1962年11月2日 開戦初日 西ドイツ
あらすじ
1962年、米ソはキューバに設置されたソ連のミサイル基地を巡り対立し、核戦争もそう遠く無いと思われていた。そして1962年11月、米ソの交渉は決裂し米国はキューバに侵攻、NATO諸国も臨戦態勢を整えるがそれを受けソ連ははNATO諸国に宣戦布告、WTO諸国もそれに続きついに世界大戦が始まったのである。
初投稿の作品で至らぬ点もありますが生暖かい目で見てくださいm(_ _)m
西ドイツ北部の国境地帯にて
ブライトン中佐率いる英軍守備隊
まだ朝も早く、日はまだ低かった。周囲は収穫が済んだ荒涼とした田園地帯であり、これから戦場になるなどとても想像がつかない。しかしよく見ると砲撃によって所々地面に穴が空いていた。その一面の荒涼とした畑の中にところどころ、塹壕や装甲車両が見える。そのうち、周りに2、3軒の民家がある十字路の周りには戦車が数両配置され、2重の塹壕が構築されていた。そこにブライトン中佐率いる英軍の一個大隊が駐屯しているのであった。
「中佐!司令部より偵察機が敵軍が移動を開始したことを確認したと入電がありました!」
民家に設けられた指揮所から通信兵が叫んだ。
「総員、戦闘用意!敵はもうすぐ来るぞ!」
センチュリオンに乗ったブライトン中佐が無線で部下に命じた。東の方を見ればかすかに煙が見える。敵の部隊はかなり近くにいるようだ。やがて段々とそれは近づいて来て、やがて地平線の下から敵が姿を現した。
「敵を確認!距離、4,800!」
「こちらポイントS!敵と接触!座標、K-8、S-4!」
敵はだんだんと近づいて来る。だんだんと敵がはっきり見えて来た。
「距離1,000!」
どうやらT-54と歩兵の混成らしい。しかし軽く20両以上は居そうだ。中佐は無線機を取り上げた。
「砲兵隊、砲兵隊、こちらポイントS、砲撃を要請する!目標、ポイントSより1,000m東!」
「こちら砲兵隊、これより砲撃。弾着まで、9、8、7、6、5…」
「撃ち方用意!」
中佐が叫ぶ。敵はまだ気づいていないようだ。
「…3、2、1、弾着!」
敵が居るであろう一帯は煙に包まれた。煙の中から焔が上がる。煙が晴れると同時に中佐が叫んだ。
「ファイアー!」
8両のセンチュリオンの主砲が火を噴く。街道上の敵が煙に包まれ焔が上がった。
「次弾装填!」
装填手が砲弾を20ポンド砲に叩き込む。
「ウラー!」
「ウラー!」
「弾幕射撃!ファイア!ファイア!」
敵歩兵が突撃を始めた。すぐさま塹壕にこもった歩兵が射撃を始める。敵歩兵が一人、二人となぎ倒されていく。
「ファイアー!」
敵戦車が煙を上げ、中から戦車兵が飛び出した。しかし彼はすぐに歩兵の放つ弾幕射撃の餌食となった。
「ポイントS、ポイントS、こちら砲兵、ただいま砲撃、弾着まで、9、8…」
「次弾装填!」
「…6、5、4、3、2、1、弾着!」
砲弾は敵部隊の後方に着弾した。
「誰か着弾観測しろ!」
「測距儀あるか!」
「無線機もってこい!」
指揮所が騒がしくなるがそれはすぐに収まった。
「砲兵隊、砲兵隊、こちらポイントS、諸元修正、西に100m」
「こちら砲兵隊、諸元修正、西に100m、これより砲撃」
バババッ、ババッ、と立て続けに敵戦車が発砲し、味方戦車から炎が上がった。
「3号車がやられた!」
「3号車!3号車!応答せよ!」
「うろたえるな!落ち着いて敵に対処しろ!ファイアー!」
一両、また一両と敵戦車から煙が上がる。気づけば敵は30両以上にまで増加していた。
「ポイントS、ポイントS、こちら砲兵隊、ただいま砲撃、弾着まで、9、8、7、6…」
「次弾装填!」
「…4、3、2、1、弾着、弾着観測求む」
敵が凄まじい爆煙に包まれ、何とも知れぬ物体が宙を舞った。
「砲兵隊、砲兵隊、こちらポイントS、効果は絶大、諸元そのまま、射撃を続けられたし」
「ファイアー!」
敵戦車がまた数両、撃破される。この分だとどうやらこの陣地は死守できそうだと思ったその時であった。無線機から
「CQ、CQ、CQ!こちら第4機械化旅団!敵の攻撃により我が防衛線は崩壊しつつあり!至急支援を請う!」
