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駒唄  作者: 無二エル
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ゲスト

 次の日、今日はタイトル戦が始まる朝だ。

 玉位戦は2日制、夕方には一度封じ手で中断し、決着は明日になる。

 対局者達は緊張してるだろうな。


 さて、私達はゲストなので楽なもんだ。

 大盤解説会も他の棋士がやるし、取りあえず検討してればよい。

 時々中継に呼ばれて局面を聞かれたり、現地レポーターみたいな事をやらされるらしい。

 対局を盛り上げる為の添え物なんだろうね。


「咲子は添え物で終わる気はありませんからね」


 ・・・この子何をする気だろう。

 私を巻き込まないと良いけど。



-------------



 対局が始まったけど、初日の午前中なんてヒマな物だ。

 他の棋士達と談笑。

 あはは、あの先生そうなんですか?

 交流を深めた。


「水上さん、お願いします」

「はーい」


 水上さんが呼ばれた、49生の仕事みたい。

 今回私はアババの契約なんだよね。裏番組に出る事は無い。

 ちょっとスマホで49生見てみるか。


『どうもー、新人女流棋士の水上 咲子です!』


――か、可愛い――

――うわ、女子高生?――

――なんちゅう恰好だ――

――あざといな――


 コメントが二分してる。

 アンチももれなく付きそうだ。


『ど、どうも、水上さんは高校1年生だそうですね』

『はい♡都内で高校に通ってまーす』


 解説は高美永王なんだ?

 あ、今、聞き手の女流が苦々しい顔したw


『そちらの様子はどうですか?』

『福岡は快晴ですよ!こんな日は将棋なんてやめて、海にでも行きたくなるようなお天気です!』


 何言ってんのこの子。

 将棋見てもらわないと困るでしょ。

 でもコメント見る限りは結構ウケてる。


『昨日の前夜祭の様子はどうでしたか?』

『私、地元の新聞社の社長さんと仲良くなっちゃいましたー』


 解説が聞きたいのは対局者の様子だと思うんだけど。

 自分アピールしか考えてないみたい。

 ・・・あれ?新聞社の社長と高校生が仲良いってコンプラ的に大丈夫なのだろうか。


『み、水上さんは緊張してるみたいですね。いったん引き取りましょう』


 あ、変なタイミングで切られた。

 やっぱ色々マズかったんだろうな。


「君島さん、お願いします」

「あ、はーい」


 今度は私がアババのスタッフに呼ばれた。

 東京のスタジオと中継か、向こうと一緒だな。

 私は上手くやらないと。


 アババの解説は千駄ヶ谷の守り師こと森村九段と、女流の河口さんだ。

 面識ないんだけど上手く話せるだろうか?


『中継先の君島さーん』

「はーい、こちら福岡の君島です」

『か、かわいい』


 今のは河口女流だ。

 おじさんぽいところがある美人女流棋士。

 あと、良く噛む人。


『興奮してないで早く聞きなさいよ』

『すみません。君島さん、そち、そちらの様子はどうですか?』

「今はまだ初日の午前中なので平穏です。対局が行われるホテルからは―――


 対局場の様子、ロケーション、検討している棋士達の様子などを伝える。


「昨日の前夜祭では両対局者のこの一番に賭ける思いを聞く事が出来て、とても勉強になりました」

『そうなの?セーラー服の女子高生が暴れまわってたって聞いたけど』


 今のは森村九段だ。

 本物のおじさんだ。


「えーと、新人の水上女流が元気に盛り上げてくれましたね」

『君島さんも新人じゃないの。もう大物気取りですか?さすがにCM来る人は違うな~』


 うーむ、ツッコミが厳しい。

 嫌味に聞こえるかもしれないけど、森村さんの場合冗談なんだよね。

 言い方が面白おかしい。


『先生、意地悪な事言わないでください。将棋界の宝ですよ?』

『うん、僕が悪かったです。ごめんなさい』


 そして河口さんのフォロー。

 この二人は良いコンビだ。


『あれ?今セーラー服が通ったね』


 え?・・・あ!水上さん戻って来たの?

 こっち今中継中だよ?

 映っても大丈夫なの?


―マイク貸してください― 「アババTVの皆さ~ん、新人女流棋士の水上 咲子ですよ~」


 ええ?こっちにも出る気なの?

