第28話、ファルナの軍団
ファルナことファルナリーアの私には色々と秘密が有る。
その中でも一番ヤバくてぶっ飛んでいるのがコロタンだ。
この謎だらけの巨大生物?は私と主従契約してテイムされてから
相互に能力がリンクされ今現在、私の中に憑依している。
そして、それを良い事に今まで知らなかった人間社会を楽しんでいる。
その見返り?反動?として私ファルナにはコロタンの強靭な身体能力と
膨大な魔力が使える事となった。
せっかくなので自称宮廷魔導士のトゥルゲルトさんに魔法を習っている。
魔法は小難しい理論を座学で勉強するものだと思っていたけど違うらしい。
曰く、魔法は《才能とイマジネーション》の世界なので、ぶっちゃければ
使える者は使えるし、使えない者には教えても使えないとの事。
結果は・・・グスッ(涙
「悲しむ事はありませんぞ。姫様」
「そうだぞ、ファルナは魔法以上に貴重な事が出来る。落ち込むな」
「ファルナ姫は世界一カワイイですから他はいらないのですよー」
と、三者三様な慰めをして心のキズに塩を塗ってくれる。
ちくせう・・こうなったら武器を振り回しての近接戦と、
石でも投げての遠距離攻撃で二刀流だ。
近くに落ちていた小石を拾ってアイテム袋に入れておく。
何故こんな物騒な事を考えているかはお察しの通り、刺客対策である。
あれからも何度か命を狙われているので対策方法は多い方が良い。
しかし、自分の生い立ちが知れたのは良いけど、大国の皇族?とか・・・
めんどうな立場と身内が増えた。
「それにしても良かった。
ファルナの聖眼が失われたと聞いていたから心配したぞ」
休憩場所で父を名乗るロリコン男が忘れたい過去を思い出させる。
こいつが以前の片目を抉られた傷跡を見たら悲鳴をあげるのでは?
夜道で会えば悲鳴が出るほどホラーで不気味な幼女の姿だったはず。
そんな自分をセルシニアの侍女にしていた辺境伯は懐の広い傑物だな。
とは言え 戦争は嫌なので真実は隠蔽しないとね。
何だよ、私に危害が加わると世界大戦って・・・。
たぶん失われた片目が復活したのは聖女アーレナが使った回復魔法のおかげだ。
瀕死の焼き鳥を回復させる超強力な治癒魔法だった。
憑依していた自分もその恩恵にあずかったのだろう。
人間関係に波乱を起こす私の能力とは違い、彼女は正統派の聖女様だね。
そんな彼女が悪質な教団に組していたのは皮肉な話だよ。
それはともかく・・・
夜は毛布で包まれハンモックで就寝。
幼い体は眠気に勝てない。
目指す皇都まであと何日か知らないけど何事も無い事を祈るよ。
はい・・・フラグでした。
次の日、旅を続けていると・・・100名ほどの武装集団と遭遇した。
『ちょうどいい。退屈していたのだ。暴れるなら呼ぶが良いぞ』
私の中のコロタンが張り切っている。
しばらく本来の巨大な姿になってないから鬱憤が溜まっているのかも。
もちろん、本格的に危ないようなら助けてもらうけど、それは最後の手段。
自分はこの世界の情勢も勢力図も何も知らないから勇み足は禁物だ。
「そこな部隊、何者だ。こちらがリリセンティア皇国の特使と知っての行いか?」
こちらの護衛騎士が相手を誰何する。
すると相手の部隊の中から一騎が進み出て来る。
「我々は陽兵団、闇夜のカラス。敵意は無い。
リリセンティア皇国の騎士団からそちらの護衛依頼を受けて来たものだ」
私はアイテム袋から以前使っていた眼帯を取り出し さりげなく聖眼を隠した。
彼らが聖女ファルナリーアと知って変な野心を持たないようにだ。
この眼帯は範囲は狭いが見えるように工夫がされているので聖眼の能力も使える。
『陰謀を見抜く』この不思議な聖眼は危険な旅で役に立つのです。
「こちらには そのような通達は無いが、
受けた依頼とはどのようなものだろうか?
国からの正式な依頼であれば 依頼書を確認したい」
「依頼書はこちらになります」
紳士的な対応がされている。
どちらの騎士も優秀で誠実な人物に見える。
心配は杞憂に終わるかな?。
「ふむ、確かに公式な書面に見えるが・・・
トゥルゲルト殿、念のため魔法で確認願えますかな?」
「お任せくだされ」
トゥルゲルトさんは書状を受け取り広げて確認する。
なので 馬上で彼の前に座っている私の目の前に書面が開かれたのだ。
聖眼が疼き、そこに隠された陰謀が脳裏に流れて来る。
やばいわー、確かにこれはトンデモない能力だ。
そして不快だ、出来れば使いたくない。
「これ嫌だ、気持ち悪い」
ザザッ
私の言葉を聞いてこちら側の全員が一斉に警戒し、戦闘態勢を取る。
場の空気は一気に緊張状態に変わっていく。
えっ、どうしたのかな?
