オフの日
俺たちは1日ギルドで仕事を入れては2-3日休むというサイクルで仕事をしている。
俺の時空魔法があるのでやすらぎの庭の仕事は割合安全ではあるが、本来命をかける仕事でもあるので休息は多めにとっているのだ。
オフの日は、俺はまず父さんと訓練をしている。
父さん達も冒険者なので俺達と似通ったサイクルで仕事をしている。
最近はできるだけ仕事のサイクルを合わせて、オフの日の訓練も時間を合わせるようにしている。
父さん母さんはBランク冒険者なので休みのサイクルも長い。
一つの仕事に複数日かかることも多いが、1日で終わる仕事の場合は父さん達が1回仕事と休息をとる間に俺たちは2回仕事と休息をとる感じで調整している。
訓練については、クロックアクセルを封じて訓練すると父さんには全然かなわないのでいい訓練になる。
また、父さんの訓練のためにクロックアクセルを使った稽古も行っている。
訓練が終わるとコーリーの店によく行く。
「こんにちは」
「ケイちゃんが来たー!いらっしゃい!」
「またパスタ頼める?」
「はいよー。辛いのとさっぱり風とミートソースがあるけどどれがいい?」
コーリーは最近パスタにハマっている。
前世にもあったパスタだが、コーリーも新作料理としてパスタを作り出した。
パスタという名前は新作料理が出来たときに俺が名付けさせてもらった。
違う名前だと混乱すると思ったので前世と同じパスタという名前をつけたという訳だ。
「さっぱり風を頼む」
しばらく調理をして、出てきたのは山菜がたくさん入っているパスタだった。
前世なら和風パスタと言われる種類の醤油風味のパスタだ。
携帯PCで写真に撮ってから俺はフォークでパスタを1掴み食べてみる。
「山菜がいいアクセントになってて確かにさっぱりしてる。まさに今食べたかったのはこういうの!美味しい!」
「美味しいでしょー!あたしもね、なかなかいい出来だとは思ってたのだけど、お客さんにそういってもらえると間違ってなかったんだーって嬉しくなるよ」
「ここももうパン屋兼食堂みたいになってきたね」
「そうだよー。今後ももっともっと料理の種類を増やすんだから!」
「はは、楽しみだよ。そうそう、今度ね、色んな食材が手に入る場所があるんだけど行ってみない?俺の魔法で一瞬で行けるし、料理が出来たら食べさせてくれるなら食材代も全部出すよ」
「えっ、それってどんなところ?」
「外国にあるショッピングセンターっていうところなんだけど、言葉の問題も魔道具があるから解決するよ。色んな国からの食材を取り扱っているすごい市場みたいな感じ?」
「ちょっと興味あるなー。家族と相談しておくよ」
「ついでにコーリー用の魔道具も買ってあげる。これ、携帯PCっていうんだけど、えっとね……」
かくかくしかじかと携帯PCでできることを説明した。
「こうして写真に残しておくことも出来るわけ」
そういえば、プリンタがあれば画像付きのメニュー表が作れるなと思い、今度アースツーで探してみようと思った。
プリンタはこっちの世界では革命的な道具だと思う。
「すっごい!欲しい!!でもお高いんでしょ?」
「大丈夫、俺のおごりだよ。実は鉱山を見つけて、そこの利益の一部をもらえる契約をしてて、お金はいっぱいあるんだ。だから、そこは気にしないで。それより美味しい料理を作ってな」
「何っ、鉱山!?ブルジョワ?太っ腹!持つべきものはお金持ちのお友達だねぇ」
「ははっ、持つべきは料理上手な幼なじみだよ」
「上手いこというね。デザートタダでつけたげる」
「やった!」
コーリーの店で昼食をとった後は、アースツーの拠点に向かった。
「やっぱりみんなここにいたか」
お目当てはゲーム機だ。アリスカイメグもミリスお嬢様も母さんまでいた。
こないだ買った携帯ゲーム機でみんなで遊んでいたようだ。
一つの部屋ではコンセントが足りないので、複数の部屋にばらけてコンセントをさして通信対戦をしてる。
俺はちょっと電器屋にいって、コンセントを増やすアダプタをいくつか買ってきた。
これで、みんな同じ部屋で遊べる。
「あっ、そんなのがあるんだ!」
メグが嬉しそうに驚いてる。
「やっぱりみんな同じ場所で遊べる方が楽しいでしょ」
「うん!ミーちゃん勝負だよ!」
いつのまにかメグはミリスお嬢様をミーちゃんと呼んでいる。
いつそんなに仲良くなったんだ……
ミリスお嬢様もまんざらでもなさそうにしている。
俺も一緒に遊びたいから参戦した。
メリオカートは本当に面白い。
メグは右に曲がるときは体も右に曲がり、左に曲がるときは体も左に曲がる。
ゲーム初心者にありがちな動きだが、楽しそうなので野暮なつっこみはしない。
ゲーム自体はやっぱりミリスお嬢様が一歩リードしている。
けれどたまに逆転が起こるのでメグも嬉しそうに遊んでいる。
なかなか勝てないからこそ面白い部分はあると思う。
ミリスお嬢様はドリフト走行をマスターしつつあるのでそれで一歩リードしている部分がある。
メグも体がクネクネしなくなったらドリフトはマスターできるかもしれない。
でもそれはまだ先の話のようだ。
俺は前世で類似のゲームを遊んだことがあるから比較的早くにドリフト走行はマスター出来た。
プレイ時間は訓練をしてる分みんなより少ないが、前世のアドバンテージがあるため比較的いい順位につけることが多い。
さすがにクロックアクセルを使ってスローモーションになったゲームを遊ぶという反則技は使わない。
そうして勝っても全然嬉しくないからだ。
まさに野暮の極みでしかない。
「ドベなのにまたスーパーシメジか。サンダーとか星とか出ろよ」
カイが毒づいている。スーパーシメジは一瞬加速するシメジをしばらく連続で使えるアイテムだ。
スピードの落ちるゾーンが近道になっている場合、かなりショートカットできるので決して悪いアイテムではないが、他の全員が小さくなって速度が落ちるサンダーやしばらく無敵になり高速走行ができる星には劣る。
また、ちょうどアイテムゾーンを一つ過ぎたあたりで効果が切れるので、結果的にアイテムが1個取れないのと同じなので結局そんなに差を縮められないのだ。
メグとカイはほぼ同じぐらいの上手さなので、兄妹で毎回いい勝負だ。
「あっ、サンダー!!」
「えへへっ、兄やんには負けないよ」
ドベツーだったメグがサンダーを引いて一気に順位をあげていく。
「ああっ踏まれた!?何てことするんだ。鬼!鬼畜!」
俺の操るマシンはメグに踏みつけられ見るも無残なことになっている。
サンダーをくらうと体当たりされただけでぺったんこになってしまうのだ。
結局俺は6位でゴール。メグは3位に入賞した。カイはドベの8位だ。1位はミリスお嬢様、2位はアリスだった。
「ちょっと調べてみたんだけど、150ccのコースですべて優勝すると隠しキャラが使えるようになるらしい。みんなで攻略しようぜ」
俺はアカシックリングではオーバーキル過ぎると思って携帯PCで調べた情報をみんなと共有した。
「150ccはまだ難しいよー。50ccでもヒーヒー言ってるのに」
「それじゃ、50ccから1個ずつ攻略していこう」
そうして、オフの日、ゲームの夜はふけていくのであった。