 それってありなのかな。

 他の棋士も居るし、たまたま映っちゃうくらいなら仕方がないと思うけど。


「君島さんとは、大の仲良しです!」


 ええ?便乗して来た。

 この子、私の人気を食うつもりだ。

 逞しいなぁ。


『そうなんですか?君島さん』

「ええっと・・・会うのは今回で2回目です」

『なんか、微妙な答えだねw』

「ひ、ひどーい君島さん、さ、咲子恨んじゃうぞー」ぷんぷん

『み、水上さん、ヘソが丸見えですよ?』


 あざとく両手を上げて怒った振りをするもんだから、ヘソが丸見えだ。

 制服の下はブラだけなの?あざといなぁ。


「わ!や、やだぁ、見えました?」

「・・・」『・・・』『・・・』


 皆にバレてるよ、アンタの魂胆。

 でも視聴者にはウケたかもしれない。

 うーん、こういう子は意外と侮れないと思う。

 恐ろしい子だ。



----------



 中継が終わって、ネットの掲示板を見る。

 案の定、水上 咲子のスレがいくつか立ってた。

 反応はそれぞれ、叩いてる人も居る。

 でもそれも知名度の証、今の水上さんにはプラスなはず。


 YO!TUBEも見てみよう。

 ・・・さすがにまだ動画はUPされてないか。

 でも多分今日中にはUPされると思う。

 

 水上さんは連盟職員から注意を受けてた。

 やっぱ裏番組に出ちゃ駄目だよねえ。

 しかし確かな爪痕は残した。

 伸し上るのはこういう子なのかもしれない。


「えへへ、怒られちゃいました」

「良い根性してるわね。その強心臓は見習いたいよ」

「ひ、皮肉ですか?」

「違うわよ。やり方があってるかは解らないけど、でも他に遠慮してたら生き残っていけない世界だとも思う」


 ネットが発達した時代、今回の事が誰の目に止まるか解らない。

 テレビにも呼ばれたりするかも知れない。

 彼女はもともと将棋を頑張るつもりは無いって言ってるんだ。本人にとってはこれでいいんだろう。


 でも将棋界にはダメージ与えないでね。

 一歩間違うと、色んな物を巻き込んですぐに炎上する時代なんだから。

 ・・・これは、自分ならそうならないとも、言えない事なんだけどさ。


「一応、将棋界で過去に何があったかくらいは認識してますよ?」


 そっか、じゃあそれで十分か。

 私だってどうするのが正解で、何をしたら駄目とかはっきり解ってる訳じゃない。

 悪意を持って自分の為だけに将棋界を踏み台にしないかぎりは何も言わないよ。



-------------



『現地の君島さーん』

「はい、それでは対局者の昼食を食レポしてみたいと思います」

『君島さんは、食レポ苦手だよね?』

「確かに過去2回ほど失敗してますけど今日は・・・」

『あ、またセーラー服が』

「もーらい!パクっ、わぁ、これすんごく美味しいですよお!」

「ちょ、ちょっと水上さん、お行儀が・・・」

「あ、すみませーん。水上 咲子15歳、反省してます☆」てへ


 持ってくねぇ。

 私もそろそろ危機感感じようかなw


『君島さんはちょっとその子を殴っといてください』


 あ、ヤバいよ。森村さん怒ってるかも。

 笑顔だけどトーンが違うよ。


「す、すみませんでした~」


 流石に空気を読んだらしい。

 もう今回はやめといた方が良いよ、流石に。



 対局2日目


 日が変わり、解説が変わったせいか、水上さんはまた挑戦しようとしてきた。

 でも連盟職員からストップがかかる。マークされてたみたい。

 さすがにガツガツしすぎだよ。今回で売れようとしてるの?

 

「君島さんと一緒の時はチャンスですから」


 言いにくい事をハッキリ言うねぇ。

 でも確かに、便乗するなら今一番話題性のある私なのだろう。

 彼女の計算は間違って無い。


「でも、君島さんの熱烈なファンからはもの凄く嫌われちゃったかもしれません・・・」


 スマホで掲示板を見て悲しそうな水上さん。

 そりゃそうでしょ、邪魔ばかりしてるんだから。

 そっちは計算してなかったのかな。


「さて、私も今回は良いようにしてやられたけど、次からはそうはいかないからね」

「え?えー?怒ってるんですか?」

「怒っては無いよ。今回は逆に勉強させて貰ったと思ってるくらいだよ」


 棋士の仕事は将棋だけでは無い。

 彼女の自己アピールには学ぶべきものもあったし、逆に悪い見本も見せてもらったと思う。

 今度の自分の糧にしよう。

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