第9話 桜子の手紙
桜子は送る前に何度か下書きをしたのだろうか。手紙には桜子が男に送ったであろう文面も残っていた。
愛理は桜子と男がやり取りしていたのであろうその手紙を慎重に広げて読み始めた。
「金井さんへ
あなたに会うたびに、心が踊ります。でも、私にはまだ少し怖い部分があることも確かです。あなたがどんな人なのか、まだ完全にはわからないけれど、音楽のことをよく教えてくれるのは嬉しいです。でも、あなたが教えてくれることが、私にとってどんな意味を持つのか、まだわからない部分もあります。もっと知りたいけれど、あなたが本当に私を大切に思ってくれるのかが、まだ不安です。
それでも、あなたに音楽を教えてもらえることは、私の夢に近づいている気がして、とてもわくわくします。だから、どうか私にもっと教えてください」
桜子
P.S. あなたが言った通り、これからはもっと頑張ります。
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愛理はその手紙を読んで、胸が締めつけられるような感覚を覚えた。桜子がこの「金井」という人物に対して抱いていた感情は、単なる音楽の師弟関係を超えたもののように感じられた。
手紙には、彼女がどこか不安を感じている様子が書かれており、金井という人物に対しての依存や期待が見え隠れしていた。
「桜子さん、あなたはこの男のことを信じていたんですね」
カフェで聞いた楽しそうな様子や不安そうな表情とも合致する。だが、彼女はなぜ行方不明になったのか。事件にはまだ謎が残っている。
手紙を読み終えた愛理は、他の手紙も開封してみた。それには、桜子の心の葛藤がさらに深く描かれていた。
「金井さんへ
あなたと過ごす時間がどんどん楽しくなってきました。私が音楽をもっと知りたいと思っていること、きっとあなたはわかってくれますよね? でも、最近、少し気になることがあります。あなたが私に教えてくれることは素晴らしいけれど、それ以外のことを考えると、少しだけ怖くなります。私はあなたが本当に私を大切に思ってくれているのか、何か隠していることがあるんじゃないかって、心の中で思ってしまう時があります。
でも、どうしてもあなたを信じたい。だから、私はあなたと一緒に音楽を続けます」
桜子
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愛理はその手紙を読み終わり、桜子が抱えていた深い心の葛藤に気づいた。桜子は金井という男に依存していたが、その関係がどこか危うかったことが、この手紙から感じ取れた。
「桜子さん、あなたが感じていた不安、そして信じたかった気持ち……でも、この男は……」
愛理は手紙を机に置き、深い息をついた。
桜子がこの男に依存していたことが事件の鍵を握っていることを愛理は確信した。そして、この男が桜子に何をしていたのか、もっと深く調べる必要があると感じた。
愛理が調査を終えるのを和宏はじっと待っていた。
「愛理ちゃん、何か分かったかい?」
「はい。あの、この手紙の事は和宏さんは……?」
「いや、それはさすがに桜子に悪いと思って……読んだのがバレたら怒られるよ」
「そうですよね。何かあったら私が調べたと言ってください」
「恩に着るよ」
桜子の夢、彼女が音楽に心を捧げていたこと、そして「金井」という男との危険な関係が分かった。
愛理は桜子の手紙の内容から、これからの調査をどう進めるべきかを考えた。桜子の行方不明の理由は、この男との関係にあると確信し、次に何をすべきか、頭の中でシミュレーションを始めた。
「桜子さん、あなたの心の中にはこんなに多くの不安があったんですね…。でも、もう大丈夫。私が必ず、あなたを助けます」
愛理は心の中で誓った。外で降り続ける雨はますますその激しさを増していくかのようだった。




