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駒唄  作者: 無二エル
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再燃

 王太君ブームが復活した。

 新聞もTVも話題は王太君の事ばかり。

 世間が待ちわびた将棋界の希望の初タイトル。


『最近の将棋界は動きが激しいですね』

『女性初の棋士誕生、藤谷王太初タイトル、話題に事欠かないですよ』


 今は家。

 ゲストに棋士が出ると言う事でテレビのワイドショーを見ている。

 お、映った。中元 大地七段だ。

 隣には河口 恵梨菜女流も居る。

 因みに中元さんは斉上さんの前の玉座のタイトル保持者。

 この二人はテレビに呼ばれる事が多い。

 恐らく連盟がビジュアルで送り込んでいるのだと思う。


『君島さんもタイトル獲ったよね?』

『ええ、女王のタイトルですね。奨励会時代に獲ってましたね』

『んん?そんな名前だったかな。最近の話だよ』

『ああ、加古川激流戦の話ですか?あれは厳密には・・・』


 将棋に詳しくない解説者に棋士が色々教えてる。

 まだまだ将棋界への興味なんてこんな物。


『へえ、じゃあ王太君が獲ったのは八大タイトルの一つなんだ?』

『だから凄いんですよ。一つ獲るだけでも大変なタイトルを二十歳で獲ったんだから』


 最年少記録は更屋敷九段の18歳6か月だ。

 2番目は羽月さんの19歳。

 王太君の記録は3番目になる。


『そっか、もう二十歳だったっけ。いつまでも王太君とは呼べないね』


 ・・・そうだね、中学生でプロになった王太君ももう二十歳。

 でも王太君で定着しちゃったよね。

 羽月さんも昔は君付けで呼ばれていたのかなぁ。


『今日来てくれたお二人も美男美女で、将棋界には良い人材がたくさん居ますね』


 謙遜して苦笑いする二人。

 中元さんはシュっとしてるけど少し古いタイプの男前なんだけどね。

 河口さんに関しては本気で自分自身の事を可愛いとは思ってないらしい。


『将棋界には私なんかよりもたくさん可愛い子が居ますよ』

『そんなに?中元さん本当なの?』

『え、ええ、河口女流も勿論美しいですが、ご存知のように君島さんも美しいですし、女流も美しい人ばかりです』


 中元さんちょっと焦ってる。

 女流が美しい人ばかりは言い過・・・げふげふ。

 まあ私が美しいんだから良いじゃないの。


『二人も良いけど、王太君や君島さんはスタジオには来てくれないのかな?』

『藤谷玉座は師匠の意向でメディア出演を制限しているそうなんですよ。君島さんは学生なので、勉学優先らしいです』


 そうそう、私もメディアは制限。

 対局、研究、将棋関連の仕事、大学で手一杯だからね。

 ああポテチ美味しい。モグモグ。


『これからも将棋界から眼が話せませんね』

「流歌ちゃん、夕食前に食べ過ぎちゃ駄目よ?」

「はーいママ」

 

 解説者の最後の言葉が胸に残る。

 本当に目が離せない、そんな将棋界になると良いな。

 


---------------



 次の日、サークル。

 さて、私は忙しくて見に行けなかったけど秋季個人戦が行われたはずだ。

 どうだったの?


「わたくしは3位でしたわ」


 そっか、玲奈は今回優勝出来なかったか。

 春季大会では優勝した玲奈。

 さすがに連続優勝出来るほど甘くないか。


「ウチは4位でした」

「おお」

「3位決定戦をわたくしとやりましたのよ」


 織華ちゃんは順調に上がって来てるね。

 これは次に優勝するのは織華ちゃんかな?


「そうやなぁ、ウチにとっては来年の春季大会が最後の大会になる思うんで優勝したいです」

「え?・・・あ、そっか、織華ちゃんも就職活動か」


 織華ちゃんも来年は3年生、忙しくなる。

 皆、旅立っていくんだね。

 なんだかちょっと寂しい。


「ふっふっふ、君島先輩、花音の結果をまだ聞いてないのだ」

「え?ひょっとして優勝・・・」

「さ、流石にそれは無いのだ。でもベスト32に入ったのだ」


 おお!ベスト32でも凄いじゃない!

 春季までは女流に出て個人戦は今回が初めてでしょ?

 なんで急にそんな躍進したの?


「花音ちゃんは早指しと橘流で相手を翻弄しましてん」

「へえ、姉弟子の戦法使ったんだ?」

「凄い戦法なのだ。花音は橘女流を一番尊敬するのだ」


 あんた解ってるじゃないの!

 見どころあると思ってたんだよねー。

 でも伸びてるのに花音ちゃんも2年生、来年は忙しいの?


