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13、それは、美しくウザイやつ

綺麗だった。


それは およそ生物であることがウソであるかのように光り輝いている。


大きな岩山が積み木を崩したようにガラガラと崩壊し、中から何かがでてくる。


巨大なソレはファンタジー世界の象徴の一つドラゴン・・・ではなかった。残念。



では何かと聞かれたら形容するのが難しい。


強いて言うなら四足の巨大な獣なのだが、

その表現が似つかわしくないほど美しい姿をしている。


そして まだ距離が有るにも関わらず見上げるほど大きい。


特撮の映画に出てくる怪獣並みと言えば良いだろうか。


その四肢は細くしなやかでスマートなシルエットだ。


体全体を金色の長い毛がたなびいている。


無風なのにサラサラと風にそよぐかのように自然な形で動いている。


それが逆に不自然で何らかの力が働いているとしか思えない。


ここだけ聞けばイヌのゴールデンレトリバーやボルゾイ、

またはアフガンハウンドの姿を思い描きそうなものだが、

その顔はイヌのような愛嬌の有る可愛いものとは全く違う。


顔も毛で覆われているが爬虫類のそれに近く、

額からは魔剣のように歪で鋭利な角が伸びている。


顔が馬だったら変な姿のユニコーンで説明しやすいのだが・・・。


その姿から速度と俊敏性を武器にした戦闘型の生き物なのは間違い無い。


完成された姿には恐怖よりも高貴さを感じてしまう。


見上げる自分(ファルナ)はまるで現実味が持てず ただ呆けていた。


さすが異世界、そしてこれがこの世界の現実。




************



セルシニアお嬢様が混乱して危険な状態になり一行は立ち止まる形となった。


馬車を止めた場所は岩山からまだかなりの距離が有る。



クォァアアアアアアアーーーッ


にも関わらず、小山が崩れた直後に響き渡った大音響によって馬も人も

全てが気を失って倒れた。


幸か不幸か そのおかげでお嬢様の魔力暴走はシャットダウンしたのだが。


一声だけで人間たちは壊滅状態だ。


あの大音響は かの生き物の咆哮(ハウリング)という奴なのだろう。


これでは数万の軍隊が居たとしても戦いにすらならない。


何故か自分(ファルナ)だけはそれに耐えて意識が有った。




出てきた謎生物は辺りを伺(うかが)うと真っ直ぐこちらに向かってくる。


そんな巨大な謎生物を憧れの目で見上げている少年の心を捨てないファルナ(自分)が居た。


謎生物はファルナには見向きもせず馬一頭を銜(くわ)え上げると一口で租借(そしゃく)しはじめる。


うん、目の前で生き物がバリボリと音を立てて食われているのを見て今更ながら

我が身の危険を感じる。


単純に食い応えのある大きさの馬から食べたのだろう。


人間が食われるシーンを見なくて良かった。


奴の体格からしてこの場に居る全ての馬を食べたとしても満足するのか?。


次は人間だろうか・・・。




何とかしなくては・・・・・・


なんてね。


幼女な自分が出来る事はただ一つ。



「ふ、ふふふふ。この巨大生物を乗っ取るとか。オレ すげーっ」


今だけは言える!、異世界に来て良かったーー。


今の自分はワクワクした子供のテンションマックス状態である。


しかも、皆が気絶していて誰も見ていない。


というわけで、お邪魔しまーす。




視界が変わった凄い高いアハハハ・・・・・あれっ?!。


『!?』


憑依はできた、しかし体を乗っ取る事ができない。


しかも、相手は憑依した事に気が付いてしまった。


はい、想定外です。




『ぬうぅ、我輩の内に入り込むコレは何だ?。

何かの魔法か・・・魔力の動きは感じ無かったぞ』


ぐっ!。


デッカイ声?が頭に響く。


こいつ人間の言葉が分かるのか?


