・夢?
今回長めです。
・夢?
なんだろう。急に目の前が真っ白に。
あ、これ夢だな。夢って分かる奴。
確か今日は、昨日だっけ?
とにかく寝る前が思い出せる。
看板を何枚か作りかけで解散して、俺は学校の周りをぐるっと探索して、トラックが帰ってくる建設会社の駐車場を見つけた。
後はいつものように一日を終えた。それとミトラスには滅茶苦茶謝った。
で、これだ。真っ白。雪とか雲の色合いではない。それどころか、直に見ているような感じでもない。
俯瞰というか、なんだろう、あ、ミトラスの後ろであいつがゲームしてる所を見てるとき、こんな感覚。
しかしなんだな、手足が無い。俺の体が無い。人魂みたいになってるのか。もしかしたら体が無いから、目もないということで、景色が見えないのだろうか。
視線は動かせるけど、一面が白くて動かせているかすら、ちょっと疑わしいな。体が無いから動けない。這いずることもできない。本当に?
音、聞こえない。音がしていない。どっちだろ。
当然と言えば当然なんだけど、胸と髪の重さを感じない。すげえ開放感。肩こりがないって素敵。
声は出せるかな。
――。――――っ。――!
出ない。夢の中とはいえ自分設定に準拠してるな。ここに空気がないだけかも知れないけど。
しかしどうしたものか。
することは元よりできることもないとなると、後はもう、この夢が覚めるのを待つだけだ。
寝ることくらいは、できるんじゃないか。夢の中でまた寝るっていうのも変だけど、ああ、駄目だ、瞼もないから、目を閉じらんない。
これは困ったぞ。ただ漠然と時間を数えることしかできないのか、あ、ゲームだ。
唐突に目の前にテレビが出現した。ストレスフリーでサイバーな、白と灰色のレトロなゲーム機も。
こういう脈絡の無さがなんとも夢だ、しかし見ているのが俺なだけあって、なんとも味気ないなあ。
画面が点いて、今では一周して増え始めたドット絵の作品。タイトル画面は無し。
無いものばっかりだなあ。
見ればセーブデータが並んでいる。日本人の名前が有れば、横文字の名前も有る。途中で何人分かの空白があって、次に俺の名前がある。四つあるな。
旧姓の俺と現姓の俺。旧姓に対して今姓って言ったほうが通りがいいんだよな。伝わり易い。そして残る二つがサチコとサチウス。
プレイ時間がそれぞれ違う。旧姓が一番短いな。現姓が二番目、サチコとサチウスは同じ時間。
現姓に比べてサチ系のプレイ時間が多いのは、異世界に行ってたことを意味しているんだろうか。実時間が噛み合わないけど。
夢は記憶の整理というがなるほど、俺の人生を段階に分けていくんだな。なんて捻くれた夢だ。
もしかして他のセーブデータは、ミトラスとか俺の知り合いだったりするんだろうか。その割りに先輩や南たちの名前は、見当たらないが。
ん、なんだ。画面を指差す三角形のカーソルが動いたぞ。上のほうに一度登って行って、あ!
次々とセーブデータを消していくではないか!
一気に十人くらい消していってから、画面が切り替わる。暗いままのタイトルもないタイトル画面。
そこには『はじめる』と『つづける』と『おわる』の文字。まるでツクール二千だ。あっちはまだ爽やかな青空が、背景だというのに。
カーソルが『はじめる』を選ぶと、また画面が切り替わった。名前を入力してくださいと出ている。プレイヤー登録か、キャラクタークリエイトか。
ああ、俺の破滅願望と変身願望が、出ているということなんだろうか。
転生願望って前提に死があるんだよな。これからの人生のほうが、長いとはいえ、人間としての根っこができる時期が、アレだったからなあ。
死にたいとは思ったことはないけど、別に死んでもいいかと思ったことはあるし、そんな家に生まれた以上は、こういう自分が嫌だなと思ったこともある。
こうして人生を振り返って見ると、願望さえも消極的だな。足る事を知ると言えば聞こえはいいが、消費活動には貢献できそうにない。
古いゲームや漫画が、安く買える時代で、本当に良かった。これらが最盛期の時代だったら、お金がないからそういう趣味さえ、持てなかったろう。
おっとそんなことより画面に戻ろう。
名前が決められた後は何々、出自と種族と異能を決めてくださいとな。
やっぱり顔や体型は最後なんだな。ああいうのって面倒臭いから、ずっとデフォルトでやってるわ俺。
カーソルが先ず選んだのは出自のマス。入力枠と思しき場所をクリックすると、ズラーっとプルダウン式で並び出る項目の数々。
その中から選ばれたのが『転生』。
次に種族が人間、異能が死因。死因の横には『※出自が転生の場合のみ』とある。
なるほどな。強くてニューゲームで、ほぼこれ一択みたいな感じなんだ。
なんか特定のゲームで、皆その構成しかやらなくなるという現象が、しばしば発生するけど、異世界転生もこんな感じなのかも。
ん? 異世界転生? そうか、これ異世界転生か。俺にもまだそういう未練があるのか。
あるんだろうなあ。でも今は大分幸せだから、死ぬかって聞かれたら、絶対ヤダけど。
画面へ戻ればキャラクリが終わり『これでよろしいですか』という問いかけ、はいと答えて画面が次へ。
異世界転生した誰かの人生がまた始まって。
あ、リセットした。
どういうことだ。何か気に入らなかったのか。容姿のセッティングとかは無かったから、アレでやる事は終わりだったはず。
