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11、準備します

昨夜の戦いがあった事で(セルシニアの魔法が原因の)グチャグチャな部屋の後片付けは次の日に使用人総出で行われた。

廃墟の部屋を片付けるかのようなその作業は専門の工事関係者まで呼ばれて行われたが数日は掛かるらしい。

こんな大仕事となる災害を目にすれば 得体の知れない幼女 を歓迎してまで御嬢様のご機嫌をとる使用人たちの気持ちも分かると言うものだ。


当然そんな場所で幼女がうろついていたら邪魔でしかない事から自分ファルナはお嬢様と共に別室に幽閉?された。部屋の中に居るのは今までと変わらないので然程は気にならない。しいて言えば今まではセルシニアの世話をするのに補佐としてベテランメイドの先輩が近くで見ていたが人手が足りなくなった事で完全に丸投げされるようになった。おかげで今まで以上に御嬢様が纏わり付いてくる。


仕事としてはお世話すると言より何をして遊ばせるかに全力を尽くしていると言った方が正解かもしれない。

誰も居ない時に体を動かす遊びをしてお腹が減るように仕向けていたのだが、先輩メイドが居ない今の状況はセルシニア御嬢様にとって遊び放題なのである。

なわとび、馬とび、おいかけっこ、ついにはチャンチャカチャッチャと口でリズムをとってラジオ体操までさせた。「貴族のお嬢様がそのようなはしたない事を」と大人に見つかれば怒られるであろう体育のオンパレードだ。