『人間?、あんなチッコイ奴らの言葉など知らんぞ。

ふむ、入り込んだお前はチッコイ奴か』


くそっ・・またチッコイ言われた。



                                                『というか、会話ができている?』


『ほほぅ、面白いな。ふむ、変わった知識を持っているのだな。

これは世界の理(ことわり)・・・科学と呼ぶものとな。意外と興味深いな人間というのは』


『何の話だよ。

それより 何で会話が成り立ってるんだ?』


科学が理解されている?。

頭の中が見られてるのか・・・こっちからは何も読めないのに。



『分からぬか?、では高貴な存在である我輩が教えてやろう。

チッコイ者よ、そなたは入り込んで我輩を利用しようとしたようだが、

魂の格が違いすぎて逆に取り込まれたようだ。

飲み込まれた、と言った方が分かりやすいか?。

我輩に対して何一つ勧奨できないのも魂の格が違うからである。

唯一意思疎通が可能なのは直接意識を交し合っているからであるな』


えっ・・



『ほほう、この状態は憑依と言うのであるか。

悠久の時を生きてきた我輩も初めて遭遇した珍事である。少しは驚いたぞ。

砂のような存在の者が我輩の思いを揺さぶったのだ、誇るがいい。

我が内から出られぬのなら、やがては消化されて我が魂の一部となろう。

小さき者よ、光栄に思え』


げっ、マジ?


『じゃあアレか?、これからずっとこのウザイ奴と一緒なのか。

一大事じゃん!』


『ウザイとは失敬な。そも 気にする点がそこであるか?』


『当たり前だろ、どうせ一緒になるならドラゴンが良かったぞ。

ドラゴンになる異世界の話も色々と読んでたし。カッコイイだろ』


などと余裕を見せてハッタリをかましているが、内心ではもの凄く焦っている。


離脱しなくては自分の存在そのものが消えてしまうなんて怖い。


『ふっ、ドラゴンとな?。

あのような下等で野蛮なトカゲが良いとは、チッコイだけに趣味が悪いの』


『くそっ、チッコイ チッコイと連呼しやがって。

ドラゴンにはモフモフなお前には無い強さが有るぞ』


『何を言う、我輩は最強の存在である』


『嘘だね、ドラゴンの方が強いだろ』


この後、しばらくの間 ファルナと謎の生物はアホな口喧嘩をしていたので中略。





************





『で、結局 高貴で最強なあんたは何なんだ?種族は?名前は?』


『我輩は唯一無二の存在だ、ゆえに名前など付ける必要は無い。

名前を付けなければ混乱する社会だと?そっちが未熟なのだ。

人間の常識などで吾輩を測るな』


『ふっ、名前も無いの?。

自分にはファルナって名前が有るぞ。

わーい、勝った勝った』


モロにガキの喧嘩である。


この謎生物と話をしていて気が付いた。


無駄に長生きして知能が高い上に 前世が日本人だった自分の知識と

表層心理でリンクしているらしく既に様々な情報は知られているらしい。


それは、どんなに知識で言い負かそうとしても勝てないということ。


なので科学的な知識で反撃する作戦は成り立たない。


唯一弱点が有るとすれば、この生き物は自分で唯一無二の最強を名乗るだけあって

他の存在との交流は皆無だったのだろう。


要するに彼のコミュニケーション能力は幼児並みだと言う事。


生物の頂点ゆえの孤独、ハッキリ言えばボッチ。




『ぬうっ、名前が無いから何だと言うのだ。必要など無いではないか』


『だって、この後も しばらくはこうして会話するんだろ。

名前が無いと会話し難いんだよ。おいっ、とか お前、とか呼んじゃうよ』


『無礼な、我輩に向かってそんな呼び方はさせんぞ』


『でもさ、これから名無しと付き合う身にもなってよね。

何でも良いから自分で名前を付ければ良いじゃん。

それと、これからは私をファルナ様と呼ぶように』


『名前の付け方など知らぬぞ。いやまて、何だその 様 とは。

目上に付ける敬称とお前の記憶に有るぞ。我輩は認めん!』


『えーっ、じゃあ私が敬称を付けて上げる。

名無し様、名無し殿・・・ほら、やっぱり名前が無いと不細工だよね』


『ぬううううううぅぅぅっっっ』


『しょうがないなー(ニマニマ)