もしかして異世界側の生まれは、決められないんだろうか。特定の家柄とか血筋とか。
考えてみればそうだよな。基本的に親に当たる人は別に、転生してないその世界で生まれて、生きてきた人々だ。
いざそのときになって、意のままにどうこうなんて難しいだろう。
両方の世界を股にかける神様なんてものがいれば、違うんだろうけど、それならそもそも、こんな場当たり的なことなんかせずに、誕生から死亡まで、揺り籠から墓場まで、予定を組むだろう。
あ、タイトル画面。続きから、お、さっきのキャラ名がある。オートセーブなんだな。
戻ってまたスタートして同じようにキャラクリ。
何か事務的なものを感じるなあ。
自分でプレイするんじゃなし、セーブデータを消しては、新しくキャラを作ってを繰り返している。
最初に消した記録の分は全員埋まったけど、この流れが異世界転生だとして、これは本当に俺の夢か。
疑わしいが自分でも、謎の多いレベルアップをしているし、その整理がこういう形になっているのだと言われたら、そうなんだとしか言えない。
言う人いないけど。
あ、また『つづきから』を選んだ。また他のセーブデータを消す気だな。
ん、あれ。
カーソルは『いしづか』と書かれたセーブデータを消した。
そしてさっきと同じ手順でキャラクターを作って、リセットして、そしてまたオートセーブを確認する。
が。
ない。
正確には、ある。
消したはずの『いしづか』がある。そして『マックス』もある。セーブデータが増えている。
カーソルが今度は『やまもと』を選ぶ。
消して作って帰ってくる。
消したはずの『やまもと』がある。そして『サイアス』もある。セーブデータが増えている。カーソルの動きが止まった。
うーむ。なるほど、これはどうやら俺が今現在取り組んでいる活動を、示唆しているんだな。
最初にあったセーブデータを消すことは、転生元となる人間の死を意味する。そしてさっきのキャラクリを終えると、異世界転生が完了する。
消すことが必要な工程なんだな。しかし俺がこっちの世界に戻ってきて彼らを、死なないようしたから、ルートが分岐したのだ。消えないんだな。
だから、新しくキャラを作っても、それは別の人であって、生まれ変わりではなくなったのだ。
不具合というなら、転生した訳ではなくなった転生者たちが、記憶を持ったままという点だが、その点はまあ気の毒したなとしか。
考えて見れば、生まれ変わりなんて言っても、赤の他人だ。そいつは自分の意思と人格を持って、自分の人生を生きたらいい。
あまりに酷い目に遭わない限りはそのほうがいい。俺はそう思う。
ミトラスなんかは酷い目に遭っても、その人自身の人生なんだから、別の誰かがなっていいとは言わないし思わないだろう。
それを前世なんかに乗っ取られるなんて、冗談じゃない。生まれ変わりの話しで言えば、魂というやつは使い回しているかも知れんが、それだけなんだ。
転生したほうのセーブデータが、そっくり残ってる辺りを見るに、その線も怪しいが。
今の自分は、この俺はこの人生限りでいいと思う。それが何時まで続くかは、分からないけど。
あ、止まっていたカーソルが動き出した。お、今度は俺だ。俺を消すのか。嫌だなあ。
『このデータは消去できません』
お、抵抗できる。やった、流石俺の夢!
『このデータは消去できません』『このデータは消去できません』『このデータは消去できません』『このデータは消去できません』
はっはっは。どやあ!
勿論消さないし消させませんよ!
ん、カーソルは諦めて、キャラクリに移るようだ。さては先に俺の転生先を、作ろうって魂胆だな。
『はじめから』を選択して出た名前入力の画面、しかしそこには既に『サチウス』の名前が。カーソルはそのまま決定を押して、俺を登録しようとする。
『その名前は既に使われています』
次に『サチコ』と入力。『その名前は既に使われています』
はっはっは。どやあ! しかし同姓同名くらい普通にあるんだから、登録出来てもよさそうなもんだが、いいかそのくらいのご都合は、だって夢だしな!
はっはっはっはっはっはっはっはっはっは!
――なんということだ。こんなことはありえぬ。
ん、なんだ声が聞こえる。
――お前は何だ。答えよ。
今度は自問自答か、正直なところ、今となっては前にも増して、自分が分からない。
――お前は死なねばならない。
やだ。
――お前は死な
やだっつってんだろ! 三回はやらんぞ!
帰れ! でないと起きる!
どうだ、俺の夢である以上、相手も結局は自分の深層心理とかそんななのだ。敵が俺ならもう少し寝てたいから、このくらいで黙るだろう。
――愚か者めが!
あれ。わー眩しい!
――チュンチュン。
「あれ」
気が付けば連休三日目の朝。時間はまだ七時かそこからだ。結構寝たような、まだあと三十分くらい寝てたかったような。外では雀が鳴いている。
「変な夢だったなあ」
俺はそう独り言を呟いてからベッドを出ると、着替えて朝飯の支度を含めた、諸々の行動に取り掛かることにした。
本当に変な夢だった。きっと相撲なんか覚えたせいだな。この件が片付いたら、忘れる事も真剣に考えておこう。
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文章と行間を修正しました。