「姫様、何か見えたようですな。この者達が何か仕組んでいるのですかな?」
ああ・・・そゆこと、私の護衛達は全員この聖眼の働きを良く知ってるのね。
「我々はただ護衛依頼を受けただけですぞ」
「大丈夫です。皆さんは潔白です。ただ・・・
いえ、何でも有りません。このまま進みましょう」
「遠慮なく申してくだされ、姫様。危険なのですな」
この場の全ての人の視線が痛い。責任重大だよ。
「そこの騎士さん、いえ・・・
傭兵団員107名の命を背負いし団長フラスコンナ・ランドレイク。
我らの護衛依頼を受けたからには命を預けてもらいますね」
「子供が口を出すだと・・・いや、まてまて、
何故、俺の名を知っている!?団員にすら教えてはいない本名だぞ」
あえて芝居臭い演技で聖女らしい言葉使いしてみたけど不自然は隠せないよ。
それにしても、やっぱ 彼の名前は㊙個人情報だった。
こんな秘密まで見通せるなんて、この聖眼 凶悪だわ。
まさに悪党にとっての天敵だよ。
貴族が一族郎党の命運を賭けてまでファルナを殺そうとするはずだわ。
「トゥルゲルトさん、私たちは既に敵の罠にかかっています。
聖眼を信じてくれるなら、ジタバタせずにこのまま平然と進みましょう」
「ふむ。あい分かりましてございます。この老体の命、姫にお預け致しますぞ」
既に私たちの様子を数名の見張りと連絡員が見ている。
下手に逃げようとすれば後ろから追撃され手も足も出ないだろう。
「ファルナ。疑う訳では無いが大丈夫か?。何か有れば世界は大混乱だぞ」
「はい父上、大丈夫です。お任せください」
「・・・・ち、父と呼んでくれるのか。ふぁるなぁ」(泣
いや、他の騎士も沢山いる公式の場でロリコンのオッサンとは呼べないだろ。
ファルナの気遣いに感謝してくれ。
その後は前後左右を強者の騎士達に囲まれて護衛されていく。
「しかし・・・
これけの人数の傭兵団に護衛を依頼するなんて依頼料はとんでもないですよ。
誰が仕向けたのか知らないけど太っ腹ですねぇ」
女性の騎士アデリーナさんが何気なくつぶやいている。
その理由は簡単。
死んでしまえば依頼料はいらないのだ。
大所帯に膨れ上がった一団が見通しの良い草原に差し掛かった時、
敵の本隊が姿を見せた。
騎士が騎乗した騎馬隊がおよそ200でこちらの倍の数。
さらに歩兵を合わせれば千人の兵力で待ち受けていた。
子供一人殺すのにご苦労なこって・・・
「これは何事だ・・・」
こちらの全員が驚く。
しかし、さすが傭兵団は驚いてはいるが怯えてはいない。
「傭兵団 闇夜のカラスはこの後、皇族殺害の冤罪を着せられて皆殺しに遭うよ」
「姫様、どういう事か説明していただけますかな?」
トゥルゲルトさん、分かってるくせに質問してるよね。
「護衛依頼した傭兵が金に目が眩んで盗賊に変貌し、護衛対象を殺害。
騎士団が駆け付けて盗賊を討伐するも、すでに私たちは亡くなっていた。
という下手な筋書きですね。
始めから冤罪を傭兵団に押し付ける計画ですよ」
「さすがでございます。姫様」
ただし、敵の最大の誤算は護衛依頼した傭兵団が百戦錬磨の強者ぞろいだった事だ。
「傭兵団には気の毒ですが、私達と接触した時点で冤罪は確定していたのです」
「そうでしたか・・・なるほど。我々はコケにされた訳ですな。
逃げても恐らく皆殺しに遭うのでしょう?。
ならば腹をくくって戦い、奴らには目に物を見せてやりましょう」
さすが一群の命を預かる団長。
危機的な状況なのに少しも動じない。
彼は冷静な顔を獰猛な顔に変えて覚悟を決めていた。
「お嬢さんは何者なのです?。身なりは平民の衣服ですがただの子供とは思えぬ」
とうとう聞かれてしまった・・・無理も無いけど。
「この方はリリセンティア皇国皇女にして、
次期大聖女候補 ファルナリーア様でありますぞ」
ぎゃー、恥かしい。肩書を付けられて紹介されるのは鳥肌ものの恥ずかしさだよ。
しかもトゥルゲルトさん、もの凄いドヤ顔で自慢げに紹介している。
やめてくれー
「こ、皇女殿下であらせられますか。・・・納得いたした」
「ファルナリーアが命ずる。闇夜のカラス、全軍左右に展開。鶴翼の陣を敷け。
私の合図で全軍突撃」
幼女が偉そうに命令する軍団、ハッキリ言えば無謀もいいところ。
素人が偉そうに采配するなんて自殺行為なのも理解している。
後に成って黒歴史に苦しむセリフを言ってしまった。
一度は軍勢を率いて指揮してみたかったのよ。
前世は男の子だもんしょうがないよね。
戦国シミュレーションゲームは大好きです。
ただし、勝算の無い無謀な指示では無いのだよ。