自分も最近はちゃんと食べているし 体力が付くように運動するのは必要な事ではある。

そんな訳でほとんど幼稚園の保母さんのような毎日だ。

その手の趣味の人には天国だろうけど普通の(精神年齢的に)青年にとって子供の遊びは楽しいものではない。

どこが普通の青年か、という苦情は受け付けない。

あぁ、オンラインゲームで遊びたい。


そんな感じで ゲーム不足で禁断症状を併発していた自分はある日唐突に気が付いた。

『人はゲームが無いとリアルにゲームを求める』のだと。

逆に言えばリアルの生活がつまらないほどゲームに没頭できるとも考えられる。

人は何処かに楽しみを求める生き物なのかもね。


前世の地球では「世の中の戦争が無くならない」のが議論になる事が有るようだけど今なら分かる気がする。

権力者になった人間は無意識のうちに戦略シミュレーションゲームを楽しんでいるのだと。

立場が上の人ほどその楽しみは強く、自分の命を賭けて行う全力のゲームはさぞかし血が滾る事だろう。

道連れで使い捨てにされる雑兵の一般人にとっては迷惑この上ない話である。


話を戻せば自分ことファルナはゲームに代わる楽しみを見つけてしまった。

女の子をプリンセスに育てるレトロゲームが有ったけどあれは単純だけど奥が深いものだった。

人の人生なんてそれぞれだから無限にゲームが作れる分野になる可能性があった。

需要の関係か発展はしなかったみたいだけど。

何が言いたいかと言えば


「セルシニアお嬢を育てて立派なプリンセス?に育てる」


それがゲームのミッションと考えた時、この上なくワクワクする心に気が付いてしまったのだよ。

きっと世の中の親達は知らずにこのゲームを楽しんでいるのだろう。

その為には何をすべきか考えるだけでゲームの無い日々が退屈では無くなっていた。

ミッションクリアーの為ならどんな厳しい仕事も享受できる。ゲーマーとは業の深い生き物なのであった。

その時からメイドとしての能力を高めるべく真剣に先輩達の仕事を見るようになった。


そんな平和?な日々を送っていたが、ある日 1人の使者が訪れた事で事態は大きく動いていく。




「嘔吐?」


「王都ですよ、ファルナ。気をしっかり持ちなさい」


いや、単にボケただけなんですが。

生真面目な先輩のシャルナさんには自分が混乱しているように見えたらしい。


話の内容を要約すると、今回の戦勝の功績によって領主様が王都で叙勲されるらしい。

それだけなら「あっ、そうですか良かったですね」と他人事で済むはずだったが、あろうことか領主様はセルシニアお嬢様を同行させると言い出した。

まぁね、今までの事を考えると娘を残して長期間外出するのが不安なのは分かる。


心情的には理解できるが勘弁して欲しい。

何故なら専属メイドの自分も当然お嬢様と行動を共にする事が確定しているからだ。

幼い子供が何日も、何日も、何日も退屈な馬車の旅に耐えられるはずが無い。

そしてその必然的に起こる困難な対応を丸投げされるのがお嬢様の精神安定係りの自分だからだ。


庭師のおっちゃんであるアルベルトさんに旅の間使われるであろう馬車を見せてもらった。

馬車は2台有るが一台は明らかに使用人が使うだろう見た目である。立場をハッキリさせているようだ。

お嬢様の専属とは言え自分も当然こちらの馬車になるだろう。おっちゃんの話では貴族向けの馬車には魔物の素材が板バネのように使われていてサスペンションほどではないが衝撃を吸収して乗りやすくなってるらしい。使用人用の馬車はまぁ、それなりという事で押して知るべし。


この領地は辺境と呼ばれる国境沿いだけあって王都までは片道で一月ほどかかる。とは言ってもノロノロ動く馬車に揺られての時間なので、日本の乗り物で考えればそれほど距離が有る訳では無いのだろう。

だとしたら この世界の一つの国の大きさは思っていたより小さいと推測される。魔物の脅威が少ない場所が人の生活圏なんだし無理も無いかな。

話を戻しましょう。

一月も馬車でゴトゴトと移動するわけです。

遠いなら飛行機、あるいは新幹線という選択をしていた日本人としては気が遠くなるような旅行なのです。

自分はまだ痩せ細ったままで体力もスタミナも無い。

いきなりの過酷なイベントはハードすぎです。

先輩のメイド達にも話を聞いていく。


「そうねぇ、長旅で何が一番大変かと言えばお花摘み(トイレ)が何時出来るかですよ。ですから水を口にするのを極力控えます。それがまた辛いのよねぇ」


「ほんと、男の人は良いわよね。馬車から飛び降りて用を済ましたら走って追いつけば良いんですもの。こちらが我慢している時など殺意を覚えますよ」


うんうん、男の体で何が良いかと言えばその点だよね。

それに、魔物や山賊に襲われても自分で身を守れるし。

はぁ、男に戻って異世界テンプレのオレツエーしたい。

同じゲームならそっちが好きだな。

とにかく、聞けば聞くほど長旅が過酷なのが感じられる。


ラノベのようにアイテムボックスが有れば・・・。

アイテム袋は有るけどね。

今でも秘密にしている自分の生命線だし これは使えない。


セルシニアが昼寝をしている時間を使ってコッソリ邸から抜け出し小さな赤い草の種を集めてくる。

庭師のおっちゃんに頼んで日当たりの良い場所で乾燥させてもらう。充分に乾いてから細かく砕いてさらに乾燥させた。


この種は唐辛子とは味が違うけどかなり辛い。

鳥が食べないから毒でも有るのかと思っていたけど違った。別の種類の鳥は喜んで食べているので憑依してみたら理由が分かったのは良いが辛くて酷い目に会った。

そう、この世界で初めて見た香辛料だ。

旅の途中で獲物が居れば狩りもするらしい。

当然その肉は食べるのだが、日本のスーパーで売っていた肉と違って野生動物の肉は臭いものが多い。

塩も貴重品なので使用人が食べる肉に使わないだろう。せめて辛い味を付ければ臭みも消えて食べ易くなるはずだ。


「料理長ー、はい、これ」


「んん?。ファルナどうしたってだ。この赤い粉は何だ?」


「説明するより味見したほうが良い」


「おおっ、新しい食材か!。どれどれ♪♪・・☆☆!!」


声にならない悲鳴が聞こえるような料理長の悶絶ぶりである。もしもこれが単なるイタズラだったなら自分は料理長のシリルオーネにしこたま殴られただろう。

涙を流しながらも楽しそうなのは既に彼がこの香辛料の有用性に歓喜している証拠だ。料理長も旅に同行するらしいから意味するところは分かってもらえるだろう。


旅を快適?にする準備は始まったばかりだ。









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