3 前代未聞
「やっぱりあの子がそんなことをしたなんて、信じられませんわ……」
「だから、行くのだろう? その真実に、そのきっかけを知るために」
◇◇◇
──ここは、天界と地界の境目。
この場所ができたときからある木が、まるでこの場所を隠すように覆われている。
いつもは、結界が張り巡らされており、天界の者が地界に行けないように。地界の者が天界に入れないようにしていた。
ここで、会議を開く理由は、地界の主と天界の主が向かう距離を同じにするため。
そこから、長老の役目のある者も呼ばれる。
「久しいな、ディーノ」
黒の髪をした男が声をかけて来た。
「兄さん……」
兄さん──デュオスは、地界の主であり、私の双子の兄だ。
天界、地界では双子は生まれない。生まれることはない。
だが、例外がある。
たた一つだけの例外。
……天界と地界の主になること。
それが唯一の例外。双子という、宿命とでもいうのだろうか。
「……なぜ、こんなことになったんだ?」
「わかりません……」
(わからない、どうして一番人間が好きだったあの子が……、どうしてこんなことに……)
決められた椅子のところに、あの子だけが、いない……。
この天界は等しく位を持つとしているため、長女だとしても、先に長男がいれば、二女、三女と決められる。……なのに、あの子はここにはいない……。
私の気持ちを読み取ったデュオスが、顔を歪める。
双子だから、なおさら伝わったんだろう。
なにか言おうを口を開いた。その前に人界を取り勤めている、者の声が響いた。
「始めてよろしいでしょうか?」
「ああ、すまない」
各自の席にそれぞれ腰を下ろした。
人界を取り勤めている者は、天界でも地界でもない。逆に言えば、天界でも地界でもあるということにもなる。
公平性を保つために、一年ごとに、天界の者と地界の者が交代して取り締まるからだ。
今年は地界の者が取り締まっていた。
「つい先日、爆発的な神気を感知しました。それが、異常だったので、調べてみた所、天界の主の末子であるシェリーシェ様のだと判明しました」
神気は人界であんまり使ってはいけない。少しならともかく、爆発的なものだったら、それは異常を感じるだろう。
「詳しくはわかりませんが、その神気で人間を傷つけ、それが原因で命が落としてしまったことは判明しています。掟に従うと、神気を人間に矛を向けて、人間を傷つけることは許さない。ところに、当てはまると思いますので、処刑しなければならないと思われます。いかがでしょう」
今まで、口を挟もうとしていた子供たちが、一気に口を開いた。
「意見がいっぱいあるわよ! なんで、詳しくわからないのに、処刑ってものとなるの!?」
「おかしんじゃねぇの? もっと調べろよ」
「ええ、あの子がそんなことするはずがありませんわ!」
私が言いたいことを口々に言う。
そこで管理人が弁解するのだろう。
「なぜなら、その神気には、天だけでなく地のものも混ざっておりました」
「「「「「「っ」」」」」」
会議にいる全員が息を呑む音がする。
「……つまり、あの子は闇落ち、しているかもしれない、ってこと……?」
「いえ、確実に、でしょう。だから、この事態は急を要しているんです」
闇落ち……それは、事例が、ない。
天使は本当に、本当に、どん底に落ちたり、地獄のような経験をしないと闇落ちはしない……はず、なのだ。
軽く感じるかもしれないが、例えば……家族の誰かが誰かに殺されて、世界を呪う、そういう感情の何倍も深くのことはさしている。
それは、ここにいる全員がわかっていることだろう。これは、前代未聞な事態だ、ということに。
「じゃあ、シェリーシェは、そのような経験をしたかもしれないって、こと……?」
ララの、こぼれた声だけが、辺りに響いた。




