、眠たそうな声が聞こえてくる。


「う……むぅ……ンン……イリサか……どうしたのだ? 朝か……」

「た、隊長。よかった」

「ン、よかった? ……何を言っている」


 ルッシラと呼ばれた女性は、そこでムクリと半身を起こすと、周囲に目を向ける。

 すると次の瞬間、その女性騎士は目を見開いて驚くと共に、大きな声を上げたのであった。


「……ハッ、これは一体ッ!? そ、そうだ! イリサ、あのローブ姿の者はどこだッ! フィオナ様はご無事かッ!」

「いえ、それが、私も今来たばかりでして、まだ確認をしてはおりません」

「馬鹿者ッ! それでも貴様は近衛騎士かッ! 私ではなく、まずはフィオナ様の安全が先だッ!」

「は、はい、申し訳ありません」

「謝罪はいい! 行くぞッ」

「ハッ」


 そして2人の女性騎士は、建物の中へと足早に入って行ったのである。

 今のやり取りを見た俺とラティは、そこで互いに顔を見合わせた。


「近衛騎士のようやし、ワイ等は帰った方が良さそうやな。これ以上ここにいると厄介な事になりそうやわ」

「だな。そろそろお暇させて貰おう。だが、その前に……アレをどうにかしないとな」


 俺は外壁の奥にある小窓の下に目を向けた。


「ン、あそこになんかあるんか?」

「ああ。さっき戦った魔物が持っていた荷物がな……。ちょっと気になるから、今の内に回収しておくよ」


 放っておけばいいのかもしれないが、ソーンのオッサンが言っていた内容が気掛かりであった。

 あれが本当ならば、ここに置いておくと、災いの元になるのは間違いないからだ。


「なら、はよした方がええで。さっきのねぇちゃん達が息巻いて、建物の外に来そうやさかい」

「ああ、わかってるよ」――

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