第二十話 ホームアローン
翌日。
「なぁ、お前は凄腕ハッカーなんだろ」
「なになになぁに!? ボクちんの事知りたくなってきたぁ!?」
「警察とか裁判所? とかのパソコンに入り込んで俺がハメられた証拠をさがしたりってできねぇの?」
「え! 谷中っちってば冤罪なの?」
「前にもそう言っただろ、聞き流してやがったなてめぇ。人なんか殺すかよ、くそだりぃ」
「その辺のこと、ちょっとkwsk」
五層フロアボスを倒し、六層の敵と一層から四層までの雑魚敵を全て倒して回ってもフロアボス討伐報酬や六層の雑魚敵一匹に及ばない事が分かった谷中と中野は、話し合って五層までは最短距離で進むことに決めていた。
中野の道案内で迷うことなく最短距離を進み、出会う敵だけを討伐していった。
「昨日強ぇやつと戦ったせいか、雑魚敵が弱く感じるな」
「レベルアップしたってことでは? てれれれってれー! 谷中っちはレベルがあがった!」
中野はそのまま、何のゲームの物かわからないレベルアップ音楽を歌い続けたが、谷中は無視した。
増えるとやっかいなスライムにはマッチを投げるが燃え尽きるのを待たずに先に進む。
中野のレベルアップ音楽がおわった頃に、また雑談を再開し、谷中は駆け抜けるように五層までの道を進んでいった。
そういった攻略法で進んでいるので、自然と二人の間では雑談を交わす時間が増えていた。
「つーわけで、俺は御手洗のおっさんに騙されたんだよ」
谷中は、ここへ来ることになった経緯を中野に説明した。
「谷中っちはヤンキーのクセに純真すぎない?」
「うるせぇな。ソレまでは色々とお世話になってたんだよ」
「お世話された内容が転売ヤーの手先だもんにゃぁ」
谷中は他にもヤクザの下請けの下請けの様な仕事をしていたが、TCG転売の買い子をしていた話をした時に中野がブチ切れしていて以来、自分のやっていたことを話していない。
チラッと話した転売買い子だけが谷中のやっていた悪事だと思っているのであれば、中野の方がよっぽど純真だろうと谷中は思った。
「でも、残念無念。ボクちん今は外の世界につながってないの」
「はぁ? 囚人情報網羅してるっていってたじゃねぇか」
「ダンジョン刑務所内の閉じたネットワークについては、もう完全把握してるんよ。ほんとはお偉いさんしか見られない、ナビゲーショーパートナー接続禁止の領域まで見ちゃってるもんね。ぐふふ」
「?? わかんねぇけど。ネットっつーのは世界でつながってんじゃねぇのかよ」
「世の中にはぁ~、インターネットとイントラネットというのがありましてぇ~」
「その話長くなるか?」
飛んできた大コウモリの群れにライジングインパクトを打ち込み、ボトボトと落ちてきた所を木刀で頭を潰してまわりながら谷中が話半分に聞いた内容はこうだ。
ダンジョン刑務所内は専用ネットワークが敷かれており、外部とはつながっていない。
ダンジョン刑務所の職員は内線用のPHPや内線電話で連絡を取り合っており、外部と連絡を取る時は刑務所の外まで行っている。
新入所する囚人がいる場合は、そのデータを紙の書類で持ち込み、職員が刑務所内でデータ入力している。
徹底して外部との電子的接触が断たれているという事だった。
「成果報酬もなんかレシートみたいな紙で出てるんでしょ? ソレを束ねて外に持ち出して減刑処理してるみたいだよ」
「そんなめんどくせぇことしてんのかよ」
「さすがのボクちんも、つながっていないシステムには侵入できないンゴ。ボクちんはこの部屋から出られないしね」
ゴミンネ。という中野の言葉に、谷中は無言で首を振った。マイクは音を拾わなくても、カメラの風景が揺れたことで中野は谷中の返事を正しく受け止めた。
「まぁ、それなら仕方がねぇ。当初の予定通り、ダンジョン探索しまくって刑期ゼロにして外にでる」
「それで、冤罪の証拠を集めるんだね!」
「……」
谷中は今度は首を振らず、しかし返事もしなかった。
谷中が刑務所から出てやろうと思っていることは、自分の名誉の回復では無く、自分を騙した奴らへの復讐である。
しかし、中野にそれを言うのは何故かためらわれたのだった。
「糺のおっさんより先に到着してでっかいトカゲ野郎をぶったたく。そんで、六層のムカデ野郎も殺しまくるぞ!」
「おーっ! ボクちんも張り切ってサポートするからね!」
雑談をしているうちに、五層フロアボスの裏口となる隙間の前までやってきた。
ここを通ればボスの背中側にでる。攻略法はもう分かっているので、ライジングインパクトを打ち込んで麻痺した所に豪腕爆殺剣をたたき込む。その繰り返しで倒す。
中野はすでに隠し通路としてデータを報告済みだが、これは更新された地図を買わない限り他の囚人には知られない事だ。
谷中は、糺にバレるまでの三週間ほどの間、この手で五層フロアボスを倒しまくって減刑を稼いだのだった。