という無線が飛び込んで来たのである。すぐに無線が騒がしくなった。
「第4機械化旅団、第4機械化旅団、こちら砲兵隊、これより砲撃、座標を通達されたし」
「こちら第7装甲旅団、第4旅団の支援に当たる!」
「こちら師団司令部!これより増援を送る!それまで何としても陣地を死守せよ!」
砲兵隊による砲撃はすぐに止んだ。尤も、敵は壊滅しており既に後退を始めているのだが。
「各車両!各自に射撃!」
「中佐、大変なことになりましたね。戦線崩壊の危機じゃないですか」
装填手が顔を上げて不安そうに話しかけて来た。
「問題は無い。この分だと戦線に空いた穴はすぐにふさがれるだろう。」
「でも、心配ですよ。第4旅団突破が囮作戦で、他が手薄になってる隙に敵の本隊に突破されたらそれこそオシマイじゃないですか」
「今は目の前のことに集中しろ。その時はその時だ。」
「…了解」
装填手は下を向くと黙々と装填を続けた。
「こちら第4機械化旅団、敵は後退中!」
「こちら第20装甲旅団、敵を撃退」
「こちら第7装甲旅団、追撃の許可を求む」
無線では各部隊が司令部に勝利を報告していた。
敵の方を向けばたった今、ブライトン中佐のセンチュリオンの射撃で最後の敵戦車が撃破されたところだった。気づけば日は高く上っていた。
「こちら司令部、偵察機より敵は戦線全域で煙幕を展開中とのこと、各部隊は注意されたし」
どうやら敵は煙幕を張って撤退するつもりか。そしたらしばらくは来ないであろうからゆっくりティータイムを取れるなどと思った時であった。いきなり周りが白煙に包まれ、視界はゼロに等しくなったのである。
「ゲホッ、ゲホッ」
「なんだこれは」
「誰だ煙幕を張ったやつ」
「砲兵隊か?誤射もいいところだ、これが榴弾だったらどうなってたことか…」
とあちこちから声がした。しかしやがて煙幕は晴れていき、視界も開けていった。しかしブライトン中佐以下守備隊はそこに現れた光景を見て驚いた。そこには地平線を埋め尽くさんばかりの戦車が、装甲車が、歩兵がいたのである。
「ファイアー!ファイアー!」
「弾幕張れー!」
「砲兵隊!砲兵隊!」
守備隊は慌てて射撃を始めたが既に遅く、あっという間に陣地は爆煙に包まれ、撃つどころか歩兵が顔を出すのさえ困難だった。辛うじて戦車は射撃できたが立て続けに一両、また一両と爆焔を上げ炎上していった。中佐は無線機に叫んだ。
「CQCQCQ!こちらポイントS!敵の大規模な部隊の攻撃を受け被害甚大!陣地の維持は困難!至急救援を請う!繰り返す!被害甚大!陣地の維持は困難!至急救援を請う!」
「ポイントS、ポイントS、こちら司令部、これより第7装甲旅団を送る、それまで持ちこたえよ」
「ポイントS、こちら砲兵隊、ただいま射撃、弾着まで…」
「ポイントS、こちら第20装甲旅団、これより援護する」
砲兵の放った榴弾が着弾したが着弾は疎らで火力が絶望的に足りていない。そもそも着弾観測がほぼ不可能である。損害はどんどん増していっており、増援が来るまで持たないであろう。そう思った時であった。
「こちら爆撃機隊、待たせたな」
という無線に続いてキャンベラ爆撃機が3機、爆音を地上に叩きつけながら頭上を飛び去ったかと思うと敵戦車が爆煙に包まれた。まるで映画のワンシーンを見ているかのようだった。西部劇で騎兵隊がやって来た時のような心地がした。3機の爆撃機は飛び去ったかと思うと再び戻って来てまた敵戦車を爆煙に包み込んだ。爆撃機が頭上を飛び去っていくと轟々たる爆音とともにドイツ空軍のF-104 4機が超低空をかすめていき、ロケット弾を浴びせた。そのまま飛んで行ったハンターの後から追随するように新たにハンター戦闘機が飛んできて、敵は再び爆煙に包み込まれた。こうして続々と空軍機が集まり最初のキャンベラの到着から物の5分も経たずに敵戦車は全滅した。全てが終わった時、中佐以下守備隊一同は飛び去って行く空軍機に敬礼していた。この時、ポイントS守備隊には2両のセンチュリオンと61名の歩兵しか残っていなかった。
次回!自衛隊登場!