じゃあさ、この私ファルナが高貴で美しくて最強な貴方に

カッコイイ名前を付けてあげても良いよ』


『ほほぅ。チッコイくせにそんな事もできるのか』


『出来るよー。

今後 誰に名前を聞かれても堂々と名乗れる最高の名前を付けてあげる。

でも、名前を付けてもちゃんと受け入れないとダメだよ。心に刻むんだよ』


『そうなのか?。名前とは難しいものであるな』


『じゃあいくよ。

我が魂と共にある尊き者に我ファルナの名に於いて常しえの真名をさずけましょう。

パンパカパーン、君の名は・・・・・コロタン!』ぷふっ


『コロタン!』


〔ピコーン☆両者の契約認証確認しました。

これによりコロタンは名付け人であるファルナに従属されることが確定されます〕



『あ・・・やった。本当にできた♪』


この前 書庫で読んだ本に載ってた魔物をテイムする契約方法は本当だったのか。


よもや成功するとは思わなかった。


成功するとアナウンスが聞こえるという謎の機能も実在したよ。


この拘束された憑依から逃れるための苦し紛れの方法だったんだけど・・・


凄いね異世界。


ちなみにコロタンは前世で近所にいたイヌの名前だ。




『なっ、何だ今のは?。主従契約だと、我輩は認めんぞーー』


謎生物コロタンは慌てだしたがもう遅い。


普通はこれだけの力の差が有れば契約は成立しないらしいけど、魂レベルで接近していた事、尚且つコロタン自身が受け入れる用意が有ったので無事に成功したのだ。


ともあれ、これで魂の格が違っても立場はファルナの方が上なので憑依状態から離脱できるだろう。


とりあえず 試してみたけど契約後も体を乗っ取るのは無理だった。


コロタンの言う通り生物として かなり上の存在なのだろう。




『卑怯だぞ、取り消せ』


『うるさいなー。そんなに焦らなくても良いじゃん』


早速コロタンから離脱して巨大なその姿を見上げながら会話する。


離れても念話が可能なようでとても便利だ。


ちなみに従魔は主人を害する事が出来ないらしいので近くに居ても安心だ。


いや、そうでないと困る。




『貴様、謀りおったな!。我輩が人間などに従僕するなど、何と言う屈辱かぁ』


『そんなに怒らないでよ。

別に何かしろ、とか命令なんてしないからさ。

うーん・・そだね、友達になった契約だと思えば良いよ』ニコッ


ファルナはコロタンに微笑んだ。


しかし、コロタンには人間の表情など分からない。



『ふむっ・・友か。それならまぁ 我慢しないでもないぞ。

使役せぬと言うなら・・・問題は無い』


何とか納得してくれたようだ。


自分でも得体の知れない生き物と契約する何てどうかと思うけど、

絶対勝てない相手に対して考えうる最善な結果だと思う。



『我輩はこれから久々に体を動かしてくる。

友だと言うなら離れていても会話くらいは答えてしんぜよう』


何処までも上から目線なコロタンであった。


しかも 少しツンデレが入っているようで面白い。



『あっ、コロタン。行く前に街道に転がった岩をどけて欲しいな』


『・・・命令はしないと言ってなかったか?』


『えーっ、命令じゃないよ。お願いだよ。

それに、あの岩はコロタンが暴れて道を塞いでるんだから君のせいだよ。

コロタンは力が強いし簡単だよね』


『我輩のせいでは無いと思うのだが・・ブツブツ』


文句を言いながらも巨大な岩を軽く蹴り飛ばしてコロタンは走り去って行った。


これによって領主一行は最大の危機を乗り越えた。


損害は食われた馬一頭と落馬による軽症者だけである。





それから少しして領主一行も復活する。


意識を取り戻した領主はファルナの話を聞いて大いに戸惑うしかない。


残された馬の血痕や噛み千切られた馬具などからファルナの話が真実とは思える。


ファルナの他に誰一人その存在を目撃していないのだから。


だが、子供の話だけでは その生き物がどれほどの存在なのか分からないのだ。


「ふむ、まぁ良い。とりあえずこの場から離れるとしよう」




ファルナはもちろん誰にもコロタンとの主従契約の話はしていない。


眠ったままのセルシニアは穏やかな顔になっているので心配無さそうだ。


思わぬアクシデントは有ったが旅を中止するほどの事では無い。


領主一行の馬車隊は数時間の遅れを出しながらも王都に向けての旅を進めていく。




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