「花音は就職活動しないのだ。卒業したら親の会社に入るのだ」

「へえ、お父さん社長さんなんだ?出身どこだっけ?」

「四国の徳島なのだ」

「三田村さんのお爺さんは徳島知事ですわよ」

「知事?!」

「会社は従業員2000人なのだ」

「はー」


 知事と社長が身内とは。

 よく解んないけど大きな精密機器の会社らしい。

 凄いね、那由あたりが就職にあぶれたら雇ってあげてくれないかな。

 なんて、那由が聞いたら怒るか。

 あの子も就職活動上手くいってるのかな・・・


 頼子とシャリーはどうだったの?

 初日負け?あれまあ。

 木葉ちゃんも個人戦?でも初日負けか。中々層が厚いね。


「女流では呉波さんがベスト4でしたわ」

「呉波ちゃんは女流に出たんだ?」

「うッス。優勝したかったけど無理だったッス」


 そっか、まあそんなに簡単じゃないよね。

 でもまだ一年生、これからいくらでも強くなれるからね。


「しかしもう初日突破が当たり前になって来たね」

「白湯女将棋の見方も変わって来てますわ。もうすっかり強豪校です」

「すぐに団体戦だよね?」

「はい、今も特訓中ですのよ」


 個人戦の後は団体戦。

 今回白湯女はB1リーグで戦う。

 ここまでは順調に上がって来たけど、そろそろキツくなるんじゃないかな。


「わたくし、シャリーさん、片瀬さん、神楽坂さん、三田村さん、青山さん・・・」


 玲奈がオーダーを考えている。

 団体戦は7人制、登録は14人まで出来る。

 でもやっぱり遥と那由が抜けた穴が大きそうだな。


「部長、私なら大丈夫ッス、捨て駒にして良いッス」

「ですが・・・」

「・・・なんの話?」


 サークル内にある棋力の格差。

 玲奈や遥、織華ちゃんが引っ張ってB1まで上がって来たけど、そこで戦う実力がまだついていない者も多いと玲奈は考えているようだ。

 団体戦に出ても、相手に勝ち星を献上するだけの数合わせになるのが玲奈は嫌みたい。


「せっかく将棋を楽しんでくれてるのに、大きすぎる実力差に打ちのめされたのでは可哀そうで」

「うーん、気持ちはわかるけど、負けるのも経験だよ?」


 玲奈の感触では、個人戦上位の玲奈や織華ちゃんはB1でもまともに戦えると言う。

 研修会員の木葉ちゃんも善戦できると言う。

 頼子、シャリー、花音ちゃんは苦戦するだろうけど全敗って事は無いらしい。

 問題はここまでで6人だと言う事か。

 団体戦にはもう一人必要。


「呉波は負けても挫けないッス!」「私もせっかくだから出たいです!」「私も!」


 呉波ちゃんと、その他何人かが手を上げる。

 ・・・やらせてあげたら?どのみち7人必要なんでしょ?


「それより、圧倒的な力に慣れさせたいなら私がケチョンケチョンにする事で慣れないかしら?」

「だからそれが可哀そうだと言ってるのに」

「スパルタなら望むところッス」

「霧ヶ峰さんは良いかも知れませんが・・・」


 うん、言ってる意味は解るよ。

 打たれ強いの子ばかりでは無い。


「私だって白湯女将棋部の一員です!先輩方や織華や花音と戦いたい!」

「全然勝てないかもしれないけどチームになりたいんです!」

「足を引っ張るだけかもしれないけど・・・逃げたくないんです!」


 ・・・あの子達は2年生だっけ。

 知らないうちに、熱い思いが育ってる。

 大学のサークルではなかなかお目にかかれない熱意。


ヒソ「頼子、何があったの?」

「えぇ?解んないよぉ」

「シャリーは知ってマース。個人戦の時に・・・」


 個人戦の時に他校の生徒が揶揄していたそうだ。

 白湯女はおっぱいデカいヤツしか強くない。

 ひ、ひどいねwww


「そんな事ぉ言われてたのぉ?!!」

「シャリーさん、片瀬さんには内緒だと言ったのに」

「ごめんよレイナー」


 燃えている子達を見つめる。

 うん、軒並み貧乳だ。


「部長!一杯食わしてやらんと気が済まんのですよ!」

「どんな手を使ってでも・・・!」

「勝てる可能性もこれから爆乳になる可能性も0じゃないです!」


 因みにベスト32に入った花音ちゃんもド貧乳だ。

 つじつまが合わないけど、まあ何かしらのアラ見つけてを馬鹿にしたかっただけなんだろうな。

 子供だなぁもう。

 でも奮起してくれた気持ちを大事にしようよ。


「はあ、解りましたわ。何事も経験ですし、希望者は登録しておきます」

「よっしゃ見とけよ!」

「血祭じゃあ!」

「童貞共がァ!」


 やる気十分で喜ばしい事じゃないの。

 なんかガラ悪いけど。


「頼子も頑張ってね」

「全員バチコンいったらぁ!!」

「・・・」


 学校の品位は守ってね。

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