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捨てられ王子と魔獣聖女 〜帰還道中記〜  作者: いわな
第一章 最初の臣下
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20/31

○【20・忙しい一日の〆】○



「ただいま戻りました」

「おかえり……随分な荷物になったな」


 馬車の手前でを声かけたら、ウィリさんが出てきて俺たちを見て驚いた。

 俺の背負い籠には食材などがいっぱいで手には鍋。デラは布類を抱え、ロームも麻袋に詰めた日用品の類を持っている。

 確かに、結構な買い物だった。

 それらを馬車に入れ、デラとロームには御者台にいてもらって俺は買って来たものをウィリさんたちに見せていく。


「こっちはウィリさんに頼まれたものです。これは服にしてもらう布。こっちは俺の判断で買い足したもので──」


 ひとつひとつ説明しながら買ったものを見せ、収納用の木箱にしまっていく。


「銀貨三枚でよくこれだけ買えたな」

「品揃えのいい市場でしたからね」

「いや、そうではなく……」

「庶民の市場ですからね。それなりに良いものを選んでみましたが、庶民向けの手頃なものばかりなので」


 と、説明していたら御者席のデラがスッと手をあげた。


「ベイルさんはお買い物上手でした。ものすごく」


 まあ、多少の自覚はあるけどね。元行商人だし。


「そうか。仔細を聞きたいがまた後でだな。皆、ご苦労」

「はい」

「ああ、そうだ。試みに聞きたいのだが、ベイルの見立てだと小判にどのくらいの価値をつける?」


 なんで今、急に?


「えっと、珍しさや美しさもありますが、そもそもロゼロットの金貨の二倍はある大きさですから。単純にロゼロット金貨二枚は堅いです」

「ほう……」

「ただ、買取側としては半値にしたのはいいところかなって気もします。出所のわからない高価なものを買い取るなら、盗品とか違法に持ち込まれたものの心配が付き纏いますしね。手堅い大商会への紹介状付きだったからロゼロット金貨一枚分の値段になったと思います」

「なるほど。勉強になる」


 いやいやいや。


「ウィリさんもはじめから狙ってあの手紙を用意したんじゃないのですか?」

「あれは苦肉の策だ。できればブランシュレには関わりたくなかったからな」


 初めから狙って用意してた手紙じゃないのか。

 よくわからないけど、理由があるようだ。


 ブランシュレ領はウィリさんたちと出会った辺境開拓領のすぐ隣。大商会に知り合いがいるならそっちの伝手で王都へ向かう方が楽だとも思うけど、それをしないだけの何かがあるのか。まあいいけど。

 そっちへ行かれていたら俺はウィリさん達に出会えなかったしな。


「さて、この後のことだが。今夜も野宿で済ませたいのだが、近くで人目につかず休める場所はあるか?」


 ウィリさんが話を変えたので俺もそっちに意識を変える。

 野宿か……


「領都の近くですから人目につかずとなるとあまりいい場所はないですね。もうすぐ日も暮れますし。せっかくだから宿を取りませんか?」

「そうか、ならば仕方がない。買い物の褒美も兼ねて、皆にプリンを振る舞おうと思ったが──」

「プリン!」


 ぷりん!?


 ミーニャさんが声を上げたのと同時に頭の中で俺も叫んでた。でも声に出したのは別のこと。


「今すぐ領都を出て西寄りに行ったところに野宿に適した場所があります。 日が暮れるまでに着けないですが、そこまで遅くなりません。どうですか?」


 未知のお菓子に惹かれて、つい焦って早口になってしまった。

 ウィリさんが口元を押さえて笑っている。


「では、そうしよう。案内を頼む」

「はい……」


 なんだか顔が熱くなった。

 宿で風呂に入ったり服を洗ったりとも思ったが、まあいいか。




 そうして、俺は馬車を走らせラクナル領都を出た。

 馬車は軽いし馬は元気だ。ランプの油も補充してたっぷりあるから灯りもケチらず灯せるし。


 目的の場所に着いた時にはやはり日が暮れてしまったけど、考えていたよりは早く来れた。

 そこは山際の木々に囲まれた岩場で、綺麗な湧水が小さな滝を作っていてちょっとした池がある。今は暗くて見えにくいけど。


 馬車を止めたらすぐに支度だ。


 俺はデラとロームを連れて薪集め。もちろん近場で、ランプも持って。

 その間に、ウィリさんは料理の下ごしらえ。

 ミーニャさんは今回も簡易結界とやらを貼るために馬車を中心にあっちこっちうろうろしてた。

 火を起こし、そこに水を少し入れた鍋を置いて薄い布を巻いた蓋をするウィリさん。鍋の中には黄色い液体の入ったカップが入ってたな。下ごしらえをしているところは見てないけど、卵と牛乳と砂糖がいると言ってたのでそれを混ぜたものだろう。

 どんなものになるんだろう。

 楽しみだ。


 出来上がるまでしばらく。

 俺はロームに手伝ってもらいつつ馬の世話をして、ミーニャさんとデラはウィリさんを手伝って夕食の準備をしていた。


 少しして、プリンは出来上がったようだが冷さなければならないと言われ夕食後に、となった。

 プリンの器は水を張った桶に移されていた。


 で。

 夕食は買ったばかりのパンを切り分け、それに火であぶって溶かしたチーズとウィリさんの手作りだという塩漬けの豆を乗せたものだった。

 

「いただきます」


 と、みんな揃って食前の挨拶。即座にがっつき。

 んんんっ うまいっ!


 その後、待ちに待ったプリンをいただく。

 んんんんんんっ うまい! 甘い! 冷やっこい!


 夕食の間、しばらく冷やしただけのプリンがこんなに冷えているのはミーニャさんが何かしたらしいけど、そんなことはどうでもいいや。


 ミーニャさんもほくほく顔。

 デラもロームもとろけそうな顔になってる。

 俺は傍目にどうだろう。

 ウィリさんだけが真面目な顔で、甘味がどうとか固まり具合がどうとか言ってたけど、これ以上なんかあるのか?


 気になる。


 今日は一日大変な日だったけど、甘いプリンにすっかり癒されたよ。





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